2022年11月10日

「ノーコード」をキーワードに日本のDXを切り拓く! 中山五輪男氏 アステリアCXO就任インタビュー

2022年5月、アステリアの「CXO(チーフ・トランスフォーメーション・オフィサー)」に就任した中山五輪男(なかやま・いわお)氏。なぜ今、アステリアにCXOとしてジョインしたのか? キーワードに掲げる「ノーコード」はどのように世の中を変えるのか? さらに今年9月に設立し、自身が代表理事に就任した「ノーコード推進協会」についても話を伺いました。


2022年5月、アステリアに「CXO(チーフ・トランスフォーメーション・オフィサー)」という新たな肩書きが誕生しました。そこに就任したのは、中山五輪男(なかやま・いわお)氏です。

<プレスリリース>CXO(Chief Transformation Officer)の新設と就任について初代 CXOに 中山 五輪男(なかやま いわお) が就任しアステリア製品による企業変革を推進!



過去にはソフトバンクの iPhone/iPadのエバンジェリストや、富士通の首席エバンジェリストとして活躍してきた中山氏は、なぜ今、アステリアにCXOとしてジョインしたのか? キーワードに掲げる「ノーコード」はどのように世の中を変えるのか? さらに今年9月に設立し、自身が代表理事に就任した「ノーコード推進協会」についても話を伺いました。

中山五輪男(なかやま・いわお)アステリア株式会社 CXO|ノーコード推進協会 代表理事

長野県生まれ。法政大学工学部卒業。複数の外資系ITベンダーおよびソフトバンクを経て、富士通の理事/首席エバンジェリストとして幅広く活動。2022年5月よりアステリアCXOに就任。ソフトバンク在籍時には、iPhone/iPadのエバンジェリストとして主にビジネスユーザへの訴求活動に邁進し、日本におけるスマートフォンの普及に大きく貢献した。スマートデバイス、クラウド、ロボット、AI、IoTの5分野を得意分野とし、年間約300回の全国各地での講演活動を通じてビジネスユーザーへの訴求活動を実践している。様々な書籍の執筆や複数のTV番組出演での訴求など日本を代表するエバンジェリストとしての活動をしつつ、国内30以上の大学での特別講師も務めている。

中小企業のDXに真正面から取り組みたい! アステリアCXO就任の背景

まずは、中山さんがアステリアのCXOに就任された背景から教えてください。
はい。私は2022年3月末まで富士通の首席エバンジェリストとして全国各地で講演などを行っていたのですが、中堅・中小企業の経営者の方たちが「自社でのDXがまったく進んでいないが、何を相談すればよいのか分からない」「自分たちだけではDXが進められない」と。企業のDXに対して、後ろ向きな声を聞くことが多かったんですね。

2022年に発表された世界デジタル競争力ランキングでも、日本は63カ国・地域のうち、過去最低の29位。中国や韓国、台湾などの東アジア諸国にも大きく遅れを取っている状況です。しかし、いったい何をどうすれば、日本のデジタル化に貢献できるんだろう? と。

そんなふうに今後の仕事についても悶々としていたときに、たまたま目に入ったのがアステリア社長の平野さんと、日本デジタルトランスフォーメーション推進協会代表理事の森戸裕一さんの対談記事でした。

【特別対談】「ノーコード」がDX人材不足を解決
今年3月頃に日経電子版広告特集で掲載された対談記事ですね!
もしかして、あの記事を見たことがアステリアへの入社につながったのですか?
まさにそうなんです。”ノーコードこそが企業のDXの救いとなる” という対談での強いメッセージに、ビビッと電気が走ったような気持ちになりました。そこからいても立ってもいられず、すぐに平野さんにメッセージを送ったのを覚えています。二人で直接会って、自分たちには何ができるのか? ノーコードがどんなふうに日本を救ってくれるのか? という話で盛り上がって…。
その会話が、アステリアCXO就任への大きなきっかけになったのですね。
そうですね。前職のクライアントは大手企業が中心だったので、世の中の企業の大半を占めている中小企業のDXにはダイレクトに関わることができませんでした。そうした背景もあって、日本のDX、特に中小企業のDXに取り組むならアステリアだ! と強く感じ、アステリアへの入社を強く希望したところ、「CXO」というポジションでの参画を平野さんから提案されるかたちで、2022年5月にアステリアにジョインしました。

もともと私がソフトバンクで働いていた頃からアステリアとは付き合いがあったし、現在のCTOの北原さんは私の旧友でもあります。20年以上前にIT分野で創業してから、ビジョンがブレない経営をしている平野さんのことを、私は経営者としてもすごく尊敬しています。
入社時に、平野さんから託されたメッセージやミッションはありますか?
平野さんには「中山さんはCXO、最高変革責任者だけど、アステリアを変革する必要はない。それよりも、中山さんに変革して欲しいのは日本です」ということを言われましたね。さすがは平野さん、いいこと言うな〜と(笑)。

もちろん講演などではアステリアの一員として製品の紹介もしていますが、アステリアの製品そのものをPRするエバンジェリストというよりも、ノーコードの素晴らしさを日本の中小・中堅企業に訴求していくのが私の役割だと考えています。その活動の延長で、必然的にアステリア製品の需要は高まっていきますから。

日本のDXに風穴を開ける「ノーコード」という考え方

先ほどデジタル競争力ランキングのお話もありましたが、日本でDXが進まない理由にはどういったものがあるのでしょうか?
多くは食わず嫌いではないでしょうか。組織というよりは、経営者の問題です。
経営者自身が「デジタル化を進めなければ!」という危機感を持っていなかったり、「自分にはよく分からないから」と学ぶ姿勢がなかったりする状況をこれまでも多く目にしてきました。

また、自分たちのDXにビジョンがないことも問題の一つです。
ビジョンがないことで、全く規模感の違う大企業のDXを真似しようとしたり、ライバル企業を意識しすぎてしまったり、デジタルに関する理解の乏しい経営者が中途半端に口を出してしまって現場が混乱したり…。「デジタル人材が社内にいない」「有名企業でないので人材が採用できない」ということもよく耳にしますが、ノーコード製品を使えば、自分たちで解決できるんです。そうしたDXの取り組み自体が話題になって、採用広報的な効果を生み出すこともありますよね。

日本にはベンダーロックイン(※1)という言葉が存在するなど、企業が外部のIT企業に、過度に依存している状況は正直ちょっと特殊なんです。ノーコード製品を使えば、これまでのようにエンジニアを雇わなくても、また大きな予算を使ってシステムを外注しなくても、プログラミングを一切せずにアプリやウェブサイトが作れるし、システム連携もできる。中小企業なりのDXがあり、社員自らが業務変革できる時代が来ています。

(注釈※1) ベンダーロックイン
特定のベンダー(メーカー)の独自技術に大きく依存した製品、サービス、システム等を採用したことにより、他ベンダーへの乗り換えが困難になること。



そもそもアステリアは1998年の創業当初から、プログラミングなしで開発できる「ノンプログラミング」の概念やソフトウェアなど、今の「ノーコード」に通じる考え方を打ち出していましたよね。中山さんが最も注目しているアステリア製品は何ですか?
現時点では、中小企業の悩みをピンポイントに、スピーディーに解決してくれるモバイルアプリ作成ツール「Platio」に最も可能性を感じています。

in. LIVE にも掲載されていましたが、Platioを導入したビルメンテナンスを主力事業とされている株式会社裕生さんの事例がありますよね。

<過去記事>アルコールチェックも社有車の管理もアプリで完結! ビルメンテの老舗企業が挑む、DXの裏側を徹底取材

企業の専務が3日で自社アプリを作ったという素晴らしい事例ですが、その中でも私が特に良いなと思っているポイントは、「現場の人たちがどんどん改良して、バージョンがいつの間にか105にまでなった」という話です

これがまさしくノーコードの醍醐味とも言えますよね。それだけ多くの現場の意見が取り込まれているわけで…。
そうなんですよ。外部企業にシステムを作ってもらって105回も修正したら、いくらかかると思います? って(笑)。10回バージョンアップしようが、100回バージョンアップしようが、10人で使って月額2万円。企業のデジタル化を予算を理由に断る理由は、もうなくなっています。

ちなみに九州のとある自治体では、100人の職員でアプリを活用して、月額4万7千円。しかも職員が他の職員にPlatioの使い方をレクチャーするなどして、自分たちでアプリの開発から教育、メンテナンスまで行っています。

ノーコードで日本のソフトウェア文化を変える。NCPAで掲げた大きなビジョン

2022年5月にアステリアのCXOに就任後はさまざまな活動をされていますが、一番大きな取り組みとして「ノーコード思考」を国内に広めるための「ノーコード推進協会(No Code Promotion Association 略称:NCPA)」を立ち上げられましたよね。

<プレスリリース>日本におけるソフトウェア文化を変革する「ノーコード推進協会」を9/1設立。システム開発の外注依存から脱却するノーコード思考の普及と定着へhttps://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000278.000010008.html


アステリア、サイボウズ、船井総研デジタル、INDUSTRIAL-X、シムトップス、セゾン情報システムズ、ウイングアーク1st の7社が発起人企業となって立ち上げられた協会ですが、こちらの活動内容について教えていただけますか?
はい。主には国内外のノーコードに関する情報の収集、提供、共有をメインに行っていて、ゆくゆくは中小企業を中心とした企業のDX推進状況の調査をし、「ノーコード白書」のようなレポートを発表したり、ノーコードに関する各種書籍の出版なども考えています。DX推進の妨げとなる要因を協会活動を通じて解明し、ノーコードでカバーできる業種・業態・領域の拡大も視野に入れているところです。
現在はどれぐらいの企業や団体が入会しているのですか?
2022年末までに加盟企業数30社を目指すことを目標に掲げていましたが、既に50社を超える新規申し込みが来ていて、想像以上の反響に驚いています。ノーコード製品を扱う企業はもちろん、これから活用したいと考えている企業の方も多いです。

これまで国内の企業や組織が業務アプリを開発するとなると、IT企業に依頼するのが当たり前でしたが、そうした日本特有のソフトウェア開発の文化を変えたいという大きなビジョンを掲げています。

文化を変えるというのはとてつもなく大きなことに見えますが、そもそも文化というのは人間の思考によって変わっていくものです。人間が何を考えるかが変われば、行動が変わります。そして行動が変わることで、作り出すものが変わる。そうした良い連鎖の先に、日本のソフトウェア文化の変化、ひいては日本のデジタル競争力の強化があると考えているんです。
そのためには「ノーコード思考」が欠かせないということですね。
はい。つい先日、「AI TALK NIGHT by Gravio」 にも出演させていただきましたが、日本デジタルゲーム学会理事の三宅 陽一郎さんが興味深い話をしていました。

三宅さんによると、2006年に発売された『PlayStation3』の制作の頃から、コンテンツ実装にはなるべくコードを書かないような開発環境を構築しているんだそうです。今の最新ゲームもほとんどはノーコード環境で開発されたものなんだと。

もちろんプログラマーは必要ですが、それ以上に、デザイナーやシナリオライター、新しい斬新なアイデアを持っている人材が実力を発揮できるという話がとても印象に残っています。
なるほど…。私たち一消費者としても、「BASE」や「Wordpress」みたいなノーコードツールでできた製品には日常で触れていますよね。
そうですよね。日本の小学校でもプログラミング教育が始まりましたが、ノーコードが定番化することで、プログラミングという作業そのものを学ぶよりも、目の前にある課題をどうやってデジタルで解決できるのか? ということを考えられる「デジタル思考」を育てる教育が必要になってくるはずです。

パソコンにコマンドを打って作業していた時代に、Windowsが登場したときのように。世の中が変わるときは一瞬です。

だからこそ私は ”ノーコードエバンジェリスト” として、アステリア製品に限らず、世の中にあるさまざまなノーコード製品がどのように世の中を変えるのか? という未来や、各業界にこれから起こるであろう変化について、多くの方に分かりやすく説明すること。”食わず嫌い” になっている経営者の方も含めて、私が講演する会場にいるすべての人たちが100%理解できることを目指しています。

これまでデジタル化を避けてきた人たちに、このメッセージを地道に投げかけ続けることで、世の中を変えていきたいですね。

これからのアステリアCXOとしての活動、そしてNCPA代表理事としての活躍、どちらもとても楽しみです。本日はありがとうございました!
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この記事を書いた人
田中 伶 アステリア株式会社 コミュニケーション本部・メディアプランナー。 教育系のスタートアップでPRや法人向けの新規事業立ち上げを経験。話題のビジネス書や経営学書を初心者向けにやさしく紹介するオンラインサロンを約5年運営するなど、難しいことをやわらかく、平たく解説するのが得意。台湾情報ウェブメディア編集長も務める。