2024年8月13日

自動化されていないモノを見つけるのが難しい時代に? アステリアの最高技術責任者が見据える未来の世界と、必要なテクノロジー

アステリアの共同創業者であり、最高技術責任者(CTO)を務める北原 淑行(きたはらよしゆき)氏。今回は採用チームとタッグを組んで、日頃メディアなどではあまり語られない、アステリア創業までの自身のキャリアや、開発チームに対する …

アステリアCTOインタビュー

アステリアの共同創業者であり、最高技術責任者(CTO)を務める北原 淑行(きたはらよしゆき)氏。今回は採用チームとタッグを組んで、日頃メディアなどではあまり語られない、アステリア創業までの自身のキャリアや、開発チームに対するこだわり、さらにこれから先の未来を予測するテクノロジーの変化などについて迫るインタビューを実施しました。

最高技術責任者として、どんな未来を見据えているのか? そしてその未来で、アステリアの技術や製品はどのように生かされるのか? ぜひ最後までご覧ください。

北原 淑行(きたはらよしゆき)|アステリア株式会社 取締役副社長 / 最高技術責任者
長野県生まれ。青山学院大学卒業。学生時代よりソフトウェア開発を行う。1987年~90年、日本デジタルイクイップメント株式会社(現:日本 HP)にてミッションクリティカルなシステム開発に従事。1990年~91年、キヤノン株式会社にてNeXT Operating Systemの日本語化プロジェクトに参画。1991年~98年、ロータス株式会社(現:日本IBM)にて、ビジネス・アプリケーションの製品開発をリード(部長)。1998年、平野と共にインフォテリア(現:アステリア)株式会社を創業。

<聞き手・アステリア人事担当 内海詩織>

物理からコンピューティングの道へ。プログラミングに興味を持ったきっかけは?

ー まずは北原さんのエンジニア人生について聞かせてください。一番最初にコンピュータに興味を持ったのは、なにがきっかけだったんですか?

たしか大学2年生ぐらいの頃に、コンピュータ(まだ現在のようなパソコンはない時代なので、キーボードと、マザーボードしかないようなもの)の入力をお手伝いするアルバイトをしていまして、そのときにプログラミングを少し勉強したのが始まりです。

ちょうどその会社で働いて一年ぐらい経った頃に、現在のマイクロソフト社のソフトウェアのOSを扱う仕事があり、実際にやってみると面白いなと感じて。結局、学生時代は勉強半分、コンピューティング半分という感じで過ごしていましたね。

ー もともとの専攻は物理だったと聞きましたが、ひょんなきっかけでコンピュータの道へ進まれたんですね。

はい。当時はいわゆる熱力学や、研究室で物理の勉強もしていたんですが、実際にシミュレーションモデルのようなものを作ってみたくて、Apple Macintoshを買って自分で色々と試していましたね。Macintosh は当時にしては非常に高価な製品でしたけど、そのときに色々なアップル製品やマイクロソフトのソフトウェアに触れたり、当時の新しい技術に触れたりしていたことが、今につながっていると感じます。

実はもともとの専門分野は物理学だということもあって、今でも社内で開発している製品のコードネームは、物理学に関係する人やモノ、宇宙などに関連する名前をつけているんですよ。

ー え! それは知りませんでした! ちなみに、アルバイトでやられていたことが今の仕事に役立っていると思うことはありますか?

そうですね。当時のアルバイトでは、画面に色々な描画をするというグラフィック系のソフトウェアを扱っていました。そもそもコンピュータはどうやって動くのか? ということや、さまざまな関数、デバイスの制御について基礎的な部分から学んでいた感じです。

そういった土台の知識は今でもすごく役に立ってると感じています。黎明期から関わっていたからこそ、少しずつ勉強して、それを毎年毎年積み重ねていくだけで、今の最新の技術まで到達できた。そういう意味では、非常に良いタイミングでこの業界に入ったと思います。

まだない機能を発想するのが楽しい。エンジニアの仕事の面白さ

ー エンジニアの方って、プログラム書くってことが楽しい! と感じる人もいれば、自分のアイデアを製品に載せていくことが楽しい! と感じる人もいると思います。北原さんはどういったところに魅力を感じていたのでしょうか?

そうですね。私がこの業界に入ったときは、まだコンピュータ言語も今ほどたくさんありませんでした。もちろん “ノーコード” のような技術はないので、そもそも言語を覚えないことには動くものは作れないという状態です。ほかの多くの人と同じように、プログラム言語を学ぶところからスタートしています。

ただ、個人的にはプログラムを書くことよりも、さまざまなディベロッパーが作った製品を見ていく中で「こういう機能があったらいいのかな」とか「こういう機能だったら、日本以外の国でも使ってもらえそう」だとか。逆に海外のソフトウェアを日本で使うときに「日本だったらこの辺が使いづらそう」というポイントを見つけること、そしてそれを直していく作業が、すごく面白かったと感じますね。

ー 今はまだないけど、あったらいいなと思う機能ですか。

そうですね。特に海外のソフトウェアを日本で使うとなると、日本特有の必須機能って意外とたくさんあるんですよ。例えば “漢字にルビを振る” とか ”罫線をつける” とか。

欧米のドキュメントには当然ルビなんて必要ないし、罫線もあまり引かない。だけど日本だと絶対につけなきゃ売れない機能です。今でこそあまり使わなくなりましたが、テキストの縦書き、とかね。パソコンで縦書きができるツールは今は普通にありますが、当時はこれが相当難しかったんですよ。

ー 漢字のルビや縦書き、言われてみれば確かに!

日本の文化にあわせた特有の機能は、昔はすごく重要視されるポイントでした。実際に仕事のシーンで使ってもらうためにも、こういった点をしっかりキャッチアップして実装していくこと。ここに面白さを感じて一生懸命やっていましたね。すでに世の中にあるものに、なにか一つ光るものを追加することで、その製品がよく見えたり輝いたりしますよね。小さなことでも、そういったところを大事にして作っていくのが大切なのかなと。

ー 北原さんの性格を映したようなエピソードですね。使う人にとって、どんな機能が必要なのか? という点については、いろいろな業種の知識が必要なのかなとも感じます。

まさにそうなんです。例えば僕の知ってる方で、お医者さんをやりながら、ソフトウェアを書いている方もいらっしゃるんですよね。外来もやりながら、自分で電子カルテのシステムを作っているような方。そういう人たちはやっぱりその業界の知識に深いので、プログラミングの知識があることで、素晴らしいソフトウェアができます。やっぱり専門知識っていうのがベースとして大切なんだなと。

コンピュータの領域での専門知識は、インフラの部分に近づければあるんですけど、アプリケーションの部分になると、より別の分野の専門的な知識が要求されます。幅広い業種や業界のソフトウェアを作れるようになることが、実は一番望ましいと思ってるんですよね。

ー ちょっと話はズレるのですが、北原さんがもしもう一度子供の頃に戻って「コンピュータとは違うこと」をなにか一つ勉強できるとしたら、何をやってみたいですか?

うーん。あまり考えたことはないですけど、飛行機や車、ヨットとか。そういった、なんらかの操舵に関わる仕事が面白いんじゃないかと思いますね。実際、機械そのものにもすごく興味があって。電子工学とか、ハードウェア的なものを作ることはやってみたいですね。

ー なるほど。ソフト、ハードに関わらず、なにかモノを動かすということに興味があるんですかね。

アステリアの開発チームのこだわり ”プロトタイプ主義”

ー 次に、アステリア製品の開発について教えてください。アステリアの製品開発の特徴や、こだわりを持っていることがあれば教えていただけますか。

一つの製品に関わっているエンジニアの人数は、正直、他の会社に比べると少ない方だと思います。これには理由があって、私自身、前の会社では100人体制でシステムを作るプロジェクトなどに参加していたこともあったんです。だけどそういったプロジェクトであっても、全体のキーになる根幹の部分をやっているのは5〜6人なんですよ。他の94人も色々な形で携わってはいるんですが、やっぱりその根幹のメンバーがしっかり動いていないと、全体が動かない。

今はソフトウェアのベースとなるOSがしっかりしているので、アプリケーションを書くときに必要なのは、アイデアと、どうやってそれを見せていくか? というポイントだと思っています。人数よりも、どれだけ面白いアイデアを発想できるか、そして、それを自分で試せるか、ということが重要だなと。

ー なるほど。少数精鋭のメンバーで、しっかり頭と手を動かして開発に携わるということなんでしょうか。

まさにそうですね。私が目指しているプログラミングは、自分で試して動かしてみて、これは面白そうだな、これは使えそうだな、としっかり実感できる世界です。

そうした発想の部分にちゃんとフォーカスできる人を集めて、少ない人数で作った方が、メンバーとも濃密な会話ができます。それに人数が少ない分、色々なことを自分で手を動かしてやらなきゃいけなくなるので。インストーラーを作るところから、実際に動かすところまで。段階的に触れることができるから、エンジニアとしても勉強になるんですよ。

ー 大規模なチームで働いていたからこそ、自分が当事者として考え、コードを書き、作り上げるということの重要性が分かるんですね。

それもありますね。実際にアステリアの開発チームのみんなには、こういう機能が欲しいと定義したら、その作り方はもちろん、機能としてどんな振る舞いをすべきか? ということまで、すべて自分で考えてほしいと伝えています。そしてまずはとにかく、完全じゃなくてもいいから動くもの、プロトタイプを作ってもらう。そうすることで初めてみんなで議論できるようになるんです。

例えば、パワーポイントにこういう機能があります、みたいなことを一覧にしても、それらについて質問したり批評したりできる人ってあまりいないと思うんですね。だけど実際に動いているものを見れば、「こういう場合はどうする?」とか「ここはどうなってる?」と色々な角度からの質問が出てきますから。

それからもう一つ大事なことがあって、それは全部書ききったとしても、やっぱり駄目だったなと思ったら、気持ちよく捨てること。これって実は、結構大変なことなんですよ。

ー 自分が書いたものを捨てること! 確かに、難しそう……。

作ったものはなんとかして世の中にリリースしたくなりますよね。だけど、作っても出さない決断はあるし、逆に言うともう一度、最初から書き直すというのもありだと思っています。書き直すことへの抵抗感は誰しもあるはずですが、だからこそ、その気持ちに負けずに書き直す勇気も重要で、前に書いたものをさらに良くしながら書き直せるようになることは重要だなと。

アステリア製品の「Handbook」も、確か3回くらいは一から書き直してますね。さらに2020年にリリースした「Handbook X」も、直近の2年ぐらいで新しく書き直しています。

過去から引き継いだ機能をある程度は残しつつ新しい機能を載せることが求められるので、その取捨選択や、書き直したものにさらに新しい機能を載せるためのアイデア出し。こういった一連の作業を自然にできるようなチームでありたいですね。

ー チームとして、そうした共通認識が持てていることは重要ですよね。

そうなんです。本当にソフトウェアって終わりがありません。「ASTERIA Warp」なんてもう25周年を迎えた製品ですが、開発している側としては「これが足りない」「あれが足りない」って思うんですよ。必ずしも全員が使う機能ではないけれど、これはあった方がいいよね、と少しずつ機能を足していきたくなるんですよ。

少し話は変わるんですが、アステリア製品のUIのデザインをやっている中国の杭州(ハンジョウ)支社には絵を描くペインターとしても活躍するメンバーが多くいます。そのメンバーに昔「絵を描いたときに “この絵が完成した” っていうのは、なにを定義してそう思うのか?」と質問したことがあるんです。僕自身も、絵がなにを持って完成するのかよく分からなくて。

するとその人が「手を入れるところがもうない、と思ったらそれで終わりだ」と話していて。描き手がもう手を入れるところがないっていうのは、これ以上はもういじっちゃ駄目なんだってことだと。なるほどな、と思いました。

ー 手をいれるところがもうない、と思ったら完成ですか…!

製品というのはリリースしなくちゃいけない。だから、あれもこれもまだまだ入れたいって思うんだけど、まずは一回、手を、筆を、止めなきゃいけないんですよ。今ある機能としては、もうこれ以上はとりあえず手をつけないで出した方がいいと思えて、ようやく初めてリリースできる。最近はリリースのサイクルがどんどん短くなっているので、従来のフローと変わってきてはいますが、ソフトウェアを作るという観点において、どういうふうに機能を入れていくかは、チーム内で色々と議論しながら製品化をしています。

これからエンジニアを志す人へのアドバイス

ー 北原さんのお話を聞いていると、「新しい発想」というのは重要なキーワードになっていますね。実際、アステリアの製品は「今必要なもの」よりも「これから先の未来に必要とされるもの」を作るというコンセプトがあると思います。

そうですね。私自身、こんなものがあったらいいな、と思うものは常に想像しています。でも実際に自分が想像できることってそんなに多くはないし、自分の置かれた環境の中だけでそれを見つけることは容易くはないと思うんです。

そういう意味では、コンピュータに関係ないことでも幅広く経験してみるっていうのは結構重要だと思っています。色々な業種の人と話すことも重要だし、例えば、製造業とか、医療系だとか。現場で課題を感じている人たちからヒントを貰って、インスパイアされて何かを作ることは多いですね。

ー ただ専門性を極めるだけではなくて、業界問わず、さまざまなジャンルからのインプットをすることが重要なんですね。

そうです。そこから吸収して、逆にこういうものがあったらいいんじゃないかな? って考えることが重要かなと。例えば、電池一つ取っても、将来は今みたいなリチウムイオン電池ではなくて「全固体電池」になる。固体の電池になると密度も高くなるので、同じサイズでも長持ちするみたいなことができるわけですよね。

そういった新しい素材のことを考えると、こういうものが土台として用意された場合、その上にはこういうソフトウェアが書けるんじゃないかな? と組み合わせることができる。

まだ素材自体が完成していないのですぐに製品化されることはないですが、「この製品のこの機能なら投入できるかも」と思えるものを少しずつ作ることはできますよね。そういった発想で新しいものを見つけていくのが大切なんじゃないかと思います。 今はコンピュータ周りの話だと、生成AIやLLM(大規模言語モデル)が注目されていますが、まったく違う領域で日々さまざまな研究をしている人たちがいます。最終的にはそうした分野とコンピュータが交差してくる世界があるはずなので、そのポイントを自分で見つけて、何か仮想で考えておくというのは重要ですね。

ー なるほど。実際、これからエンジニアを志す方、学生さんなどに向けたアドバイスがあればいただきたいんですが……。

まだまだこれから色々なことを学習できるし、自由に学習できる環境も整っているはずです。うまく活用して、さまざまな情報を頭の中に入れた上で、自分がやりたいことは何なのか? 考えてほしいです。自分だったらこういう技術の上にこんなソフトウェアを成り立たせることができるかも! とかね。そういったことを考えられると、すごく面白いんじゃないかなと思います。

採用の面接などでも、本当にやりたいことやこれまで考えてきたこと、自分はこんなふうに思うっていう考え方を伝えることがすごく重要です。私たちも、通り一辺倒の答えを求めてるわけではなくて、むしろそういった自分の中に持っている想いを出してもらえることで、互いに理解できる部分があるし、逆に私たちにもそうした質問をどんどん投げてほしいと思いますね。

自動化されていないところを見つけるのが難しい時代に? 北原が見据える未来と、そのために必要な技術

ー 最後に、これから先の未来の話をすこし聞かせてください。今テクノロジーは日進月歩ですが、コンピューティングの起点から歩んできた北原さんから見て、100年後はどんな世界になっていると思われますか?

おそらく、かなりの部分で自動化が進んでいる世界でしょうね。逆に言うと「自動化されていないところ」を見つけるのが難しい世界になっていると思います

特にいまのAIの急成長を見ていると、今から100年後にはシステムを作る必要もなくなっていて、言葉に出すだけで「その言葉の内容を実現できてしまう世界」になっているんじゃないかなと……。

例えば、車でも、全員が運転しないけど移動できるのが当たり前になっていて、運転は「やりたい人がやる特殊な作業」になっている。そういう意味では「やりたいことがある人がやりたいことができる世界」なんじゃないかと。

ー 手段として運転するのではなく、ただ自分が運転したいからするっていう……。

そうですね。運転はもう人がやるものじゃなくて、移動のためのさまざまなトランスフォーメーションの仕組みが用意されている世界でしょうね。やりたいことがある人が、やりたいことをやるために、わざわざマニュアルで何かをやるっていう世界になるんじゃないかと。

ー そんな世界で、エンジニアの人たちはどういう仕事をしているんでしょうね。

それはすごくいい質問ですね。まずそんな未来に到達するためには、やっぱり沢山のエンジニアたちがまだまだ色々なものを作らないといけないと思っています。AIは人間の身体でいうと「脳」にあたるわけですが、物理的な腕や足にはなれません。だから、やっぱり作らなきゃ。

いま我々の世界中の技術をかき集めても、自分の手と同じように動く、ハードウェアとしての手を作ることはできないし、足もできない。つまりまだできないことはたくさんあるわけで、こうしたものを一つずつ、ソフトウェアとハードウェアで制御して作っていかなきゃいけないわけです。エンジニアの仕事がなくなるのではなく、そういう未来のために、まだまだやることは沢山あるんですよ。

私としてはその一つ二つを会社でも作っていって、社会で使ってもらいたいというふうに思っています。

ー 確かに、百年後の未来を描くためにやるべきことがたくさんある、と。

そうなんですよ。まだ何も作れてないんです。 いまはレストランに行けばロボットが料理を運んできてくれるけど、今の技術でできるのは、正直あのレベルなんです。人間のスタッフがサーブするというクオリティと比較したら天と地くらいの差があるので、そこをソフトウェアとハードウェアでどんどん縮めていくことが求められています。

そのために作るものはまだ沢山あるし、そのための何かを自分で切り開いていくということも必要な時代なんじゃないかなと思います。

ー アステリアとしてそういう未来に関わっていくこと。北原さんは、どんなふうに思い描いていますか?

私たちは今、クラウドにもどんどん広がっている「ASTERIA Warp」を販売していますが、クラウドだけに特化するのではなく、分散したコンピューティング技術を使って、その地域の中だけでエネルギーコントロールをしたりとか。そういうことをやっていく必要はあると思います。

そうした視点でいま私たちが注力しているのは「エッジコンピューティング(※)」です。そういう意味では、エッジコンピューティングも、クラウドコンピューティングも、両輪でやっている会社だからこそ、ハイブリッドな環境をお客様に提供することができます。

(※編集部注釈)エッジコンピューティング
IoT端末などを使ってデータを収集し、サーバでデータ処理を行う分散コンピューティングの概念のこと。データをクラウドにデータを送らず、分散して処理することができるので、通信の遅延が起こりにくい。

ー エッジコンピューティングが鍵になると感じているんですね。

そうですね。最近は誰もがブラウザを使って何でも作業できるという世界になっていて、クラウドのデータセンターに大量のデータが落ちています。そして今のAIシステムって、すべてインターネットにあるデータで学習しているんですよね。

しかし、それをある程度勉強し終わってしまったら、今度は「実社会のデータ」というのが欲しくなるはずです。要は「学習することがもうインターネットからの学習では足りない」という世界になったときに、例えば、車の移動とか人の移動とか、人流……。ショッピングセンターでの人流はどのくらい? 車は時期によってどのぐらい渋滞する? とか。とにかくリアルデータを取らなきゃいけなくなるんですよ。

この道はある特定の時期にすごく混むんだけれど、それを解消するにはどうしたらいいか? と考えたとき、インターネット上の学習だけでは絶対に足りません。そのために必要なデータを取るには、もう明らかに現場の情報が必要なんです。

例えば、渋滞を緩和するために信号機の状態を変えるとすると、現場でのデータをエッジコンピューティングで集計して、演算して、そしてクラウドのAIを活用して分析していく、というフローに将来的にはなっていくでしょう。クラウドとエッジ、両方をリアルタイムに活用するのが重要になるはずで、そのアクションを作るためのプログラミングのプラットフォームとして、我々の製品が活用されるようになれば理想的だと思っています。

ー 物理的なデータとインターネット上のデータを、リアルタイムでつないでいくということですね。

そうです。両方の情報が必要になってくる時代、我々はそれに合ったソフトウェアを作っていく必要があります。

アステリア製品の「Platio」で現場のデータを入力することは多いですが、これに加えて、ロボットがデータを取ってきてくれる世界があってもよいですよね。現場で人によって入力されたデータと、ロボットが取ってきたデータ、そしてクラウドデータと3つで環境データを蓄積して、それを使うことできるとかね。ちょっと飛躍しすぎている話もあったかもしれませんが、エンジニアとして働くこと、アステリアという会社や、製品の特性を生かすこと、その両方で、これから先の未来に貢献できれば良いなと思っています。

ー 面白い話をありがとうございました。最後に、アステリアで働くことに興味がある方に向けて、なにかメッセージがあればお願いします。

今は、業種問わず、ソフトウェア会社の選択肢もたくさんある時代です。
その中で、自分がやりたいことを実現できる環境を見つけるのはなかなか難しいことだと思います。色々な会社を見た中で「自分がどんな環境であれば情熱を持って仕事できるか」ということをぜひ模索してもらえれば良いなと。

自分がやりたいことを実現するための選択肢のひとつとして、我々の会社もうまく使っていただいて。そんな風に、未来を切り拓いてもらえるといいかなと思っています。

インタビューを担当した、アステリア人事担当 内海詩織と

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この記事を書いた人
田中 伶 アステリア株式会社 コミュニケーション本部・メディアプランナー。 教育系のスタートアップでPRや法人向けの新規事業立ち上げを経験。話題のビジネス書や経営学書を初心者向けにやさしく紹介するオンラインサロンを約5年運営するなど、難しいことをやわらかく、平たく解説するのが得意。台湾情報ウェブメディア編集長も務める。