2025年8月27日

web3ゲームで社会課題を解決! シンガポールのDEA社が日本に上陸 ーー 事業戦略説明会レポート

シンガポール発のweb3企業「デジタル・エンターテインメント・アセット(DEA)」社が、2025年に日本法人へ転身! 本記事では、事業戦略説明会で語られたDEA社のビジョン、そして会場を大いに盛り上げたパネルディスカッションの内容をざっくりレポートします。


2025年8月25日(月)、日本・アジア最大級のWeb3カンファレンス「WebX 2025」が開催された同日に、明治神宮前の東郷記念館にて「DEA(Digital Entertainment Asset Pte.Ltd. )社」による事業戦略説明会が開催されました。

同社は、2018年にCEOの吉田直人氏と共同代表の山田耕氏によってシンガポールで立ち上げられたweb3企業。ブロックチェーンを活用した GameFi(ゲーミファイ:ユーザーがゲームをプレイすることで、収益を得られるゲーム)プラットフォームや、ゲーム内で使える暗号資産 DEAPcoin(DEP) を展開しています。ただゲームを楽しんで稼ぐ(Play to Earn)だけではなく、同時にさまざまな社会課題を解決するソリューションを提供しており、日本発でグローバルに展開する数少ない企業として業界では何年も前から注目されていました。

DEA|デジタル・エンターテインメント・アセット 公式サイト

そんなDEA社が、なんと2025年に日本法人へ転身! 2028年には東証グロース上場を目指す! ということで、この日行われた事業戦略説明会は、さながら決起集会のような雰囲気。DEA社を応援する多くの企業関係者やメディアが訪れた会場では、経済メディア「ReHacQ(リハック)」を運営する高橋弘樹氏をモデレーターに、パネルディスカッションや事業紹介が怒涛の勢いで行われました。

今回は in.LIVE 編集部としてこちらの事業戦略説明会に参加することができたので、事業戦略説明会で語られたDEA社のビジョン、そして会場を大いに盛り上げたパネルディスカッションの内容をざっくりレポートします。

「さあ、世界をプレイしよう」

冒頭、吉田CEOからは「社会課題の解決を、人々が熱中するゲームに変える」というビジョン、また今回の日本法人への転身にあわせて、コーポレートブランドやロゴが刷新されたことを発表しました。

DEA社の日本法人転身の背景

同社が2018年に創業した当時、web3に関する明確なルールを持っていたのは、シンガポール、エストニア、スイスのみ。日本の規制環境が不明確だったこともあり、シンガポールに法人を設立した経緯を説明しました。当時は日本で法人を作ると、暗号資産の評価額に対して税金がかかる仕組みだったため、海外に拠点を置かざるを得なかったのだとか。

Digital Entertainment Asset Pte. Ltd. Founder & CEO 吉田直人氏

もともとはシンガポールからNASDAQへの上場を目指していましたが、クライアントの9割が日本企業であるという背景もあり、また、最近の日本の税制改革や規制環境の整備を受け、今年、日本法人への転換を決断。DEA社の売上は年間約50億円で、日本に拠点を戻すことで、ゲーム業界とブロックチェーン技術の融合による新しいビジネスモデルの創出を目指すと説明しました。

モデレーターを務めたReHacQの高橋氏からは「まだまだ身近には思えないが、本当に一般の人たちが暗号資産を持っているのか?」「認知が広まらない理由は?」といった質問も飛び出しましたが、一般社団法人日本暗号資産等取引業協会 代表理事・SBIホールディングス常務執行役員の小田玄紀氏は「口座開設数は1200万口座を超えており、10人に一人は暗号資産の口座を持っていることになる」とコメント。「2017年に世界で初めて暗号資産に関する法律ができた日本だが、その翌年に流出事件などがあったことで暗号資産のイメージが悪化した。しかし現在は再び前進している」と説明しました。

このやり取りを受けて DEA社の吉田氏は「web3のムーブメントにおいて、日本はまさに ”失われた数年間” があった。その期間にシンガポールで企業として成長して日本に戻ってくることができたのは大きな前進で、これまで日本が強いと言われてきたIPやゲーム、キャラクタービジネスなどに、web3の技術を絡めることで、ゲームの新しい形を作りたい。日本のweb3企業で初の上場企業を目指す」と力強くコメントしました。

DEA社の取り組み紹介

続いて、DEA社が手掛ける様々な事業についての紹介がありました。ざっとダイジェストでご紹介します!

◆ PicTrée(ピクトレ)- ぼくとわたしの電柱合戦(インフラ点検ゲーム)
2024年4月にスタートした東京電力との共同事業「PicTrée(ピクトレ)」は、街のインフラ設備(電柱など)を撮影して点検するゲーム。ユーザーは電柱を撮影することで報酬を得ることができ、1本50円程度の報酬が支払われます。月に20〜30万円相当のポイントを獲得している熱心なピクター(ピクトレユーザー)もいるとのこと……!

ピクトレ公式サイト
https://pictree.greenwaygrid.global/

重要なのはこのサービスによってどんな社会課題を解決しているのか? ということで、DEAの事業責任者である栗原氏によると「このサービスにより、電力会社は年間約2~30億円かかっていた全国の電柱などの点検コストを、開発費も含めておよそ半分程度に削減できる可能性がある」とのこと。現在は東北、岩手、福島、新潟、埼玉、千葉県と北海道全域でサービスを展開しており、7~8万ダウンロード、アクティブユーザー数は3000人程度だそう。

今後は電柱点検だけでなく、郵便ポストや無人駅、チェーンのコンビニなど、様々なインフラや施設の点検・情報収集にも活用できる可能性が示されました。また広告という視点で、企業のマーケティング課題の解決に寄与することも期待されています。

ReHacQの高橋氏からは「これをなぜわざわざweb3でやるのか?」といった鋭い質問も寄せられましたが、それに対して東京電力の登壇者からは「例えば、電柱の写真が本当に電柱かどうかのチェックをバングラディシュに住んでいる貧困層の方などにお願いして、1円相当の報酬を送るとする。その国際送金に100円の手数料がかかるようでは意味がないが、これを解決し、経済圏をグローバルにできるのがweb3の強み。また現在は電柱に特化しているが、今後は道路の状況やあらゆる街のインフラを、ゲームをしながらみんなが勝手に守っている、というインフラの民主化が起こり得る。これはweb3だからこそ実現できること」と回答していました。

◆ 障害者バーチャル就労支援
日本アジア投資株式会社と連携した、障害者雇用の社会課題を解決するソリューション「障害者バーチャル就労支援サービス」。現在日本では企業に2.5%の障害者雇用が義務付けられていますが、実際に達成している企業は41%に留まっているという現実があります。

このサービスでは、障害者が暮らすグループホームの中で仕事ができる環境を整え、グループホームのスタッフがサポートする仕組みを構築。ゲームプレイを通じて売上に貢献できる仕組みを作ることで、企業側にもメリットがある形での障害者雇用を実現しようとしています。

ここでも高橋氏から「web3だからこそ、という点は?」という指摘がありましたが、吉田氏は「ゲームで売上が上がるというのは、企業にしてみると障害を持つ方が “なんらかの形で売上を上げた” という点につながる。ほんの少しでも企業に “売上” として貢献できる、これが雇用される側にとっては最も大事な自信の源になる。web3で初めて実現できたこと」とコメント。実は吉田氏自身が、長年引きこもりの家族を持つ立場でもあり、そうした背景があったからこそ誕生した本事業への想いを熱く語りました。

◆ その他の取り組み
脳波を活用したゲーミフィケーション

株式会社バイオサーチと連携し、脳波を使ったゲームを開発中。ADHDなどの症状改善を目的としたトレーニングプログラムや、脳波で操作するゲームなども。

シニア向けAIエージェント
高齢者向けのAIエージェントを開発する東大発ベンチャーのAge AI株式会社に少額出資。高齢者がAIとしりとりを行うことで、回答数や応答速度などのデータを収集し、将来的には軽度認知症の予兆検知などに活用することを目指しているとのこと。

テレビ東京MXとの連携
「Vibe Coding」を使って視聴者参加型で課題を解決する番組を制作予定。

遠隔ゴミ分別ゲーム「エコキャッチャーバトル」
廃棄物処理における労働力不足の解消に、誰もが貢献できる未来を目指し開催されるeスポーツ。フィリピンに住む身体障害を持つ方が、新潟のゴミ工場の機械を(ゲームを通じて)操作してゴミを分別するということも成功しているそう。

地域創生プロジェクト「ご当地ひみつ結社」
地元企業や自治体から出されるPR拡散協力などの簡単なミッションを、ユーザーが毎日数分程度でこなし、ポイントを獲得しながら地域と関わる「ポイ活ゲーム」。

and more…!

DEP経済圏の未来とは?

さて、イベントの最後には、DEA社が発行する暗号資産「DEAP coin(DEP)」について説明がありました。300億枚の最大発行量が全て市場に流通するようになり、分散的な保持状態へと移行したとのことです。

DEA社は当初、ゲーム内で暗号資産を稼げるモデルを目指していましたが、持続可能性の観点から社会課題の解決にシフトしたという背景があります。現在は「課題解決ゲーム」を通じて社会に価値を生み出し、その過程で生まれるゲームデータ自体に価値をつける取り組みを進めているとのことです。

また「ディープチェーン」と呼ばれる独自のブロックチェーンを構築し、中央集権事業体とチェーンが相互強化する新しいハイブリッド事業モデルを目指していることが紹介されました。

DEA社 事業戦略説明会 まとめ

in. LIVE(インライブ)を運営するアステリア株式会社が事務局を務める「ブロックチェーン推進協会(BCCC)」では、2019年にゲーム部会を立ち上げて積極的な情報交換などをしていたこともあり、シンガポールで活躍するDEA社の話は以前から耳にすることがありました。

また、アステリアの代表取締役CEOである平野洋一郎が審査員長を務め、また社外取締役であるアニス・ウッザマン氏が主催する「スタートアップワールドカップ 2024」東京予選でも、DEA社は見事優勝! サンフランシスコで開催された世界決勝戦にも出場するなど、その活躍ぶりはさまざまな場所で話題になっていたんです。

◆ DEA、「スタートアップワールドカップ」東京予選で優勝 社会貢献ゲーム2種を紹介 https://web3.gamebusiness.jp/article/2024/07/24/622.html?utm_source=chatgpt.com

そうしたこともあって、DEA社が今年中に日本法人へ転身するというのは、非常に大きなニュース! 同社の取り組みやビジョンについて初めて直接聞くことができたことも含め、非常にエキサイティングな2時間となりました。

特に印象的だったのは、同社が取り組む様々な社会課題解決型のソリューションは、いずれも「なぜweb3でやるのか」「社会課題を本当に解決できるのか」という疑問に明確に応えられるアンサーを持っていること。一般の人たちが知らず知らずのうちにweb3に触れている ーー そんなキャズムを超える日も近いのでは? と思わずワクワクしてしまうような説明会でした。

最後に語られた吉田氏の閉会コメントでは、「分かりやすいモデルケースを様々な会社や団体と作ることで、世の中の役に立っているというビジネスモデルを作る」「一番分かりやすいweb3の会社を目指したい」という熱い想いも語られました。壮大なビジョンのもと、エンターテイメント性と社会貢献を融合させた新しいビジネスモデルの構築を目指すDEA社の今後の展開から、目が離せません!

以上、DEA社の事業戦略説明会レポートをお届けしました。今後も in.LIVE では、社会を変革するさまざまなテクノロジーのニュースやイベント、最新動向を追いかけてまいります! 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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この記事を書いた人
田中 伶 アステリア株式会社 コミュニケーション本部・メディアプランナー。 教育系のスタートアップでPRや法人向けの新規事業立ち上げを経験。話題のビジネス書や経営学書を初心者向けにやさしく紹介するオンラインサロンを約5年運営するなど、難しいことをやわらかく、平たく解説するのが得意。台湾情報ウェブメディア編集長も務める。