2023年6月27日

AIを手軽にビジネスに活用できる未来を目指す、アステリアのAIへの取り組み

昨今、ChatGPTをはじめとするジェネレーティブAIの登場によって、AI関連技術は社会的にも強い関心を集めています。アステリアも早期からAIに着目し、研究開発子会社であるアステリアARTを設立してAI技術に取り組んできました。今回は、アステリアの副社長(CTO)・北原とアステリアARTの代表・園田で、これまでの取り組みを振り返りながらAI技術から生まれる未来の可能性について考えていきます。


昨今、ChatGPTをはじめとするジェネレーティブAIの登場によって、AI関連技術は社会的にも強い関心を集めています。アステリアも早期からAIに着目し、研究開発子会社であるアステリアARTを設立してAI技術に取り組んできました。

今回は、アステリアの副社長(CTO)・北原とアステリアARTの代表・園田で、これまでの取り組みを振り返りながらAI技術から生まれる未来の可能性について考えていきます。

アステリアArtificial Recognition Technology(ART)合同会社 代表
園田 智也 (そのだ ともなり

博士・情報科学(早稲田大学)。1997年、世界初の歌声による曲検索システム開発。2001~2003年、日本学術振興会特別研究員(文部科学省所管の独立行政法人日本学術振興会認定の日本トップクラスの若手研究者)。2002年、IPA未踏ソフトウェア創造事業採択。2001年、ウタゴエ株式会社創業。2019年、AI研究開発会社アステリアART合同会社代表就任。

アステリア株式会社 取締役副社長/CTO、共同創業者
北原 淑行 (きたはら よしゆき)

青山学院大学卒業。学生時代よりソフトウェア開発を行う。1987~1990年、日本デジタルイクイップメント株式会社(現:日本HP)にてミッションクリティカルなシステム開発に従事。1990~1991年、キヤノン株式会社にてNeXTOperating Systemの日本語化プロジェクトに参画。1991~1998年、ロータス株式会社(現:日本IBM)にて、ビジネス・アプリケーションの製品開発をリード(部長)。1998年、平野とともにインフォテリア(現:アステリア)株式会社を創業。



ーー ChatGPTの登場でAIへの関心が急速に高まっていますが、アステリアが実際にAIに取り組みはじめたのはいつ頃でしょうか。

アステリア株式会社取締役副社長北原淑行
業務としてAIに取り組みはじめたのは6年程前になります。Gravioを手掛ける少し前で、その頃はグーグルが開発した、ハードウェアで計算処理をアクセラレーション(高速化支援)する技術(「Tensorチップ」)が世の中に出回りはじめ、iPhoneやAndroidといったスマートフォンでも顔認証などが使われはじめていました。

近年ハードウェアの進化が著しく、ハードウェアでの処理はソフトウェアのプログラムよりも何倍も速い。それまでアステリアはWarpなどの製品を通じてクラウドのデータをどうつなぐかということにばかり意識が集中していたのですが、これからはエッジデバイス(※1)のようなハードウェアでも何かできるのではないかと興味を持ちはじめました。
アステリアART合同会社園田智也
アステリアARTは、AIテクノロジーの研究を通じて世の中の役に立つ技術を提供することを目的として設立された会社です。この当時、社長の平野さんからは「今後はあらゆる分野でAIテクノロジーが利用され、AIが社会全般でなくてはならないものになっていく」という未来のビジョンを聞いていて、深く共感していました。私自身も以前から、未来のビジョンとして世の中にセンサーがすさまじい勢いで増えて、AIが欠かせなくなっていくことを想像していました。たとえばペットボトルに小さなセンサーが沢山つくような未来。最初は「どこで飲まれているか」や「残量」などのデータを単純に収集するだけかもしれませんが、そのうちどんな人がどこを触っているかといった詳細な情報を取得するようになっていくだろうと考えたんです。

そんな風にあらゆるモノに大量のセンサーがつく社会になるだろうと私が考えていたときに北原さんと出会い、まさにセンサーやIoTの話になったんです。「私が考えていたことを、そのままやっている人がいる」と感じたことを覚えています。
アステリア株式会社取締役副社長北原淑行
これまでアステリアは、クラウド上でデータ連携して「つなぐ」ことをASTERIA Warp(以下Warp)でやってきたわけですが、クラウドの外側にあるエッジデバイスとどうつなぐかが技術的な課題になりました。クラウドのエンジニアとエッジのエンジニアの間には乖離があって、エッジで動く仕組みを作っている人たちが必ずしもクラウドに詳しいわけではありませんし、クラウドの人たちがエッジデバイスの詳細な知識を持っているわけでもありません。しかし、クラウドとエッジの両方を活用したいのであれば、どちらの知識も必要です。この乖離を埋めるため、私たち自身もハードウェアに近いところを研究する必要に迫られたわけです。

クラウドとエッジデバイスで集めたデータをすべて一緒に扱える環境を作るため、それに見合うエッジデバイスを探したのですが、当時はなかなか良いデバイスが見つかりませんでした。たとえば温度センサーなどを買ってきても、プログラムからデバイスを制御することが難しいのです。インターフェースが公開されていることも少ないですし、何より小さいデバイスの多くはWi-Fiで通信することを想定していないためバッテリー容量も少ないんです。Wi-Fiに接続するとあっという間にバッテリーが無くなってしまう。センサーなどのエッジデバイスであれば、電池交換無しで1年や2年くらいは稼働して欲しいわけですが、ボタン電池くらいのサイズで1年以上稼働する製品がなかなか見つからなかったんです。

こうした経験から、Gravioでは環境データを収集したいが、プログラミングなどのコストをかけたくない人でもカジュアルに使えるセンサーなどのIoTデバイスをバンドル(セットで出荷)するようにしています。IoTデバイスをオフィスエリア、たとえばエントランス、エレベーターホール、食堂などに設置して、アステリア ARTで作られた人を検知するモデルや人数を数えるモデルを使ってどれくらい混雑しているかといった情報を簡単にエッジで取得できるようにする。そして、そのデータを手軽にクラウドにつなげられたらいいという思いで作っていました。

ーー 現在アステリアARTが力を入れている研究テーマと、その成果をアステリアがどのように実際の製品に組み込んでいくのかについて教えてください。

アステリアART合同会社園田智也
今、アステリア ARTでは、ロボットを開発するために重要なシミュレーション環境の研究に注力しています。そのロボットは本当に安全なのか、本当にその環境で動けるのかといったことを検証する環境です。

私はAIが行きつく先はロボティクスだと考えています。センサーの先にはロボットの未来があるだろうと。会社を設立した当時、ロボットアームなどの産業用ロボットと、人の生活の中で利用されるサービスロボットという概念はできていましたが、まだ世の中にはそれほどサービスロボットは存在していませんでした。ところが、ファミリーレストランの配膳ロボットなど、近年急速にサービスロボットを見かけるようになっています。特に日本は労働者が不足しているので、ロボットの導入を試みる企業がとても増えています。

産業用ロボットは工場の生産性を上げる目的で利用されていますが、サービスロボットは生活を支えるためにあります。しかし、サービスロボットが普及していくためには、コストを大きく下げることが重要なのですが、以前はマッチする技術がなかったんです。ところが近年の技術革新によって、たとえば自分の位置を把握するといった機能が低コストで実現できるようになったんです。レストランの配膳ロボットは、まさにそうした技術が確立されたからこそ実現しているんです。
アステリア株式会社取締役副社長北原淑行
産業用ロボットが動くような工場は意外に人が少ないんです。機械だけが動く世界なので、安全管理もそれほど課題にはならない。ところがオフィスなどにサービスロボットを導入する場合、人と共存できるロボットとして、安全性や人の邪魔にならない動きが要求されます。つまり人に気遣いのできるロボットでなければならないので、難しさも増えています。
アステリアART合同会社園田智也
ロボットが人を気遣うには人の動きを学習する必要があり、AIのテクノロジーが必要になります。ロボットには人に危害を加えない速度が法律で決められていますが、本当に生活に役立とうとしたらある程度の速度では動いて欲しいとも思いますよね。でも、速度を上げると安全性が損なわれてしまうため、そのバランスを取るのはとても難しいのです。

たとえば人間型ロボットを作ろうとした場合、どういう腰の曲げ方をしたらうまく荷物を持ち上げられるかの最適値を見つけるために、何度もテストを繰り返す必要があります。こうしたテストが実施できる仮想空間をロボット開発者向けに作っています。
アステリア株式会社取締役副社長北原淑行
そうですね。
よく「デジタルツイン」と呼ばれる仮想空間を現実空間に近づけるような取り組みがありますが、仮想空間で現実空間をシミュレートすることで、ロボット開発における継続的なインテグレーション(CI:Continuous Integration)環境を用意できないかと考えています。
アステリアART合同会社園田智也
デジタルツインというと、災害シミュレーションなどで使われる大規模なイメージがありますが、私たちが取り組んでいるのは実はもっと個々のロボットのシミュレーション環境です。
アステリア株式会社取締役副社長北原淑行
今はまだロボットがオフィスにいる企業はほとんどありません。なかなかオフィスや家でカジュアルに使えるロボットが無いんです。これまでオフィスや家にロボットが導入されてこなかったのは、工場のように「ロボットを何に使うのか」という理由が明確ではないことにあります。

しかし、日本でも道路交通法が改正されたことで、いよいよ物を運ぶロボットが自走できる時代に突入しています。今後はさまざまな用途のロボットが登場することになると思いますが、そうしたロボットを開発するためには、どのような目的で、どのような環境情報を取得して、どのような動作をさせるのかがポイントになってくるでしょう。
アステリアART合同会社園田智也
どこに持って行っても使えるロボットであるためには、見たこともない場所に行っても、自分で判断して自律的に動けるような機能を実装しておく必要があります。ロボットの自律的な運用を実現するために、ジェネレーティブAIはとても重要です。そのため私たちはAIによってデバイスが自律的に動くようにするために、どういった環境データを収集すればいいのかといったことも検証しています。
アステリア株式会社取締役副社長北原淑行
これからは環境データを取得して、そこからロボットが動作をジェネレート(生成)する(自動で動作できる)という方向に変わっていくと思います。ジェネレーティブAIというと、どうしても絵、音楽、文章などを生成するイメージが強いのですが、ロボットが腕を動かす動作もAIによってジェネレートされます。さまざまな情報を取得し、最終的に動作として自律的に落とし込んでいくことになります。

現状でもセンサーデータなど環境データを集めることはできていますが、カメラや温度センサーなどを固定的に設置するスタティック(静的)なデータ収集です。今後はこうした機能を移動体に組み込んでいかなければならないと考えています。たとえば温度であれば部屋の中心と端で温度に差があるわけですが、移動できる温度センサーを活用すれば1台のセンサーで複数個所の温度を計測することも可能です。こうした動作をハードウェアに組み込めるよう基本的なソフトウェアをアステリアで用意し、クラウドから制御できるようにしたいわけです。つまりエッジデバイスがどの位置にあるかをGPSやWi-Fiのデータから高い精度で検知する機能に加えて、これらを制御できるミドルウェアを提供するということですね。もちろん収集したデータはエッジ側のAIで加工してからクラウドに送り、クラウド側ではデータを解析する仕組みとして提供していきます。

ロボットというと、どうしても見てわかりやすいモノを期待されてしまいますが、私自身はもっと身近なデバイスでもいいと思っています。たとえば机に置くようなモノでカメラのように上下左右に動くとか、自撮り棒のようなものを工夫して動かせる範囲を拡げたりしてもいい。アステリアではもっと手軽にロボットを開発するための支援をしていきたいと考えています。
アステリアART合同会社園田智也
アステリアARTでの研究成果をGravioと結びつけて説明すると、お客様がGravioで構築された環境において、「どういうセンサー」を「どう配置したら」「どのようなデータが取れるのか」といったことを、何万パターンも仮想空間のテスト環境で自動的にテストすることで、最適な配置を見つけたり、一番意味のあるデータが取れる場所を特定したりできるようになります。

自動運転などを実現していくためにも、テスト環境がますます重要になってくると考えています。これは必ずしもアステリアやアステリアARTで作られたAIでなくても構わないんです。他社で作られたAIがやってきても、必ず必要になるのは仮想空間のシミュレーション環境であり、実施されるテストがキーになります。そこには今後も注力していきたいですね。
アステリア株式会社取締役副社長北原淑行
WarpやGravioは収集したデータを加工する技術です。現状これらの製品はデータの変換方法を自分たちで定義し、機械的に決められた加工をしています。ジェネレートされた動作ではありません。一方のジェネレーティブAIでは、「こういうデータが欲しい」とAIに要求すると、データを変換する手順を示してくれるようになります。WarpやGravioでいえば、現状は人がアイコンを並べてつなげてフローを作っていますが、ジェネレーティブAIでは、AIがアイコンの並べ方を示してくれるようになるわけです。当然大量のフローが作成できるようになりますし、生産性が向上します。

最近注目されているChatGPTがシェルスクリプト(※2)やプログラムコードを生成してくれるのと同じように、ノーコードの世界でも同じようなことが望まれるようになるでしょう。将来必要な技術として、アステリアが積極的に取り組んでいかないとならないことだと考えています。
アステリアART合同会社園田智也
仮想空間のシミュレーション環境を作ることに、アステリアARTはすごく力を入れて研究しています。センサー環境もそうですし、Gravioのテスト環境もそうですし、ロボットの世界も同じです。そして、ここでテストを実施して、「シナリオ」をジェネレートしていきたいと考えています。

たとえばロボットがA地点からB地点に物を運ぶのも一つのシナリオです。配膳ロボットであれば、お店のテーブルの配置や傾斜の角度などを学習し、料理をお客様が待つテーブルに運ぶ必要があります。このシナリオを学習した配膳ロボットを別の店舗に持って行っても、環境が違うのでそのままではうまく配膳することはできません。当然その店用のシナリオを書かなければならないわけです。 これまで、シナリオはすべて人間の手で書いていました。実はロボット用のシナリオを書くのはとても大変な作業で、レストランはまだ良い方で、倉庫などで使うロボットは、下手をすれば何万ものパターンが必要になります。当然すべてのシナリオを人間が書くのは大変なので、AIで使われ方のシナリオをジェネレートしたいわけです。
アステリア株式会社取締役副社長北原淑行
このシナリオという単語は、ほぼプログラムと同義語なんです。シナリオを書くこととプログラムを書くことは一緒なんですが、それがどのくらいのマクロレベル(粒度)なのかが重要で、人間の言葉は「ここからここまで物を動かせ」という粒度ですが、これを実際に機械が理解できる粒度に変換しなければならない。つまりプログラミングです。そして、これを今までは人間がやっていたわけですが、これからはAIでジェネレートできるようになります。

ーー これまでクラウドの世界でつながることを主力にビジネスを展開してきたアステリアが、今後は新たにロボティクス分野にも参入することを目指されているわけですが、アステリア製品がロボット開発の現場で積極的に活用されるツールとなるには、何が必要だと思われますか。

アステリア株式会社取締役副社長北原淑行
間違いなく他社との協業でしょう。アステリアは創設当初から垂直方向のビジネスはやっていません。どのような業種や業態でも使われるようなインフラを提供することをずっとやってきていますし、今後もその姿勢は継続していきます。これまでクラウドでやり取りすることをWarpでやってきたのと同じように、今後はハードウェア開発に携わっている企業や一般の製造業との協業が増えていくことになると思っています。

すでに企業が作っているハードウェアにAIを組み込み、その開発をローコードやノーコードでやれるようになれば生産性が向上します。直近のビジネスにAIをどう組み合わせていけるかをお手伝いすることには大きな意味があります。また、製品開発のためにクラウド上にある仮想空間でテストを実施する、あるいはその結果を現実の製品に反映させる際にもアステリアがお手伝いできることはたくさんあります。

エッジデバイスは思っている以上に人々の身近にある。それこそ、スマートフォンは大多数の人が持っているエッジデバイスです。そして毎年のように新しいモデルが発表され、どんどん性能が向上しているわけです。それを自分たちのビジネスにどうつなげていくかというところが重要になっていくのではないでしょうか。

ーー ジェネレーティブAIのビジネス利用には慎重論を唱える企業や組織もありますが。

アステリアART合同会社園田智也
ジェネレーティブAI利用に慎重論が唱えられる理由はいくつかありますが、ジェネレートされたデータの正確性、データのプライバシー、そして著作権などでしょう。

これまでのジェネレーティブAIというのは、データをジェネレートする過程がブラックボックスだったのですが、最近では「Explainable AI」(説明可能なAI)であることが重要視されてきています。信頼されるAIであるためには、Explainability (説明可能性)、つまりなぜそのようなデータをジェネレートしたのかのステップをブレイクダウンして、AIの思考を説明できる必要があるわけです。

しかし、データのプライバシーや著作権は難しい問題ですね。今、世界的に画像や音楽、あるいは映画やドラマの脚本などをジェネレートすることが騒がれていますが、一方でビジネスドキュメントやプログラム作成をChatGPTに支援して生成してもらうことはあまり問題視されていない。本来は同じ土俵で語られる問題のはずなんですが。
アステリア株式会社取締役副社長北原淑行
ビジネス利用での慎重論という意味では、やはりプライバシーの問題が大きいと思います。たとえば街の中にはいたるところにカメラが設置されています。画像や動画は知らず知らずのうちに大量に集められているわけですが、そのデータをどう扱うのか、そもそもそのデータは誰のものなのかといったことがあまり議論されてきませんでした。

こうした画像や動画のデータは精度も上がっています。数年前であればズームしても解像度が低く顔を認識することが難しかったかもしれませんが、今は4Kで鮮明な画像データが気軽に撮影できてしまいます。人物を特定することも容易になりつつあります。画像データだけではありません。たとえばスマートフォンなどを使った位置情報のデータも、どこまで公開していいのかという話になります。 これまで収集したデータはすべて保存することが常識でしたが、これからはどのデータを収集して、どのデータを捨てるのかといったことも重要になるでしょう。収集したデータをエッジデバイスで加工し、クラウドには加工したデータのみを保存し、元のデータは捨ててしまうということもあるでしょう。

先程、園田さんはAIの説明責任について触れていましたが、この先はみんなでコンセンサスを取っていかなければならない時代になっていくのではないでしょうか。
ジェネレーティブAIによるビジネス的なメリットはとても大きいですから、積極的に議論に参加すべきだと思っています。製品の機能として組み込んだ際、それがどれだけ世の中に受け入れられるのか、どの辺りまでが許されるのかといった基準が重要になっていくと思います。

ーー 園田さんはアステリアARTを設立する際、「世界で注目され、世界で認められ、世界に貢献できる人材を採用したい」というコメントされていましたが、最近の活動状況と今後の展開について教えてください。

アステリアART合同会社園田智也
アステリアARTでは、最先端のAIテクノロジーを研究しアステリアの製品やサービスに活かしていくだけでなく、学会や業界団体を通じて論文を発表しています。また、AI関連のコミュニティ活動には積極的に参加し、研究開発スタッフはオープンソースソフトウェア(OSS:Open Source Software)(※3)にも貢献しています。特にオープンソースのロボット開発プラットフォーム(「ROS2(Robot Operating System 2)」)で動くロボットのシミュレーションや、テスト用ワークフローなどのコミット(ソースコードの修正と確定)を進めています。

他にもロボットが実際に物を掴む世界的なコンテスト(「ManiSkill Challenge」)に参加し、過去には入賞しています。また、この「ManiSkill Challenge」参加者が利用できるシミュレーション環境なども提供しています。 私はOSSの文化を素晴らしいと思っています。もちろん企業としてはプロプライエタリ(非公開の独自技術)も重要ですが、公開できるものは公開していく姿勢は重視したいと考えています。研究開発スタッフは、広くグローバルに採用しています。少人数でも機動力のあるチームを作っていきたいと思っていますので、研究開発スタッフを採用する際にも「あなたはどのようにパブリックコントリビューション(公に貢献)していますか」という質問を必ずしていますし、相手から「こういったコミュニティ活動をしていて、このような発言をしている」や「Github(※4)でこのような技術をオープンにしている」といった回答を重視しています。

一般的に基礎研究というとすぐに実用化できるものではないことも多いのですが、私たちはすぐに利用できる最新技術を世界に発信していくことも一つの目標だと思っています。
アステリア株式会社取締役副社長北原淑行
元々アステリアもXMLという標準化されたプロトコルからスタートした企業です。当時からさまざまな標準化団体に参加して活動した結果、今の製品につながっています。AIやロボティクス分野の基礎技術の研究をアステリアARTが進め、アステリアはその技術を実際の製品に取り込んでいくという流れを積極的に作っていきたいと思っています。

※1 インターネットに接続された末端の端末および製品。スマートフォンやPC等も該当
※2 LinuxなどUNIX系OSのシェルで実行できる簡易な言語やプログラム
※3 ソースコードが公開されており、誰でも自由に改変や再配布が可能なソフトウェアの総称
※4 Gitの仕組みを利用して、世界中の人々が自分の作品(プログラムコードやデザインデータなど)を保存、公開できるサービス

AI研究開発子会社「アステリアART(アート)」の設立について

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この記事を書いた人
in.LIVE 編集部 アステリア株式会社が運営するオウンドメディア「in.LIVE(インライブ)」の編集部です。”人を感じるテクノロジー”をテーマに、最新の技術の裏側を様々な切り口でご紹介します。