2025年7月14日

NFTにステーブルコインーー web3界隈で見逃せない動きをキャッチアップ!BCCCパネルダイジェスト

NFT、DeFi、ブロックチェーンーー。生成AIの急成長と並び、引き続き注目を集めるweb3領域。「最近のホットトピックは?」「現場では何が起きているのか?」と気になっている人も多いのではないでしょうか。本記事では、2025年6月に開催された”Blockchain&クリプト界隈キャッチアップ” と題したパネルディスカッションの内容をダイジェストでお届けします。


NFT、DeFi、ブロックチェーン……。生成AIの急成長と並び、引き続き注目を集めるweb3領域。とはいえ、変化のスピードが凄まじく速く「最近のホットトピックは?」「現場では何が起きているのか?」と気になっている人も多いのではないでしょうか。

そんな中、2025年6月12日に開催されたブロックチェーン推進協会(通称BCCC)主催の会員企業向けイベント「BCCC Collaborative Day」では、”Blockchain&クリプト界隈キャッチアップ” と題したパネルディスカッションが行われました。

登壇したのは、奥達男(アステリア株式会社 エバンジェリスト/BCCCエバンジェリスト)、岡部典孝氏(JPYC株式会社 代表取締役/BCCC理事)、高長徳氏(SBIホールディングス Web3推進担当 部長/BCCC理事)の3名。

奥氏が、ここ数ヶ月で業界をにぎわせている国内外のトピックを次々と紹介し、それに対して岡部氏・高氏が現場の肌感や裏話も交えながらコメントを加えるというスタイルで進行。web3業界の“いま”についてざっくり掴むのにぴったりな内容となりました。

本記事では、そのトピックごとのやりとりをピックアップしながら、ディスカッションのエッセンスをお届けします!

訴訟取り下げと規制緩和 ーー アメリカの規制状況

まず最初のトピックスは、ダイナミックな動きを見せるアメリカの規制状況から。
業界で非常に注目されていた「コインベース」のステーキングサービスに関する訴訟が、ケンタッキー州などで取り下げられたこと、また「ヘリウム」のトークンに関する提訴も取り下げられています。2025年の第1四半期だけでも10件の訴訟が取り下げられています。

そうした背景にあったのは、2025年4月21日、”暗号資産推進派” として知られるポール・アトキンス氏(Paul S. Atkins)が、トランプ大統領の指名を受けて、SEC(米国証券取引委員会)委員長に就任したこと。トランプ氏自身は、もともと反暗号資産派ではあったのですが、暗号資産関係者の積極的なロビー活動や多額の寄付金によって、暗号資産推進派となったとも言われています。トランプ氏の関係者には暗号資産やDeFi事業にコミットして多額の利益を上げているという実態もあるのだとか。

そういったこともあり、ノースカロライナ州での納税における暗号資産利用の容認や、ニューヨーク州での州料金の暗号資産支払い、アリゾナ州でのマイニングや労働の権利保護が検討されるなど、各州で暗号通貨推進法案が進められているという状況です。

また並行して、SECが暗号資産に関するガイドラインを発表したことも話題になっています。これは「暗号資産(仮想通貨)が証券に該当するかもしれない場合に、企業がどのような情報を開示すべきか」というガイドラインにあたるのですが、具体的には「トークンの収益モデル」「トークンの機能」「コンセンサスメカニズム」などの情報開示が必要だと明示されています。

さらに注目トピックスとして、アメリカで提案されている暗号資産・ブロックチェーン業界向けの規制明確化を目的とした法案「CLARITY法案」も挙げられました。アメリカでは長年、暗号資産やトークンが「証券(security)」なのか否かが不明確なままで、企業やプロジェクト側にとって大きなリスクになっていました。そこで、CLARITY法案では、商品先物取引委員会(CFTC)にほとんどの暗号資産に対する広範な権限を与え、証券取引委員会(SEC)のデジタル資産の監督における役割を大幅に縮小させることを提案しています。

岡部氏は「日本だと今年議論が進んで、金融商品取引法を暗号資産にも適用しようとする動きがあるのに対し、アメリカは逆にコモディティとして扱おうとしている」とコメント。各国によって暗号資産についての受け止め方にも違いがあります。

その他、このトピックでは、ミームコインは証券ではないとSECが公式に発表したことも解説されました。これはSECが ”ミームコインに対する投資家保護を行わない” ということを意味しており、投資家はミームコインについて自らリスクを負う必要があるという姿勢を明確にしています。

ステーブルコインの取引量と時価総額

続いては、話題の「ステーブルコイン」について。web3業界の中でも非常に大きな割合を占めているステーブルコイン関連のニュースですが、中でも非常にアグレッシブなニュースが多いのが特徴とのこと。

直近では、2025年6月、米上院がステーブルコインに関する法案「GENIUS法」を可決したことが大きな話題に。この法案は、米国における支払い用ステーブルコインの発行・運用を規制するもので、これが可決されたことによって、ステーブルコインが「公式な決済通貨」として認められ、従来の支払いや金融システムとの融合が進み、決済エコシステムに大きな変化が起きる可能性を示唆しています。

実際、Bitwiseが発表した最新の市場動向としては、ステーブルコインの取引はVisaを上回るほど。CoinGeckoのデータによると、時価総額は2550億ドル超え。そのうち2,455億ドルが米ドルに裏付けられたステーブルコインによって保有されています。またスタンダードチャータード銀行のレポートによると、今年末までに、50種以上のステーブルコインが登場するだろうと予測。

これについて、日本のステーブルコイン第一人者としても知られるJPYC岡部氏は「AIによる取引きは人間の手による取引よりも圧倒的に手数料が低いので、それがステーブルコインの取引量を増加させている可能性がある」「AIの進化によって変わるので、市場規模がここからどれほど伸びるかは読めない状況」とコメント。

ステーブルコイン業界には民間企業も多く参入しており、フィンテック業界のさらなる盛り上がりに注目が集まっています。一方で岡部氏は「ビジネスとしての可能性を感じた多くの新規企業の中にはセキュリティの対策が完全にできておらず、流出などのトラブルを起こし、結果的にステーブルコインの価値を下げるということもあるのでは」と指摘しました。

日本の状況としては、今年5月に自民党から発表された政策提言「デジタル・ニッポン2025」の中で「web3提言2025」が明示されたことも話題に。提言の目的は、暗号資産を国民の資産形成に資するアセットクラスとして明確に位置付ける制度改正を促進すること。 またその他、金融庁によって提出された「改正資金決済法」が成立したこと、ソニー銀行がweb3専門子会社を設立することを発表したことなどが話題に挙がりました。

一方、高氏は「韓国でもステーブルコインに関する法案が検討されており、新大統領のイ・ジェミョン(李在明)氏の就任以降、ウォン建てステーブルコインを含む暗号資産政策の前進が一気に進んでいる。韓国は日本よりも早く規制緩和が進む可能性があり、日本がそれに刺激を受けてよりアグレッシブに進んでいく可能性もあるのではないか」と述べました。岡部氏も「金融庁がステーブルコインに関する規制を緩和することを期待している」と補足しました。

NFT市場の動向は?

続いての話題は、NFTへ。一時は業界を席巻していたNFTですが、2025年に入ってからは取引高や取引量が極端に激減。有力なNFTマーケットプレイスは続々とサービス終了を発表しています。閉鎖/事業終了となったものの中には、Nikeに買収されたことで一躍有名になった「RTFKT」(2025年1月に事業停止)や、OpenSeaに次ぐ有名マーケットプレイス「X2Y2」(2025年4月閉鎖)の名前もーー。

NFTの市場予測について聞かれた高氏は「一般の方が取引をするという点においては、アートやゲームなどは期待値が高かった分、それほどの盛り上がりが見られなかったのは最後の砦だったように見える。とはいえ、NFTはひとつの技術であり、インフラに近いものだと捉えている。リアルワールドアセットやファントークン、チケットなどエンタメに繋がる分野での活用は、次の事例のひとつなのでは」とコメント。

NFT市場が2021年夏頃に記録した膨大な市場規模に戻ることはないだろうと述べながらも、技術として進化するこれからのNFTに期待を寄せました。

web3がキャズムを超えるには

パネルディスカッションの最後には、「web3がキャズムを超えるには何がきっかけになるのか?」というテーマでの意見交換も行われました。 岡部氏が強調したのは「web2との融合」と「AIとの連携」。httpにweb3の決済を取り込む動きがあること、またAIがwebをクロールするようになっているので、そのクロールに対する対価をAIが支払うようになれば、一気にキャズムを超えて広がるのではないかとコメントしました。

また高氏は、やはり重要になるのは「ステーブルコイン」になるのではないかと一言。既存の決済プラットフォームとの連携が、一般の利用シーンとして重要になると締めくくりました。

Blockchain&クリプト界隈キャッチアップまとめ

約40分ほどのパネルディスカッションでしたが、このために用意されていたスライドは、なんと驚きの全60枚……! それほど沢山のニュースがあった web3/ブロックチェーン業界ですが、テンポよく切り替わるトピックと、専門的ながらも噛み砕かれた解説に、会場に集まった100名以上の参加者が食い入るように耳を傾けていました。

なお、BCCC(ブロックチェーン推進協会)では、業界の最新動向をキャッチアップできる勉強会を2ヶ月に一度のペースで開催しています。業界のより深い知識を押さえたいという方は、ぜひBCCCの公式SNSやウェブサイトもチェックしてみてくださいね。https://bccc.global/

最後までご覧いただき、ありがとうございました!

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この記事を書いた人
田中 伶 アステリア株式会社 コミュニケーション本部・メディアプランナー。 教育系のスタートアップでPRや法人向けの新規事業立ち上げを経験。話題のビジネス書や経営学書を初心者向けにやさしく紹介するオンラインサロンを約5年運営するなど、難しいことをやわらかく、平たく解説するのが得意。台湾情報ウェブメディア編集長も務める。