2017年3月16日

《対談》世界のスタートアップワールドカップ主催者に聞く、日本のスタートアップが世界で活躍するには?

アステリアのIoT Future Lab. にて、3月24日にサンフランシスコで行われる「スタートアップワールドカップ」の記者会見が行われました。本記者会見にて行われた、主催のアニス・ウッザマン氏、ユニファ株式会社 代表取締役の土岐氏、経済産業省の石井氏の3人によって行われたパネルディスカッションの内容をこちらでご紹介します。


優勝賞金は1億円!「スタートアップワールドカップ」とは? 

アステリアの社外取締役でもあるアニス・ウッザマン氏がCEOを務める Fenox Venture Capital が主催となる、スタートアップ・ワールドカップ。昨年より世界13ヶ国16地域で予選が行われており、各地域ごとに選出された優勝1組だけが2017年3月24日にシリコンバレーで開催される決勝大会に進むことができるという、世界最大級のスタートアップ・ピッチコンテストイベントです(2017年2月10日現在、応募数約5,000社) 。

決勝大会の審査員・スピーカーには、アップル社共同創業者スティーブ・ウォズニアック、Yコンビネーターのケビン・ヘイル、クライナーパーキンスのエリック・フェン、テックスターズのデビット・コーエン、ファウンダーインスティチュートのアデオ・レッシ、ドレーパーアソシエイツのティム・ドレーパー、ガレージ テクノロジーベンチャーズのガイ・カワサキなど業界著名人が参加。

出場スタートアップには、世界中の投 資家からの資金調達、マーケット拡大、世界規模で展開する企業や著名人とのネットワーク構築の可能性等、 様々なベネフィットが見込まれています。

アステリアのイフラボにて開催された記者会見には、主催のアニス氏をはじめ、経済産業省の石井芳明氏、また今回、日本代表のスタートアップとして選出されたユニファ株式会社 代表取締役の土岐泰之氏が集結しました。

「日本のスタートアップが世界で活躍するには」といったテーマでの対談もあり、テレビなどの取材にも多くお越しいただきました。

登壇者プロフィール

・Fenox Venture Capital CEO / アニス・ウッザマン
シリコンバレーFenox Venture Capital 社創業者・共同代表パートナー・CEO とし て IT、Health IT、AI、Robotics、Big Data、VR/AR、FinTech、次世代テクノロ ジー分野を中心に世界の 90 社以上のスタートアップへ投資。海外では、Jibo、Expect Labs、Scanadu、 Meta、Jetlore、Tech in Asia、日本国内では、テラモーターズ、 メタップス、マネーフォワード、エボラブルアジアなどがある。東京工業大学工学部開発システム工学科卒業。オクラホマ州立大学工学部電気情報工学専攻にて修士、東京都立大学(現・首都大学東京)工学部情報通信学科にて博士を取得。

・経済産業省/石井芳明氏
経済産業省 経済産業政策局 新規産業室 新規事業調整官。 岡山大学法学部法学科卒業。カリフォルニア大学バークレー校留学(単位履修)。 青山学院大学大学院国際政治経済学研究科卒業。早稲田大学大学院商学研究科卒業。 1987 年、通商産業省(現 経済産業省)入省。中小企業政策、ベンチャー企業政策、 産業技術政策、地域振興政策等に従事。2012 年から現職。ベンチャー政策、オー プンイノベーションによる新規事業創出支援を進める。

・ユニファ株式会社 代表取締役/土岐 泰之
1980 年 12 月 28 日生。福岡県出身。九州大学卒業後、住友商事 のベンチャー投資 部隊にて IT 企業を中心に投資・事業開発に従 事。外資系経営戦略コンサルティン グ会社ローランド・ベルガー にて大企業を中心とした事業戦略/再生支援を実施。デロイトトー マツコンサルティングにて中堅企業を中心に事業戦略/会計関 連 プロジェクトに従事。2013 年 5 月、保育業界を起点とした家族 コミュニケーションを豊かにするポータルメディアを提供す るユニファ株式会社を設立。

特別対談「日本のスタートアップが世界で活躍するには?」

ーまずは、日本のスタートアップの強みについて教えてください


石井氏: このように日本のスタートアップが海外メディアから注目されるといったこと自体、5年前にはなかった動向です。IoTを中心として、ネットとリアルの融合が進んでいる今、この「リアル」「モノ」「技術」の部分において、もう一度日本の注目が上がっているのではないでしょうか。

強みという点では、今回決勝大会に進んだ日本代表のユニファ株式会社のように「育児×テクノロジー」であったり、「医療×テクノロジー」「農業×テクノロジー」といった既存の産業との掛け合わせにあると感じています。

“異なる業界をつなげていく” 技術・ものづくりの高さや、現場にしっかり入り込んできめ細やかにサービスを仕上げる点は日本の強みであると考えています。


ー一方で、日本のスタートアップにとっての「課題」とは何でしょうか?


石井氏: やはり短期間での成長スピードをもたらす大きな資金力が無い点ではないでしょうか。 大きな資金を集めて世界でグローバルに戦わなくてはいけない。しかし他国に比べて成長のスピードが追いついていないのが現状です。資金の重要性というのは、競争力を高める、より優秀な人材や力を集められるという点にあります。

今回サンフランシスコで開催されるスタートアップワールドカップでは、大きなベンチャーキャピタルが世界中から集まります。そうした意味では、とても期待していますね。


ースタートアップワールドカップは世界規模での大会ですが、石井さん個人的にはどのように見ていますか?


石井氏: 世界の各拠点で今、競争が起こっています。 ボストン、ベルリン、パリ、ルクセンブルク、フィンランド、インド、中国、台湾など、様々な国が急成長している状態です。

そうした中で、世界の拠点が具体的にどのようなレベル感で動いているのか?各拠点でどんな人たちが集まっているのか?実際に目で見て確かめられるという点は、私自身も楽しみにしているところです。


ーアニス氏は、投資家という観点ではどのようにこの動向を見ていますか?


アニス氏: フェノックスベンチャーキャピタルでは、過去2年のうちに30ヶ国以上の会社に投資を行っています。日本でなぜ投資しているか?と聞かれると、やはり石井さんのお話にもあったとおり、とても細かくマメで、物事を見る視点がとても細かい。ミスが少ないために、ある程度のレベルまでいける会社は最後までいける、というのが印象です。

一方で弱点としては、やはりグローバルの視点を持っている企業が少ないということ。すべてのスタートアップに対しての資金が足りていないというのは、石井さんと同じ意見です。

皆さん、サッカーのワールドカップといえば、世界のどの国を思い浮かべますか?
やはりブラジルではないかと思います。同じく今回のスタートアップワールドカップにおいても、5年後には「スタートアップワールドカップといえば、この国」というイメージが出来上がっているはずです。

そのときの答えが「日本」であればどんなに面白いだろうと思いますね。


ー土岐社長は決勝戦に向けて、準備されていることはありますか?


土岐氏: 大事だと思っているのは、やはりどこまでいっても顧客を見ることだと思っています。投資家・メディアの方、従業員の方、と様々な方向を向くことが大事ですが、最も重視しているのは、顧客、特に「顧客の現場」に集中することです。

世界で成功してきた日本の産業である自動車産業を見てみても、やはり「現場力」というものが強さの裏にあったのではないでしょうか。

保育業界そのものにデジタル革命を起こすためにも同じだと思っています。 そういった意味で、今私がスタートアップワールドカップに向けてやっているのは、私自身がエプロンをつけて保育の現場に入り込むということです。現場で流行っていたインフルエンザをもらっちゃって大変だったこともあったんですが(笑)

でもそうしてみると、私たちがどれだけ「AIをやりたい/ヘルスケア事業をやりたい」なんて思っていても、現場の保育園の先生たちはそんなことは微塵も思っていないことに気が付きます。その上で、「どうすればもっと現場の先生たちは楽になるだろう?」「本当に保育の質が上がるだろう?」ということをよく観察することにこだわっています。


ーアニス氏は、ユニファ株式会社についてどのように評価されていますか?また決勝戦に向けて、土岐さんへのアドバイスがあればお願いします。


アニス氏: こんなにユニークな立ち位置で事業をしているスタートアップは見たことがないですね。 ワールドカップが終わるまでには何も言えませんが(笑)、フィナーレでの活躍を期待しています。

アドバイスとしては、やはり世界大会ですからアメリカやイギリスなど英語圏のプレゼンターはアドバンテージがあります。あらゆる質問が来ることを想定して、英語で想いを語ることをとにかく練習することですね。


ー土岐社長、プレッシャーも強いのではないでしょうか?


土岐氏:おっしゃるとおりですね(笑)。
グローバルで今後展開すると考えると、資金もそうですが、グローバルで活躍する人をも動かさなければいけない。そうした上でも、スタートアップの創業者における言葉の力は非常に大事だと認識しています。

グローバルで人とモノを動かすことができる言葉の力を鍛えるという点では、今回ある意味、非常に良い機会だと思っています。しっかりと準備して臨み、自分が信じていることをグローバルなステージで発信することで、次の大きな飛躍に繋げていきたいと思っています。


ユニファの園児見守りロボット

あとがき

今回の対談の様子は、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」をはじめ、多くのメディアに取り上げていただきました。シリコンバレーでの決勝大会含め、in.LIVEでは今後もこのスタートアップワールドカップを追いかけていく予定です!どうぞご期待ください。


関連リンク

スタートアップワールドカップ
フェノックスベンチャーキャピタル
ユニファ株式会社
対談:代表取締役社長/CEO 平野 洋一郎×社外取締役 Anis Uzzaman「アステリア」が 目指す未来

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この記事を書いた人
in.LIVE 編集部 アステリア株式会社が運営するオウンドメディア「in.LIVE(インライブ)」の編集部です。”人を感じるテクノロジー”をテーマに、最新の技術の裏側を様々な切り口でご紹介します。