2022年12月10日

「ノーコード」を武器にDXを推進し、社会のウェルビーイングを実現する

アステリアは、ノーコード製品を通じたDXを推進してより働きやすい社会を実現すべく、今年、新たな幹部ポジションを設置し、5月にはCXO(Chief Transformation Officer/最高変革責任者)として中山五輪男が、7月にCWO(Chief Well-being Officer/最高ウェルビーイング責任者)として島田由香が就任しました。今回は新幹部2名とCEOの平野洋一郎を交えて、新ポジション設置の背景とその役割、新たな体制でアステリアが目指す未来について、徹底的に語り合いました。


左から中山五輪男 CXO(Chief Transformation Officer)/最高変革責任者 首席エバンジェリスト、平野洋一郎代表取締役社長/CEO、島田由香 CWO(Chief Well-being Officer/最高ウェルビーイング責任者)

アステリアは、ノーコード(※注釈1)製品を通じたDXを推進してより働きやすい社会を実現すべく、今年、新たな幹部ポジションを設置し、5月にはCXO(Chief Transformation Officer/最高変革責任者)として中山五輪男が、7月にCWO(Chief Well-being Officer/最高ウェルビーイング責任者)として島田由香が就任しました。今回は新幹部2名とCEOの平野洋一郎を交えて、新ポジション設置の背景とその役割、新たな体制でアステリアが目指す未来について、徹底的に語り合いました。

平野 洋一郎(ひらの よういちろう) 代表取締役社長/CEO

熊本大学工学部を中退し、ソフトウェアエンジニアとして8ビット時代のベストセラーとなる日本語ワードプロセッサを開発。その後、ロータス株式会社(現:日本IBM)でマーケティングおよび戦略企画の要職を歴任。1998年、インフォテリア(現:アステリア)株式会社創業。2007年、東証マザーズ上場。 2008年~2011年、本業の傍ら青山学院大学大学院にて客員教授として教壇に立つ。2018年、東証一部へ、2022年、東証プライムへ市場変更。

中山 五輪男(なかやま いわお) CXO(Chief Transformation Officer/最高変革責任者)首席エバンジェリスト

法政大学工学部卒業。複数の外資系ITベンダーおよびソフトバンクを経て、富士通の理事/首席エバンジェリストとして幅広く活動。2022年5月よりアステリアCXOに就任。スマートデバイス、クラウド、ロボット、AI、IoTの5分野を得意分野とし、年間約300回の全国各地での講演活動を通じてビジネスユーザーへの訴求活動を実践している。

島田 由香(しまだ ゆか) CWO(Chief Well-being Officer/最高ウェルビーイング責任者)

株式会社YeeY 共同創業者/代表取締役。慶應義塾大学卒業後、パソナを経て、コロンビア大学大学院にて組織心理学修士号取得。日本GEにて人事マネジャーを経験し、2008年ユニリーバ・ジャパン入社。2014年より取締役人事総務本部長に就任。2017年に株式会社YeeYを共同創業し代表取締役に就任(現職)。企業の経営支援や人事コンサルティング、組織文化の構築支援などを通じて、日本企業のウェルビーイング経営実現に取り組んでいる。日本の人事部「HRアワード2016」企業人事部門個人の部最優秀賞。「国際女性デー|HAPPY WOMAN AWARD 2019 for SDGs」受賞。Team WAA! 主宰、 Delivering Happiness Japan代表/チーフコーチサルタント、Japan Positive Psychology Institute代表。


――まずは今回CXO、CWOというポジションを新設し、中山さん、島田さんを迎えられた経緯をお聞かせください。

ふたりともそれぞれの領域の卓越したスペシャリストで、その信念がアステリアの目指す方向と完全に合致していました。実績の面でも人間的にもすっかりほれこんでしまい、一緒にやろうとオファーしました。

まず、中山は日本を代表するエバンジェリストであり、ソフトバンクや富士通などの先進的なIT企業で、新しい技術やトレンドについて広く世の中に啓発していく仕事を長年担ってきました。DXの流れのなかで、これからもっと日本を変えていこうというときに、誰もが簡単にソフトウェアの設計開発ができる「ノーコード」がキーワードになるという話で熱く語り合い、盛り上がりました。

実際に中山を迎えるにあたってその役割を検討したときに、「変革」というキーワードに合う肩書きにしたいと思い、Chief Transformation Officer(CXO)としました。通常「CxO」というと、CEO、CFO、CTOなど最高責任者の総称で使われていて「x」は小文字ですが、中山の肩書きは「CXO(Chief Transformation Officer)」、「X」は大文字です。ミッションはトランスファー、つまりアステリアを起点に日本を変革することに尽力してほしいという思いを込めました。

一方の島田は、アステリアがこれまでに取り組んできた働き方の進化と、アステリア社外への波及に一緒に取り組んでいきたいと思ってジョインしてもらいました。島田はこれまでに、日本GEやユニリーバ・ジャパンと名だたるグローバル企業の人事として活躍してきました。心理学の知見を生かして個人のモチベーションに着目した施策を次々に打ち出し、リモートワークやワーケーションなど柔軟で多様な働き方の実践を通じて、広く日本の企業や社会のウェルビーイング向上を目指しています。

アステリアでは以前から「働き方」というテーマについても取り組んできていますし、島田が提唱している「人の幸せ、自分たちの幸せ」という考えはアステリアの理念のひとつである「幸せの連鎖」と同じですし、それを体現しているオピニオンリーダーだとも感じました。私たちも島田の考えをもっと取り入れて、形にして、自社だけではなく数多くの企業外にも広めていきたいということを考えたときに、島田にChief Well-being Officer(CWO)としてのジョインを提案しました。

ふたりとも、今までなかったポジションを新たに作った上で参加してもらった、ということです。

――おふたりがアステリアにジョインした決め手となる、アステリアや平野社長に感じていた魅力は何でしょうか。

まず平野と出会った経緯からお話しします。
 日本にiPhoneが上陸してソフトバンクがiPhoneの販売を始めたころ、私はソフトバンクの中で初めてiPhoneエバンジェリストという肩書きを使って全国各地で講演をしていたんですが、その中でアステリア、当時はインフォテリア社でしたが、インフォテリア社と接点が生まれるプロジェクトがあったんです。そのプロジェクトではインフォテリアの製品を使って、とある大学の授業を変革していこうとしていました。その大学では当時、国内で初めて学部単位で新入生全員にiPhoneを配り、それを活用した授業へ変えていこうとしていました。

ところがiPhoneで授業をしようとすると、教科書閲覧用のアプリがない。そこで見つけたのがインフォテリアのHandbookです。実はそれ以前から平野のことは知っていました。というのも、もともとインフォテリアの共同創業者である北原淑行(副社長・CTO)は、私が新卒入社した会社の同期なんです。北原は当時から抜きん出た力を持つエンジニアで、その後の活躍も耳にしていましたし、平野のことも聞いていました。プロジェクトでの接点もあり、個人的な縁もありましたが、当時はまさかこの会社にジョインすることになるとは思ってもいなかったです。

 ジョインのきっかけとなったのは、エバンジェリストとして全国各地を回って講演を行ってきたことです。それらの講演では、特に中堅、中小企業の経営者と触れ合うことが多かったですが、話を聞いてみると、DXがまったく進んでいない。日本の全企業数のうち99.7%が中小企業と言われていますから、とにかく中堅、中小企業を救わないと日本は変わらない、何かよい手はないのかと悶々としていました。

そんなときに、平野が日本DX推進協会の森戸代表とふたりでノーコードについて語っている新聞広告をたまたま目にして、まさに日本の中小企業を救うのはノーコードしかないと、そこでビビッっときてしまって(笑)。居ても立ってもいられなくなり、話を聞かせてほしいとすぐに連絡を取りました。そこでふたりで話した時に、このノーコードを中心にして日本を変えるといったことに専念していきたいと伝えたら、一緒にやろうと言ってくれて。さらに平野のほうから、CXOという肩書きを用意してくれました。
「日本を変えよう」という話で盛り上がりましたね。肩書きは首席エバンジェリストだけでもよかったんですが、発信者側からだけのベクトルに留まらないトランスフォームをしていきたい、と思ってCXOにしました。
ご縁もあれば、日本を変える話でも盛り上がって、これはもう運命だと思って迷わず飛び込むことにしました。平野からはアステリア社内ではなく日本を変えることに専念してほしいと言われたので、早速ノーコード推進協会を立ち上げ、様々な会社を巻き込んで波をつくっていこうと進めています。とにかくエネルギッシュな気持ちを持ってジョインしました。
すごく共感できます。中山の話を聞いて共通しているなと思ったのは、私も日本を変えたいと思って生きているんです。私はそれを働き方という観点から取り組んでいますが、その思いを持っていたら、共通の知人を通じて平野と、ClubhouseというSNSで話をすることになり接点を持ちました。
前職時代には、ユニリーバの働き方変革を牽引した人事トップとして、この「Business Report」の対談にも登場してもらいましたね。
そうですね。話を聞けば聞くほど、創業の頃から働き方の多様性を広げたり、個人の働きがいを高めることに力を尽くされてきたことがわかり、平野の本気さが伝わってきました。私も長く人事の仕事に携わってきましたが、やはり組織の鍵となるのはリーダーだと感じていたので、平野のように信念を持って本気で行動を起こすリーダーが実際にいるんだなと感動したことを覚えています。

 もともと私自身、働き方の面から日本を変えようという思いでやってきましたが、そのなかで「働き方」「真の人材育成」「地域活性」「ウェルビーイング」という自分の人生のテーマが明確になっていきました。人生の時間は有限ですから、これからはこの4つのテーマに自分のエネルギーを注ぎ込みたいという気持ちで、前の会社を退職することを決めたのです。当時たまたま平野と会ってそんな話になり、だったら一緒に!と声をかけてもらいました。

 今後は、アステリア社内はもちろん、日本のウェルビーイングのあり方をさらに追求していければと考えています。私自身も月の3分の2を地域で過ごす働き方を選んでいて、今回CWO就任に際しては業務委託という形を取りました。画一的な雇用の形態にとらわれず、一人ひとりにとってよりよい形を実現していくこともウェルビーイングのひとつだと考えています。

――ウェルビーイングとはどういうものか、改めてご説明いただけますか。

「ウェルビーイング(Well-being)」とは、言葉どおり「良い状態である」ということ。私なりに定義すると、「なんかいい感じ」「いい調子」と思えることですね。「最近、調子どう?」と聞かれて「いい感じ」と言える状態が、ウェルビーイングが高いということです。

 これはつまり、ウェルビーイングは主観的でよく、他人と比べる必要もないし、働き方もそう。それぞれ自分が満たされた状態でいるから、存分に力を発揮できてパフォーマンスも高くなりますし、他人にも優しくなれて人間関係が格段に向上することが明らかになっています。大げさな話ではなく、ウェルビーイングが高まった先にあるのは世界平和だと考えています。
ソフトウェア業界は、昔から納期に追い立てられて残業が多いとか、日夜黙々とコーディングしなくてはならないなどと言われて、働き方の面でさまざまな問題を指摘されてきました。しかし、本来ソフトウェアというのは、人々の役に立ち、より便利で幸せな生活を実現するもの。ソフトウェアを通じて人々の幸せを増進したいという念いから開発した最初の製品が、ノーコード技術を使った「ASTERIA Warp」です。だから、ノーコードとウェルビーイングはつながっているものなんです。
つながっていますね。
まさにつながっています。圧倒的多数の中小企業が、なかなかDXを推進できない原因は、日本独自のソフトウェア文化にあります。欧米の企業では、業務システムは社内で内製するか、市販のパッケージソフトを買ってきてそれに合わせて業務を変えるという方法が一般的です。

ところが日本では、自社の業務に合わせてシステム開発会社に外注して作ってもらうことが当たり前になっています。中小企業は十分なIT予算が取れないため外注することが難しく、内製するための専門人材もいない場合が多い。ところがノーコードであれば、プログラミングしなくてもアプリケーションを作れる。専門知識を持たなくても基本的なパソコン操作ができる程度のスキルがあれば簡単に開発ができます。
システム開発を外注するのは、ストレスがかかりますからね。自分たちの業務を他人に理解してもらうのはなかなか難しい。
現場の業務を一番知っているのは現場の社員です。だからこそ自分たちに必要なツールを自分たちで開発していくのが一番です。当社のユーザー企業の例では、プログラミング経験のない“専務”が自らアプリケーションを開発しました。それを社員に渡して、各現場で自由にカスタマイズしていくようにしたら、アップデートを重ねてバージョンはすでに100を超えています。これを外注していたら、時間も開発費もかなりかかってしまいます。

 だからノーコードをより広めていきたい。実は私たちの周りって今やノーコードツールだらけで、使っているのにその意識がなく、さまざまなツールがあることを知らない。そこで私たちがノーコードツールの便利さを伝え、アプリケーションは自分たちで作り、改造し、メンテナンスする、そういう時代になってきていると伝えていきたい。それが中小企業を変えることにつながり、会社が豊かになれば社員も豊かになってくるし、まさにウェルビーイングにつながっていくんですよ。だからDXで何を実現しているのかといったら、会社やそこで働く人々、その周りの家族を幸せにすることにつながっていると、私は思っています。
ノーコードで業務が楽になるということですよね。日本人はどこか「楽をしてはいけない」と思い込んでいる節がありますが、「楽」という字が「楽しい」と同じなのは意味がある。もっともっと楽になっていいと思います。私自身、「ノーコード」という考え方を認識する前から、やっぱり仕事はできるだけデジタル化し、自動化していくことがとても大事だと感じていました。人事の業務をしていると本当にExcel祭りなんですよ。もう、きーってなって(笑)それがシステム導入によって、あ、もうこんなに早くできちゃったみたいな。全然違いますよね。

 そして何より、ノンストレスというだけでなく、自分なりに考えたものが形になり、瞬時に結果が出るというのは、個人のクリエイティビティを発揮できる素晴らしい場だと思いますね。日々の仕事の場で、こういう経験ができるとポジティブな感情が高まります。
実際、2022年に日本DX大賞行政機関部門で大賞を受賞した熊本県小国町では、職員が自らモバイルアプリの開発・運用を行い、試行錯誤を重ねながら、新しい機能や使い方のアイデアが現場からどんどん生まれています。むしろノーコードのツールを使うことで、自分たちの業務を見直したり、物事を論理的に考えるきっかけにもなっている気がします。

 ノーコード開発なら自分たちにもできるんだと、もっと多くの人に知ってもらいたいですね。

――それを広めていくために必要なことは何でしょうか。

やはり経営者が鍵になると思います。「私はアナログ派だから」と言い訳する人もいるけれど、こういう時代が到来していることを理解してほしい。自らリーダーシップを発揮して変革に臨み、思い切って現場に任せられるかどうかが重要ですね。
まさしく組織はリーダー次第だと思います。リーダーシップの発揮の仕方は人それぞれ自分らしくあればよいと思うのですが、周りを信頼できるかどうかが重要ですよね。きっとできるという信頼が前提としてあれば、どんどん現場に任せることができるはずです。
ノーコードであれば、外部にお願いしなくても自分たちで開発することができるんだという、そういう新しい時代が到来しているということを広めるのが私の役目だと思っています。この発想や考え方が組織の隅々にまで浸透して現場がどんどん新しい経験を身に付けていくと、その経験が連鎖的に広がっていく。これは、台湾のデジタル担当大臣であるオードリー・タンも言っていたことですが、DXとは実は、経験と経験をつなげていくものだと考えています。ITは機械と機械をつなげますが、DXで人と人を、経験と経験をつなぐ、そうしてまた新たな経験をつくり出していく。その新たな経験をつくり出すひとつの手段がノーコードだと考えています。

ーー日本の幸せをどのように想像されているか、教えてください。

大前提として、幸せというのは各々で定義があるので、まずは自分にとっての幸せが何かを分かっていることが大切だと思っています。つまり、何があると自分がご機嫌で、何 があるとそうではなくて、というように自分のことを基本的に分かっていて、自分のことをケアできている状態です。これができていると、人のこともケアできるんです。

それが進むと、私の中では結果として世界平和につながると思っています。もちろんちょっとした衝突は日々の中であったとしても、それは建設的な対話であって、不必要なストレスではなくなっていくはずです。ウェルビーイングが高い人は人間関係が素晴らしいという データもあるんですよ。関係性というのは、その人のその後の人生が幸せであるかどうか の一番の予言、”number one predictor”といわれているんです。だから関係性というものが鍵かなと思っています。ノーコードでストレスがなくなると余裕が生まれるでしょうから、人にも優しくできるようになると思います。
ノーコードツールを使っていると、物事を論理的に考えられるようになってくると考えています。Google マップやGPS情報、カメラ、マイクとか、自分たちの周りにあるいろいろなデジタル技術を集約して自分の業務に当てはめて考えてみると、新しい業務スタイルを生み出すことができるようになってきます。すると今までよりもストレスなく仕事ができるようになって、ノーコードのおかげで論理的に考えられるようになり、そうすると考え方が変わってきて新しい日本ができあがるような気がします。

――では最後に、今後の展望をお聞かせください。

平野や中山のような本気のリーダーとともに仕事ができることが、とても楽しみです。まずはアステリアの社員一人ひとりが、心から「なんかいい感じ」と思えるようにしていくこと。そしてアステリアというプラットフォームを通じて、日本全体がウェルビーイングを高めていくことに貢献できればと考えています。
日本の1億2千万人すべてが、ノーコードユーザー、ノーコードクリエーターとなって、技術を意識せずにアプリケーションを作れるような世界にしていきたい。そのためには1社だけでは難しいので、ノーコード推進協会という団体を2022年9月に立ち上げました。『日本のソフトウェア文化を変革する』をビジョンに掲げ、ノーコード思考を広く浸透させていきたいと思います。

(※注釈1) ソースコードを書かなくてもソフトウェアやアプリ等の開発ができる仕組み

この記事がよかったら「いいね!」
この記事を書いた人
瀬戸友子 フリーランスライター 情報サービス企業で新卒採用領域の各種情報誌の企画・編集を担当。語学系出版社で国際派キャリア情報誌の立ち上げなどを経験後、1996年よりフリーランスとして活動。HRを中心としたマネジメント分野を専門に、広くビジネス、キャリアに関わる取材・執筆を手掛けるほか、企業のIR、PRツールの企画・制作に携わる。