2025年11月21日

JPYCステーブルコイン対応アプリ開発セミナーレポート

2025年11月に行われたオンラインイベント『JPYC対応アプリ開発セミナー ~ノーコードツール「Click」で実現するDX~』。アステリアグループによるJPYCの普及啓発に向けた取り組みをはじめ、MikoSeaが提供するノーコードアプリ開発ツール「Click」におけるJPYC決済機能の実装を通じて、ステーブルコイン活用のメリットや利用シーンなどを解説しました。本イベントで語られた内容をイベントレポート形式でご紹介します。


2025年11月19日(水)、アステリアが主催するオンラインイベント『JPYC対応アプリ開発セミナー ~ノーコードツール「Click」で実現するDX~』が開催されました。

本イベントでは、アステリアグループによるJPYCの普及啓発に向けた取り組みをはじめ、MikoSeaが提供するノーコードアプリ開発ツール「Click」におけるJPYC決済機能の実装を通じて、ステーブルコイン活用のメリットや利用シーンなどを解説。また JPYC株式会社 代表取締役 岡部典孝氏からのメッセージも発信し、注目のステーブルコインの最新動向をキャッチアップする内容・構成となりました。

本イベントで語られた内容について、ダイジェストでお届けします!
なお、本イベントのアーカイブ動画は以下よりご覧いただけます。

<登壇者>
・JPYC株式会社 代表取締役 岡部典孝氏
・アステリア 代表取締役社長 平野洋一郎
・MikoSea 代表取締役 CEO 工藤亮太

日本円建てステーブルコイン「JPYC」とは

イベント冒頭で、岡部氏は、JPYCを「新しいデジタル円」と位置づけ、従来の電子マネーとの違いを説明しました。従来の電子マネーは発行、償還、残高移転、ウォレットなどの決済サービス提供をすべて発行体が行うのに対し、ステーブルコインは発行体は発行と償還のみを担当し、ブロックチェーンの移転やウォレット提供は誰でも行うことができる点が大きな違いです。

<JPYCの特徴>
・世界中に送金コスト0.1円程度で即時送金が可能
・AIエージェントでの送金など柔軟な組み込みが可能
・JPYC SDKを無料で提供し、誰でも利用可能
・決済手数料の仕組みを根本から変革(発行体への決済フィーは不要)
・加盟店契約が不要で、シンプルで開かれた決済が可能

また、ステーブルコインの世界的な流通額は310億ドル(約48兆円)に達しており、5年後の2030年には600兆円規模になるという予測も紹介されました。日本のマネーサプライは約9%あるため、50兆円程度の市場ができる可能性があるとのことです。

さらに、JPYCでは今月大きなニュースを発表しました。Circle社のステーブルコイン専用チェーン「Arc」において、日本円のパートナー通貨としてJPYCが採択されたというものです。これによって、ユーロ、韓国ウォン、フィリピンペソなど8カ国のステーブルコインと容易に交換できるグローバルなオンチェーンのFXが始まろうとしていることも紹介されました。

◆JPYC、USDC発行体であるCircle社の「Circle Partner Stablecoins」プログラムに参画
https://corporate.jpyc.co.jp/news/posts/jpyc_CirclePartnerStablecoins

ステーブルコインでアステリアが見据える未来

続いて、アステリア代表取締役社長の平野は、ステーブルコイン市場の急拡大を見据えて、アステリアグループがこの流れを “企業” と “個人” の両方で受け止められる唯一の日本企業であると説明しました。

アステリアの主力製品「ASTERIA Warp」は、様々な企業システムをつなぐことができ、JPYCを通して取引先やECサイト、DeFiなどにつなぐことが可能です。すでに1万社以上で導入されているASTERIA WarpにJPYCアダプターが加わることで、企業ITのほぼ全領域に接続可能となります。

また、アステリアグループに加わったMikoSea(ミコシー)の「Click」は、7万件以上のアプリ開発実績があり、個人から企業まで幅広く使われています。ClickがJPYC対応することで、スマホやウェブアプリでJPYCが利用できるようになり、JPYC流通量の爆発的な増加が期待されます。

平野は、ステーブルコインによってソフトウェア事業そのものも転換すると予測しています。AIによる自動的なソフトウェア利用と支払い、リアルタイムの従量課金、0.1円単位のマイクロペイメントなどが可能になり、IoTやセンサー機器に対する自動処理も実現できるようになるとまとめました。

ノーコードアプリ開発ツール「Click」とJPYCの対応・連携デモ

工藤は、ノーコードアプリ開発ツール「Click」について紹介しました。
Clickは、iOS、Android、ウェブアプリ、タブレットなど、レスポンシブが必要な自由度の高いアプリケーションやネイティブアプリケーションをすべて同時に作ることができる国産のノーコードプラットフォームです。すでに2万7千名・2万7千社のユーザーを抱え、7万個以上のアプリケーションが開発されています。

もともとデジタル赤字(海外製ソフトウェア利用による日本からの資金流出)という社会課題に着目し、ノーコードツールによる解決を目指した Click 。デジタル赤字は現在6.7兆円程度で、3年以内に10兆円になると予測されています。また、2030年にはDX人材が80万人不足するという試算もあり、プログラミング知識がなくてもアプリ開発ができるノーコードツールの重要性が高まっているのです。

Clickの特徴として、「最も自由なアプリが作れるノーコードツール」であることが挙げられました。パワーポイントのように画像や動画、便利なパーツをドラッグアンドドロップするだけでアプリを作ることができ、LINE IDでのログインやクレジットカード決済なども簡単に実装できます。

JPYCエレメントの実装

Clickでは、左側の便利なエレメント一覧に「JPYC」というパーツが追加され、それをドラッグアンドドロップするだけで、商品が表示され、JPYCで決済することが可能になります。メタマスクに入っているJPYCから決済をすると、そのまま決済が完了し、店舗側で確認できるようになる流れです。

既存のアプリ(クレジットカードやPayPay対応済み)にJPYCエレメントをドラッグアンドドロップするだけで、ステーブルコインのアプリとして対応が完了します。フィットネスジムの月会費集金アプリなどにも簡単に導入でき、JPYC決済の履歴も管理画面から確認できます。

視聴者から寄せられた質問と回答

質疑応答で寄せられた質問と回答について、一部抜粋してご紹介します。
イベントでは非常に多くの質問と反響をいただいているので、すべて確認したい方はぜひ動画のアーカイブをご覧ください。

Q. PayPayなどは1社で完結するが、ステーブルコインが発行されるまでには何社程度が関与しているのか?

A.(岡部氏): JPYCの場合はほぼ1社で完結しています。ただし、信託型のステーブルコイン(JPYC信託など)では、発行規格、発行体、システム開発、販売など複数社が関わります。

Q: JPYCの決済が可能なウォレットはMetaMaskだけか?

A.(岡部氏): 特定のウォレットに制限はなく、チェーンの変更やJPYCトークンの追加ができ、ウォレットコネクト機能があれば、どのウォレットでも使えます。代表的なものではハッシュポートウォレット(万博でも使われたウォレット)なども使用可能です。

Q: Clickにステーブルコイン決済機能を実装すると、どういうユーザーにどんなメリットがあるのか?

A.(工藤): 着金の早さと手数料の安さが大きなメリットです。フィットネスジムの月会費などをクレジットカード決済で受け取る場合と比べて、キャッシュフローが改善します。また、飲食店のモバイルオーダーなどでは、決済手数料の削減分を利益や顧客還元に回せます。

Q: ASTERIA WarpやClickの利用者は、JPYC決済の機能を用いるために追加の費用は必要か?

A.(平野): ASTERIA Warpを使う場合はそのための費用が必要で、JPYCアダプターも、価格は未発表ですが、別途使用料が必要になります。ただしそのメリットを上回らない程度の費用設定になる予定です。

Q: ステーブルコインが社会に定着していくには、環境がどのように変化していけば良いか?

A(岡部氏): AIエージェントの経済圏の拡大が最も重要です。AIエージェントがウォレットを持ち、JPYCで決済できるようになれば、旅行の日程作成から予約・決済まで自動化できます。1〜2年でそのような社会になる可能性があります。

A(工藤): JPYC特約店のような形で、JPYCで支払うと特典がある店舗が増えれば、利用者も増えると考えています。

A(平野): 技術的な問題よりも心理的な問題が大きいです。安心・安全に使えるという実績を積み重ねることで、普及が進むでしょう。AIエージェントの普及により、自動決済の便利さが明確になれば、急速に広がる可能性があります。

イベントレポートまとめ

以上、いかがでしたか?
アステリアとJPYCは、2021年4月にブロックチェーン技術を基盤としたステーブルコインやNFTの普及推進を図る資本業務提携に合意しています。その後も連携を深め、アステリアはWarp専用「JPYCアダプター」やClickでの対応に着手することなどを発表してきました。

◆ 2025年9月16日発表:ノーコードアプリ開発ツール「Click」にJPYCとの連携機能を新規追加!
https://jp.asteria.com/news/2025091625206/

◆ 2025年8月21日発表:日本円建ステーブルコインJPYCと企業システムをノーコード連携
https://jp.asteria.com/news/2025082124897/

◆ 2021年4月 6日発表:日本暗号資産市場㈱[現 JPYC]と アステリアが資本業務提携を締結
https://jp.asteria.com/news/2021040619418/

セミナーの最後に平野は「JPYCステーブルコインはまだスタートしたばかりだが、数年後振り返ると大きな転換点だったと確信している」と述べました。これにより、様々なものの動き方のスピード、AIの使い勝手が変わり、一人ひとりの生活にも影響を及ぼす近未来が訪れることが期待されています。

JPYC×アステリア、今後の展開にもどうぞご注目ください!

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この記事を書いた人
in.LIVE 編集部 アステリア株式会社が運営するオウンドメディア「in.LIVE(インライブ)」の編集部です。”人を感じるテクノロジー”をテーマに、最新の技術の裏側を様々な切り口でご紹介します。