2017年2月6日

「鍵」がこんなに便利になっていたなんて! ITとモノづくりが融合して生まれたAkerunが目指す未来

スマートフォンのアプリを起動することで鍵を自由に開け閉めできたり、鍵の管理ページから、使用する人を限定したりすることのできるスマートロック。今回はそんな「鍵」に日々イノベーションを起こしている「Akerun(アケルン)」を開発する、株式会社フォトシンスさんを取材してきました。


こんにちは!in.LIVE編集長の田中です。
突然ですが皆さん、鍵って持ってますよね?誰もがカバンやポケットの中に入れているこのアイテム。カード型などその形状は変われど “扉を施錠・解錠する” という役割を何十年と変わらず果たしてきました。

本日は、そんな「鍵」に日々イノベーションを起こしている「Akerun(アケルン)」を開発する、株式会社フォトシンスさんにやってきました!

スマートフォンのアプリを起動することで鍵を自由に開け閉めできたり、鍵の管理ページから、使用する人を限定したりすることのできるAkerun。本日は、創業者であり、株式会社フォトシンスの代表取締役の河瀬航大社長にお話を伺います。

… って、まずは社長!若い!(驚)

株式会社フォトシンス 代表取締役社長 河瀬航大(かわせ・こうだい)さん
1988年生まれの28歳。

飲み会でたまたま出たアイデアを形に!鍵はもっと変われる?

早速ですが、この「Akerun」が誕生したキッカケを教えてください
最初は、前職時代に仲間たちと飲んでいるときに「鍵ってもっとスマートにできるよね?」という話になったことでした。別れた彼女が合鍵を返してくれないだとか、そうした不便って結構あるよねと(笑)。
確かに!私も何度鍵を失くして家族に怒られたことか…
でも飲み会でのそういうアイデアってその場では盛り上がるんですけど、なかなか本当に実現しちゃうパターンってなかなか無いですよね。
その時に皆と盛り上がって「これはイケる!」と勢いづいちゃったんです。僕なんて当時は「スマートロック」なんて言葉も知らなかったですからね(笑)

でも調べてみると、当時(2012年)は海外では出荷準備中という状況で、国内ではまだ開発している会社もなかった。これはチャンスだ!と思って、仲間たちと仕事の傍ら「鍵ロボットAkerun」というプロジェクトを、趣味の延長で始めました。
趣味の延長!そこから起業に至るには、何かキッカケがあったんでしょうか?
飲み会での発案から半年後、ようやく試作機が完成したときに日経新聞に掲載されたんです。そしたら「ぜひ使ってみたい」という問い合わせが100件以上寄せられました。
当時は量産の予定も全くなかったのですが、「今だ!」と法人化して、一気に走り出しました。

最初に家庭用に開発・発売された試作機「Akerun」

量産という大きな壁、ITとモノづくりの間にあった価値観の違い

いわゆるモノづくり系のスタートアップって、ハードのエンジニアを採用するのが大変そうですよね。
確かにそうですね。ただ、僕らの場合は縁故採用がメインだったので、そこはなんとかクリアできました。それよりも大変だったのが「量産の壁」です。
量産の壁…!一つ作ってしまえば、皆が自由にダウンロードできたり配布できたりするIT領域では考えられないですね…。
そうなんですよ。
なので当初は、IT分野での開発やプロジェクトの進め方と、モノづくりの現場での価値観の違いに何度もぶつかり、本当に苦労しました。

実績もブランドもなかった若い僕らが工場へ行って、「こういうものを3ヶ月で欲しい」なんて言ったら「モノづくりをなめるな!」と怒られますから。僕らが必要としていた初号機も、2年はかかると言われて、追い返されましたね。
2年!!!!
IT分野だと、とりあえず必要最小限のものを作って出すという方法もありますが、ハードだとそういうわけにもいかないんですね。
ハードの場合は、何千万とかけてまずは金板を作るのが普通です。金板を作ると後からやり直せないわけで、必ず最初から「完璧なもの」を作る必要があるんですよ。
一度作ったらやり直せない… 完全に別世界だ…
そこで河瀬さんが、何度も工場に通って説得したのですか?
そうですね。モノづくりのそうした考えは「常識」ではありますが、それが「正解」だとは限らないと思ったんです。

モノづくりの現場でも、いわゆるリーン・スタートアップ的な考え方は取り入れられると思いましたし、そうした挑戦が出来ないかと方向性を探りました。
モノづくりにおいて「量産」というのがそんなに大変だったなんて…
結果的には、どうなったんですか…?
モノづくりとITの考えを融合してもらいました。
具体的には、最低限の挙動ができるハードだけを作ってもらい、そこからは “後付け“ でソフトウェアをアップデートしていく方式です。
こうすることで、ハードそのものをアップデートさせるのではなく、後づけのプログラムで一斉にアップデートをかけられるんです。結果的に、初回出荷分は6ヶ月で完成させることができました。
6ヶ月!!!
最初の2年から考えれば、随分な短縮ですね!
未だにハード系のスタートアップにとって、量産の壁は大きいです。
2年かかると言われたことを鵜呑みにして待つケースや、量産できても数百台の規模で終わってしまうことがほとんど。
量産に成功しているスタートアップは、指折り数える程度ではないでしょうか。

企業向けのスマートロックとして洗練された「Akerun」は、こんなにも便利になってた!

現在、「Akerun」が導入されているのは、どういった用途が多いんでしょうか?
僕らは企業向けに特化しているので、ほとんどが法人のお客様です。
こんな風に裏側についているテープで既存のドアの鍵にペタッとつけるだけで設置完了なので、ビルの扉に内蔵で鍵を埋め込むなどの大規模なオフィス改修ができない中小企業が中心ですね。
おおお!こんな簡単に!!
取り付けると、この丸い部分がプログラムに反応して、鍵のツマミ部分を物理的に右に回したり、左に回したりしてくれるんですね。
そうです。厳密には色んなアジャスタがあるので、お客様のドアについている鍵の形状にあわせてカスタマイズできるようになっています。

そしてこれをドアの中から開け閉めするときは、ボタンひとつで…

ひゅいーん!というカッコイイ音と共に施錠完了!

どんな場所でもこんなに簡単に、しかも既存の鍵に後づけでAkerunが付けられるって、便利!
オフィス移転するときは外すだけですから、設備の原状回復も不要なんですね。
そうなんです。もちろん、Akerunのスマートフォンアプリを起動してかざすことで解錠・施錠することもできるのですが、会社での用途を考えれば、いちいちドアの前で立ち止まってアプリ起動して.. って面倒ですよね。
なのでAkerunは、カードをかざして開け閉めすることもできます。
企業で使うことを想定した具体的な機能って、他にはどんなものがあるんですか?
管理画面から、いつ誰が入ったり出たりしたのかが分かる機能です。
あとは時間限定の鍵を発行することもできるので、「◯曜日の◯時〜◯時まで使える鍵」というのをその人ごとに発行したり、設定を変更したりすることも管理画面で簡単にできます。
ほおお〜!すごい!こんな簡単に!
アルバイトのスタッフに鍵を渡したままいなくなっちゃって… というようなことって結構ありますもんね。そういう人の鍵は、その場ですぐに使えなくする!というようなこともできるわけですね。

なんとなく「スマートロック」って、既存の物理的な鍵が不要になった、というだけかと思ってたんですが、全然違う!既存の鍵の100倍ぐらい便利になってる!!!
ちなみに田中さん、今ってSuicaとか持ってますか?
ありますよ!普通の定期として使ってるやつですが…
それ、ここにかざしてみてください。
へ?ここにですか???

Akerunに付属している「NFC Reader」にICカードをかざすと、「ブッ」と音が…

今からこの田中さんのPASMOを、この扉の鍵にします。
えっ… (社長への疑いを隠せない、田中の微妙な表情)
たった今、ブッと音が鳴って認識させたICカードを鍵に設定するのも、管理画面からの設定ひとつで… (ポチポチ)
どれどれ… (なぜか偉そう)
はい!設定完了です!これで今日からこのドアは田中さんのPASMOでも開きます。

(さっきまで普通のPASMOだったカードをかざすと…)

ひゅいーん!!!!!

鍵が開いたーーー!!! 手品ですかこれは…!
ちなみに僕はSuicaをアップルウォッチに設定しているので、これをかざすだけで解錠ができます。

これ、めっちゃ便利や…

「すべての扉に搭載されるロボットに」Akerunが目指すもの

Akerunの数々の機能、これまで知らなかったものもあって驚きの連続でした!
今はこうした鍵の開け閉めという機能がメインですが、今後考えられていることってあるんでしょうか?
そうですね。やっぱり僕らは創業前からこのプロジェクトに「鍵ロボットAkerun」という名前をつけていたとおり、ただのツールではなく、こうした人の生活に当たり前に入り込んでいるロボットを作りたいという気持ちがあります。

例えば、オフィスから出るときに「外は雨が降っているから傘がいるよ」と教えてくれたり、もっと人間らしい発言をさせて、クスッと笑えるようなものにしたり。単なる「煩わしさをなくすもの」から、コミュニケーションができる相手にしたいんです。
コミュニケーションができる相手ですか!
具体的にもう開発されている機能とかってあるんですか?
これはまだ当社でしか実証していないのですが、社内のチャットツールとして使っている「Slack」の中で、Akerunに対して「開けてください」とチャットで伝えると解錠してくれるというものがあります。

「開けろ!」と言うと「言葉遣いがなってない」と要求がハネられたりするんですけど(笑)。
なんだかAkerunが急に意志を持った存在のように思えてきました(笑)。

そういえばAkerunのエンジニアさんたちのブログでも、オーブントースターにAkerunを設置してボタンひとつで焼けるようにしたりコーヒーミルと紐付けさせてコーヒー豆を挽かせたり、というユニークな取り組みを見ました!
あれも、エンジニアたちが自発的にやってるんですよ。今社内には3DプリンタやCADを使った開発ツールなど設備も整っているので、どんどん自由なチャレンジができるようになっています。
前職にもこうした自由に挑戦できる環境が沢山あったので、そうした文化はフォトシンスでも受け継いで、どんどんやってもらっていますね。

たまたま見かけた社内のメンバーの皆さんの打ち合わせの様子。とっても楽しそう!

こうした発想を通じて、鍵の解錠・施錠から、どんどんAkerunが進化していきそうですね。
最終的に興味があるのは、「コミュニケーションツールに入り込む機械」なんです
SNSは人同士を繋ぐけれど、そこに当たり前のように機械が入り込んでくる。今話題のIoT(Internet of Things)というキーワードの未来も、僕らはそんな風に捉えています。
面白い!IoTの未来はもちろん、それによって働き方が変わることをリアルに実感できました。河瀬社長、今日は興味深いお話を本当にありがとうございました!

株式会社フォトシンスさんにお邪魔してきた!まとめ

というわけで今回は、スマートロック「Akerun」を開発する株式会社フォトシンスにお邪魔して、河瀬社長にお話を伺ってきました。In.LIVEを運営するアステリア株式会社でも、現在オフィス内の全扉にAkerunが設置されています。

ちなみに「フォトシンス」というのは「光合成」という意味。「水と二酸化炭素という無機物から、有機物をつくるこのプロセスは、無機的なモノをつなげ、有機的な価値を生み出すIoTと同じ!」と目をキラキラさせて語る社長のお話に心から引き込まれました。

河瀬社長の創業秘話、そしてAkerunと目指す未来、いかがでしたか?
Akerunという製品を通じて変わる未来の働き方や今後のニュースにも、皆さまどうぞご注目ください。
最後まで読んでいただき、有難うございました!

株式会社フォトシンス WEBサイト
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この記事を書いた人
田中 伶 インフォテリア株式会社 広報・IR室。メディアプランナー。 大学在学中に人材育成会社を立ち上げ、その後はスタートアップでPRや法人向けの新規事業立ち上げなどを経験。話題のビジネス書や経営学書の解説をするオンラインサロンを個人で運営中。難しいことをやわらかく、平たく解説するのが得意。