2018年5月7日

オンラインサロン生みの親が提案する、個人が活躍する新しい経済のあり方。感謝をポイントで送るサービス「mint」とは?

新たな情報発信の方法として話題になった「オンラインサロン」の生みの親である田村健太郎さんが、次に目をつけたのは”個人で発行できるポイント”。2018年、新たにリリースするサービス「mint」や目指している世界観についてお話を聞いてきました。


皆さんこんにちは!
突然ですが、2011年頃から情報発信の新たな形として話題になっていた「オンラインサロン」をご存知でしょうか?

「オンラインサロン」とは、月額会費制で展開されるクローズドのオンライン・コミュニティのことで、指定の月額を課金することで会員となり、主宰者の発信する情報を受け取ることができるサービス。有料メルマガやファンクラブに似ているのですが、参加しているメンバー同士が交流できたり、情報を受取るだけではなく自分が発信者になったりと「コミュニティ」としての要素が強い点が注目されていました。

この「オンラインサロン」の生みの親でもある田村健太郎さんは、クローズドなコミュニティの中で情報発信をするという文化をゼロから立ち上げ、堀江貴文さんや、作家のはあちゅうさんなど、多くのサロンオーナーを生んできました。

(実はこの記事を書いている in.LIVE編集長の田中も、かつて「ビジネス書キュレーションサロン」というビジネス書を紹介するオンラインサロンを運営していたサロンオーナーの一人です)

そんな田村さんは、2017年にこのオンラインサロン事業を DMM.comに売却。その後、新たにMINT株式会社を立ち上げ、感謝の気持ちをポイントで伝えるサービス「mint(ミント)」ティザーサイトを2018年3月に公開しました。

個人が活躍する新たな経済の可能性を切り拓くのでは?と、そのサービスの全貌に期待が高まる今。「mint」のサービスやユーザーへの提案価値、また田村さんの考えるコミュニティの可能性についてお話を伺いました。

MINT株式会社 代表取締役
田村健太郎(たむら・けんたろう)さん

1986年、神奈川県出身。一橋大学在学中にモバキッズ社(のちのシナプス社)を創業。モバイル向け受託開発、各種コンテンツ配信サービスの開発、運営・制作などを経て、2012年にオンラインサロンのプラットフォーム「シナプス」を立ち上げる。2017年にシナプスをDMM.comに売却。現在は評価経済社会の中で、がんばる個人や事業者がファンを集めて躍進できる仕組みを実現する新たなサービスの開発を行っている。

”感謝をポイントで伝える” とは?「mint」を通じてできること

本日はよろしくお願いします!
まずは「mint」のサービスについて教えていただけますか? ”感謝をポイントで伝える” って… 具体的にどういうことなのでしょうか?
「mint」は誰でも無料で、オリジナルのポイントを発行し、ファンや常連さんなどの第三者に送ることができるサービスです。いわゆるポイントカードを電子化したようなものなのですが、個人が自由に独自のポイントを発行できること、また溜めたポイントを使ってサービスや特典と引き換えができるということは、実はこれまでのサービスではできなかったことなんです。
なるほど〜。確かにポイントシステムというと、企業や店舗のもので、個人が自由に、しかもオンラインで発行できるというものはなかったかも。
そうなんです。ポイントの発行者になるには大規模なPOSシステムや端末を導入しなければいけなかったり、厳しい審査をクリアしないといけなかったり。あとは大手企業が「○○ポイント」みたいなポイントプログラムを作って、そこに企業や店舗が加盟するというパターンもありますよね。

「mint」の場合は、個人でも無料で独自のポイントが発行でき、アプリ上で相手のIDと配布したいポイント数を入力するだけでポイントの送信が完結するので、何かシステムを導入する必要もないんです。QRコードを通じてポイントを発行するので、オンラインだけでなく対面でもポイントの配布ができますし、手数料や初期費用がかかることもありません。

手数料なども一切かからないんですか!?
ありそうでなかったサービスですが、田村さんがこの「個人で発行できるポイント」というものに目をつけたのは何故だったんでしょう?
これまでやってきたサービスでも学んできたことですが、今世の中には、多数のファンを持つ企業や有名人以外にも、個人の事業者や、事業者とは呼べなくとも小さなビジネスを展開している人って沢山いますよね。例えばメルカリで商品を大量に販売している主婦の方だとか。

そういった ”個人が活躍する経済” というのはすごく「インターネット的」だし、ニッチな消費者のニーズにも対応できると思っていたんです。そしてそういう人を後押しできる方が起業家としても面白いしチャンスだなと思って、この領域で再挑戦することを決めました。

インターネット的、ですか。確かに、そこまで儲かっているわけではないけれど沢山のコアなファンを抱えている、みたいな方って最近は多いですよね。ちなみに「ポイント」というのにこだわった理由はあるのでしょうか?
ポイントをお金で買える仕組みやトークンを発行するとなると、どうしても資金決済法などの様々な規制が絡むので、国内で規制にとらわれずに使えるサービスを作りたいとも思っていました。

なので現時点で「mint」でできることは、個人がポイントを発行する、第三者に送る、そのポイントを特典などのインセンティブと交換する、別の人に譲渡する、というシンプルなものになっています。

「コンテンツ」ありきじゃない。オンラインサロンで学んだこと

田村さんといえば、もともと「オンラインサロン」という情報発信やコミュニティの新たな形を生み出されたことが印象的なのですが、やはりそこでの課題や学んだことが「mint」のサービスの土台になっているのでしょうか?
そうですね。 オンラインサロンはもともと、Twitterで面白い人とか、お金は儲かっていないけど熱狂的なファンを持っているとか、そういう方を個人的にお手伝いしたのが始まりだったんです。実際にオンラインサロンを通じて、大多数に対して情報発信するのではなく、分かってくれる熱心なファンにだけ本気のコンテンツを提供する、というのが成立するということが分かりました。

ただそうしたあらゆる中心とそのファンを繋げるために、必ずしも ”コンテンツ” が必要かといえばそうではないというのも学びましたね
コンテンツが必要とは限らない・・・ですか。
はい。6年前に立ち上げたオンラインサロンは “コンテンツの発信者” に対して「課金する」というハードルもあったことで、かなり限定的な使われ方で、拡張性においても限界があると感じました。

先ほど話した ”メルカリでたくさんお客さんを持っている主婦の方” など、あらゆるビジネスには常連さんや熱心なファンによるコミュニティがあって。そうしたお客さんに御礼がしたいと思っている事業主は多いと思うんです。そう考えると、あらゆる中心とファンを繋げるものがコンテンツである必要もないし、お金のやり取りがある必要もないのでは?と思って。
そう言われてみると、コミュニティにおいて「コンテンツありきではない」という意味がよく分かります。そうしたニーズに応える手段として思いついたのが「ポイント」という従来からあるシステムだったんですね。
そうなんです。とはいえ、ポイントを一定以上持っている人に対して限定的なお知らせをするなど、保持数に応じたコンテンツ配信などはできる予定です!このあたりのユースケースは沢山あるので、実際にユーザーさんと使いながら発掘していきたいなと思いますね。

地域や社内で使える通貨も ”ポイント” に?

コンテンツありきじゃないと考えると、例えばよく会社の中である「サンクスポイント」みたいなものでも使えそうだなあと思ってました。流行りの地域通貨なんかも、「mint」で代用できるのかもしれませんね?
そうですね!
実際いま各地で発行されている地域通貨も、チャージで電子マネーにするとなると、どうしても独自の仕様や大規模なシステムなどが必要になるので、地元の金融機関が作ってたりするんですよね。

「mint」はポイントを買えるのではなく、”付与する” という考えなので、アプリを入れるだけで何の開発も必要ないんです。
そう考えてみれば、会社の中でよくある「サンクスポイント」みたいなものも「mint」を使って運用できそうですよね。
ポイントを貯めて何か会社が提供する特典と交換できる、みたいな使い方はアリですよね。ポイントを貯めることが社内での評価に直結すれば、よりモチベーションも湧きますし。発行したポイントが何に使えるのかによって会計上の処理は変わりますが、福利厚生というユースケースに絞れば、社内通貨としての運用もできるかと思います。
そう考えると、まだ想像もできない使い道が利用者によって生まれるかもしれませんね。
そうですね。
例えば、こういうインタビュー記事を書いている人がフォロワーさんに対して「シェアしてくれたらポイントを発行」みたいなこともできると思います。
おおお…なるほど!
シェアや拡散もそうですが、例えば、自分が仕事を依頼した相手に謝礼としてお金を支払うんではなく、自分が発行したポイントを渡すという使い方もあるかもしれないですよね。そのポイントが最終的に○○に使える、何らかの特典が受けられる!とか…

そういうのはあるかもしれないですね。
今って働き方も多様化しているし、副業とかの規定でお金を受け取るのはNG!という場合もあるし。働くことのモチベーションがお金だけとも限らないですし、例えば○ポイント以上持っている方は ”ありがとうパーティーにご招待!” とか、そういうのでも良いと思うんです。
そう考えると、今までお金にはならなかった頑張りが、ポイントによって評価されるということもありますよね。ポイントというシステムが、働き方や生き方をも変えていくのかも…。

目指すは「脱・プラットフォーム」、個人が活躍する経済へ

現在ティザーサイト公開中で、これからリリースというところかと思いますが、今後どんなサービスにしていきたいと考えられていますか?
いま僕は「mint」をオープンな ”プロトコル” のような位置付けにしたいと考えているんですよ。
オープンな ”プロトコル” …?
要は自分たちがこのシステムを独占するのではなく、オープンソースのように、皆で共有できる、みたいなものですかね。「mint」というシステム自体は僕らの会社が作っているんですが、ポイントの仕組み自体は僕らの持ちものではないというか。

今後はポイントを発行するAPIも公開して、できるだけ非中央集権型のものにしていきたいんです。
最近は自らがプラットフォームとなることを目指すものも多いと思いますが、その逆なわけですね。
そうですね、「脱・プラットフォーム」となることを考えています。
これは「mint」の根底の考えにもなっていることですが、自分たちがひとつの経済を独占するのではなく、小さな個人経済を持っている人たちを無数に繋いでいくことが、大企業に勝つ唯一の手段だと思ってるんです。

なるほど。そのためにはプラットフォームとして独占するよりも、多くの事業者に対して、積極的にシステムを開放していく方が良いんですね。そういえば「mint」というサービス名にもそういう意味があるんでしょうか?
植物のミントって、一つ一つの葉は小さいんですが、実はものすごい繁殖力で、大きな植物も枯らしてしまうほどの威力があるんですよ。あと英語の「mint」には《造幣局》とか《貨幣を鋳造する》みたいな意味もあって。
へええ知らなかった!まさにサービスの世界観そのものなんですね。
これからの「mint」のリリース、そしてこのポイントシステムを活用した様々なユースケースが生まれるのが楽しみです。本日はありがとうございました!

編集後記

以上、いかがでしたか?
個人経済やコミュニティの新たなカタチとして今回お話を聞いてきましたが、そのサービスがもたらす価値は、個人の働き方や生き方の変遷にも直結するのではとないかと感じさせられました。

「mint」は現在、ティザーサイトを公開中。先行登録をスタートしていて、夏頃には正式リリースとのこと。サービスの利用やそのユースケースに興味のある方は、是非チェックしてみてくださいね!

▽ 応援してくれる人に感謝の気持ちをポイントで伝えよう
誰でもオリジナルのポイントを発行しファンや常連さんに送ることができるアプリ「mint」 http://themint.jp/

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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この記事を書いた人
田中 伶 アステリア株式会社 コミュニケーション本部・メディアプランナー。 教育系のスタートアップでPRや法人向けの新規事業立ち上げを経験。話題のビジネス書や経営学書を初心者向けにやさしく紹介するオンラインサロンを約5年運営するなど、難しいことをやわらかく、平たく解説するのが得意。台湾情報ウェブメディア編集長も務める。