ASTERIA Warp導入事例：
ベネトン ジャパン株式会社

ベネトン ジャパン株式会社 システムDiv. 部長
大網 東市 氏

市場の変化に応じたIT環境を構築しビジネスの成長、業務改革を支援

　流行の移り変わりによる浮き沈みの激しいファッション業界にあって、着実に事業を拡大してきたベネトン。低リスク・高収益を実現するためのブルーオーシャン戦略、多様な人材を受け入れるための勤務形態やワークライフバランス重視の姿勢などが、その競争力の源泉となっている。
　こうした姿勢はIT投資にも反映されている。
「自社の戦略を核に据えつつ、市場の変化に応じたIT環境を構築し、ビジネスの成長、業務改革を支援し続けることがIT部門には求められています」と同社システムDiv. 部長の大網 東市氏は述べる。
　具体的には、ベネトン ジャパンでは、低リスク・高収益を支えるためにクラウドサービスなどを積極的に活用するほか、効率的な業務環境を整備するためにリモートアクセス環境を整備したり、社員の負荷を低減するために高速開発環境の構築を目指すなど、さまざまな取り組みを行っている。

欧米と日本の商習慣の差が問題に　効率的なシステム改修の仕組みを模索

　しかし、IT環境を発展させる途上ではさまざまな課題もあった。システム間の連携やデータの受け渡しがその1つだ。
　まずイタリアの本社とのデータの受け渡しに関する問題があった。
　基本的にベネトンでは、各国の市場特性に合わせて、それぞれの現地法人がITシステムを独自に構築している。一方、販売する商品はイタリア本国で一括管理されている。そのため、イタリアから各国へ商品が出荷される際には、商品マスターや出荷情報などのデータも同時に送信。データを受け取った各現地法人は、それを基にビジネスを管理し、その後、売り上げなどのデータをイタリア本社のデータウェアハウスに返す仕組みとなっている。
　このデータのフォーマット変更への対応が課題だったのだ。
　「本社のシステムに仕様変更があると、マスターデータのフォーマットが急に変更になる場合があります。とはいえ、欧米と日本では商習慣に大きな差があり、本社が求めるスピードについていくのは困難でした」と大網氏。例えば、わずか数日間でCSVフォーマットからXMLフォーマットへの変更を求められたこともあったという。
　加えて、社内システムの複雑化に起因する問題も浮上していた。
　「各業務部門の要求に応じてASPやシステムを追加した結果、さまざまなシステムが運用されるようになり、非常に複雑な状態になっていました。複雑化がさらに進むと、システム間の連携やデータの受け渡しに大変な手間やコストがかかることが懸念されていたのです」と大網氏は言う。
　例えば、広報部門では雑誌などのメディアに新商品を有償・無償で貸し出すことがある。アパレル業界には、この貸出・返却業務に特化したASPがあり、新たに利用することになったが、管理上、この貸出・返却業務を担うシステムは、商品管理のベースとなっている商品マスターや売り上げを管理するシテムと連動させる必要がある。あくまでも一例だが、こうしたインターフェイス開発が頻繁に求められるようになっていた。

ECサイトとのデータ連携も容易　素早い販売チャネルの拡大が可能に

　こうした課題を解決するために同社が導入したのがアステリアのEAIツール「ASTERIA Warp」である。
　「いくつかのEAIツールを評価しましたが、ほとんどのソリューションがデータ変換機能を主体にしていました。一方、ASTERIA Warpは、データ変換だけではなく、システムそのものを連携可能。開発環境の『フローデザイナー』は、データの入出力に沿ってアイコンを並べるだけで、『ノーコード』で手間なく迅速に開発業務を行えると判断し、導入を決めました」と大網氏は説明する。
　導入後、ASTERIA Warpは、同社の効率的なIT戦略に大いに貢献している。
　まず、先に述べたイタリア本社とのデータの受け渡しに活用。また、販売チャネルの拡大にもASTERIA Warpは役立っている。
　近年、ベネトン ジャパンでは、国内ECサイトへの出店を加速しており、2011年11月に「ZOZOTOWN」、2012年9月に「bidders」、2012年10月には「楽天」と立て続けに出店した。こうしたサイトでは、サイトごとに独自のフォーマットで売上データが送られてくる。それをいかに社内システムに取り込むかが課題となるのだが、ZOZOTOWN出店時は、独自フォーマットの売上データをASTERIA Warpによって社内標準フォーマットに変換。売上情報に加え、バーコード情報、値引き、レシート番号といった情報までを店舗管理サーバーに吸い上げる仕組みを、およそ1カ月という短期間で開発した。具体的には、ECサイト側からダウンロードしたデータをファイルサーバーにアップすると、ASTERIA Warpがデータを変換し、店舗管理サーバーにアップする仕組みとなっている。
　そのシステムをベースとすることで、その後のbidders出店時は3日間、楽天出店時はわずか2日間で開発を終えたという（システム構成図）。

システム構成図

　「IT部門の仕事は、提案し、業務を改革していくこと。しかし、以前は業務部門や本社からの新システム・サービスの追加要求、仕様変更要求にびくびくしている部分がありました。要求に応えようとするとシステム構築に大きな手間やコストがかかる上、要求通りの期間で仕上げることが困難だったからです。一方、現在はASTERIA Warpで容易にシステムをつないだり、新たな仕組みを構築することができます。事業部門からの要求に対して、すぐにテストバージョンを作り、コミュニケーションを取りながらブラッシュアップしていくことも可能です。結果、IT部門のメンバーが業務部門の必要としている機能をいかに実現するかを前向きに考えるようになるなど、ポジティブなスパイラルにつながっています」と大網氏は話す。
　また、ASTERIA Warpを使いこなすに当たっては、導入を担当したSCSKのサポートも大いに役立ったという。「FAQやサンプルプログラムなど、さまざまな情報を提供してもらい、きめ細かなサポートにとても満足しています」（大網氏）。
　このようにベネトン ジャパンは、ASTERIA Warpを利用することで変化に速やかに対応できるIT基盤を実現した。変化を短時間で吸収できるようになったことで、IT部門に時間の余裕が生まれ、結果、よりビジネスに役立つITをいかに実現するかという点に意識が向いているという。この戦略的なIT活用を後押しする「力」こそが、ASTERIA Warpが企業に提供する最大のメリットともいえるだろう。