2017年2月6日

ドイツ発のスタートアップ「Senic」創業者に聞く、Nuimoが目指す進化とIoTのトレンドシフト

「Y Combinator(Yコンビネータ)」の卒業生でもあり、現在アステリアが出資しているドイツ発のIoTスタートアップ企業「Senic」社。創業者であるTobias Eichenwald氏にIoTのこれからについてインタビューをしてきました。


こんにちは!in.LIVEメディア編集部です。
本日の記事の主役は、ドイツ発のIoTスタートアップである「Senic」という会社。

米国カリフォルニア州のベンチャーキャピタルで、最強のスタートアップ養成スクールとして知られる「Y Combinator(Yコンビネータ)」の卒業生でもあるSenicですが、最初にリリースしたIoTデバイス「Flow」は、INDIEGOGO(インディゴーゴー)というクラウドファンディングで先行ユーザーの募集をしたところ、最初の10日間で目標金額の2倍をクリアし、話題になっていました。

現在は、「Nuimo」という新たなIoTデバイスをリリース。様々なデバイスとBluetoothで連携し、音楽や照明、室内温度などを、直感的に操作できるワイヤレスコントローラーです。

そんなSenic社ですが、実は、アステリア株式会社がYコンビネーターを通じて出資を行っているのをご存知でしょうか?

2013年のYコンビネーターのDemoDayにて、Senic社の創業者であるトビアス氏のプレゼンテーションを見たアステリア社長の平野が惚れ込み、現在も非常に友好な関係を築いています。

今回は、2016年末に行ったトビアス氏のインタビューをご紹介。ドイツにてIoTの未来に取り組む、Senic社の展望をご覧ください。

Tobias Eichenwald 氏 プロフィール

ベルリンを拠点とし、次世代のユーザーインターフェイス開発にフォーカスしたハードウェアとソフトウェア企業Senicを共同で立ち上げ、CEOを務める。デザイン、心理学、経営を学び、OnVistaとMerckなどの企業でUXデザイナー、プロダクトマネジャーを歴任した。国際経験も豊富でドイツのほか、米国、メキシコ、韓国で生活した。


まずは「Senic」社について教えて下さい。
わたしとFelix、Philipの3人で設立したIoTデバイスのスタートアップです。本拠地はドイツ・ベルリンで、私は電子工学、Felixはインダストリアルデザイン、Philipはビジネス/ユーザー体験デザインに明るく、3人ともハードウェアの家系が背景にあります。

企業名のSenicは、人間の感覚(”Se”nse)とIC(集積回路)を組み合わせた造語で、この二つを自然に結びつけて技術の体験を高めるというビジョンを持っています。また最初の製品「Nuimo」は、Natural User Interfaceの”NUI”と”Mo”tionを組み合わせた言葉です。家の中で直感的にスマートデバイスとやりとりしたいというニーズに応えるもので、スマートフォンにある音楽をかけるといったことを、ダイアルを回したりジェスチャー操作で行うことができます。

実際の「Nuimo」のインターフェース

アステリアとの出会いはY Combinatorだったそうですが、最初の印象は? またSenicはドイツの企業ですが、なぜYCombinatorに応募されたのでしょうか?
Y Combinatorには2013年夏のプログラムに参加しました。選んだ理由は、Y Combinatorは起業した理由やストーリーを重視していたからです。起業に至るまでのわれわれのルーツや課題と感じていること、なぜ自分たちがやろうとしていることが重要なのかを語ることは大切なことでした

アステリアも平野さんと北原さんが起業した会社で、私たちと似ていると思いました。いまでも2人の起業家精神が感じられ、共感できるところがたくさんあります。
IoT機器におけるNUIの重要性についてはどのように考えられていますか? 
またIoTのトレンドについては、どのように見えているでしょうか?
パーソナルコンピューター(PC)、スマートフォンとざっくり10年ごとに重要な変化が起きています。ユーザーインターフェイスは新しいシフトで、スマートフォンと同じぐらい重要なものです。新しいインターフェイスはジェスチャー、ハプティックなどさまざまですが、例えば音声。認識率は95-99%まで上がっており、音声での入力や反応という重要なシフトが起こるでしょう。大手も多数注目しています。

センサーも重要なトレンドです。新しい技術ではありませんが、価格が急激に下がっている ーー 5年前まで20ドル程度だったWiFiチップが、現在は1ドル程度です。これが何を意味するのかというと、すべてのものがインターネットにつながるということです

AR(拡張現実)、VR(バーチャルリアリティー)も挙げられます。2016年の年末商戦でたくさんの商品が出てきました。当面はゲーム主導ですが、将来はオフィスや仕事でもアプリケーションが出てきます。
Senic社では、Nuimoを夏に発売開始しましたが、これまでの経過をどう見ていますか? 振り返ってみて、大変だったことは何でしょうか?
Nuimoは7月に発売を開始し、8000台を出荷しました。このうち80%が北米と欧州です。リソースが限られていることからこの2市場にフォーカスしていますが、韓国と日本からも問い合わせをたくさんいただいています。2017年には他の市場に拡大できる見通しです。

難しかったのはハードウェアです。ハードウェア製品が市場に出るには、少なくとも1年半〜2年と比較的長い時間がかかります。ソフトウェアは出荷後にバグが見つかってもアップデートできますが、ハードウェアの場合、そうはいきません。小さな問題であっても残ります。

また、IoTにはまだ標準がなく、たくさんのプロトコルが乱立している状態です。このような事情もあり、ハードウェアの構築に思ったより時間がかかりました。
ハードを開発する会社は、どの企業も抱えがちな問題ですよね。ハードといえば、Senic社の場合はすべて製造をドイツで行っていると聞きました。その理由は?
ドイツの会社の多くは、製品を中国に出荷して中国でアセンブリし、ドイツに戻すという手法を取っていることもあります。手作業によるアセンブリ部分のコストを安くすることが目的ですが、すでに中国の労働コストは上がっており、タイ、ベトナムといった国に移りつつあります。コスト面での中国の魅力は薄れつつあるのが現状です。

一方、われわれは設計段階から工夫し、手作業によるアセンブリが少ないように設計しています。そのためアセンブリコストは低く、(中国でやるかドイツでやるかに)大きな差はありません。それだけでなく、品質、プロセスをすべてみるためには地元でやったほうが学びが多いと感じています。
そもそもの設計で、手作業によるアセンブリが少なくなるようにしているのですね!
ではハードの開発部分以外で、現在特に注力していることはありますか?
インターフェイスを洗練させることです。
デザインにはたくさんの原則がありますが、その一つに、ユーザビリティとフレキシビリティは両立できないという考えがあります。スイスアーミーナイフはフレクシブルなツールですが、使うのは難しい。パンを切りたいと思ったら、スイスアーミーではなくパン切りナイフを使います。

Appleがスイスアーミーナイフだとすれば、われわれはApple並みの品質を保ちながら、用途に特化した使い勝手のあるインターフェイスを作りたいと思っています。

またそれに伴ったプライシングも重要で、最初に低価格で提供すると大手が参入したときに競合が難しくなります。われわれは、プレミアム価格帯の製品で最初にユーザーを引きつけるという”Tesla戦略”をとっています。実際、Nuimoを購入してくれたユーザーは、機能だけでなく品質とデザインも重視するプレミアムセグメントの顧客であることがわかっています。
それでは、今後の計画についてお聞かせください。
Y Combinatorで市場がどのように動くのか、ハードウェア製品を構築するとはどういうことかなどさまざまな学びがありました。これを生かして、まずは家、次にオフィスの問題を解決することにしました。現在開発中の2番目の製品は、オフィスにあるミーティングルームの課題を解決するものです。

現在のNuimoユーザーの典型的な使い方は、自宅に帰って壁に装着しているNuimoを押してスマートフォンにある音楽を聴いてリラックスするというものですが、次の製品では、スピーチ、ビジョン、WiFiなどの機能を入れて、ミーティングルームで同じようなことを実現します。つまり、音声、ビジョン、ジェスチャーなどを使ってビデオ会議をもっと簡単にし、会議そのものにフォーカスできるようにします

プラットフォームをオープンにすることで、既存システムとの統合も容易に行えるようになります。
現在は創業時から社員も増員し、営業やコミュニケーションも強化できるようになりました。Nuimoは北米と欧州が中心でしたが、今後は市場を拡大していくつもりです。
最後に、起業家へのメッセージがあれば、お願いします!
新しいトレンドで必ず起こることですが、多くの人々はすごいとは思っていても、どのぐらい重要なのか、その重要度に気がつかない。振り返ってこれは大きな変化だったと気がつくのが常です。

私たちの場合も、1年半前にIoTやNUIの話をしてもあまり本気にされませんでした。ですが、ある時点から笑われなくなりました。スタートアップのよいところは、トレンドが具体的になる前に準備できることですよ。
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この記事を書いた人
in.LIVE 編集部
in.LIVE 編集部 インフォテリア株式会社が運営するオウンドメディア「in.LIVE(インライブ)」の編集部です。”人を感じるテクノロジー”をテーマに、最新の技術の裏側を様々な切り口でご紹介します。