2026年1月7日

全ビジネスパーソン アプリ開発者計画、始動。2社の製品のコラボから生まれた『Platio Canvas』が、日本のモバイル開発のセオリーを変える

モバイルアプリに特化したノーコード開発ツールで、日本の現場を支えてきた『Platio』と『Click』。それぞれの特色の掛け算が、日本の企業にもたらすものとは――。


2025年9月、アステリアは、純国産ノーコード開発ツール『Click』の開発元 MikoSea 株式会社の100%子会社化を行うことを発表し、Platio とClickの融合による新製品『Platio Canvas』を提供開始しました。子会社化後は社名を MikoSea から「アステリアキャンバス株式会社」とし、さまざまなものを自由に描けるキャンバスのように、誰もが柔軟にノーコード製品を作成できる世界を、アステリアグループの一員として、共に実現していきます。

◆プレスリリース「子会社の商号変更及び本店移転について」
https://jp.asteria.com/news/2025122626868/

今回のin.LIVEでは、両社が手を組んだ背景とその意図、Platio Canvas の特長、さらに協働が生み出したシナジー効果まで、アステリア代表取締役社長の平野洋一郎と、アステリアキャンバス代表取締役CEOの工藤亮太が大いに語り合う様子をお届けします。

モバイルアプリ開発の変革を背負う、熱量あふれる対談をお楽しみください!

「モバイルアプリ開発のハードルを下げたい」 その想いを叶えるMikoSeaのプロダクト『Click』

今日は日本のソフトウェア文化を変えるノーコード談義をしようじゃないかと、工藤さんに来てもらいました。アステリアグループの仲間入りもしていただいて、その話もたっぷりしたいとですね。
よろしくお願いします。
今ではよく耳にするようになった「ノーコード」での開発ツールですが、アステリアは最初のノーコード製品を2002年に製品化しています。当時は「ノン・コーディング」と呼んでいました。当時はシステムを開発する際には複雑なプログラミングをすることが当たり前で、国内のSIerさんはプログラムの行数や人月などの工数に従って課金していました。そうした常識を通用しなくしてしまう当社の製品は、ずいぶん嫌がられたものです(苦笑)。

「ノン・コーディング」という言い方が全然広まらなかったので、2005年ごろに「ノンプログラミング」という名称に変えたんですよ。それでも言葉としてはなかなか流行らなかったのですが、2017年頃になるとアメリカで「ノーコード」という言葉が注目されるようになり、「これなら行けそうだ」と。それで、2017年に発売したPlatioがアプリを簡単につくれることもあって、2019年からは「ノーコード」と打ち出すようになり、いまに至ります。 MikoSeaはどのようにスタートされたんですか。
当社の創業は2022年でした。
コロナ禍が始まり、多くの企業がオフラインからオンラインへの事業転換を急速に進めていました。当時私は楽天の社員だったのですが、知人や親戚からシステム開発の相談を受けたことが、MikoSeaの設立につながっています。
創業時は受託開発をされていたんですよね。そこから開発ツールの開発に舵を取ったきっかけを教えてください。
楽天にいたときは社内にエンジニアが当たり前のようにいて、ユーザーのフィードバックを受けながら、どんどん良くしていくアジャイル開発が当たり前でした。けれどもそれは大きな企業だからできたことであって、中小企業さんや地方の企業さんの場合、社内にエンジニアがいないので、外部にシステムをつくってもらったら、それで終わりです。

ちょっと改善したいと思っても外注すると数百万ものお金がかかるので、できないのが当たり前。“運用”こそプロダクトの要諦なのに、コストが割けないので使い勝手に難のあるシステムをずっと使わなければなりません。だからといって、中小企業では年収800万円のエンジニアを雇えるかというとなかなか難しい。エンジニア自身もまた就業先の選択肢とする可能性は高くありません。

「どうすれば、誰もが良いソフトウェアをつくれるのか」、そう考えたときに着目したのがノーコードツールでした。

どんなふうに開発を進めていったんですか。
最初は、海外のノーコードツールを触るところから始めました。アメリカの『Adalo』や『Bubble』をお客様にも触ってもらったところ反応が良かったので、「これらの日本版があればいいのにな」と、まず考えました。そこで、「日本のマーケットに合うようにしてもらえないか」と、両社に相談を持ち掛けました。

けれども、「いまは英語圏が優先です。日本はプライオリティが高くないので、ごめんなさい」って言われてしまいました。それなら、自分で日本人向けのモバイルアプリに特化したノーコードツールをつくろうと決め、生まれたのが、ノーコードアプリ開発ツールの『Click』です。

 Clickは、機能をテンプレート化しているので、PowerPointのようにドラッグアンドドロップするだけで、簡単にアプリがつくれます。単純なものなら6時間。一定のレベルのものであっても3日あれば形にできる点がお客様に喜ばれています。さらには、小規模の開発なら月額数千円から気軽に使える点も、Clickが選ばれる理由の一つになっています。
ご利用のお客様は、どういう方が多いんですか。
一番のボリュームゾーンは、中小企業、中堅企業、そして個人のお客様です。当初は、システム開発を自社で行ったことがない、あるいは社内にエンジニアがいないというお客様のご利用が目立ちましたが、現在はスタートアップ企業によるプロトタイプ開発や、費用対効果の見地から開発が見送られていたアプリ、あるいは市場規模が小さすぎてマネタイズが難しかったアプリなどが多く生まれています。

モバイルアプリ領域がフィールドの二つのプロダクトは、 どう出合い、なぜ合流したのか

アステリアは「ノーコードで日本のソフトウェア文化を変える」そして、地方や中小企業を救うというの御旗のもと、サイボウズさんと一緒にノーコード推進協会(NCPA)を設立しました。

ですので、MikoSeaがClickという良い製品をつくっていることも以前から知っていました。ただ、工藤さんとの面識はなかったんですよ。それが、とあるスタートアップの会合で出会いましてね。

「Click、知っていますよ」と声をかけてくださり、さらにはノーコード推進協会にもお誘いいただきました。
私たちのPlatioも、Clickと同じモバイルアプリ領域をカバーしているのもあって、社内の関心はもともと高かったんです。
この二つのプロダクトは、それぞれに強みがあって、補完し合える関係にあるといえますよね。
そうですね。Platioは基本的に現場のアプリです。100以上あるテンプレートから自由にカスタマイズできるので、早ければ10分、ちょっとしたのなら1時間ぐらいでアプリが完成します。プログラミングの知識は必要ありません。ただ、持ち味であるシンプルさを大切にしているので、ネイティブアプリやウェブアプリとは、あえて一線を画しています。

その点、Clickには柔軟性があります。画面デザインやアプリ設計の自由度も高いので、細部もこだわりたいつくり手さんにとても喜ばれる製品です。いわば、大企業がつくっているようなクオリティの高いアプリを個人や小規模な会社でもつくることができるんですよね。
おっしゃるとおり、私たちの強みは「自由度の高さ」です
他のノーコードツールでは表現できないようなものをつくれることが一番の特長です。その一方、自由度が高すぎるがゆえ、制作者がデザインで悩まれ、手が止まってしまうことが往々に起こっていました。こういう場合にお勧めしやすいのがPlatioです。私が営業をしていたときも「このお客様にはPlatioを売りたいなあ」「両方扱えたらなあ」と思っていたんですよ。

この2つによってモバイルアプリ開発を全方位的にカバーしているので、日本にはPlatioとClickがあれば、もう十分。そう自信をもって言えるレベルになっていると思います。

『Platio Canvas』で、現場の想いをもっとカタチに、企業のアプリ開発を活発に

Clickは今後、どんな進化を予定しているんですか?
最近はスマホ画面、タブレット画面、PC画面を同時に開発することのできるレスポンシブデザイン機能が追加したり、現在は社内で『Click Inside』と呼ぶ構想も進めたりしています。これは、コンテンツマネジメントシステム(CMS)がセットになったバージョンをイメージしていただくとよいかと思います。

たとえば、ピラティススタジオをオープンした人が、お客様に会員登録していただいて、さらにはレッスン料を集金できるシステムを探しているとします。そのとき、ノーコードツールだけでは目的に対して距離があるんですよね。この人は、エンジニアになりたいわけでも、アプリをつくってお金稼ぎをしたいわけでもありません。予約管理ができて、かつスタジオのブランドが上がるシステムをつくりたいだけです。

この場合には、Click Insideの機能を使って予約システムを簡単につくり、Clickでブランドイメージに合わせたアプリを自由度高くデザインしてもらうことができます。

Clickは引き続き単独のプロダクトとしても存在するのですが、それとは別にPlatioとコラボレーションし、エンタープライズ向けにClickの良さを盛り込んだ、『Platio Canvas』を2025年9月29日にリリースしています。

私たちは、エンタープライズ系を中心とした1万社以上に、さまざまなシステムやサービス間のデータ連携を自動化できる ASTERIA Warp を使っていただいていますので、このエコシステムを活かして、Platio Canvasもご案内し、モバイルフロントにおける生産性向上や多くのDXに寄与していきたいと考えています。
Platio Canvasでつくったアプリは、大企業が開発している複雑なアプリケーションとつなげられるので、できることに幅が出てきますね。
そうですね。これまでIT化、DX化はホワイトカラーを中心に進んできましたが、コロナ禍を経て、「現場をどうやってつなぐのか」「現場をどうデジタル化・DX化するのか」といった文脈から生まれるアプリは非常に増えています。しかし、工藤さんの話のとおり、一つ画面を変えるだけで数百万もの費用がかかるようでは、中小企業は手が出せません。その点、現場の思いをどんどん実現できるのがノーコードの強みです。私は、企業のシステム開発の考え方に風穴を開けたいと思っています。
ASTERIA Warpに加え、Platio Canvasも使えるとなると、IT職種以外の人たちから、「自分たちでアイデアを出して、便利なアプリをつくってみよう」という動きが生まれるかもしれません。その結果、社内アイデアハッカソンがどんどん開催されるような世界が出来上がっていくといいですよね。

Platio Canvasが、自分の所属する企業や自分の業務をさらに良くするにはどうすればよいのかを考えるきっかけにつながることもまた、大きな意義があると感じます。
一人ひとりが持つアイデアをぜひカタチにしてほしいですよね。
本当にそう思います。自分でもアプリがつくれるってなった途端、やりたいことはたくさん出てくると思うんです。小さいアイデアをカタチにできる点は、ノーコードツールの大きな価値です。
ちなみにClickは、ステーブルコインである『JPYC』と連携しています。JPYCとは、日本円に1対1で連動する安定したブロックチェーン上の通貨で、将来的に大きな成長が期待されています。つまりClickでアプリを開発すると、「JPYCを送る」のようなボタンを作成することができ、たとえばPayPayで送金できる機能と同じ感覚で使うことができます。

JPYCの連携機能はASTERIA Warpにも提供される予定なので、たとえば、会計システムや基幹システムからJPYCを受け取ったり、支払ったりができるんですね。企業は収支のリアルタイム化や振込手数料の削減が可能になり――銀行だと200円、300円とかかりますが、JPYCは1円ほど――クレジットカードも2〜3%の手数料がかかることを思えば、これは大きなメリットです。

◆プレスリリース「日本円建ステーブルコインJPYCと企業システムをノーコード連携」 https://jp.asteria.com/news/2025082124897/

◆JPYCステーブルコイン対応アプリ開発セミナーレポート https://www.asteria.com/jp/inlive/finance/7899/

IT業界の開拓者として。目指すは海外

さて今後ですが、アステリアグループとしてはやはり海外に出ていきたいですね。Clickも海外に類似プロダクトはあるものの勝ち筋はあると考えているので、多言語版の開発を進め、日本から飛び出していきたいです。
冒頭、アメリカの話を挙げましたが、ここは英語圏のなかでパイを奪い合っている状況ですし、非英語圏に挑戦するにもローカライゼーションが必要です。ただそれは言語を変えればいいという単純な話ではなく、商慣習や国民文化、市場環境を正しく知ることが大切です。その点、英語で市場をねらう人たちとは違う戦略で海外進出を進めることは、よい事例を集めることにつながるかもしれません。それらを踏まえ、満を持して英語圏に持っていく流れは、勝機を呼び込む一つの策になるはずです。
今アステリアが力を入れているのは、東南アジアです。工藤さんの言うとおり、言語だけでなく文化もカバーして、いかに使ってもらえるプロダクトとして提案していくのかが肝になるでしょう。東南アジアは欧米と比べて経済成長率が高いですから、その波をノーコードで捉えていくことができれば、勝算は大きいと考えています。

日本では、デジタル赤字がたびたび話題に上りますが、ともすると「海外製品は使わないようにしましょう」「国産を使いましょう」という話になることがあります。けれども、それを進めてしまうと「デジタル鎖国」になってしまうので、よくないと私たちは考えています。いいものは輸入して使う。そして、私たちもいいものをつくって世界で使ってもらう。このようにして輸出入のバランスを取りながらデジタル赤字の解消につなげることがベストだと考えます。
MikoSeaは、“巨人の肩”に乗るような思いです。
単独であれば数年かかるであろう海外展開も、アステリアグループとなら今日からスタートできる。そう考えると、今回のグループインは非常にいい選択だったと思います。当社はやる気のあるメンバーがそろっており、さらに勢いづいていますから、どんどん推進していきたいです。
それは心強いです。アステリアとMikoSeaが組んで、どこかの国に先鞭をつけることができたなら、これは当社グループのみならず日本のソフトウェア業界にシナジーが生まれると思っています。私たちは、“IT界の野茂英雄”になりたいんです。彼がメジャーリーグへの風穴を開けたからイチローがいたし、大谷翔平もいるわけですよ。前例がなくても、無理と言われても風穴を開けて、多くの企業が海外で勝負をするようになって、日本をソフトウェア輸出国にしたいでね。

日本のソフト製品やベース技術は海外でも引けを取らないですし、クオリティは間違いなく高いですから、過去の家電や自動車のように輸入産業を輸出産業へとひっくり返せる余地は十分あります。私たちなら必ず実現できる、と確信しています。

関連リンク

・ノーコードアプリ開発ツール「Click
・モバイルアプリ作成ツール「Platio
・ノーコードアプリ開発プラットフォーム「Platio Canvas

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この記事を書いた人
香川妙美 山口県生まれ。音楽業界での就業を経て、2005年より自動車関連企業にて広報に従事。2013年、フリーランスに転身。カフェガイドムックの企画・執筆を振り出しに、現在までライターとして活動。学習情報メディア、広告系メディア等で執筆するほか、広報・PRの知見を活かし、各種レポートやプレスリリース、報道基礎資料の作成も手掛ける。IT企業・スタートアップ企業を対象とした、広報アドバイザーとしても活動中。