2019年11月14日

ブロックチェーン有識者が集まるシンポジウム『ブロックチェーン羅針盤』で語られた、Facebookが発行する仮想通貨「Libra」が日本に与える衝撃とは?

2019年10月24〜25日に開催された、ブロックチェーンの可能性に迫るシンポジウム『ブロックチェーン羅針盤』。様々なコンテンツの中でも特に大きな注目を集めたのは、ブロックチェーン有識者による「仮想通貨Libraの衝撃」をテーマとしたパネルディスカッションでした。イベントの中で語られた内容を一部書き起こし、現場の熱気をそのままにお届けします(主催:一般社団法人ブロックチェーン推進協会)。

シンポジウム『ブロックチェーン羅針盤』のイベント会場

こんにちは!in.LIVE 編集部です。

2019年10月24〜25日、金融総合専門紙「ニッキン(日本金融通信社)」が主催する国内最大の金融機関のためのITフェア「FIT2019(金融国際情報技術展)」が行われました。本イベントと同時開催されていたのが、一般社団法人ブロックチェーン推進協会(略称:BCCC)主催のシンポジウムであるブロックチェーン羅針盤

一般社団法人ブロックチェーン推進協会のチラシ

このシンポジウムでは、主に金融業界などで働く方などを対象に、基調講演や有識者による解説などが行われました。その中でも特に注目を集めたのが、ブロックチェーン関連の有識者である4人の登壇者が登壇したパネルディスカッション。

テーマは「仮想通貨Libraの衝撃」ということで、2019年6月にFacebookが発表した仮想通貨「Libra」が日本経済や金融業界に与える影響などについてのクロストークが行われました。

業界の有識者たちはどのようにこの「Libra」や、今後起こり得る日本や世界への影響を見ているのか? パネルディスカッションにて語られた具体的な内容を、一部書き起こしでご紹介していきます。

パネルディスカッション登壇者の紹介

「仮想通貨Libraの衝撃」というテーマで話す登壇者4名

写真左から

平野 洋一郎氏 BCCC代表理事 / アステリア株式会社 代表取締役社長/CEO

熊本県生まれ。熊本大学を中退し、ソフトウェア開発ベンチャー設立に参画。ソフトウェアエンジニアとして8ビット時代のベストセラーとなる日本語 ワードプロセッサを開発。1987年~1998年、ロータス株式会社(現:日本IBM)でのプロダクトマーケティングおよび戦略企画の要職を歴任。 1998年、インフォテリア株式会社創業。2007年、東証マザーズに上場。2008年~2011年、本業の傍ら青山学院大学大学院にて客員教授として教壇に立つ。 公職:ベンチャーキャピタルFenox Venture Capital Inc. アドバイザー/ブロックチェーン推進協会 代表理事/先端IT活用推進コンソーシアム 副会長/XML技術者育成推進委員会 副会長など。

藤本 真衣氏 株式会社グラコネ 代表

「つながるをつくる」をコンセプトにこれまで多くのマッチングビジネスを手がけてきた。2011年にビットコインに出会って以来、日本を代表するビットコイン、ブロックチェーンのエバンジェリストとして、業界の最前線で活躍を続ける。この分野の世界的専門家とも親交が深く、CryptoWeeklyの“THE 100 MOST INFLUENTIAL PEOPLE IN CRYPTO”(仮想通貨業界で最も影響力を持つ100人)では、日本人で唯一トップ100入りを果たす。その他、ブロックチェーンエンジニアの就職・転職支援会社withB、仮想通貨寄付プラットフォームKIZUNAの立ち上げ、運営を行っている。

福島 良典氏 株式会社LayerX founder&CEO

東京大学大学院工学系研究科卒。大学時代の専攻はコンピュータサイエンス、機械学習。 2012年大学院在学中にGunosyを創業、代表取締役に就任し、創業よりおよそ2年半で東証マザーズに上場。後に東証一部に市場変更。2018年にLayerXの代表取締役社長に就任。2012年度IPA未踏スーパークリエータ認定。2016年Forbes Asiaよりアジアを代表する「30歳未満」に選出。2017年言語処理学会で論文賞受賞(共著)。2019年6月、日本ブロックチェーン協会(JBA)理事に就任。

杉井 靖典氏 BCCC副代表理事 / カレンシーポート株式会社 代表取締役 CEO

インターネットの黎明期より、Web・IT分野の幅広い事業に携わり、在籍した企業ではネットメディア、デジタルコンテンツ等の流通プラットフォームの企画開発を手掛け、ECやデジタルコンテンツ流通事業の会社など複数の起業経験を持つ。2015年10月、カレンシーポート社を創業。ブロックチェーン関連では国内トップクラスの実績を持ち、経済産業省、農林水産省、日本銀行、全国銀行協会などでも有識者としてアドバイスを行っている。ブロックチェーン推進協会 (BCCC) 副代表理事。日本ブロックチェーン協会(JBA) 理事。

Libraの開始にあたって、金融機関が起こすべきアクションは?

ブロックチェーン推進協会のシンポジウムの様子
平野洋一郎
まずおさらいですが、Libraというのは、2019年6月にFacebookが発表した新しい仮想通貨で、そもそものミッションは「金融包摂」、つまり「インクルージョン」ということ。いま世界には17億人の金融機関にアクセスできない成人がいると言われていますが、こういった層を技術を通じて救っていくということが命題として掲げられています。

特長として、ステーブルコイン(=価値が変動しない、儲からない)であるということ。またFacebook一社が運営元となってスタートするのではなく、現時点では21の会社がLibra協会として結束し、最終的には100社でスタートすることを目標としています。2020年にサービス提供開始と言われていますが、今年6月の発表以降、各方面で様々な議論を巻き起こしているのが現状です。

今回は、お越しいただいたパネラーの皆さんと一緒に、Libraの中身、さらにはその考察まで踏み込んでいけたらと思っています。早速ですが… 今日の会場には金融機関の方が多いので、まずはこの「Libra」について、金融業界で起こすべきアクションがあれば教えていただけますか?
杉井靖典
単刀直入に、銀行がぜひ、銀行の預金を裏付けとしたコインを発行して、Libraのようなことをやってほしいと思いますね。
平野洋一郎
それは単一の銀行で、ということですか? それともLibraのようにコンソーシアムのようなものを作って?
杉井靖典
コンソーシアムじゃなくても構わないと思います。結局、他行同士で「交換可能」であればいいんですよね。
平野洋一郎
それは現在の「MUFGコイン」とは何が違うのでしょうか?
杉井靖典
本質的には一緒ですね。Libraって、プログラムが可能(※)ということに価値があるんです。商取引が行われたときに、取引の代金としてコインを使うことができる。銀行よりも利便性が高いということが、Libraの強みです。
(※)Libraの特長の一つに「プログラム可能」というものがある。プログラムを実行する仮想マシンをネットワーク上に備えており、Moveというプログラミング言語を使って、そのトランザクションやメンバーシップの制御ができるようになっている。それにより、スマートコントラクトなどにも対応している。
平野洋一郎
つまり、スマートコントラクト(※)に対応しているということですね。
(※)契約書管理をブロックチェーンで行うこと。いくつかの条件が揃ったときに事前に決めていた金額を自動的に送金することをプログラムとして実現し、契約書と同等に扱う。プログラムはブロックチェーン上にて実現される。
杉井靖典
そうです。なので、スマートコントラクト上を移動できる通貨を銀行が発行する方が、将来にわたって、利便性をユーザーに提供できるのではと思ってるんです。
平野洋一郎
なるほど。福島さんはどのようにお考えですか?
福島良典
金融機関としてLibraをどう捉えるべきか?という文脈でお話すると、まずよく聞かれるのですが「Libraって普及するんですか?」ということです。それ自体はまだ分からないですが、 “Libra的なもの” が必ず、この十年、二十年ぐらいで普及することは間違いなく、金融機関のあり方も大きく変わるのは確実だと思っています。

実際に中国では「Libra」発表後、デジタル人民元というのを中央銀行が発行することが出ていたり、これまでお金が紙に近いものだったのが、真のデジタルなものになっていくのかなと。

シンプルな話だと、請求書の売掛金と入金の消込みだって、手作業ですよね。 お金にまつわる今まで存在していた煩雑な作業が、すべてソフトウェアやプログラム、つまりスマートコントラクトで解決されるようになるのかなと。そうなると、銀行や証券の作業がどんどん効率化されて、今までになかった業務が出てくるので、その準備を今すべきなのではと思っています。
杉井靖典
そもそも「売掛金」という概念もなくなるかもしれませんよね。この仕組みを使うと…。
平野洋一郎
自動消込っていうのは、今のテクノロジーではできないんですか?
福島良典
今の技術でもできなくはないですが、ブロックチェーンや分散化台帳の技術を使った方が効率的かなと思います。今存在している技術と、分散化台帳の技術とで大きく違うのは ”企業間で閉じているかどうか” ということですよね。つまり、共有されたデータやプログラムか、それとも社内だけで動くデータやプログラムか?ということです。

今の金融のシステムやデータベースって、一行、もしくはグループ内の銀行でしか共有できませんよね。それが他行と共有できるかというと難しくて、そのせいで手作業が発生しているんですよね。なので、その部分にブレークスルーが起きるんではないかなと思っています。
平野洋一郎
藤本さんはどうですか?
藤本真衣
ちょっと仮想通貨の業界全体から見たお話になるんですが、Libraはいわゆるステーブルコインであり、ビットコインなどとは違ってボラティリティ(変動性)がほとんどないのが特長ですよね。それゆえに、投機的な意味ではお金は生まれないと言われているんですが、それでも日本の金融機関の金利と比較すると、やはりステーブルコインの方が3~7%と利率は良いんです。

預金の流出を考えると、銀行自身や会社自身が、ステーブルコインをしっかり自社サービスとして組み込んで、地方の銀行や信頼のある大企業が個人に対して新しい資金の運用方法として提案することで、今まで響かなかった層にもチャンスを提供できるのではと思っています。
平野洋一郎
ビットコインとLibraって、銀行にとっても違うのでしょうか?
藤本真衣
そうですね。やはりLibraのようなステーブルコインの方が、ビットコインよりも、貸し借りや決済などの実用的なシーンにおいて使いやすいと思います。
杉井靖典
小さなお金の貸し借りをリアルタイムでできるというのは強いでしょうね。それをプログラムで管理できて、金利なども自動で回収できるということにつながっていくので。
藤本真衣
ただ、じゃあ本当に、ビットコインのように誰にも止められないものなのか? というと疑問です。結局はFacebookなどの主体となる企業がいて、コントロールされてしまうものなのか? と考えたときに、ビットコインの本当の良さと、ステーブルコインの良さというのが明確になってくるのではと思っています。
平野洋一郎
なるほど。先ほど利率の話もありましたが、今は銀行は低金利ですし、Libraで運用すればよいのでは?ということもありますか?
杉井靖典
リアルタイムにお金の移動ができるので、一時的に貸付けを行う「短資」のニーズが確実に出てくると思いますよ。その金利が例えば15%とか…。そうなると金利だけでそれなりにビジネスになるのではないかなと思いますね。
福島良典
ちょっと話が変わるのですが、、、現在「Dai」と呼ばれる、分散型で発行されているステーブルコインというのもあるんです。そちらはプライベートな貸し借りのマーケットもすでにできていて、年利で6%ぐらいあるんですよ。その需要はなぜ生まれるかというと、レバレッジをかけて貸し借りをしている人がいるからです。「Dai」を使って仮想通貨を買っているような発想です。

なので同じように、「Libraを使って、簡単に、手数料も安く株式を買って投資をする」という人もおそらく出てくるのではないかなと。別の市場での投資のためにLibraを買うという人も短期的にはあると思いますね。
平野洋一郎
Libraの場合は、国をまたいで使えるからこそ、それぐらいの利子を払ってでも調達の価値があるということですね。

ちなみに… 銀行自体が「Facebookが率いているLibra協会の参加企業になる」というのはどう思いますか? いま参加している企業の21社のうち、銀行はないようですが。
福島良典
Libra協会の参加企業になる(=Libraのノードになる)うまみはビジネス的にもあると思うので、もし眠っているお金があるということなら参加するのも良いのではないかと。Libraの仕組みって面白くて、普通は預金の利子はユーザーに還元されますが、Libraの場合は利子が運営企業(=Libra協会の参加企業)に還元されるんですよね。

それがLibraの一番のキモであり、通常の預金と全く違うところです。Libraの参加企業になる意義というのは、そうしたリターンを得られるということですから。
平野洋一郎
そうなると、世の中の利子の仕組みが変わって経済にも影響を及ぼすのかなと思うのですが、どうでしょうか? 次のテーマに移ります。

Libraは日本経済にどのような影響を及ぼすのか?

藤本真衣
短期的なところでいうと、海外から日本に観光で来た人なんかも決済がスムーズになってラクになる、便利になるっていうイメージが単純にあります。こうした表面的な良い影響だけじゃなく、長期的に見たときに悪い影響もあるのではと思いますが、これは私も皆さんに聞いてみたいですね。
福島良典
断言はできないですが、Libraが日本国内において日本人向けに流通するということはほとんどないんじゃないかと思いますね。日本って「遅れてる」と言われることもありますが、ネットバンキングで誰でも簡単に入金なんかもできて、すでにほとんどの国民に金融サービスがいきわたっているんです。金融先進国ですよね。

Libraがターゲットとしているのは、インドとかインドネシアとかそういった金融サービスがそもそも行き届いていないエリアの人たちです。

ただ視点を変えると、Libraは ”大規模な資金の決済システムをゼロから作る” という貴重なパイロットケースを見せてくれるものでもあります。なので、Libraをうまく盾に使って、日銀に同じようなものを作ってもらうというのが、今の日本にとっては一番インパクトのある施策だと思います。そうすることで既存の金融機関でかかっているコストを減らすこともできますし、皆にとってメリットがあるのではないかなと。

今中国では「デジタル人民元」みたいなものを発行しようとしていますが、それの日本バージョンみたいなものです。
平野洋一郎
つまり「全銀ネット(※)」を置き換えるようなイメージでしょうか?
※全国銀行資金決済ネットワーク
福島良典
そうです。そもそもLibra自体が、”グローバル全銀システム” みたいなものだと思っているので。
杉井靖典
Libraは複数の法定通貨や資産でその価値を裏付ける「通貨バスケット制」を採用していますが、そのバスケットの構成でいうと、日本円が占めているのは14%ぐらい。ドルは50%以上、ユーロが18%… そうなると、結局「為替」はあります。そうした通貨を、通常の通貨として使うのか? というと、日本人にとっては障壁が高いです。

福島さんがおっしゃるように、Libraと同じような機能を持つものを日本独自につくるというのが一番良いのではと思ってしまいますね。
平野洋一郎
Libraはステーブルといいつつ、バスケット方式である。なので、日本円に対しては大きくはないがボラティリティもあるということですよね。そこを日本円だけにすれば良いのでは? という考えになるわけですね。

なぜ各国は、Libraにネガティブな反応を示しているのか?

なぜ各国は、Libraにネガティブな反応を示しているのか?パワポ
平野洋一郎
これまでポジティブな話が多かったですが、実際のところ、Libraに対する各国の反応ってすごく激しかったですよね。ネガティブな発言も多かったですが、これはどういったところからなんでしょうか?
藤本真衣
各国からとても警戒されていて、アメリカは、Libraはドルに対する企業連合からの挑戦状だと。ユーロからしてみれば、ユーロに対するアメリカからの挑戦状だと。ブロックチェーンを使ったプロジェクトにも関わらず、ブロックチェーン業界までもが警戒しています。先日アメリカでも公聴会が開かれたところですが、そこでは、FacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグが色々と問い詰められるシーンも多かったですね。
福島良典
僕は色々考えたんですが、これ、単にLibraの旗振りをしているのがFacebookだったから、なんじゃないかと思ってます(笑)。Facebookという会社は、過去に個人情報流出や選挙の情報操作の問題なんかも起こしていて、世界的に見ると本当に信頼されていないんですよね。

Libra自体は、金融に関する問題やリスクをうまく網羅していて、すごくよく考えられたシステムなんです。だからこそ、「経済に影響を与える可能性のあるものを、Facebookに作らせて本当に良いのか?」という反応が大きかったんじゃないかなと。
杉井靖典
それは同じ意見ですね。もし金融機関や中央銀行など当局に近いところが、Libraのようなこの仕組みをスタートさせると発表していたとしたら、かなり革新的な取り組みになっていたのかなと。
平野洋一郎
なるほど。でもそれって、Facebookだったからなんでしょうか? それとも民間の企業だったらどこも同じような反応だったのでしょうか。もしもこれがAmazonやGoogleだったら?
福島良典
企業イメージ的にはちょっと違ったかもしれないですが、やはり同じような理由でネガティブな反応はあったと思いますよ。

Libra協会に参加する組織のインセンティブとは?

平野洋一郎
Libra協会への参加が確定している企業は、もともと発表されていた28から21に減りましたが、スタート時には100社が参加するということになっています。新たに参加することに関心を示している企業が、すでに1500社ほどあるということも発表されました。

改めて、このLibra協会に参加するインセンティブは何なんでしょうか?
福島良典
一つは利子を固く得られるということが大きいですね。 あとは、ユーザーとの膨大なトランザクションを持っている会社にとっては、クレジットカードや銀行など金融機関の仲介手数料を省いて、自分たちでシステムを作れるLibraに魅力を感じたのではないでしょうか。
藤本真衣
さらには、UberやSporifyとかこれまでクレジットカードを持っていないから決済できなかった人たちがいるわけです。Libraが掲げている ”金融包摂” というテーマから考えると、これによって今クレジットカードを持っていない世界17億人の人たちにアプローチできるということなので、月額を払って利用したいけど、クレジットカードがないから課金できなかったという層をユーザーとして取り込めるのが大きなメリットだと考えられます。
平野洋一郎
クレジットカードの手数料が高いからLibraで… というのは「反VISA、反マスターカード」とも受け止められるのですが、もともとLibra協会にはVISAやマスターカードも加盟していましたよね。
杉井靖典
加盟しておかないと情報が入ってこないので、反するよりも乗っておいたほうが良い、と思っていたんじゃないでしょうかね?
福島良典
ちょっと話が変わるんですが、中国の事例で「アリペイ」とか「WeChat Pay」って、決済手数料は一切取らないんですよね。それよりもデータを集めてユーザーを評価、個人を与信することで、決済も含めて貸付ビジネスとして成立させようとしています。Libraが参考にしたのは、こうしたサービスなんじゃないかなと思ってるんです。いわゆる従来の決済手数料を取るビジネスというのは、今後100年続くビジネスとは限らないからです。

それよりも、より不確実な貸付けだとか、売掛金を早く回収するとか、そういったことに対する付加価値が増えていくんじゃないかなと。VISAやマスターカードも、そういった「手数料の先のビジネス」まで今後は考えていかなければいけない。そういった狙いから、当初は加盟を発表したのではないかなと思います。
杉井靖典
確かに、手数料ビジネスは今後間違いなくなくなっていくでしょうね。
福島良典
これって、少し前の「インターネット」と同じアナロジーですよね。技術を介して、手数料なく情報を速く安全に送れるようになると、インフラよりもアプリケーション側に付加価値が移りました。それと同じことがシンプルに、金融業界でも起きるのではないかなと思っています。
平野洋一郎
アプリケーション側というのは、銀行からすると顧客向けのサービスという意味合いですよね。
福島良典
そうです。ただ強調しておきたいのは、手数料ビジネスがなくなるからといって、金融機関がなくなるということはないと思います。金融機関の付加価値は明確に変化するのではないかと。具体的には、決済や預金などのインフラというよりは、どう貸付けるか?どう運用するか?というようなところに付加価値が移るのかなというのが僕の考えです。
杉井靖典
銀行が今のLibra協会に加盟するべきかという点においては、現状リスクを犯してまで参加する必要はないと思います。ただ、決済システムをブロックチェーンで置き換えるようなもの、もっと軋轢を生まないように設計された ”Libra的な決済システム” が出てきたら、加盟する意味はあると思いますよ。

ずばり、Libraは普及するか? しないか?

平野洋一郎
”Libra的なもの” というのは今後キーワードになりそうですね(笑)。では最後に、ずばり普及するのかどうか?というところではどうでしょうか。
藤本真衣
先ほどお話ししたように、Facebookが叩かれたり、Libra協会への参加を発表した会社が加盟を撤回したりと、今はそもそも発行されるかどうかが怪しい状況です。なのでLibra自体が普及するとははっきり言えませんね。
福島良典
僕はLibraのホワイトペーパーを見たとき、これは絶対に普及すると思ったんです。ただ、今藤本さんもお話ししていたとおり、今色々問題が出ている中で「Libra」自体が普及するのは難しい状態になっていますね。何度も話題に挙がったように ”Libra的なもの” 、似たような思想で生まれるものは可能性があると思っています。形は変えていくと思いますが、引き続き注目していきたいですね。
杉井靖典
僕は「ミニ Libra」みたいなものがたくさん出てくるんじゃないかなと。色々な組織がLibra的な発想で通貨を作る。そういう ”Libra的なチャレンジ” がこれから多く出てきたら面白いなと思っています。民間企業もまだまだ改革を起こすために頑張って欲しい、という僕の夢でもありますが。
平野洋一郎
なるほど、面白いですねえ。色々な可能性や期待も持たれる反面、目の前の課題にLibraがどのように取り組んでいくのか? そのあたりもウォッチしていきたいですね。皆さん、ありがとうございました!
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この記事を書いた人
in.LIVE 編集部
in.LIVE 編集部 アステリア株式会社が運営するオウンドメディア「in.LIVE(インライブ)」の編集部です。”人を感じるテクノロジー”をテーマに、最新の技術の裏側を様々な切り口でご紹介します。