2023年1月12日

ノーコードは日本の未来をどう救う? ITの先駆者4人が語る特別鼎談【ノーコード全盛時代の幕開け】

ノーコード推進協会(NCPA)により、協会員企業向けに開催された鼎談「ノーコード全盛時代の幕開け」。本記事では、NCPAの代表/副理事であり、IT業界のさまざまな変遷やノーコードの歴史を知り尽くす4名の登壇者による鼎談をダイジェストでお届けします。


2022年9月1日に発足したノーコード推進協会(NCPA)。その設立を記念した第一回目のオンライントークイベント「ノーコード全盛時代の幕開け」が、協会の会員企業向けに開催されました。

本イベントでは、ノーコード推進協会代表理事でもあるアステリア株式会社CXOの中山五輪男氏、そして副代表理事を務めるサイボウズ株式会社 代表取締役の青野慶久氏、一般社団法人日本デジタルトランスフォーメーション推進協会の森戸裕一氏、さらにアステリア株式会社代表取締役の平野洋一郎の4人が登壇。「ノーコード全盛時代の幕開け」をテーマにクロストークを展開しました。

本記事では、そのトーク内容をダイジェストでお届けします。なお本鼎談は、動画アーカイブとして全編公開されています。興味のある方はぜひこちらより申し込み(無料)を行ってください。https://ncpa.info/movie20220929/ 

登壇者紹介

<中山五輪男(なかやま・いわお)氏>

NCPA 代表理事、アステリア株式会社 CXO (最高変革責任者)
ノーコード変革推進室 室長、首席エバンジェリスト
1964年5月 長野県伊那市生まれ。法政大学工学部電気工学科卒業。複数の外資系ITベンダーやソフトバンク、富士通の常務理事などを経て、現在はアステリア社のCXO(最高変革責任者)、ノーコード変革推進室室長、および首席エバンジェリストとして幅広く活動中。最先端テクノロジーを得意分野とし、年間200回以上全国各地での講演活動を通じてビジネスユーザーへの訴求活動を実践している。様々な書籍の執筆活動や複数のTV番組出演での訴求など、エバンジェリストとしての活動をしつつ、国内30以上の大学での特別講師も務めている。

<青野慶久(あおの・よしひさ)氏>

NCPA 副代表理事、サイボウズ株式会社代表取締役社長
1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立。 2005年4月代表取締役社長に就任。 2018年1月代表取締役社長 兼 チームワーク総研所長(現任) 社内のワークスタイル変革を推進し、28%あった離職率を大幅に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得。 また2011年から事業のクラウド化を進め、2021年にクラウド事業の売上が全体の80%を超えるまで成長。 総務省、厚労省、経産省、内閣府、内閣官房の働き方変革プロジェクトの外部アドバイザーを歴任し、SAJ(一般社団法人ソフトウェア協会)の副会長を務める。 著書に『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)、『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』(PHP研究所)、監修に『「わがまま」がチームを強くする。』(朝日新聞出版)がある。

<森戸裕一(もりと・ゆういち)氏>

NCPA 副代表理事 森戸裕一 ナレッジネットワーク株式会社代表取締役
総務省 地域情報化支援アドバイザー 内閣官房 シェアリングエコノミー伝道師
サイバー大学 教授 名古屋大学 客員教授 ナレッジネットワーク株式会社 代表取締役 PORTO株式会社 代表取締役 直方市CIO補佐官
次世代人材育成支援として、2003年よりNPO法人学生ネットワークWANの活動を開始。全国の企業経営指導、地方創生支援などの経験から大学では地方創生などのゼミを担当する。総務省地域情報化アドバイザーとして、全国の自治体のRPA導入支援、地場産業のDX推進を支援。

<平野洋一郎(ひらの・よういちろう)氏>

アステリア株式会社 代表取締役 CEO
熊本県生まれ。熊本大学を中退し、ソフトウェア開発ベンチャー設立に参画。ソフトウェアエンジニアとして8ビット時代のベストセラーとなる日本語 ワードプロセッサを開発。1987年~1998年、ロータス株式会社(現:日本IBM)でのプロダクトマーケティングおよび戦略企画の要職を歴任。 1998年、インフォテリア(現:アステリア)株式会社創業。2007年、東証マザーズに上場。2008年~2011年、本業の傍ら青山学院大学大学院にて客員教授として教壇に立つ。 公職:ベンチャーキャピタルPegasus Tech Ventures アドバイザー/ブロックチェーン推進協会 代表理事/先端IT活用推進コンソーシアム 副会長/XML技術者育成推進委員会 副会長など。

世界に遅れを取る日本のデジタル化、どこでボタンを掛け違えた?

さて今回は、「ノーコード」という言葉と深い関わりを持つ3人のゲストにお越しいただいています。まずお話ししたい最初のテーマは“日本の過去30年”。日本のIT業界におけるさまざまな波をくぐり抜けてきた皆さんですが、30年前から現在に至るまでの各自の想いについてお聞かせください。
私の30年でいうと、大体就職して今に至るくらいでしょうか。コンピューターが80年代に出てきて、「これはすごいことになるぞ」と。日本のメーカーも製品を次々と世の中に出して盛り上がっていた時代ですね。だけど今になってふと世界と比べてみると「あれ? 随分と取り残されているぞ」って。30年前はそこまで遅れを取っているようには感じられなかったんですよ。
日本でも皆がこぞってITリテラシーを高めようと、パソコン研修を2000年くらいからやり始めていましたよね。ただ、そこからなぜかピタッと。日本のIT企業の急成長が止まったような気がしますね。
私の場合、30年前というと前職のLotusで働いていた頃です。当時、まさに日本とアメリカのデジタル分野での差が開いていくのを目の当たりにしていました。アメリカではソフトウエア会社が増えて新製品が出てくる一方で、日本のソフトウエアベンダーはプロダクトを増やすよりも企業からの受託で売上を上げていくと。

パッケージソフトというのは売れるか売れないかの賭けですから、大学生が起こしたような元気な会社も、安定的な経営を求めて受託開発に行き着くことが多いんです。アメリカにはベンチャーキャピタルを始めとする投資の仕組みが当時からあったのですが、日本にはなかった。これも、日本が世界に遅れを取った原因の一つかもしれません。
そういう時代ですね。そう考えると、テクノロジーの差というよりは文化の差なのかなと。やはりソフトウエアビジネスはなんたるかというところを分かってそのモデルで動ける文化のある国と、技術的には分かっても、それをやるための文化がない国との差が顕著に出てしまったのではないかと思います。
僕は30年前からデジタル人材の育成事業に関わっていて、受託開発を行う方々に向けてSE研修をしつつ、SIerを利用するユーザー側の教育も行っていたんです。SIerに発注する上で最低限知らないといけないこと、簡単なプログラミングの仕組みだとか…。だけど今考えてみると、発注する側と、受託開発をする側を完全に切り分けて、別々の教育を行ってきたことは正しかったのか?振り返って自問しています。

“受託”というのは日本だけの言葉かもしれませんが、つまるところ、本来はユーザ-がやるべきことを人月計算で別の人が受け取ります、というビジネスじゃないですか。だけど今私たちが推進しようとしている「ノーコード」っていうのは、今までとは違ってユーザーがやるべきことはユーザーがやろうという発想ですよね。
確かに。
ボタンを掛け違えたポイントはいくつかありそうですが、ここで「パッケージが良い」とか「受託開発が良い」とか、対立構図にしたくはないですね。私たちはSIerを否定しているわけでは決してないですし、両輪で動かしていくことが重要です。この話は後半にもしていきたいと思います。

ノーコードvsハイコードへの違和感。対立から融合へ

ノーコードの話が出てきたので、ぜひ改めて、皆さんのノーコードに対する思いを聞かせていただけますか。アステリアは20年前からノーコード製品を販売していましたが、当時は「ノーコード」という言葉は使っていなかったですよね。
最初の頃は、 “ノンコーディング” と呼んでいましたね。
製品を作る上で私たちが大事にしていたのは、とにかく属人性を減らすことでした。書いた人しか分からないコーディングではなく、誰が見ても分かるつくりになっている。これを目指して今の製品の開発を始めたんです。会社としてノーコードに賭けていますし、私たちの製品の核心ですね。
森戸さんはいかがですか? ノーコードに対する想い。
最近は街づくりや地域の課題解決において「ハッカソン」や「アイデアソン」という手法を使うこともあると思うのですが、特にハッカソンの場合はエンジニアの方がいないと成り立たないことが多いんですよ。そうなると、エンジニアの参加者が募れない地域では、そもそもハッカソンの開催も難しい。だけどそこにノーコード製品が入れば、状況は随分と変わります。

地域の課題を明確にして解決策を見出して、ノーコード製品を使ってこの場で簡単なプロトタイプが作れないかな? と。そんな議論が入れば、地域はものすごく変わると思いますよ。しかもそんなプロトタイプを作るヒーローが、地域の子どもたちや若い人、専業主婦、シニアの方とか、想像してみてください。「ノーコードでこうすればできるよね」とその場でささっと見せてくれると、周囲の人たちにもスイッチが入り、メラメラ燃えると思うんですよね。
プログラミングの知識はなくとも、課題をしっかり理解できてさえいれば、その場でプロトタイプぐらいは作れますもんね。
そうなんです、その場で。これまで課題解決する人=東京の人、メーカーの人、エンジニア、だったのが、いつも近所にいる人が急にスマホ出して何かやり始めたと。「もしかして僕らでもできるんじゃない?」という雰囲気が生まれてくるんじゃないかなと。

こうなるとスピード感が違いますし、なにより、最初はノーコード製品を使ってやっていたけど「もっと詳しく内部を知りたい」と思った人がプログラミングに興味を持ち始める、という流れもあると思います。
まさに。コーディングをやらされてやるのか、やりたくなってやるのか。モチベーションも、理解も、その行く先も全部変わるわけですよね。
ノーコードを触っているとだんだん飽き足らなくなってきて、コードが書けるとさらにこんなことまでできるとか、APIを使えばあんなことができるんだとか。やりたいことが広がって学び始める人が現れる。そういう意味では、ノーコードを「裾野」として徹底的に広げておいたほうが、結果的にコーディング人材がこの国は増えるんじゃないかと。

ノーコードとローコード、もしくはハイコードと言われるコーディングとよく対立の構図で言われることがあるのですが、実際にノーコードを10年間やってきている身からすると違和感があるんですね。
両輪でしょうね。ついどういうやり方が正解なのかと考えてしまいますが、両方からアプローチするのが正しい。それを融合させるような手法やコンセプトを考えていくとなんだか全部つながりそうだな、と。皆さんの話を聞きながら思いました。
改めて振り返ると、ノーコードって昔からありますよね。「Microsoft Access」とか…。だけどそれはクラウドになる前のノーコード。結局サーバーに載せるとなるとシステム構築の必要があるので、予算がないと厳しいんです。

ところがクラウド時代のノーコードになったので大きく変わりました。大企業じゃなくても等しく最新のノーコードツールにアクセスできるし、コロナ禍もあって、地方でもオンラインミーディングが当たり前になっている。地方と都会の差も埋められるようになり、今こそノーコードがブレークする瞬間なのかなと思います。
今まではシステムに詳しい人がやる、だったのが、これからは現場をよく理解している人がやる、と。開発にかけるコストも時間的なロスもなくなりますね。

ジェンダー問題も解決!? ノーコードによって変わる日本の未来

最後に、ノーコードによって日本の未来はどう変わるのか。ここについてお話を聞いていきましょうか。
中小企業や地方を置き去りにして、一部だけDXが進んでいるような状況を変えていけるでしょうね。現時点で作り込んだシステムが入っていない中小企業こそ、ノーコードで一足飛びにDXを進められるんです。リープフロッグ型の発展もありそうですよ。
あともう1つ、ノーコードが日本の未来をどう変えるのか? という文脈で、僕が期待していること、それはジェンダーなんです。残念ながら日本はジェンダーギャップがとても大きく、なかなか埋まらない。だけどこれはノーコードで埋まる気がしているんです。サイボウズ社で、kintoneを展開していて最初とても驚いたのは、アプリを作る人の女性比率がとても高いこと。「kintone女子会」とか「kintone Girls」とか…。

それを見たときに「あっ、これまでと違う世界だな」って。これまでシステムの世界は男性中心でしたが、現場の業務をよく理解している女性社員がリードして、ノーコードでどんどんシステムを作るようになっていて。システムの精度も上がり、システム=男性という世界も変わるぞと感じました。

例えば、産休明けでフルタイムでは働けない方や、地方に住んでいる方、育児をしながら短時間で効率の良い仕事をしたい方… そんな女性たちがノーコードによって輝ける未来を想像すると、日本のジェンダーギャップにも変化をもたらすんじゃないかと。
長時間拘束で大人数関わっていたシステム開発が、ノーコードだと小さい単位で、かつクラウドによってどこからでも作ることができる。働き方だって自在になるし、いま注目されている社員のWell-beingにもつながります。
ノーコード、この世の中を大きく変えていく一つの起爆剤になりそうな気がしますね。

さて、私たちが発起人となって2022年9月に立ち上げたノーコード推進協会では、ノーコードのツールを作るベンダーや、IT関連製品の販売会社、コンサルティング会社、DXに関するさまざまな取り組みをしている自治体・省庁、各公共団体、学校などの教育機関の方々まで。さまざまな方に会員企業・団体として参画いただいています。

ノーコード推進協会の代表理事として、今後、日本最大のノーコードのユーザー会を作りたいという展望があります。ユーザーの声を集めることで、さらに業界を活性化させていきたいなと。今、ノーコードを使っている方、またはノーコードの導入を検討している方、興味があるから勉強してみたいという方に対しても、オープンに扉を開けて入会をお待ちしています。ぜひ気兼ねなくお問い合わせください。

皆さん、本日は興味深いお話をありがとうございました。

関連リンク

本記事は、ノーコード推進協会(NCPA)で行われたオンライントークイベントのダイジェストです。動画の全編をアーカイブで公開していますので、興味のある方はこちらより視聴登録を行ってください。https://ncpa.info/movie20220929/ 

ノーコード推進協会では、毎月さまざまなテーマでオンラインセミナーや対談を公開しています。ノーコード推進協会(NCPA)に興味がある方は、公式サイトより情報をご確認ください。


中山五輪男氏 アステリアCXO就任インタビュー

https://www.asteria.com/jp/inlive/asteria/5544/
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この記事を書いた人
田中 伶 アステリア株式会社 コミュニケーション本部・メディアプランナー。 教育系のスタートアップでPRや法人向けの新規事業立ち上げを経験。話題のビジネス書や経営学書を初心者向けにやさしく紹介するオンラインサロンを約5年運営するなど、難しいことをやわらかく、平たく解説するのが得意。台湾情報ウェブメディア編集長も務める。