2025年9月5日

緊急開催! アステリア×JPYC ステーブルコインフォーラム レポート

アステリアとJPYCは 2025年8月27日「ステーブルコインフォーラム」をYouTube LIVEにて緊急開催! JPYC社の代表を務める岡部典孝氏と、アステリアの代表取締役社長である平野洋一郎氏が登壇し、ステーブルコインの現状と将来性について語りました。


2025年8月17日、web3と金融の両業界を揺るがす、大きなニュースが飛び込んできました。それが、JPYC株式会社が金融庁から資金移動業者として承認を受け、円建てステーブルコイン「JPYC」の発行に向けた体制を整えたということ。

■ 国内初の円建てステーブルコイン、金融庁承認へ JPYCが秋にも発行【日本経済新聞】
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB146U80U5A810C2000000/

国内初の円建てステーブルコイン誕生へ向けて、大きな一歩を歩みだしたJPYC株式会社。翌日開催されたJPYCのオンライン記者会見には、なんと1万人を超える視聴者が集まったそう!

in. LIVE を運営するアステリア株式会社では、2021年頃からJPYCと資本業務提携を結んでおり、JPYCとそのノウハウを活用したステーブルコインの利用促進を図るための活動や、NFTを活用したデジタルデータの健全な価値管理に向けた活動などを、両者で推進してきました。

そうした背景もあり、JPYCが金融庁の承認を受けたことが正式に発表された3日後(!)の8月21日には、アステリアの主力製品である「ASTERIA Warp」で活用できる「新JPYCアダプター」の開発をプレスリリースにて発表!

■ 日本円建ステーブルコインJPYCと企業システムをノーコード連携【プレスリリース】
https://jp.asteria.com/news/2025082124897/

日本円建ステーブルコインJPYCのトークン送受を、企業の財務会計システム、基幹システム、クラウドサービス等とノーコードで直結し、資金移動を自動化、高速化するなど、企業システムとして実装できる仕組みを実現することを発表しています。

そうした一連の流れを受け、アステリアとJPYCは 2025年8月27日「ステーブルコインフォーラム」をYouTube LIVEにて緊急開催! JPYC社の代表を務める岡部典孝氏と、アステリアの代表取締役社長である平野洋一郎氏が登壇し、ステーブルコインの現状と将来性について語りました。

ステーブルコインフォーラムの全編(配信アーカイブ)はこちらからご覧いただけます。

本記事では、この緊急対談&業界解説セミナーの内容を、ぎゅっとダイジェストでレポート形式でまとめていきます! ステーブルコインから始まる金融イノベーションとは? ビジネス・生活がどう変わるのか? 知りたい方はぜひ最後までご覧ください!

ステーブルコインの基本解説

平野氏による「そもそもステーブルコインとは何か」という基本的な説明からフォーラムはスタート。ステーブル=安定しているという意味からも分かるとおり、ステーブルコインとは「価格が法定通貨等に対して安定しているデジタルトークン」を指します。これまでの暗号資産(仮想通貨)と異なり、価値の変動が少ないため、一般社会や企業活動での利用が可能になります。

ステーブルコインの歴史は10年以上前から始まっており、欧米では2014年にドル建てのテザー(USDT)がスタートし、現在では市場規模が230億ドルに達しています。日本でも2017年にブロックチェーン推進協会(BCCC)が Zen(JPYZ)という円建てステーブルコインの実証実験を行いました。そして先週、金融庁がJPYCを認定し、円建てステーブルコインが法的に整備された状況になりました。

■ 日本円に対して為替が安定した仮想通貨を志向した デジタルトークン社会実験において「Zen」の発行を開始 https://bccc.global/pressrelease/20170705/

アステリアがステーブルコインに関わる理由として、平野氏は「ステーブルコインをビジネス社会で普及させたい」という思いを持っていると説明。企業がJPYCを利用することで、銀行を介さない即時決済や、国内外を問わない送金が可能になることを強調しました。

アステリアが開発する「新JPYCアダプター」とは?

そうした中で、今回アステリアでは、主力製品である「ASTERIA Warp」で使える、企業のシステムとJPYCを接続するための「JPYCアダプター」を提供することを発表しました。

すでに1万社以上の導入実績があるASTERIA Warpに、このアダプターを追加するだけで、企業はJPYCとの連携が可能になります。

ASTERIA Warp の特徴は「ノーコード」で異なるシステムを接続できること。コーディングを書かなくても、フローチャートを描くだけでシステム連携が可能になります。JPYCアダプターにより、JPYCは100以上のクラウドサービスと連携できるようになるということです。

ステーブルコインの市場規模

続いて、JPYCの代表を務める岡部典孝氏は、金融庁から日本初の円建てステーブルコイン発行体として承認を受けたことを改めて報告しました。

ステーブルコインの世界市場は急速に成長しており、最新の時価総額は2915億ドル、1日の取引高は1700億ドル(約230兆円)に達しています。これは東京証券取引所の1日の取引高(約5兆円)の4〜6倍の規模です。

しかしながら、現在のステーブルコイン市場の98〜99%はドルにペッグしたものであり、日本円はマーケットではほぼゼロの状態。ステーブルコインのマーケットは「決済を効率化する」という意味合いはもちろんありますが、その一方で「デジタルスペースにおける経済の基軸通貨の争い」であるとも言えます。現在はドルがデジタルワールドで基軸通貨として使われている状態ですが、日本円も10〜15%程度のシェアが取れるのではないか、というのが岡部氏の見込みです。

実際、ステーブルコインの発行体は米国債の大きな保有者となっており、短期米国債の保有者としては、MMFと中国政府に次いで3位(日本政府は5位)になっています。市場規模は現在45兆円程度ですが、5年後には500兆円以上になる可能性があり、そのうち日本円のステーブルコインが15%のシェアを取れば、75兆円規模になると予想されています。

岡部氏が語る、ステーブルコインの可能性

JPYCは米国のCircle社(USDCの発行体)と連携し、世界中のステーブルコインを同じ規格で統一して発展させる取り組みを進めています。Circleは今年IPOを成功させて、時価総額は最高で8兆円、現在も4〜5兆円の評価を受けており、JPYCは「日本版Circle」として見られています。

※ Circle社は2021年にJPYCに出資を行っている初期からの株主

なお、岡部氏はステーブルコインの技術的な特徴として「HTTPレベルでの決済が可能になる」ということを挙げました。具体的には、ウェブページや動画の閲覧に対して少額決済を簡単に実装できるようになり、AIやボットでも利用可能な「決済革命」が始まろうとしています。

日本政府はステーブルコインを国家戦略として推進しており、G7でステーブルコインの規制を各国で揃えることを提案したのは日本でした。2023年6月に施行された日本の規制をもとに、ヨーロッパやアメリカの規制も作られています。

法律上、円に戻せるステーブルコインは「電子決済手段」と呼ばれ、預金と現金の良いところを取った性質を持っています。会計上も「キャッシュフロー計算書上の現金」として扱われるため、企業も安心して保有できるのがポイントです。JPYCが発行するステーブルコインは「1号電子決済手段」として、101%を法務局または信託に預けて裏付けされています。法律上も税務上も会計上も明確に「暗号資産ではない」と位置づけられており、企業や金融機関も安心して使うことができます。

既存のデジタルマネーと異なる点として、発行体、ブロックチェーン管理者、ウォレット・取引所をすべて別々に運営できること。JPYCは発行体として ”日銀のような” 役割を担い、他の企業がブロックチェーン管理やウォレット・取引所を担うことで、経済圏が大きくなると説明しています。

JPYC の今後のマイルストーン

JPYCは2020年から金融庁と調整を始め、2021年1月に自家型前払式支払手段としてのJPYCを発行し、2023年6月に資金移動業者として登録申請、そしてようやく2025年8月に「国内初・唯一のステーブルコイン発行体」として認められました。

この過程では、金融機関と同等のマネロン対策やシステムリスク管理、200種類以上の規定・マニュアル類を整備しました。

JPYCの特徴は、1円から世界中に1秒で送金が完了し、コストは1円以下であること。また利用者間の送金額に上限はなく(発行と償還は1日100万円の制限あり)、プログラマブルマネーとしてお金の流れをプログラムで制御できます。

「JPYC」は今年の秋(9月〜11月)には正式リリース予定で、現在準備を進めているとのことです。

視聴者から寄せられた質問

質疑応答では、多くの質問が寄せられました。主な質問と回答について、以下で要素をまとめていきます。

【岡部氏】中央銀行デジタル通貨(CBDC)との共存可能性について
→ 「CBDCは民間が担えない重要な部分を担い、ステーブルコインはイノベーティブな部分を担うという住み分けになるのでは」

【岡部氏】JPYCの普及のボトルネックについて
→ 「まだステーブルコインに対する理解が広まっていないことが課題、大企業での採用が広がることで好循環が生まれる」

【岡部氏】新たなJPYCの発行チェーンについて
→ 「イーサリアムのメインネット、ポリゴン、アバランチの3つのチェーンから開始し、順次対応チェーンを増やしていく計画」

【岡部氏】銀行業界からの反発はなかったのか?
→ 「表面上は友好的な関係であり、むしろスタートアップがここまで来たことを評価する声が多い」

【岡部氏】JPYCの今後の展望について
①海外展開(JPYCを海外の取引所や銀行を通じて現地通貨に交換できるようにする)
②円以外のステーブルコインの日本法に基づく発行
③発行量を増やしてIPOを目指す

【平野氏】アステリアの今後の展望について
→ 「すべてのビジネスにブロックチェーンのパワーを、というビジョンのもと、ASTERIA Warpを通じてJPYCの接続性を企業に提供し、国内外での普及を目指す」

ステーブルコインフォーラム まとめ

日本初の円建てステーブルコイン発行体としてのJPYCの意義と、アステリアとの連携によるtoBへの普及戦略を明らかにした、今回のステーブルコインフォーラム。メディアや投資家をはじめとする参加者に対して、ステーブルコインを正しく理解し、また今後の可能性を示唆する重要な会となったのではないでしょうか。

ステーブルコインは今後、企業の決済や送金の効率化、さらにはAIエージェントによる自動決済など、新たな可能性を開くことが期待されています。

JPYC、そしてアステリアの今後の取り組みにも、ぜひご注目ください! 最後までご覧いただきありがとうございました。

◆ ステーブルコインフォーラムの全編(配信アーカイブ)はこちらからご覧いただけます

関連リンク

・アステリア株式会社 https://jp.asteria.com/
・JPYC株式会社 https://corporate.jpyc.co.jp/

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この記事を書いた人
in.LIVE 編集部 アステリア株式会社が運営するオウンドメディア「in.LIVE(インライブ)」の編集部です。”人を感じるテクノロジー”をテーマに、最新の技術の裏側を様々な切り口でご紹介します。