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対談:「デザインファースト」が
新しい エンタープライズソフトウェアを切り開く

インフォテリアが買収した This Place 共同創業者兼 CEO との対談

平野 洋一郎xDusan Hamlin 写真

― 本日(4月20日)、予定通りにThis Placeはインフォテリアの100%子会社となりました。

This Place 共同創業者兼 CEO Dusan Hamlin(以下:Dusan):共通のビジョンを土台に作業を重ね、しっかりした計画を立案した結果です。とても誇りに思っていますし、今後は計画をしっかり実行していきたいと思っています。

インフォテリア代表取締役社長/CEO 平野 洋一郎(以下:平野):インフォテリアグループとして新しい時代の始まりの日になりました。This Placeにとってもインフォテリアにとっても、新しい歴史が始まります。これからは共に歴史を作ることになります。

Dusan HamlinThis Place 共同創業者兼 CEO

イギリスのアングリア・ラスキン大学で経済学を学ぶ。その後デジタルエージェンシーに勤務後、Inside Mobileを立ち上げ、CEOを務める。Inside Mobileを広告エージェンシーM&C Saatchi Groupに合併させた後、2011年にデザイン思考コンサルや戦略開発を手がけるThis Placeをロンドンで創業する。わずか5年で売上高480万ポンド(約6.75億円)を超え、税引前利益180万ポンド(約2.5億円)を達成。米シアトルにも拠点を持つ国際企業に成長させた。

― This Place について教えてください。

Dusan:ワールドワイドクラスの企業のデジタルデザインを手がけるために、2011年に創業しました。 技術主導ではなく人間の要素のあるデジタルデザインを提供することを目標に掲げています。スタート当時から、世界の大手ブランドをターゲットとし、T-Mobile、Samsonite、BBCなどを顧客としています。

― なぜThis Placeの創業に至ったのでしょう?これまでの経歴を教えてください。

Dusan:イギリス・ケンブリッジで育ち、大学で経済学を学びました。学業を終えた後、リサーチ分野でキャリアをスタートしました。仕事をしながら、インターネットが大きな産業になると気がつき、1990年中頃にメディア戦略家としてキャリアをスタートしました。ロンドンでAdidasなどのビッグブランドや大企業のデジタル戦略構築に関与し、それまで企業のコミュニケーションのツールだったWebサイトを、グローバルなEC(電子商取引)のツールにシフトさせる手伝いをしました。
その後、自分の会社(Inside Mobile)を立ち上げました。モバイルに特化して戦略を練る会社ですが、インスピレーションは日本です。日本はモバイルで最も進んでいる国で、日本の考え方を欧州に持ち込みたいと思っていました。グローバルでモバイル製品開発事業を手がけた後、広告企業(M&C Saatchi Group)とマージさせました。同じ時期、自分の最大のパッションはデザインやデザイン思考にあると気がつき、全てのデバイスを網羅するデジタルデザインを展開するためThis Placeを始めることにしました。2011年末のことです。その後も、顧客主導のデザインという領域で、自分の限界を拡大する挑戦を続けています。

― お互いを選んだ理由は何でしょう?

平野:これまでにも、インフォテリアは世界に通じるソフトウェア開発を行ってきました。最先端のテクノロジー(技術)とメソドロジー(手法)を使うことで、エンタープライズソフトウェアを新しいレベルに押し上げてきたと自負しています。そのために、当初からGUIを用いてノン・プログラミングで簡単に使えるソフトウェアを開発してきました。ですが、業界の進化のスピードは速く、顧客のニーズを満たし、ソフトウェア業界をリードするためにはデザイン主導のソフトウェアが必要だと認識しました。

Dusan:経営者として、自社の強みと弱みを理解することは大切です。私たちの強みはデザインです。世界に通じるソフトウェアをデザインすることができます。しかしワールドクラスのソフトウェアの開発は弱いところです。そのため、This Placeはこれまで他社の技術との協業に注力してきました。
インフォテリアはバックエンドの開発におけるスキルが卓越しており、ここに魅力を感じています。This Placeがフロントエンドでもつワールドクラスのデザイン開発と組み合わせることで、これからの時代に完全にマッチした製品を作ることができます。将来、様々な可能性が開けると期待しています。

社長室長 吉田写真
社長室長 吉田 晋司

平野:インフォテリアは、Data(Big Data & AI)、Device(Smart & IoT)、Decentralized(分散化)の3つの"D"をこれからのトレンドと捉えて戦略を展開してきました。今回、4番目の"D"としてDesign(デザイン)を加えます。
This Place買収*1 の理由もここにあります。これからのエンタープライズソフトウェアは明らかにデザイン主導で開発されるようになります。This Placeとともに世界をリードする新世代のソフトウェアを開発することができます。
なお、世界ではFacebook、Accenture、McKinseyなどがデジタル戦略コンサルティング企業を買収するなど、デザイン思考やデザインファーストへのシフトは始まっています。

― This Place買収後のインフォテリアの目標をお聞かせください。

平野:インフォテリアは東京を拠点とした企業ですが、健全な財務状況と日本市場での実績をベースに、This Placeの欧米でのポジションを生かして世界市場の開拓を目指します。目標は、創業以来得意としてきた"つなぐ"ソフトウェア分野で、革新的な製品を世界市場に提供することです。買収はインフォテリアグループの新しい成長にとって大きな一歩となります。

Dusan:2つのことを進めます。まず、This Placeの顧客に、開発主導のサービスを提供できるようになります。2つ目として、インフォテリアとともに新しいプロダクトを開発します。
2社の協業で実現する4つの"D"で、インフォテリアの開発力にThis Placeのデザイン専門知識や経験を加えることで、真にグローバルなソフトウェアソリューションを構築します。インフォテリアグループでの新しい製品の開発に私自身とても期待しています。

Dusan、平野、吉田写真

― 2社はすでに「Tristan」(「Handbook」の次世代製品)で協業済みですが、協業のきっかけ、協業を通じて得たものは何でしょう?

平野:Handbookはクラウドベースのモバイル機器用ソフトウェアで、日本ではSaaS型モバイルコンテンツ管理市場の製品別売上金額で国内市場シェアナンバー1 *2 を誇ります。成功した製品ですが、将来のタブレットアプリはもっとデザイン主導であるべきだと考えていました。そこで、次の世代ではUIを新しいデザインにするだけでなく、製品の構造もデザイン主導を取り込もうと考えました。3年ぐらい前のことです。
そこで、駐日英国大使館を通じて知り合ったThis Placeと協業することにしました。2年前に共同作業を開始し、Tristanを新しいソフトウェアとして作成しました。Tristanは英語圏市場ですでに提供を始めています。

Dusan:Tristanの設計開発にあたって、私たちのデザインや経験を活用しました。すでにHandbookとして日本市場で成功している製品を他の市場向けに作成するという点で、私たちにとって新しい挑戦となりました。言語はもちろん、デジタルツールをどのように使うかは地域で異なります。世界市場で提供するにあたってデザインの面で正しいアプローチを探ることが要求されました。これは、とても良い経験になりました。

平野:協業で学んだことは、Handbookは7年以上にわたって日本のお客様のフィードバックをベースとしていたことから、ユーザーインターフェイスと機能が複雑化してしまったということです。グローバル市場で展開するためには、もっとシンプルにする必要がありました。デザイン主導とは、機能をたくさん盛り込むこととは異なります。これは新しい世代のソフトウェアで重要な考え方です。
TristanでThis Placeと協業したことで、インフォテリアの製品をもっとデザイン主導に改善できること、2社がベストマッチであることを実感しました。このように、今回の買収はTristanでの具体的な経験が土台となっているのです。

― 最初に出会った時のお互いの印象はどのようなものでしたか?

平野:当時イギリスの技術やベンチャー事情をよく知らなかったのですが、高度で先進的な企業がたくさんあると知り、実際にロンドンに行って複数の企業に会いました。その一社がThis Placeです。ロンドンには革新的なスタートアップがたくさんあります。実際に行ってみて、ロンドンの企業と一緒にやりたいと思いましたね。

Dusan:私たちが重視しているのは企業のカルチャーです。情熱があり、機敏に動く小さなチームを作ることができれば、素晴らしいことが起こせると信じており、これを実際のビジネスで実証してきました。インフォテリアとはカルチャーがとてもフィットすると感じました。文化も言語も違う日本でこんなにカルチャーが似た企業に出会えるとは思っていなかったので、大きなサプライズでしたね。

― カルチャーといえば、平野さんは緑が好きで、インフォテリアのコーポレートカラーも緑です。

Dusan:すぐに気がつきました(笑)。私は青が好きですが、青は緑を構成する色であり、青なしに緑は出せません。今後、私は緑を、平野さんは青をファッションに少し取り入れるというのはどうでしょうか?(笑)

― 買収に対して、This Placeの従業員の反応は?

Dusan:とても好意的です。This Placeは新しくこれから成長する企業です。買収は大きなステップとなります。インフォテリアグループの傘下に入ることで、これまでの取り組みを継続、加速できます。This Placeの従業員には日本のファンが多く、日本に行きたいという従業員は多いのです。デジタルデザインは継続的な学びで、東京は世界でも数少ないリッチな環境です。

― 従業員のエクスチェンジプログラムの計画などは?

平野:いいですね。東京にはロンドンやシアトルに行きたいという社員がいます。従業員のエクスチェンジプログラムはコラボレーションの加速につながるので是非検討したいですね。

― Dusanさん、趣味はなんですか?休暇はどのように過ごしますか?

Dusan:趣味はボート、セイリングです。従業員をセイリングに連れて行くこともあります。
デザイン業界に夢中なので家族と一緒にいない時は仕事をしていますが、それ以外はボートで頭を空っぽにします。これはリラックスする上で重要なプロセスです。
休暇はしばらくとっていませんが、休暇で日本に行ったことがないので、次の休暇はぜひ家族と日本に行きたいですね。ネコの島(田代島)にも行ってみたいし、熊本で復興作業の手伝いもしたいです。

― お互いに望むことは?

Dusan:今後数カ月かけて、インフォテリアをさらに拡大していくためのプロジェクトを模索し、そのための戦略を共に練っていきます。具体的な計画としては、6月にThis Placeのマネジメントチーム全員を連れて東京に行き、インフォテリアのソフトウェアをグローバルにする方法を考えます。クライアント製品についても、全く新しいものを開発します。収益性が高く、グローバルで提供できるものを目指しており、時間がかかっても最高の戦略を編み出します。

平野:両方のビジネス –(This Placeの)デザインと(インフォテリアの)ソフトウェア– をベースとしたコラボレーションプロジェクトを成功させ、世界にスケールして、ビリオンカンパニーを目指します。これは、インフォテリアの将来にとって非常に重要です。

― Dusanさんはインフォテリアの執行役員グローバルCOOに就任しました。抱負をお聞かせください。

Dusan:私はグローバルビジネスでたくさんの経験があります。平野さんのリードの下でこれを活用して、チーム、そして顧客、株主のための戦略を立てることができると信じています。一緒に拡大できるのを楽しみにしています。
今後数カ月で優先順位をどうするか、私がどのようにインフォテリアグループと関わるかなどの話し合いを進めていきます。最も重視していることは、継続してバリューを顧客、株主に提供することです。とてもワクワクしています。

― インフォテリアの買収戦略についてお聞かせください。

平野:ソフトウェア事業は動きが速い業界です。Google、Facebook、Oracle、Microsoftといった国際的なソフトウェア企業はどこも、多数のM&Aや提携を通じて成長しています。一緒に成長できる素晴らしいパートナーを見出すことは、成長戦略にとって重要です。
インフォテリアは創業当初から、世界戦略のためのパートナーを探していました。これは簡単なことではありません。ですから、同じビジョンを共有できるDusanとの出会い、This Placeがインフォテリアグループの一員になったことを大変嬉しく思っています。
ですが、これで終わりではありません。スタートです。ソフトウェア業界は間違いなく今後も速いペースで動きます。さらに加速することでしょう。インフォテリアはThis Placeとともに新しい戦略を立て、どうやって自分たちの強いところを強化し、加速していくかを継続的に話し合い実現していきます。
M&A戦略は今後も継続します。素晴らしい製品やサービスにつながる企業を探し、出資や買収を進めます。

― M&Aで強化していく特定の分野や技術はありますか?

平野:インフォテリアは4つの"D"を戦略の中心に据えています。この分野にフォーカスしており、次のビジョンを実現するために積極的にM&Aを続けます。どのような企業になるのかは特定しませんが、事業を加速してくれるものとなるでしょう。

Dusanと平野、握手

― 株主の皆様へのコメントをお願いします。

Dusan:This Placeは創業以来、急成長を遂げてきました。短期的には財務面で貢献でき、中長期的にもインフォテリアのさらなる成功につながると確信しています。たとえば、両チームの密な協業により素晴らしい製品を一緒に開発していくことができます。
This PlaceはApple、Google、Facebook、 Accenture、IBMなどの世界的デジタル企業からメンバーが集まっており、顧客とともに最高のデザインを実証してきました。平野さんと一緒に作業をし、インフォテリアとともに目標を達成することを楽しみにしています。それぞれの強みを持ち寄り、正しい方向を定めて成長を図ります。

平野:過去には日本企業による海外企業買収で失敗も多かったようですが、私たちはともに将来の成功を確信しています。そして、この買収は海外企業との提携の成功例になることでしょう。株主の皆様には、私たちがビジョンの実現を通じて必ず素晴らしい結果を出すという点を信じていただきたく思います。
Dusanが話した通り、短期的にも中長期的にも、今回の買収がもたらす成果は大きなものになるでしょう。ぜひ、これからのインフォテリアにご注目ください。

 

*1 買収金額は700万ポンド(約10億円)。今後5年間で業績によるインセンティブを支払うアーンアウトスキームをとる。

*2 アイ・ティ・アール社「ITR Market View:エンタープライズ・モバイル管理市場2016」による。

以上
日時:2017年06月25日 9:00