2020年4月2日

旧態依然な電話営業をAIが変える!コミュニケーションを可視化する話題のサービス「MiiTel」を徹底取材

AIを使ってコミュニケーションを可視化できると話題のクラウドIP電話「MiiTel」。開発を手掛ける株式会社RevCommの皆さんにお話を伺いました。


営業といえば、受話器を握りしめて猛烈に電話をかけ続ける姿をイメージする人もいるかもしれません。今でも行われる電話営業を象徴する姿ですが、最近では生産性改善を目的とし、フィールドセールスをインサイドセールス(内勤営業組織)にシフトする動きが活発化しています。

しかし、属人的に行う限り、売れる営業マンと売れない営業マンがいるのも事実。そのような現状に、AIを使って画期的なソリューションを提案しているテック企業があります。それが、AI搭載型クラウドIP電話「MiiTel」を手掛ける株式会社RevComm。2019年11月に開催された国内最大級のピッチイベント「TechCrunch Tokyo2019」でも最優秀賞を受賞し、事業の将来性の高さにいま大きな注目を集めています。

今回は、株式会社RevCommのCTO平村健勝さんに、「MiiTel」のサービス裏側や開発秘話について伺いました。

ブラックボックスだった電話営業のコミュニケーションを再定義

株式会社RevComm 執行役員 CTO 平村健勝さん(ひらむら たけかつ)さん

東京工業大学大学院修士課程を修了し、アクセンチュア株式会社に入社。データサイエンス部門のマネージャーとして、最先端技術を活用したプロダクトの開発やコンサルティング案件を指揮。2018年6月より、コミュニケーションを科学するクラウドサービスを開発するスタートアップ企業、RevCommに創業メンバーCTOとして参画。

突然ですが私、電話営業に苦手意識があって、売れる営業マンたちがなぜあんなにスムーズにコミュニケーションできるのかが分からないんです…。
RevCommさんではこういった電話営業における課題を解決するサービスを開発していると聞き、とても興味を持ちました。どのようなコンセプトでこのサービスを着想されたのですか。
電話で話した内容は、営業担当と取引先それぞれ当人だけにしか分かりませんよね。電話営業でなされているコミュニケーションはまさにブラックボックスなんです。

電話営業担当者と訪問営業担当者が別の場合、課題をヒアリングして、アポを取った人とは違う人がお客さまのところに行くことになります。電話で伝えられた課題や現状を全てメモしているわけではないので、結局もう一度最初からヒアリングする必要がありますよね。これは取引先にとっても、訪問営業の担当者にとっても良くないことです。
電話営業業務をアウトソーシングしている場合、そういうパターンがほとんどかと思います。コミュニケーションとしても二度手間ですよね。
上司からしても、売れる営業マンと売れない営業マンで何がどう違うか、なぜこの人材がトップ営業マンなのか? ということが分かりづらいのです。そうした従来の電話営業をAIで解析・可視化してくれるのが、AI搭載型クラウドIP電話「MiiTel(ミーテル)」です。

MiiTelを使えば、これまでトップ営業マンに見られた特徴的な傾向も数値化されるし、会話内容も録音して振り返りができます。MiiTelを使った電話内容がすべて確認できるので、トップ営業マンの録音音声を聞きながら、売れない営業マンの改善点も指導できるようになります。

だいたい営業が苦手な人や新人営業マンは、想定外の質問に弱いんですよね。たとえばクラウドサービスの営業においては、「御社の製品はセキュリティーは大丈夫なんですか?」のようなオープンな質問を突然お客さまから聞かれると即答できない場合があります。
わかります。「え、あ、」とか動揺してしまいます。とりあえず「確認して折り返し電話します」って言っちゃいます(笑)。
よくありますよね。でもトップ営業マンは違います。製品について正しい情報を伝えた上でお客様に納得いただけるような提案ができるのですが、言い回しひとつにしても、苦手な人には難しかったりしますよね。
トップ営業マンにだけ知見が貯まって、他の人は模範解答がわからず苦手なままって印象があります。
そうなんです。これまで電話営業を正しく順序立てて学ぶツールがなかったんですよね。たとえば、パイロットはフライトシミュレーターがあって、正しい操縦を参考にしながら練習をします。まさにMiiTelでできることがそれなんです。

また同時に、会話の内容を残すことでサービスや製品に関する顧客の意見や要望などもしっかり吸い上げてくれます。重要な顧客の意見ですが、なかなか開発の現場にまで届かないんですよね。
正直、機能の改善リクエストなんかは営業のKPIには直結しないことが多いですものね。それに要望を聞いても、テクニカルな用語が出てくるといまいちよく分からない… ということもありそう。
営業担当から製品やサービスに対する要望があった際に、その要望の背景まで聞いてみると実は本当にお客様が望んでいたものと違っていた、といったケースがあると思います。例えるなら、営業担当から「ドリルをください」という要望を聞いた場合に、なぜお客様はドリルが欲しいのか聞いてみたところ「木に穴を開けたい」と。「それは何cmの穴ですか」と聞くと、「1mくらいです」と。それはドリルではなく、チェーンソーを使ってくださいってことになるんですよ(笑)。

インサイドセールスはプロダクトのスペシャリストではないので、お客様の本質的な課題が分からないままということもあります。もし同じ電話内容を開発側が音声で聞いてみたら、相手が何に困っていて何が必要なのかまで理解ができるケースも多いんです。MiiTelが「コミュニケーションの在り方を再定義している」というのは、そういったところからです。

会話のスピードや声の特徴まで!? AIが明らかにする売れる/売れない営業マンの違い

単純に電話の音声内容を残すということだけなら既存のツールでもできると思いますが、MiiTelであれば、その電話営業のアポ成立数などもデータとして残しておけるのでしょうか?
はい。例えば、電話を切ったあとにその後のアクションや営業結果についてメモを残せます。 「MiiTel Analytics」という画面では、音声内容や応対評価、音声評価、話速など話し方の傾向までわかるようになってます。

うわぁ!自分の営業がスコアで出ちゃうんですね。ちょっと恥ずかしい…(笑)。話し方の傾向って、具体的にどういうことですか?
たとえば「被り回数」という項目があるのですが、これは相手が話している最中にこちらが被せて話すことです。被り回数が少ないと聞き上手とも言えますね。
それ、営業じゃなくて日常の会話においても、コミュニケーションしていて気持ち良い人の特徴としてありますね。
そうですよね。たとえば、当社営業の一人は、入社した当時は相手に被せて話すことが多かったんです。しかし、データをみてこの「被り回数」をはじめとした各種項目を改善したことで、今ではトップ営業マンです。
具体的に何を直せばよいのか明らかになるのはすごく有り難いですよね。
彼は証券の営業でトップの成績だったので、とてもトークがうまいし、お客様の感情に入りこむのが得意なんです。でも、それゆえ話すのが少し速いんですよね。そういった話し方だと、製品が変わるとうまくいかないことがあります。MiiTelを通じて、営業の仕方を客観的に見ながら改善してくれています。

株式会社RevComm VP of PR&marketing 藤村侑加さん(ふじむら ゆか)

リクルートにて4年間セールス、DHCとTOOTにて5年間PRマネージャーとして広報業務に従事し収益拡大に寄与。2019年広報としてRevComm入社。東京女子大学卒。

MiiTel上に「talk:listen比率」という項目があるのですが、営業担当者と顧客担当者の発話量の比率が数値化されます。商材により異なるものの、4:6で顧客に話していただくよう引き出す会話をすると印象が良いそうです。無形商材ですと、こちらが多めに話すと成果に繋がるというデータも出ています。
えええ!そんなパターンが!

AIによる自動解析項目はほかにも、会話の「ラリー回数」や「沈黙回数」も分かります。質問にパッと返せないとか、答えにくい質問を振っていないかを見る指標にも使えると思います。
あとは音声認識できるので、会話の内容を文字起こしすることもできます。
機能が次々と!(笑)すごい。
電話しながら必死にメモを取る作業が必要ないんですね。

前職の営業時代提案後は必ず、Salesforceなど顧客管理ツールの活動履歴に議事録を残す必要がありました。それを上司やチームに分かるように考えながら入力すると、20分ぐらいあっという間に過ぎてしまうんですよね。

MiiTel上に残った電話の解析結果やメモをリライトしたり、場合によってそのままリンクで共有すれば、一目瞭然なので作業時間も短縮できます。
なるほど。それでなおかつ、売れる営業マンのコミュニケーションをそのまま真似できるわけですね。新人教育にもすごく良さそうです!

新人教育に使う企業さんも多いですよ! 元々かなりの時間をかけていた教育が驚異的なスピードで進むため、入社3カ月めの新卒メンバーが電話営業だけで受注をいただけるようになったり、初受注まで平均1ヶ月かかっていた企業様が1週間で受注できたという声もいただいています。

また実際の導入企業さんからもアポの獲得率が62%もアップし、成約率も56%アップしたというお話も聞いています。 数値的な部分でもしっかりMiiTelの効果を実感していただいていますね。

各領域で専門性の高いエンジニアが集まり、他社には真似できない製品に

MiiTelの開発において、ここの技術に苦労した!という点はあるのでしょうか?
正直なところ、MiiTelってなかなか真似できない製品なんです。インターネットを使った音声通信アプリはいくつか開発されていますが、電話の音声通信網を使ったサービスを開発するにはより高い水準の技術が求められます。 他にも音声認識や、音から分かる統計情報を分析し、定量化するところ。これは世界的にも我々しかやっていません。また電話音声を再生するときに音質をより良くするといった細かい工夫や、誰も思いつかないような技術を見えないところに沢山活用しています。

また、それらの情報をどのように表現すればよいのかUI/UXを徹底的に研究してWebアプリケーションやモバイルアプリケーションを開発しています。
意地悪な質問ですが、もう少し苦労話を聞きたいです(笑)。

製品開発を推進する体制ををつくるのには結構苦労しましたね。
MiiTelの開発は通常のWebサービス開発と異なり、開発を担当するエンジニアのバックグラウンドが多岐に渡っています。音声通信インフラを担当するエンジニアは比較的レガシーな技術が得意ですし、リサーチチームは大学院で博士課程を修了したの研究者がいたり。そういう人たちが集うとやっぱりカルチャーが違うんですね。そういったカルチャーが違う人たちが一緒にものづくりをするためにはどうすればいいのかを戦略的に考えました。

その結果、プロジェクトの初期からマイクロサービスといって、プロダクトをいくつかの部品に分解して、それぞれで部品を作るように開発を進めています。飛行機に例えると、胴体やエンジン、コックピットなどの部品を各社が分担して開発し、最終的に組み立てて1つにするように作っています。
部分部分によって、必要な技術が変わってくるってことですね。
それを皆でつき合わせることで、その領域のスペシャリストが強みを発揮できて、かつスピードも落とさず開発することができます。

全てのボイスコミュニケーションを可視化できる世界に

最後に今後RevCommが目指していく世界についてお聞かせください。
電話営業だけではなく、訪問営業のコミュニケーションも可視化していきたいです。訪問先でどのような会話がなされたのかをデータ化し、現場の声を集めたいです。それができるようになれば、すべての営業シーンはもちろん、会議の声も集まる。

全てのビジネスにおけるボイスコミュニケーションのデータが全部RevCommに蓄積されていく。そしてより効果的なコミュニケーションができるようにしていく。そういった世界を目指したいです。
すべてのコミュニケーションにおいて、より良い結果を生み出せるようになっていくのですね。
究極で言うと、AIによる経営判断ができるといいですね。
これはすぐさま実行できる話ではないですが、今お伝えしたような全てのデータが集まれば、会社の経営判断や経営層の意思決定に必要な情報が全てデータ化されます。会議の内容などを通じて、会社のリスクも含め全て分かるようになれば、極論、経営者もいらなくなると思っています。経験や度胸で意思決定をすることはなくなってくるかもしれません。

確かに…。まさか電話営業の話から、そうした新しい社会のあり方までお話が伺えるとは思っていませんでした!目からウロコです。
千里の道も一歩から、みたいな感じで進めていく話ですけどね。今ある無駄や不確かなものが一つずつ改善されていく。MiiTelがそういう世界をつくる第一歩になれば良いなと思っています。

編集後記

以上、いま大注目のベンチャー企業 RevComm のお二人にお話を伺いました。 電話での営業に苦手意識があった私ですが、MiiTelを使うことで、営業する側はもちろん、営業される側もストレスフリーになっていくのではないかと感じさせられました。

営業のやり方とその改善点の洗い出しといった課題も解決してくれる MiiTel。電話営業のみならず、すべてのボイスコミュニケーションが再定義される未来がすぐそこに近づいています。今後のRevCommのニュースにもどうぞご期待ください!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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この記事を書いた人
成瀬夏実 フリーランスのWEBライター。2014年に独立し、観光・店舗記事のほか、人物インタビュー、企業の採用サイトの社員インタビューも執筆。個人の活動では、縁側だけに特化したWEBメディア「縁側なび」を運営。