2026年9月29日

アステリア社長 平野洋一郎、初の著書『「旗」を立ててから、登り方を考えよ』出版記念インタビュー

当メディア(in. LIVE)を運営するアステリア株式会社の社長/CEOの平野洋一郎による初の著書『「旗」を立ててから、登り方を考えよ——スタートアップが困難を乗り越えるために必要なこと』が、2026年9月1日(火)に日本実業出版社より発売されました。出版のきっかけや、本書のタイトルにもなった「旗を立てる」という言葉に込めた想いなど、発売直後の平野にインタビューを行いました。


2026年9月1日(火)、アステリア代表取締役社長/CEOの平野洋一郎による初の著書『「旗」を立ててから、登り方を考えよ——スタートアップが困難を乗り越えるために必要なこと』(日本実業出版社)が発売されました。

1998年のアステリア創業から28年。起業、プロダクト開発、仲間づくり、資金調達、ピボット、IPO、そして世界最大級の起業家コンペ「スタートアップワールドカップ」まで。これまでの経験から培ってきた実践知を、全10章・304ページにわたってまとめた一冊です。

in.LIVE では平野の初の著書出版を記念してインタビューを行いました。
もともと「現役のうちに本を出すつもりはなかった」と話す平野 ーー では、なぜ今、初めての著書を世に出すことになったのか。

出版のきっかけから、一度は頓挫した企画、執筆の舞台裏、そしてタイトルにもなった「旗を立てる」という言葉に込めた想いまで、発売直後の平野に聞きました。

「現役のうちは本を出すつもりはなかった」平野の考えを変えた、構成者の熱意

── 今回が初の著書となりますが、もともと本を出すつもりはなかったそうですね。

はい。以前から「現役のうちは本は出さない」と周囲にも公言していたんですよ。本を出さないか? という依頼はこれまでもありましたが、やはり私はまだ現役なので。

本の中で偉そうなことを言っていても、これから大きな失敗をするかもしれないじゃないですか。そんなことを考えて、現役のうちに本は出さないことにしていました。

── そんな平野さんが本を出すことになったきっかけは何だったのでしょう?

始まりは、私が2021年のコロナ禍で始めた『経営730(ナナサンマル)』というClubhouseの音声配信番組です。日・祝を除く毎日配信していて、毎朝7時30分から30分間、さまざまな業界の方をゲストに迎えて経営に関わることをトークしています。

Clubhouseが出始めたときに「新しいメディアが出たら、とりあえず使ってみる」というポリシーから実験的に始めたのですが、この番組が、1661回(※2026.9.14時点)の配信を更新している今も、非常に盛り上がっていて。

番組内ではさまざまなゲストによる有益な話が次々と出てくるので、番組の運営メンバーから「ゲストの皆さんが番組で話してくれた内容をまとめて、書籍化できないか」という話が挙がったんです。このアイデアを出してくれたのが、今回、本書の構成を担当してくれた、株式会社ソフィア ヒューマン キャピタル 代表の室伏順子さんでした。『経営730』の運営メンバーの中心的役割を担ってくれている「ディレクター」なんです。

── なるほど。最初のアイデアでは「平野さんの本」というよりは「経営730にゲスト出演された方たちの本」というイメージだったのですね。

はい。『経営730』は基本的に一話完結なので、人気の高かった回をいくつか取り出してまとめるオムニバス形式の本を考えていました。そこで、室伏さんが日本実業出版社さんに企画を持っていったところ、編集長からは「オムニバス形式は売れない」と却下になりまして。

それでも、簡単には諦めなかった室伏さんは、私が話をした回などをベースに、スタートアップの準備から設立、困難の乗り越え方、上場、エグジットまで一本の流れに並べ直してくれました。足りない部分については追加でインタビューを受けて構成を作り直し、編集長に再提案。ようやくここで書籍化の企画が通ったんです。

── 室伏さんの「なんとか形にしたい」という熱意が感じられます。平野さんは日々かなり忙しくされていると思いますが、本の執筆自体もかなり大変だったのではないでしょうか?

そうですね。最初はライターさんに書いてもらう想定だったのですが、なかなか思うようにいきませんでした。そこで、経営730で私の話をずっと聞いている室伏さんに構成をしてもらったところ納得のいく形になったので、年末年始の休暇中に自分で朝から晩までかけて書きました。特定のテーマで30分だけ話すのとは違い、一連の流れに沿って読めるように書くのはやっぱり大変でしたね。

「どうやるか」ではなく「何を成し遂げるか」、「旗」に込めた想い

── タイトルの『「旗」を立ててから、登り方を考えよ』という言葉に込めた想いについても伺いたいです。

この言葉は、原稿のなかから編集長と構成の室伏さんが拾ってくださったもので、本書を通じて皆さんに伝えたい大事なメッセージです。「登り方を考えてから旗を立てる」のではなく、「旗を立ててから登り方を考える」ということ。特に日本では、一生懸命に方法を考えて、十分に準備ができてから「これをやります」と発表するケースが多い。PDCAでいえば「P(Plan)」ばかりをいつまでもやっている状態です。

私が自身の経験を通じて感じるのは、綿密な計画を立てる前に、まず「これをやりたい」と旗を立てることが重要だということです。まず登る山を決めて旗さえ立てれば、東から登っても西から登ってもいいし、途中でルートを修正したっていい。登り方ばかり考えていると、一つの「正解ルート」を探そうとしてしまいますが、そうじゃないんです。

── 「旗を立てる」という考え方は、アステリア創業当時からあったのでしょうか。

当時は「旗」という言葉を使っていたわけではないですが、「フォーカス(一つに絞る)」と言っていましたね。これはシリコンバレーやボストンで学んだことですが、とにかく一つにフォーカスすることで、仲間だけでなく、投資家からのお金も集まります。「あれもこれもできます」「これは上手くいきそうです」では投資資金は集まりません。

エンジニア畑にいたので、エンジニアで優秀な人ほど、起業したときに「何でもできますから仕事ください」と言っているのを見てきました。ですがそれでは「結局あなたは何がやりたいの?」となってしまう。どこにも旗が立っていないんです。

世の中に向かってしっかり旗を立てるからこそ、そのテーマに興味がある仲間や専門家が全世界から集まってくるんです。

失敗談も、ピボットの難しさも隠さず書いた

── 書籍の中では、2002年の人員削減のお話など、普段のインタビューでは語られない困難な局面についても触れられていますね。

会社のウェブサイトに書いてある「沿革」では、基本的に良いことしか書いてないですし、インタビューでも表にでていることをベースにしたことしか聞かれないので喋っていなかっただけで、隠していたわけではありません。うまくいった話だけでは、スタートアップを経営している人や、これから起業しようとしている人の参考にならないですよね。だから、うまくいかなかったときに、どうしたかも書いています。

私の場合は、最初から銀行融資に頼らない投資モデルをとっていたからこそ、ビジネスプランAがダメだった翌日から次のビジネスプランBへ切り替えられるという設計ができていた。そうした「失敗からどう立て直すか」というリアリティこそが、これから挑戦する人の役に立つと考えています。

── 会社経営における「ピボット」についてもかなりページを割いて語られているのが印象的でした。

ピボットとは、「旗を立て替える」重要な経営判断です。
アステリア自身は幸いなことにピボットをせずに28年間ビジネスを続けることができています。しかし、スタートアップ育成に関わることで数多くのピボットのリアルを内側から見てアドバイスもしてきました。

そういった経験を踏まえて、『始める前からピボットを口にするな』『やってみてからでも、安易に 「ピボット」と言うな』『ピボットがもたらす「3つの現実的コスト」』『それでも、ピボットを選ぶ「判断軸」』など、6つの項目にまとめました。ピボットすると何が起きるのか、何を基準に判断するのか。そのあたりを具体的に書きました。

重要なのは「正解の旗」を探すのではなく、自分が掲げる旗に、責任と覚悟を持つこと。旗を立てれば、それを見て仲間も投資家も集まってきます。だから、旗を変えるというのは、自分だけの話ではないんです。

世界を目指すなら、世界につながる舞台へ

── 本書の最終章では、世界最大級のピッチコンテスト「Startup World Cup(スタートアップワールドカップ)」についても一章を割いています。この章を入れたのには、どんな意図があったのでしょうか。

世界各地のスタートアップが頂点を目指す「スタートアップワールドカップ」について、私は2017年に初開催されて以来、ずっと日本予選で審査員長を務めてきました。スタートアップのピッチイベントは国内にも多数ありますが、スタートアップワールドカップは、日本国内だけでなく世界大会につながっている舞台です。

スタートアップについて一冊を通して読んできた人に、こういう挑戦の場があることを伝えたい、ということで、構成の室伏さんや編集長からのプッシュもあり、本書の中でしっかりと紹介することにしました。

スタートアップワールドカップ2026東京予選のワンシーンスタートアップワールドカップ2026東京予選のワンシーン

── 単なるイベント紹介ではなく、本を読んだ人の“次のアクション”につながる章でもありますよね。

この本では、スタートアップとは何かというところから始まって、夢や情報、プロダクト開発、チームづくり、資金調達、予測不能な現実への向き合い方、ピボット、EXITまでを順番に書いています。

その先に、実際に自分たちの事業を外に向けて発信し、世界に挑戦する場としてスタートアップワールドカップがある。読んで終わりではなく、実際に挑戦してほしいんです。世界を目指すなら、こういう場もある。それを知ってもらいたかったんです。

── 最後に、この本を手に取る読者へメッセージをお願いします。

この本には、普段のアステリアに関する取材ではあまり話してこなかった初期の泥臭い話や実践知を詰め込みました。ただ、『「旗」を立ててから、登り方を考えよ』と言っている私自身も、立てた旗にまだ到達したわけではありません。

私が掲げている旗は、「世界中に役立つソフトウェアをつくる」ことで「日本をソフトウェア輸出国にする」ことです。そこには、まだ到達していない。私自身も旗を目指して登っている途中なんです。 これから起業する人や、新しい事業を始める人が、自分の旗を立てるときに、この本が役に立てばうれしいですね。

書籍情報

『「旗」を立ててから、登り方を考えよ スタートアップが困難を乗り越えるために必要なこと』

著者:平野 洋一郎
構成:室伏 順子
発売日:2026年9月1日
発行:株式会社日本実業出版社
定価:2,200円(税込)
四六判・304ページ
ISBN:9784534062956

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in.LIVE【note版】では、発売を記念して、本書の「はじめに」を全文公開しています。平野がなぜこの本を書いたのか。そして、いま挑戦する人たちに何を伝えようとしているのか。ぜひ「はじめに」から、本書の世界に触れてみてください。

【「はじめに」全文掲載】 平野洋一郎 初の著書『「旗」を立ててから、登り方を考えよ』

また、本書の出版によせて、著者の平野がテーマ曲をAIで作成しました。
本書の公式サイト下部にある「テーマ音楽」をクリックいただくと、曲が再生されます。ぜひ曲を通して本書の熱狂を体感してみてください!

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この記事を書いた人
in.LIVE 編集部 アステリア株式会社が運営するオウンドメディア「in.LIVE(インライブ)」の編集部です。”人を感じるテクノロジー”をテーマに、最新の技術の裏側を様々な切り口でご紹介します。