2017年12月4日

AIが投資のアドバイスをしてくれる?話題の「ロボアドバイザー」について聞いてみた!資産運用がもっと身近になる時代に

フィンテックの新しい潮流としても話題となっている「ロボアド」。AIが人に代わって投資判断をするなんて… とまだ不安を抱く人も多いかもしれません。「ロボアドとは、人間の苦手な部分を技術でカバーしてくれるもの」と語る、マネックス・セゾン・バンガード投資顧問株式会社の野水さんにお話を伺いました。


こんにちは!in.LIVE編集部です。 最近、「ロボアドバイザー(ロボアド)」というサービスを耳にする機会が増えてきました。AIが投資のアドバイスをしてくれるそうなのですが……、一体どんな「ロボ」が登場するんでしょうか?

以前よりもぐっと身近になった「ロボアド」についてお話を聞くため、今回はロボアドサービス「MSV LIFE」を展開する、マネックス・セゾン・バンガード投資顧問株式会社の野水瑛介さんを訪ねました。

マネックス・セゾン・バンガード投資顧問株式会社/取締役営業部長 兼 MSV LIFE 統括責任者
野水 瑛介(のみず・えいすけ)さん

1986年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、JPモルガン・アセット・マネジメントに入社。銀行や証券会社を担当する投資信託営業に従事。その後ロンドンオフィスに駐在しジャパンデスクとして東京オフィスとのリエゾン業務を担当。帰国後、当時最年少でチームマネージャーに就任。2016年2月にマネックス・セゾン・バンガード投資顧問に参画。オンライン投資一任運用サービス「MSV LIFE」の開発責任者に就任し、2016年9月17日にサービスをリリース。「資産運用をあたりまえに」するべく、執筆や講演活動を展開中。

――さっそくですが、そもそも「ロボアド」って、どんなサービスを指すんでしょうか?

まず始めにお伝えしたいのが、ロボアドで行う「資産運用」というものが、世の中的にちょっと誤解されてしまっていて。短期的な収益を追求する「投機」などと混同されがちなんですが、資産運用とは、今お金がない人も長期で「資産形成」することを目指す、というものなんですね。

資産運用では、①長期②積立③分散④低コスト、という4つの要素を踏まえることが重要だと言われています。

ロボアドとは、AIを活用することで、投資のプロにアドバイスをもらうよりも低コストで、この4つの要素を踏まえた長期の資産形成が実現できる、というサービスなんです。

――なるほど。なんだかここ1,2年で急に「ロボアド」という名前を聞くようなった気がします。最近生まれたサービスなんですか?

ネット上で「ロボアドバイザー」「ロボアド」といった言葉が検索されるようになったのも、2015年末くらいからですね。ルーツはアメリカで、実はリーマン・ショック後に出てきたサービスなんです。

アメリカでは、IFAと呼ばれる独立系の投資のプロにお金を払ってアドバイスをしてもらって資産運用する文化が根付いているんです。ただ、プロに任せても、リーマン・ショックのようなことが起きてしまった。それなら、AIを活用して、手数料をもっと安く資産運用が実現できないか、と登場したのが始まりです。

――そうなんですね。なんだか「ロボット」というキーワードが先行していましたが、実際はこれまで人の手でやっていたことをテクノロジーの力を借りることでコストを下げ、より確実なものにするという発想なんですね。

ちなみにこの「ロボアド」というのにも、いくつか種類があると聞いたことがあるんですが……

はい。一般的には「アドバイス型」と「一任型」と呼ばれるアドバイザーがあるんですが、これはカーナビと自動運転に例えられています。

―― カーナビと、自動運転ですか。

分かりやすくいうと「アドバイス型」は、「いつまでにここに行きたい」と設定すると案内をしてくれるカーナビのようなサービスです。けれど、自分で運転して目的地にたどりつかないといけませんよね。一方、「一任型」は、目的地をセットすると、自分では何もしなくても目的地に連れて行ってくれるというものです。

自分で運転する楽しみも持ちたい人には「アドバイス型」がおすすめですが、長期的な目標だけは持ちつつも、運用自体はプロに任せたいという人には「一任型」がおすすめです。ただ、手数料は、何もしなくていい分「一任型」の方が割高になる傾向がありますね。

ちなみに私たちが運営しているMSV LIFEは「一任型」になります。
目的地到達までの過程は基本的に「ほったらかし」でOKなんです。時々、お客さまの判断が必要なときにはアラートでお知らせが来るような仕掛けになっているのですが、短期的な変化や変動に一喜一憂せず、長期的な目標に向けての達成進捗を見てもらえるようにサービス設計しています。

――誰でも簡単に、となると、やはり利用者は若い人が多いんでしょうか?

そうとも限りません。MSV LIFEの場合は40代、50代の方が多いですね。
ライフイベントを迎えた、もしくは近く迎えそうな人をターゲットにしています。「お子さんが生まれた」とか「転職をしよう」という、人生の節目にお金の問題って出てきますよね。そういう、人の人生に寄り添うようなサービスを目指しています。

アメリカだと、ロボアドって、1980年代以降生まれのミレニアル世代がメインターゲットなんですが、日本はちょっと事情が違うかもしれないですね。

――でも40代、50代だと、「AIが運用する」ということに不安を抱く人もいるのではないのでしょうか?

実は、ロボアドバイザーという言葉が、ミスリーディングなところがあって……。まるでワトソンやペッパーのようなAIが、投資判断をしているようなイメージがありませんか?

――あ、あります……(汗)。

そうですよね(笑)。
実はロボアドの「ロボ」って、一般にイメージするロボットというより、「アルゴリズム」という意味に近いイメージなんです。これは「クオンツ運用」と呼ばれる数理モデルを使った運用方法で、実は以前からプロ向けには用いられているものなんです。

弊社では、運用モデルの一部にAIの一分野である「機械学習」と呼ばれる領域を用いて、コンピュータで膨大なデータを処理しています。ファンドマネージャー2人で約200億円のお金を動かしているんですけれど、運用モデルが仕組化されているので、この運用額が仮に2兆円になったとしても、2人の作業量はほぼ同じなんですね。テクノロジーが進歩したことで、そうした運用に必要なコストも下がり、その分、お客さまにお返しできる部分がぐっと増えました。

「ロボアド」は、実はAIのホットトピックであるディープラーニング技術を用いて投資判断を行っているわけではないので、そこはちょっとがっかりされてしまうかもしれませんね(笑)。

――そうなんですね。確かに、イメージしていた「ロボアド」とはちょっと違ったかもしれません……。

 実は人間って、本質的には資産運用に向いてないんですよ。つい、下落している時に「怖いから」と売ってしまったり、周囲が儲かっていると高値でも「自分も!」と購入してしまったり、感情で行動してしまう。

ロボアドは、資産運用の「正解」を教えてくれるというより、「不正解」をしないようにアドバイスをしてくれる、と言うのに近いですね。「高値の時に買っちゃいけない」とか、「1カ月に一度はポートフォリオの中身をメンテナンスしましょうよ」とか。 感情を一切排除したデータによって仕組化をして、淡々と運用してくれるのがロボアドなんですね

サービスでも、人の感情を揺さぶりにくいように工夫しているんです。

私も自分の資産を弊社のサービスで運用しているんですけど……、マイページのスマホアプリのインターフェースでは、「日々いくら儲かったか」というのをあえて分かりにくくしていて、「目標金額の達成確率」が前面に出るようにしているんです。

――あ、ほんとですね。「達成率90%」って書いてある。

日々の乱高下で一喜一憂せず、達成確率に目が行くようにしてあるんです。 「ちょいと野水さん、落ち着きなさいよ。あなたの目標は30年後でしょう?」ってことですね(笑)。

ただ、預けっぱなしで見直さないと言うのもまた良くないので、この達成確率が一定ラインより下がると、アプリのプッシュ通知機能で「計画を見直してくださいね」とアラートが来る仕組みになっています。

――人間の苦手なところをAIがカバーしてくれる、というサービスなんですね。

そうですね。ロボアドに付加価値がないと感じるなら、一度、自分で全部やってみると良いと思います。毎朝アメリカの市場もチェックしてほしいですし、日経だけじゃなくて、ウォールストリートジャーナルやフィナンシャル・タイムズも読んでほしいですね。かつ、相場が良くても悪くても冷静でいて、かつタイミングを見極めてリバランスをして……。

――た、大変そう……。

ですよね。でもこれって、投資をやっている人にとってごくはあたりまえのことなんですよ。そういうあたりまえのことって、それが地味であればあるほど、人間は継続するのが苦手なもの。それを愚直にやり続けて、丁寧にメンテナンスを続けることで、小さなリターンを積み上げていくことが資産運用の王道なんです。

逆を言うと「自分で毎日色々工夫して運用したい」って人にとっては、「ロボアドがやってくれるようなことは、自分でできるよ」と言う感じかもしれませんね。

私たちのサービスって、「投資やってみたいんだけど、どうすればいいのか分からない」と言う方に、「入口」として使ってもらえればいいな、と思っています。良くいらっしゃるのが「月々1,000円積み立てても、1年で1万2,000円でしょう?仮に利益が出たって、どうせタカが知れてるじゃん」と言って、なかなか始められない。

――確かに、身に覚えがあるような……

知らないがゆえにバカにしちゃうところってありますよね。そうではなく、まずは少額でも初めてみる。それで投資の「土地勘」が分かれば、徐々に増額をしていけばいいんです。使ってみて「もう自分でできる」と思ったら、ロボアドは卒業してくれればいい。

まずは、日本に投機ではなく「資産運用」の文化を根付かせることを目指しています。

―― なるほど〜。今日お話を聞いて、ロボアドという技術の本質はもちろん、資産運用に関する考え方もずいぶん変わるのを感じました!ありがとうございました!

以上、いかがでしたか?
最近話題の「ロボアド」ですが、その言葉やイメージだけに振り回されず、その根本にある「資産運用」についての考え方や、技術を使ってカバーできる領域について、読者の皆さんにも知っていただけたらと思います。

野水さんによると、マネックス・セゾン・バンガード投資顧問株式会社は、「大切な人に、本当にすすめられる資産運用サービスを」という想いで大手の資産運用会社を飛び出して来た人たちによって設立された会社なのだそう。「資産運用を日本の“あたりまえ”にしたい」という想いを熱く語ってくれました。

テクノロジーによって、日本の投資の未来が変わる。でも、そのテクノロジーを支えるのは、人の熱い想いだったりする。編集部でも、実際に野水さんのお話を聞いて、なんとなく持っていた「危なそう」「ギャンブル」といった、これまでの投資のイメージが変わったような気がしました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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この記事を書いた人
in.LIVE 編集部 アステリア株式会社が運営するオウンドメディア「in.LIVE(インライブ)」の編集部です。”人を感じるテクノロジー”をテーマに、最新の技術の裏側を様々な切り口でご紹介します。