2019年8月13日

女性エンジニアならではのキャリアの壁ってホントにあるの? 「女性×エンジニア」の仕事の魅力と悩みを聞いてみた(前編)

アーム株式会社が開催した社内勉強会に、アステリアの女性社員である松浦真弓氏が登壇し 「女性 × エンジニア」 というテーマで約1時間の講演を行いました。女性のITエンジニアとして働く現実は? 仕事を続けていくために気をつけていることとは? 講演内容に触れながら当日の様子をお届けします。


こんにちは!in.LIVE編集長の田中です。突然ですが皆さんは「ITエンジニア」という仕事にどのようなイメージがありますか? 難しそう? 忙しそう? お給料などの待遇が良さそう? はたまた、主に男性が活躍している職種…?

そんなイメージが先行する中で、今回お届けするのは 「女性 × エンジニア」 をテーマとした記事です。 今年7月にアーム株式会社が開催した社内勉強会に、アステリア株式会社の女性社員である松浦真弓氏が登壇し 「女性 × エンジニア」 というテーマで約1時間の講演と、アーム株式会社で働く女性社員の皆さんを交えた座談会を行いました。本記事ではその講演内容に触れながら、当日の様子をお届けします。

現役のITエンジニアとして働く女性の方、ITエンジニアを目指す方、女性エンジニアと一緒に働く男性など、性別や業界・業種を問わず、幅広い方に読んでいただければ幸いです。

アーム株式会社での「INWED2019」を記念した社内勉強会にて

今回取材にお邪魔したのは、英Arm社の日本法人であるアーム株式会社
ソフトバンクグループ傘下のArmは、半導体設計とIoT(モノのインターネット)を手掛けるグローバルリーディングカンパニー。例えば、全世界のスマートフォンの95%以上で使われているプロセッサーのIP(半導体設計に関する知的財産)を提供していて、現在世界各地に40か所以上の拠点を持っています。

そんなArmでは、毎年6月23日に制定されている「International Women In Engineering Day(INWED)2019」を節目に、世界の全グループにおいてエンジニア職の女性支援、女性の社会進出をサポートするための周知活動を行っているそう。

今回行われた松浦氏による講演は、この活動の一環として行われた「女性 × エンジニア」をテーマとした社内勉強会でした。

”女性” というテーマですが、参加希望者として会場にやってきた方の9割は男性の皆さん!
女性ITエンジニアが働く職場をつくる一員として男性も育休を取るべきか? という話題や、女性のキャリアに壁が生じる理由などのテーマについて積極的に学ぼうとする男性がいるのは、女性目線でもとても嬉しいもの。

事前にとったアンケートでは「自身の娘がエンジニア志望のため、その働き方やぶつかりやすい壁・困難などについて聞いてみたい」といったコメントがあったのも印象的でした。

女性エンジニアは「生涯続けたい仕事」? 女性ならではのキャリアの築きかた

60分ほどの講演では、前半では客観的なデータを中心に「女性エンジニア」という職業の実態、動向や日本と海外の違いについて語られました。

厚生労働省のデータによると、日本の労働人口(6,870万人)のうち女性の労働人口というのは約45%! 思ったよりも多いと思いませんか? この背景にあるのは、日本の育休制度の向上や、あるい未婚率の上昇といった変化だと言われています。

そうした傾向を後押しするように、女性のITエンジニアの実態として「エンジニアの仕事を長く続けたいか?」という質問に対しては、半数以上の方が「長く続けたい」を答えていたというデータがあります。具体的に何歳まで働きたい? という質問に対して、最も多かったのは「60代まで続けたい(31.4%)」という答えで、続く答えも「生涯続けたい(22.0%)」というもの。

こうした返答があるのは、非エンジニアとしては驚くばかり…!
出産や育児などでブランクはあっても、手に職をつけて長く働きたいといった女性のニーズにも応えられる、ITエンジニアという仕事の魅力を感じずにはいられません。

一方で、実際に働いている人たちの満足度はとても高いにも関わらず、職場の男女比を聞いてみると、約80%の方が「男性の方が多い」とも回答していました。これは多くのIT企業で当てはまることであり、今回講演をさせていただいたアーム株式会社も同様です。

そして、講演の後半では、松浦氏自身のキャリアに基づいた経験談が語られました。 育休後の復帰早々に新しい職務の担当になり奮闘したエピソードや、育児の真っ只中で重要だったパートナーとの役割分担、さらにアメリカのエンジニアとの朝食会では半数が女性エンジニアで驚いたことなど… 具体的なエピソードを交えた話に興味津々。

女性ということから技術の話が通じないと思われてしまった!といった困ったエピソードもありましたが、女性エンジニアは人数が少ないためにお客様に顔や名前を覚えてもらいやすいといったメリットも。理系の進路に進むことへの抵抗感も「リケジョ」といったワードが一般化したことによって、随分と和らぎ、逆に盛り上がっている傾向があると話します。

松浦氏が実際に女性エンジニアとして働きながら学んできた、グローバルな女性ITエンジニアとして生きていく上で大切な四か条として、

・外に発信すること
・専門性&希少性
・人とつながる
・コミュニケーション能力
といったことも実体験をまじえながら紹介されていました。

講演終了後の質疑応答では「女性は実際にどの程度、育児などによるキャリアの空白期間が認められるものなのか?」「女性がエンジニアを志望して、その道に進んでいく上で壁になることは?」などの質問が参加者の社員の皆さんから次々と投げかけられます。

質疑応答を踏まえた議論の中で話題になったのは、ダイバーシティが問われる現代では「性差」ではなく「個人差」として問題を捉えなくてはいけないということ。男性だからこう、女性だからこうあるべき、と決めつけるのではなく、同じ女性でも考えていることや感じているものはそれぞれに違い、またそれを受け止める男性の価値観も違う。そうした理解が求められること自体が「多様性」なのでは? という結論には、参加者の方も頷いていたように見えました。

60分という短い時間でしたが、積極的に質問してくださった社員の皆さんのおかげで、理解もぐっと深まりました。

講演終了後は、実際にArmで働く女性エンジニアの方と、本勉強会を企画された管理部の方との座談会を行う機会をいただきました。本記事の【後編】では、とても興味深かったリアルな座談会の内容についても具体的にご紹介していきます。

◎ 「女性エンジニアならではのキャリアの壁ってホントにあるの? 女性×エンジニアの仕事の魅力と悩みを聞いてみた(後編) につづく…

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この記事を書いた人
田中 伶 アステリア株式会社 コミュニケーション本部・メディアプランナー。 教育系のスタートアップでPRや法人向けの新規事業立ち上げを経験。話題のビジネス書や経営学書を初心者向けにやさしく紹介するオンラインサロンを約5年運営するなど、難しいことをやわらかく、平たく解説するのが得意。台湾情報ウェブメディア編集長も務める。