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対談:平野洋一郎 X Tobias Eichenwald
「IoTによるソフトウェアとハードウェアの“つながり”」

インフォテリアが出資するY Combinator発IoTデバイスの
スタートアップ「Senic」創業者との対談!

(写真)平野 洋一郎 代表取締役社長/CEO、Tobias Eichenwald

― まずはSenicについて教えて下さい。

Tobias Eichenwald(以下:Tobias):わたしとFelix、Philipの3人で設立したIoTデバイスのスタートアップです。本拠地はドイツ・ベルリンで、私は電子工学、Felixはインダストリアルデザイン、Philipはビジネス/ユーザー体験デザインに明るく、3人ともハードウェアの家系が背景にあります。

(写真)Nuimo

企業名のSenicは、人間の感覚(”Se”nse)とIC(集積回路)を組み合わせた造語で、この二つを自然に結びつけて技術の体験を高めるというビジョンを持っています。最初の製品「Nuimo」は、Natural User Interfaceの”NUI”と”Mo”tionを組み合わせた言葉です。家の中で直感的にスマートデバイスとやりとりしたいというニーズに応えるもので、スマートフォンにある音楽をかけるといったことを、ダイアルを回したりジェスチャー操作で行うことができます。

― InfoteriaとSenicの出会いはY Combinator※1とのことですが、お互いの印象は?Senicはドイツの企業ですが、Y Combinatorに応募した理由は?

Tobias:Y Combinatorには2013年夏のプログラムに参加しました。選んだ理由は、Y Combinatorは起業した理由やストーリーを重視していたからです。起業に至るまでのわれわれのルーツや課題と感じていること、なぜ自分たちがやろうとしていることが重要なのかを語ることは大切なことでした。

平野洋一郎代表取締役社長/CEO(以下:平野):インフォテリアはソフトウェア開発で世界を目指してきました。創業から18年が経過し、主力製品のASTERIAは6000社近くが利用する製品に育ちました。企業データ連携ソフトウェアでは10年連続国内ナンバー1※2のシェアを誇っています。ですが、受託開発と違ってパッケージ製品は市場を見ておかなければならない。より早くトレンドやニーズに気がつき、自社の考えを常にアップデートすることを心がけてきました。Y Combinatorへの参加も、アンテナとして役立っています。先にブロックチェーン分野でテックビューロとの提携を発表したり、多くの会社を束ねてブロックチェーン推進協会を立ち上げましたが、Y CombinatorのDemo Dayでブロックチェーンはビットコインのためだけではないと気がついたことが背景にあります。

Y CombinatorのDemo Dayでは多数のスタートアップがデモを行いますが、Senicを選んだ理由は起業家精神を感じることができたからです。

Tobias:インフォテリアも平野さんと北原さんが起業した会社で、私たちと似ていると思いました。いまでも2人の起業家精神が感じられ、共感できるところがたくさんあります。

― IoT機器におけるNUIの重要性は? IoTのトレンドは?

Tobias:パーソナルコンピューター(PC)、スマートフォンとざっくり10年ごとに重要な変化が起きています。ユーザーインターフェイスは新しいシフトで、スマートフォンと同じぐらい重要なものです。新しいインターフェイスはジェスチャー、ハプティックなどさまざまですが、例えば音声。認識率は95-99%まで上がっており、音声での入力や反応という重要なシフトが起こるでしょう。大手も多数注目しています。

センサーも重要なトレンドです。新しい技術ではありませんが、価格が急激に下がっているーー5年前まで20ドル程度だったWiFiチップが、現在は1ドル程度です。これが何を意味するのかというと、すべてのものがインターネットにつながるということです。

AR(拡張現実)、VR(バーチャルリアリティー)も挙げられます。2016年の年末商戦でたくさんの商品が出てくるでしょう。当面はゲーム主導ですが、将来はオフィスや仕事でもアプリケーションが出てきます。

(写真)Nuimoと平野

平野:インフォテリアでもIoTは注目しています。これまで、「オモチャ」と言われたものが企業の情報インフラに不可欠になるのをいくつもみてきました。”歴史は繰り返す”ではないが、PCもインターネットも現在ビジネスに重要なツールはどれも「オモチャ」でスタートしています。現在、スマートフォンやタブレットといったデバイスが企業の情報インフラに入りつつあり、今後ウェアラブル、ドローンなども入ってくるでしょう。

それに合わせて、ASTERIAも、これまではSAP、Salesforce、Oracleといった業務アプリケーションやクラウドと繋いできましたが、今後は新しい領域のに広げていきます。インフォテリアの製品は「つなぐ」をキーワードとしており、IoTは繋ぎ先としてとてもしっくりくるものです。

― Nuimoを夏に発売開始しました。これまでの経過をどう見ていますか? 振り返って難しかったことは?

Tobias:Nuimoは7月に発売を開始し、8000台を出荷しました。このうち80%が北米と欧州です。リソースが限られていることからこの2市場にフォーカスしていますが、韓国と日本からも問い合わせをたくさんいただいています。2017年には他の市場に拡大できる見通しです。

難しかったのはハードウェアです。ハードウェア製品が市場に出るには、少なくとも1年半〜2年と比較的長い時間がかかります。ソフトウェアは出荷後にバグが見つかってもアップデートできますが、ハードウェアの場合、そうはいきません。小さな問題であっても残ります。

また、IoTにはまだ標準がなく、たくさんのプロトコルが乱立している状態です。このような事情もあり、ハードウェアの構築に思ったより時間がかかりました。

― そのハードウェアですが、すべてドイツで製造しています。その理由は?

Tobias:ドイツの会社の多くはドイツで製造していますが、製品を中国に出荷して中国でアセンブリし、ドイツに戻すという手法を取っています。手作業によるアセンブリ部分のコストを安くすることが目的ですが、すでに中国の労働コストは上がっており、タイ、ベトナムといった国に移りつつあります。コスト面での中国の魅力は薄れつつあります。

また、われわれは設計段階から工夫し、手作業によるアセンブリが少ないように設計しています。そのためアセンブリコストは低く、(中国でやるかドイツでやるかに)大きな差はありません。それだけでなく、品質、プロセスをすべてみるためには地元でやったほうが学びが多いと感じています。

― 現在注力していることは?

Tobias:デザインにはたくさんの原則があります。その一つに、ユーザビリティとフレキシビリティは両立できないという考えがあります。スイスアーミーナイフはフレクシブルなツールですが、使うのは難しい。パンを切りたいと思ったら、スイスアーミーではなくパン切りナイフを使います。

Appleがスイスアーミーナイフだとすれば、われわれはApple並みの品質を保ちながら用途に特化した使い勝手のあるインターフェイスを作りたいと思っています。

価格付けも重要で、最初に低価格で提供すると大手が参入したときに競合が難しくなります。われわれは、プレミアム価格帯の製品で最初にユーザーを引きつけるという”Tesla戦略”をとっています。実際、Nuimoを購入してくれたユーザーは、機能だけでなく品質とデザインも重視するプレミアムセグメントの顧客であることがわかっています。

平野:インフォテリアは現在の製品に加えて新しい中核製品の確立を図っていきます。これからのITで重要なトレンドは3つの「D」ーーIT資産になる「データ(Data)」、不可欠なインフラとしての「デバイス(Device)」、分散化と協調の「デセントライズ(Decentralized)」です。その変化に向けて3つの新製品を投入し、また同様に既存製品の領域拡大を行っていきます。

インフォテリアの経営理念の第1は「発想と挑戦」で、起業家精神を忘れずに自由な発想と挑戦を重視することを掲げています。そして第2は「世界的視野」として、全社員が世界市場を視野に入れ、世界市場で存在価値のある製品やサービスの開発を進めていきます。たとえば2016年度に出荷する製品は、コンテンツ管理「Handbook」の英語版となる「Tristan」をはじめすべて英語と中国語に対応します。

組織も多様化を図ってきました。現在、社員の約1割が外国籍です。フランス、韓国、中国、オーストラリアなどさまざまな国籍の社員が机を並べており、LGBT採用も強化しています。多様な人がいてこそイノベーションがおきると信じているからです。

(写真)平野 洋一郎 代表取締役社長/CEO、Tobias Eichenwald

― それぞれの今後の計画をお聞かせください。

平野:2016年5月に2018年度までの中期経営計画を発表しました。海外比率を20%台、フロー売り上げ率を20%台、営業利益率を20%台で増加させる”トリプルトウェンティ(Triple Twenty)”により売り上げを前年比1.5倍、営業利益を2倍にするというもので、IoT製品やIoTとの連携はその重要な牽引役と考えています。

2016年度はIoT対応の開発プラットフォーム「Platio」を1月下旬から販売開始、その後もエッジコンピューティングのためのミドルウェア「Gravity」(コード名)を投入する計画です。Gravityはクラウドに繋がった現場=エッジでIoT情報をいったんまとめたり、制御するもので、日本ではまだ注目が低い「エッジコンピューティング」を基盤としたIoT分野を切り開くことになります。

PlatioやGravityが出ることで、IoT時代のデータの流れを全面サポートできます。IoTの世界ではその使用現場でデバイスやセンサーからのデータを集めたり制御する仕組みが必要で、Gravityはここを受け持ちます。また、Platioは人がIoTを活用するためのモバイルアプリを簡単に開発できるようにするものです。さらに、このようなIoTのデータをASTERIAを介してビックデータ解析などに引き渡すことができます。また、コンテンツ管理「Handbook」により、加工されたデータをデバイスで視覚的に見ることもできます。

Tobias:Y Combinatorで市場がどのように動くのか、ハードウェア製品を構築するとはどういうことかなどさまざまな学びがありました。これを生かして、まずは家、次にオフィスの問題を解決することにしました。現在、2番目の製品を開発中で、オフィスにあるミーティングルームの課題を解決します。

現在のNuimoユーザーの典型的な使い方は、自宅に帰って壁に装着しているNuimoを押してスマートフォンにある音楽を聴いてリラックスする、というものです。次の背品ではスピーチ、ビジョン、WiFiなどの機能を入れて、ミーティングルームで同じようなことを実現します。つまり、音声、ビジョン、ジェスチャーなどを使ってビデオ会議をもっと簡単にし、会議そのものにフォーカスできるようにします。プラットフォームをオープンにすることで、既存システムとの統合も容易に行えるようになります。

社員も増員し、営業やコミュニケーションも強化できるようになりました。Nuimoは北米と欧州が中心でしたが、今後は市場を拡大していきます。

平野:IoT機器を実際に繋いでオフィスや現場でのリアルな利用に役立てるために、本社ビル内に新たに拡張したエリアを「IoT Future Lab.」(略称:イフラボ)として開設しました。ここでは、Nuimoを始め100個以上のIoT機器を常備しています。インフォテリアの顧客やパートナーにIoTで実際に何ができるのかを見せたり、IoT機器メーカーのデモにも使ってもらいたいと考えています。新製品のプロトタイプができたら送ってください。イフラボに置きましょう。

― 起業家へのメッセージはありますか?

Tobias:新しいトレンドで必ず起こることですが、多くの人々はすごいとは思っていても、どのぐらい重要なのか、その重要度に気がつかない。振り返ってこれは大きな変化だったと気がつくのが常です。私たちの場合も、1年半前にIoTやNUIの話をしてもあまり本気にされませんでした。ですが、ある時点から笑われなくなりました。スタートアップのよいところは、トレンドが具体的になる前に準備できることです。

※1 Y Combinator (ワイコンビネーター):米国カリフォルニア州のVC(ベンチャーキャピタル)。少ないお金を出資しながら、徹底的に次の投資ラウンドに進めるように指導するのが特徴。最強のスタートアップ養成スクールとも呼ばれる。

※2 テクノ・システム・リサーチ社「2016年ソフトウェアマーケティング総覧EAI/ESB市場編」

以上
日時:2016年12月12日 13:58