2023年12月1日

次のステージに向けた成長のキーワードはグローバルとサステナビリティ

アステリアでは、次なるステージに向けてグローバル戦略を強化するとともに、持続可能な成長を目指しサステナブル経営を進めています。この取り組みをさらに進化させるべく、今年6月、新たな経営陣を招聘。社外取締役に、長年外交官を務め、国際経験豊かな正宗エリザベスさん、社外監査役に気象予報士の資格を持ち、長年環境の研究に従事する根本美緒さんが加わりました。CEOの平野洋一郎を交えて、アステリアが目指す姿と社会への貢献のあり方について語り合いました。


左から正宗エリザべス(社外取締役)、平野洋一郎(代表取締役社長/CEO)、根本美緒(社外監査役)

アステリアでは、次なるステージに向けてグローバル戦略を強化するとともに、持続可能な成長を目指しサステナブル経営を進めています。この取り組みをさらに進化させるべく、今年6月、新たな経営陣を招聘。社外取締役に、長年外交官を務め、国際経験豊かな正宗エリザベスさん、社外監査役に気象予報士の資格を持ち、長年環境の研究に従事する根本美緒さんが加わりました。CEOの平野洋一郎を交えて、アステリアが目指す姿と社会への貢献のあり方について語り合いました。

アステリア株式会社 代表取締役社長/CEO
平野 洋一郎(ひらの よういちろう)

熊本大学工学部を中退し、ソフトウェアエンジニアとして8ビット時代のベストセラーとなる日本語ワードプロセッサを開発。その後、ロータス株式会社(現:日本IBM)でマーケティングの要職を歴任。1998年、インフォテリア(現:アステリア)株式会社創業。2007年、東証マザーズ上場。2008年~2011年、本業の傍ら青山学院大学大学院にて客員教授として教壇に立つ。2018年、東証一部へ、2022年、東証プライムへ市場変更。2023年、京都大学経営管理大学院の特命教授に就任。

アステリア株式会社 社外取締役
正宗 エリザべス(まさむね えりざべす)

在日オーストラリア大使館貿易促進庁に入庁後、インドネシア、ベトナム、韓国の大使館を経て、2011年まで在日豪州大使館の公使を務めた。2015年より、株式会社@アジア・アソシエイツ・ジャパンの代表取締役として、働く女性の意識改革、グローバル人材の育成、異国のビジネス文化理解とアジア進出など、多岐に渡るコンサルティング業務を行っている。2023年6月より、アステリア社外取締役に就任。

アステリア株式会社 社外監査役
根本 美緒(ねもと みお)

慶應義塾大学卒業後、東北放送のアナウンサーを務める。気象予報士の資格を取得後、2005年よりフリーアナウンサーとして、さまざまなメディアで活躍。2020年9月より、東京大学大学院新領域創成科学研究科環境システム学博士課程にて、地球環境学等の専門研究を行う傍ら、2022年6月に株式会社新日本建物社外取締役(現任)就任。2023年6月より、アステリア社外監査役に就任。

ーー まずは今回、なぜこのお二人を招聘したのか、会社としての戦略を踏まえて狙いを教えてください。

以前からアステリアは、会社として今後取り組むべき課題を想定し、先行する形で社外取締役や監査役を招聘してきました。その分野の知見を持ち、厳しくアドバイスしていただけるような方にお声がけして、社外取締役に着任していただきました。

現在、私たちが取り組んでいきたい課題の一つは、海外です。
もともと私たちは創業時から、「つなぐ」製品を通じて、世界に貢献することを目指してきました。今、世界は分断の状況にあり、つながることがより重要になっています。今年25周年を迎え、改めて起業時に目指した世界への取り組みを強化していきたいと考えています。

そのうえで、外交官としての国際経験や国家レベルでの知見をお持ちで、日本のこともよくわかっていらっしゃる正宗さんは、まさに適任者でした。また、オーストラリア出身であることも魅力です。ソフトウェア事業は、これまで特に米国と欧州に向くことが多かったのですが、近年、アジア・オセアニアの伸びが目覚ましく、日本との時差も少ないことから、非常に重要な地域になってきています。

もう一つの課題は、サステナビリティです。
2021年度からスタートした「中期経営計画STAR」の「S」はサステナビリティを表しており、重点項目のひとつに掲げています。ただ、これまで社外取締役のなかに、サステナビリティのエキスパートはいませんでした。もちろん私を含めて経営陣は皆、勉強していますが、SDGsの目標を見ても環境から人権まで幅広い課題がありますし、世代もジェンダーも異なる方に入ってもらい、サステナブルな未来に向けてさらに議論を進めていきたいという思いがありました。

今回、監査役で入った根本さんは、長年環境問題に取り組んでこられて、現在も大学院で研究を続けていらっしゃる方ですので、私たちの考えるサステナビリティ、環境への取り組みに、専門的な見地からさまざまな助言をいただけると期待しています。

ーー お二人が今回のオファーを受けた理由をお聞かせください。これまでのご経験を踏まえて、どのような貢献をしていきたいとお考えでしょうか。

私はもともとオーストラリア連邦政府の貿易促進庁に所属し、外交官として活動していました。貿易促進庁は、いわば企業のお手伝いをする組織ですので、その経験を活かして事業戦略への助言やサポートをしていければと思います。また、今までに日本、インドネシア、ベトナム、韓国などに駐在し、こうした国々の地政学的環境にも通じているので、アジア・オセアニア地域でのビジネス展開をサポートする知見を提供していきたいと思っています。

世界の分断が進むなか、デジタル技術は新たな形で世界をつなげるきっかけになると思います。ただし課題は、どのような形でつなげていくのか。サイバー攻撃のような負の展開もあり得るなかで、よりクリエイティブな発想で幸せな社会を作っていくことが大切です。

アステリアは、25年も前から「ソフトウェアで世界をつなげる」という素晴らしいフィロソフィーを掲げている会社です。社長の平野さんとお会いして、私も共通の使命感を感じ、ぜひお手伝いさせていただきたいと思いました。

大学時代に環境経済学を専攻していましたが、「いくら机上で理想論を描いていても、人の価値観が変わらなければ社会変革は起こらない。やはり大切なのは環境教育だ。」と思うようになりました。その後、報道の世界に飛び込みお天気キャスターをやりながら、ボランティアで子供たちに向けた環境教育にも取り組んできました。やがて、気候変動について改めて勉強したいと、上智大学大学院で修士号を取得後、東京大学大学院に入学。現在は理系に転身し、環境保全を推進する社会システムのモデル構築などに取り組んでいます。

長年にわたって環境の研究をしてくなかで、日本は世界に比べて踏み出しが遅いという印象をずっと持っていたのですが、近年、ESG投資の活況やSDGsへの意識が高まってきて、いよいよ日本の企業もやらざるを得ない状況になりました。海外では市民の声が社会を変える原動力になっている国/地域もありますが、日本では企業がムーブメントを起こすなかで人々の意識が急速に高まっていることを感じています。

その一方でアステリアでは、トップ自ら意識を持って、いち早く環境課題に取り組んできました。特に環境保全に関わる議論になると、企業によっては「本当に当社が取り組むべきことなのか」「事業へのメリットがあるのか」といったような疑問がつきつけられることが少なくありません。社外監査役として客観的な立場から、環境保全への取り組みが事業の持続可能性を高めることや、新たなビジネスチャンスを創造することに結びついていることを専門的な知見に基づいて説明できる存在でありたいと思っています。

ーー SDGsやESGの考え方が広がるなか、サステナビリティに取り組むことが、事業の発展や企業の成長にどのようにつながるとお考えですか

アステリアは1998年の創業当時から、社会のあり方そのものが「階層・規律・統制」から「自律・分散・協調」に変わっていくはずだと考えていました。組織構造に階層があり、規律によって画一的に統制されている時代から、一人ひとりが“自律”し、地球上どこに“分散”していても、必要なときにはチームとなり“協調”して動ける。そんな世界を実現するために、私たちは「つなぐ」製品を作っているのです。

この考えがベースにあったため、SDGsやESGなど新しく出てきた言葉も、非常にすんなりと受け入れることができました。今、私たちはいつでもどこでも人々がつながることのできるノーコードの製品を提供していますが、これを広めていくことが、SDGsそのものだと考えています。

むしろ、SDGsの17項目など社会共通の基準ができたことで、それまでの自分たちの活動を再確認し、新たな視点を取り入れていくことができるようなりました。活動を進化させていく上でも、上場企業としてステークホルダーへの報告をする上でも、わかりやすい指標として積極的に活用しています。
素晴らしいですね。昔からアステリアでは、SDGsやESGを具現化する事業を展開してきたと感じています。日本に限りませんが、多くの企業は、やらざるを得なくなってやり始めたところが多いと思います。

アステリアの製品を見ても、たとえばペーパーレス化につながるなど環境に貢献していますし、つながることによって働き方の自由度が生まれ、社会的にも明らかにプラスになっています。また株主総会や取締役会をオンラインで行うことで消費エネルギーの削減にもつながっている。アステリアにはこうした新しいことを積極的に取り入れる柔軟性がある会社だなというのが私が最初に感じた印象です。
ITによって、今まで不可能だったことが可能になるだけではなく、ダイバーシティの観点からも有意義だと思います。「自律・分散・協調」に社会構造が変わっていくと、個人の力がますます重要になってきます。大切なのは、それぞれの個人が自分のタレント(能力)を最大限に発揮できるような環境作りです。これまでは企業という組織単位で働くしかなかったものが、1人で働いていても皆とつながり、十分な生計が立てられるようになる。そうなれば日本という国もより栄えていき、世界のモデルになれるのではないかと思います。私自身もぜひそんな社会づくりに貢献していきたいと思っています。
新型コロナウイルス感染症が5類に移行し、もとの働き方に戻す企業も増加しています。しかし、オンラインミーティングやテレワークを進めれば、オフィスや地域などの場所に制限されることなく仕事をすることができます。「自律・分散・協調」が進化すると、まさに個を大切にする社会、柔軟性があり、多様な価値を認められる社会に近づいていくのです。

アステリアでは今も9割以上がテレワークを続けています。従来の画一的な働き方から脱して、個を大切にすることにより、生産性が高まり、競争力の強化につながることを我々自身が実践して社会に発信していきたいと考えています。
1980年代から日本は世界に名だたるテクノロジーの発信地なのに、なぜ日本のオフィスではそのテクノロジーを使わないのかと、昔から外国人のあいだでよく言われていました。ペーパーレス化もバーチャルオフィスも海外で普及しているのに、日本ではなかなか新しいテクノロジーを使いません。
部長がいるから帰れない、みたいなことも多いですよね。むしろそれがアピールになっていたりする。私は一時期米国に住んでいましたが、彼らは残業なんてほとんどしません。余暇や家族との時間を大切にしながら、でも生産性は高い。そういうシステムが確立しているんですね。

ですからアステリアの軽井沢リゾートオフィスは、とても斬新だと思いました。自然の中にいるほうが気持ちよく過ごせて、アイデアも浮かぶはず。自然との触れ合いを楽しんだり、家族と過ごすのもいいですよね。
コミュニケーションのあり方も変わりますね。
オフィスで目の前に座ってなければ、部下が何をやっているかわからないという古い発想から抜け出さなくてはなりません。地元で働いていても、違う形でつながってコミュニケーションを取り合いながら、チームとしての意識を持ちつつ、より効率よく、豊かな毎日を送れるようにする。従来のやり方とは180度違うので、そういったスキルを身につけていかなくてはなりませんが、逆戻りするのではなく、どんどん前へ進める必要があります。
それによって女性も働きやすくなりますよね。私は今、大学院の研究はほとんどリモートで行っています。ゼミもオンラインでできますので、最近ではゼミ生のなかでワーキングマザーの方が増えてきました。こうしうたツールを使えば、制約がある人でも、学び直しや、仕事で貢献することがしやすくなります。
一人ひとり事情は異なりますので、働き方の多様性が大切です。具体的には、働く場所と働く時間が選べるということですね。

アステリアはコアタイムなしのスーパーフレックスなので、コミットした成果が出せれば評価されます。世間ではジョブ型が流行っていますが、9時から5時まで会社の机に座っていることが会社全体のアウトプットに貢献するわけではないのですから。

せっかくテレワークが普及しても、監視されていたら楽しく仕事ができるわけがありません。政府の打ち出す「働き方改革」も、残業を減らすことばかりに重きが置かれています。大切なのは量より質で、働く時間と場所の多様性を実現すること。それによって生産性が高まることを私たちが実践して証明したいと思っています。

ーー 会社が成長・発展することによって、どのような形で社会に貢献できるのか。あるべき世界を作るために、アステリアができることはなんでしょうか。

まさに、「自律・分散・協調」の社会の実現に尽きると思います。時代に応じて、最初は会社の中心となるシステムをつなぐ製品から、今では個人のフロントをつなぐ製品まで作っています。最新の製品 Handbook X では、非中央集権型のアーキテクチャを採用し、中心に管理者がいなくても使うことができます。こうした次世代のテクノロジーを取り入れていくことが新しい社会づくりに貢献することにつながると考えています。
やはり世界の分断が様々な問題を引き起こしているなかでは、一個人として、社会の公器である企業として、何かできることはないか考えることが重要です。戦争や貧困、飢餓など世界を取り巻く課題に対して、テクノロジーを含めた私たちの叡智で解決することができるのか? SDGsが掲げる17の国際目標には、こうした課題を解決するための姿勢や指標が示されています。

アステリアとしても、教育を受けるチャンスを公平に提供したり、分断した社会をITの力でつなげる世界を救うような事業、そして持続可能な社会の構築に貢献できる企業へと発展していくことを願っています。
ノーコードが鍵になると思います。
私たちは2002年からノーコードの製品を提供していますが、ノーコードならコンピュータ言語を知らない人、もちろん子どもでも、積み木のようにシステムを組んでいくことができます。今のところ子ども向けには展開していませんが、教材ではなく、リアルにシステムを組んで動かせるものを扱うことで、子どもたちのコンピュータ教育も大きく変わる可能性があると思います。また、つなぐ技術で世界を救うという大きなテーマについても取り組んでいきたいと思います。
そういう活動を、社員が主体となってやっていけるといいですね。こんなことをやっていきたいというアイデアを社員から集めて、手を挙げた人が中心となって活動を進めていく。やはり人材こそがサステナビリティの中核ですから。

時間や場所を問わずに結果ベースで自由に働くには、その根底に価値観と使命感があることが重要になってきます。

私自身も政府の仕事をしていたときには、国のために働くという使命感や、自分がこれをなすことによって多くの人に貢献できているという達成感が、大きなモチベーションになっていました。事業を通じての貢献はもちろんですが、もっと幅広く、社員一人ひとりの社会に貢献していきたいという思いを支援していくことも大切だと思います。
言い換えると、社員のウェルビーイングが大事になるということですよね。
これからどんどんAIやロボットが台頭していくと、人間は単純作業から解放され、人間の生産性はどんどんクリエイティビティ(創造性)を意味するようになります。ではどうすればクリエイティビティを発揮できるかといえば、やはり心身が快適で健全な状態にあること、つまりウェルビーイングであることに直結するのです。やらされるのではなく、自分が喜びを感じられることに自発的に取り組むからモチベーションが上がり、結果的に生産性も高まるのです。

また、私たちは経営理念のひとつに「幸せの連鎖」を挙げていますが、自分が幸せであれば、それは周囲にも波及していきます。まず自分自身が幸せを感じる仕事をし、パートナー、同僚、そして世界へと波紋を広げていくことが、ビジネスにおける価値創出の継続性を担保し、会社のサステナビリティにもつながっていくと思います。

ーー 最後に、個人的な目標があれば教えてください。

一個人として、いかに社会に貢献できるのかをひたすら探求し続けていきたい。中学生の娘が、アフリカの子供たちの役に立つ仕事がしたいと言うのですが、自分の子どもに限らず、若い人たちの「こうしたい」「こうありたい」という気持ちに寄り添い、どうすれば夢を実現できるのか一緒に考えていける人でありたいと思っています。
私は他社でも社外取締役を務めており、大学の仕事もやらせていただいておりますが、やはり次の世代を育成することが、自分のライフワークだと考えています。価値観が変わっていき、サステナビリティの課題もますます重要になってくるなかで、これから世界を担っていく人たちをどう育成していくかが、我々世代の責任です。

アステリアの社外取締役としても、社員の「いきいきワクワク」を大切にして、若い人たちが自信を持って最大限に自分の力を発揮できるようサポートしていきたいと考えています。
個人的には日本のリーダー像を変えていきたいという思いがあります。
私自身、上場企業の社長ですから、「こうあるべし」と他人事で語る評論家にならずに、「こうありたい」という大義を持ち実践するプレーヤーであり続けたい。日本には現在3,800社以上の上場企業がありますが、そのうち社長の顔が見える会社が何社あるのか。

自分なりの大義を持つリーダーがたくさん生まれて、誰もが「こうあるべし」ではなく「こうありたい」という考え、発信できるようになっていくと、社会全体で楽しく仕事ができて、日本という国もさらに成長していけると信じています。
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この記事を書いた人
瀬戸友子 フリーランスライター 情報サービス企業で新卒採用領域の各種情報誌の企画・編集を担当。語学系出版社で国際派キャリア情報誌の立ち上げなどを経験後、1996年よりフリーランスとして活動。HRを中心としたマネジメント分野を専門に、広くビジネス、キャリアに関わる取材・執筆を手掛けるほか、企業のIR、PRツールの企画・制作に携わる。