2025年12月16日

シンガポール発のDEA社は、なぜ日本でゲーミフィケーションを実現できたのか? 発想の転換で叶えた ”Play to Earn”

日本において “Play to Earn” を堅実に実現してきたDEA社が、2025年度中に日本法人へと転身し、将来的には東証グロース市場への上場も視野に入れていると発表しました。本インタビューでは、共同代表でファウンダーの山田耕三氏に「課題解決型ゲーミフィケーション」が生まれた背景や、日本におけるweb3の可能性、さらにDEA社が描く未来の展望について詳しく伺っています。


NFT や暗号資産を活用した web3 ゲームは、単なる娯楽を超えた新しい価値創造の可能性として注目されてきました。「Axie Infinity」や「STEPN」をはじめ、世界中で一大ブームを巻き起こしたタイトルもありますが、急速に盛り上がる一方で、ユーザー急増に伴うゲーム内通貨の価値暴落など、課題も浮き彫りになっています。

そんな中、日本において “Play to Earn” を堅実に実現してきた企業があります。
それが、シンガポール発のDigital Entertainment Asset(デジタル・エンターテインメント・アセット/DEA)社。同社はゲームを純粋なエンターテインメントではなく “社会課題を解決する仕組み” として再定義し、「課題解決型ゲーミフィケーション」という独自のアプローチを推進してきました。

中でも、2024年4月にスタートした東京電力との共同事業「PicTrée(ピクトレ)」は、電柱などのインフラ設備をユーザーが点検するゲームとして注目されており、日本におけるゲーミフィケーションの成功例として、着実に実績を積み重ねています。

◆ ピクトレ公式サイト
https://pictree.greenwaygrid.global/

2025年度中に日本法人へと転身し、将来的には東証グロース市場への上場も視野に入れていると発表した DEA社。本インタビューでは、共同代表でファウンダーの山田耕三氏に、「課題解決型ゲーミフィケーション」が生まれた背景や、日本におけるweb3の可能性、さらにDEA社が描く未来の展望について、詳しく伺いました。

お話を伺ったのは……

山田耕三(やまだ・こうぞう)氏|DEA Founder & Co-CEO
1977年生まれ。東京大学法学部卒業後、2002年にテレビ東京入社。音楽・バラエティ番組を中心に番組制作を担当。 2018年 シンガポールにて、DEA社創業。東京電力との協業・市民参加インフラ点検陣取りゲーム「ピクトレ」をはじめ 課題解決ゲーミフィケーション事業を展開。Web3とゲーミフィケーションの専門家として発信、講演活動多数。

<聞き手・アステリア株式会社 ブロックチェーンエバンジェリスト 奥達男>

web3ブームの幕開けと共に生まれた、NFTゲームの先駆者

DEAさんとは、2019年頃、BCCC(ブロックチェーン推進協会)のイベントでご一緒したことがありました。当時からweb3領域でとても注目されていた印象がありますが、改めて、DEA社を創業した背景について教えてください。

もともとは、共同代表の吉田がゲームでお金を配りたいと話していたのがきっかけです。創業当時(2018年)はICO(Initial Coin Offering)ブームで、自社トークンを発行して配ることで成功している企業も多々あったんですよね。

私自身は前職のテレビ東京を辞めたところで、これまでの業界ではできなかったことにチャレンジしたい! という前向きな気持ちもあり、吉田のアイデアに飛び込みました。当時、日本では暗号資産を自ら発行することが難しかったので、シンガポールに法人を設立することになったんです。
もともとグローバルを視野に入れていたのでしょうか? ‎
そうですね。解像度は低かったですが、ブロックチェーンゲームがグローバル市場で跳ねれば、数百万、数千万のユーザーを獲得できる可能性もあるだろうと純粋な期待がありました。

2020年にローンチした最初のゲームは4カ国語対応でしたね。特にインドネシアには注力していて、私たちが発行した暗号資産の DEP(DEAP coin)はインドネシア最大の取引所「INDODAX」にも上場しましたし、最大級の暗号資産取引所であったOKEx(現・OKX)にも上場しました。
まさにweb3ゲームが一斉を風靡した時代ですよね。
当時ブロックチェーンゲームといえば「Axie Infinity」が有名でしたが、DEA社の「Play Mining」は、それ以上に多くのユーザー数を抱えていたそうでーー。
はい。急成長する業界の勢いに乗って「JobTribes」や「Lucky Farmer」など、次々とブロックチェーンゲームをリリースしていました。

黎明期で手探り状態でしたが、とにかく一般ユーザーを巻き込むという明確な方針を持って、幅広くサービスを展開していましたね。

ゲーム×web3の相性は悪かった? ブームの終焉で得た学び

しかし「Axie Infinity」をはじめ、多くのプロジェクトが2021年頃にピークを迎え、その後、価値が急落しました。姿を消してしまったプロジェクトもありますが、DEA社にとっても、まさにこれがビジネスモデル転換のきっかけとなったんですね。
はい。私たちを含め、同じ波に乗っていた多くのプロジェクトが「さあここからどこに進もうか」と。

ただ私はこの経験をきっかけに、ひとつの大きなインサイトがあったんです。それは何かというと、そもそも「エンターテインメントであるゲームと、デジタルワールドに現実を持ち込むブロックチェーンというものの相性は非常に悪い」ということです
え! そうなんですか!? 多くのエンターテインメント企業は、web3技術に可能性ばかりを感じているのだと思っていましたが……。
そうですよね。業界の人々からすると、世界で約30兆円規模の市場があると言われているゲーム業界に、デジタルデータとして価値を保存できるものが入ってきたら、ビジネスがとてつもなくスケールするのではないか? という仮説を持っていたと思います。

ただ本質的なことを考えると、ゲームを含むあらゆるエンターテイメントって、言葉を選ばずに言うと「現実逃避」なんです。それに対して、ブロックチェーンというのは「デジタルワールドに “現実” を持ち込むもの」。それぞれが実現する体験価値は全く異なるんですよ。

だって、ものすごく面白いゲームを世界観に浸って楽しんでいるときに「このアイテムをマーケットプレイスで売ったらいくらなんだろう……?」なんて考えたくないじゃないですか(笑)。純粋なエンターテインメントとしての気持ちが盛り下がると思いませんか?

言われてみれば確かにそうですね。冷めるわ!って(笑)。
一方で、日常的にゲームをプレイしない人たちはたくさんいます。むしろそちらのほうが多数なんです。つまり、世界中の半分以上の人たちは、ゲームという現実逃避のアクティビティにのめり込んでいない。この人たちは、なぜゲームをしないのか? と問われると「現実世界において意味がないことに時間やお金を使いたくない」と言うんですよ。

それって見方を変えれば、もしもゲームが「現実を良くするための手段」であれば、もともとゲームをしない人たちも、ゲームに夢中になる可能性があるということですよね。この気付きこそが、DEA社のプロジェクトの新しいコンセプトである「課題解決型ゲーム」に繋がりました。
うーん、それは納得のいく話です。これはゲームやエンタメ業界にいる人は見えない視点かもしれませんね。

一方で、日常的にゲームをプレイしない人たちはたくさんいます。むしろそちらのほうが多数なんです。つまり、世界中の半分以上の人たちは、ゲームという現実逃避のアクティビティにのめり込んでいない。この人たちは、なぜゲームをしないのか? と問われると「現実世界において意味がないことに時間やお金を使いたくない」と言うんですよ。

ゲーム業界の人からすると、ゲームというのはそれ自体が目的であって、手段ではない。ゲームにユーザーがお金を使わないことは、それ自体が失礼なことですから。

私はもともとテレビマンで、自分が作るコンテンツや番組はいつも ”手段” でした。コンテンツは常に、企業の広告をよりよく見てもらう手段として存在していて、民法の番組にお金を払ってくれる視聴者は基本的にいません。今振り返ってみるとこの発想をゲームに当てはめたことが、事業のピボットの成功に繋がったと感じますね。

社会課題の解決に挑む、“インフラ点検ゲーム”というアプローチ

そこから toB のプロジェクトに振り切り、社会課題を解決するという目的を持ったweb3ゲームの開発に取り組むわけですね。
はい。2024年4月にスタートした東京電力との共同事業「PicTrée(ピクトレ)」は、街のインフラ設備(電柱など)を撮影して点検するゲームとして、ユーザー数を順調に伸ばしています。

ピクトレのユーザー(ピクター)は電柱を撮影することで1本数十円程度の報酬を得ることができます。熱心にプレイすると時期によっては月に20〜30万円相当のポイントを獲得することができ、実際累計で100万円近くを獲得したピクターもいます。

社会課題を解決するという目的において、ブロックチェーンやNFT、暗号資産というのは非常に威力を発揮します。ゲーム内だけの価値ではなく、 ”実際のお金が入ってくる” というリアリティが人を動かすからです。
現在は、長野県や山梨県、福島県など、ローカルエリアでの実証実験などが多いんですよね。地域によってはITリテラシーの差もあるのではないかと思うのですが、地方での展開ならではの難しさはありますか?
確かに、ITの知識という点では様々だと思います。ただ、CEOの吉田はもともと北海道出身で「地方に住んでいるとそもそも娯楽が少ない」という話をよくしていたんですよ。ピクトレは電柱さえあればそれが遊びになるので、老若男女に対して娯楽を提供する、という観点でも価値があると考えています。 ‎
そうなんですね。ちなみに現在は、日本の事業者との協業が多いようですが、グローバル展開も検討されているのでしょうか?
そうですね。これまでもピクトレを引っ提げて、アメリカ、東南アジア、サウジアラビアなどに視察へ行きました。ただインフラ点検の仕組みは、国によって大きく異なることも多いんですよ。現時点だとまだまだカスタマイズが難しいところだなと感じています。なので、まずは日本で型を作ってから展開するのが良いだろう、というのが私たちの考えです。

「ゲームで遊ぶと企業のコストカットにつながる」という概念は、どの国の人にとっても最初は理解しづらいものです。日本において仕組みと実績がしっかりできれば、後々それを輸出することは可能だと思っています。 ‎

私たちがやっているようなエンターテインメントと課題解決を組み合わせるというアプローチは、非常に日本的だと感じています。コンテンツ大国であり課題先進国でもある日本が、ゲームコンテンツやエンターテイメントを使った社会的意義のあるソリューションを作って世界に広めていく、というストーリーには可能性がありますよね。

なるほど。ピクトレの今後のビジネスの広がりについて、教えてください。
ピクトレは、人が足を運んであらゆるものをあらゆる形で調べるプラットフォームなんです。もともとは「電柱点検のコストを削減したい」というところからスタートしましたが、今では通信インフラや、郵便ポスト、防災、河川点検、さらに観光スポットの写真撮影による地域創生など、さまざまな分野に応用できると確信しています。

日本でビジネスとして成功する Play to Earn は、BtoB や BtoG(Government)だった。これは、私たちがweb3ゲームの全盛期からこの領域に取り組んできたからこそ分かったことですね。

ついに日本へ —— DEA社が描く ”地球規模の経済圏”

日本におけるweb3ゲームの成功例となっているDEA社ですが、2026年初には日本法人として、新たなスタートを切ると聞きました。シンガポールから日本に拠点を移す判断をされたのはなぜですか? ‎

私たちが創業した2018年頃は、シンガポールはweb3や暗号資産に寛容な国だったのですが、その後は状況が変わり、現状では世界の中でも特に規制が厳しい国になっています。一方、日本はルールを整えて産業を活性化させる方向に進んでいるので、これは追い風になるだろうと。

代表の吉田はこれまでに3社の上場経験があるので、まずはDEA社として東証に上場してからグローバルへの展開を目指す方針に切り替えました。
ピクトレ以外にも、今後展開予定の事業があるのでしょうか?
はい、地球規模での分散貢献を可能にするものを中心に、現在10以上のプロジェクトが進行中です。

個人的に推したいのは、みずほ銀行を主要株主とするBlue Labさんと実証実験を行った地域創生プロジェクト「ご当地ひみつ結社」というプロジェクトですね。これは地元企業や自治体から出されるPR拡散協力などの簡単なミッションを、ユーザーが毎日数分程度でこなし、ポイントを獲得しながら地域と関わる「ポイ活ゲーム」です。日本国内だけではなく、全世界、あらゆる場所にいる人々が特定の地域について学び、愛着を持つようになれる仕組みを作っています。

他にも、遠隔ゴミ分別ゲーム「エコキャッチャーバトル」では、フィリピンにいる障がいのある方が、新潟の工場を遠隔操作するという実証実験も行いました。こうした “地球の裏側にいる人の力を借りる” という発想は、多くの社会課題解決の糸口になると考えています。

それに対して小額の報酬を国を超えて送金する、ということになれば、ここでまさにブロックチェーン技術が真価を発揮するわけですね。
そうです。まさに、地球規模での分散貢献を実現するためのweb3の活用こそが私たちの目指す方向性かなと。実はピクトレは私たちのポリシー上、web3やNFTを前面に出していません。地域や小さな経済圏のビジネスであれば、ブロックチェーンを必須にする必要はありません。一方、こうやって地球規模で全人類が参加する経済圏を作るならば、web3が必須になると考えています。

将来的には、空間を意識しないコミュニケーションや経済圏が生まれ、それがメタバースの再興につながるかもしれません。抽象的な話ではなく、私たちの具体的なプロダクトで証明していきたいと思います。 ‎
DEA社の今後の展開が、さまざまな業界を巻き込んだ経済発展につながりそうですね。非常に面白い話を聞かせていただき、ありがとうございました!

編集後記

インタビューを通して、DEA社が提唱する「課題解決型ゲーミフィケーション」が、これまでのweb3ゲームと違ってより実生活と結びついたリアリティのあるアプローチなのだということがよく分かりました。また国境を越えて人々が協力し、さまざまな社会課題の解決に参加できる仕組みは、web3技術の理想的な活用例とも言えそうです。

課題先進国としての特性を逆手に取り、グローバルに展開可能なソリューションを開発するーー。そんなDEA社のビジョンは、日本発のweb3サービスの可能性を示すはず。日本法人設立を皮切りに始まる、今後の展開からますます目が離せません!

最後までご覧いただき、ありがとうございました!

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この記事を書いた人
田中 伶 アステリア株式会社 コミュニケーション本部・メディアプランナー。 教育系のスタートアップでPRや法人向けの新規事業立ち上げを経験。話題のビジネス書や経営学書を初心者向けにやさしく紹介するオンラインサロンを約5年運営するなど、難しいことをやわらかく、平たく解説するのが得意。台湾情報ウェブメディア編集長も務める。