2020年10月26日

世界のトップバリスタの手法をAIで完全再現! IoTコーヒーメーカー「iDrip」創業者インタビュー。テクノロジーの力で、私たちの珈琲体験はもっと豊かに

世界のトップバリスタたちのドリップ方法を学習し、注水量や温度、速度、ドリップ回数やタイミングなどのこまやかな技をAI技術で完全再現する、台湾発のIoTコーヒーメーカー「iDrip」創業者のJohnさんにお話を伺いました。


あらゆる分野でのテクノロジーが急発展している今、皆さんの生活するお部屋は、どんな進化を遂げていますか? なかなか外出できない時期だからこそ、おうち時間を充実させるためにさまざまな機能をアップデートさせている方も多いはず。

そんなこだわり派の方にぜひ知っていただきたいのが、台湾発のIoTコーヒーメーカー「iDrip(アイドリップ)」。コーヒーメーカーがこんなに進化していたなんて! と驚かずにはいられないのはその機能。なんと、世界のトップバリスタたちのドリップ方法を学習し、注水量や温度、速度、ドリップ回数やタイミングなどのこまやかな技をAI技術で完全再現するという(!)まるで魔法のようなコーヒーメーカーなんです。

自宅やオフィスで、まるで有名バリスタが直接淹れたような味わいをじっくり楽しめるのはもちろんのこと、製品自体も高級感がありとても美しく、コーヒー愛飲者だけではなく、ガジェット好きな利用者からも圧倒的な支持を集めています。

そんなiDripの創業者であり、連続起業家でもある葉建漢(John)さんに、貴重なお話を伺うことができました。iDripの製品誕生のきっかけや開発において苦労された点、またこれから目指していくビジョンなどについて詳しく伺います。

葉建漢(John Ye)さん
iDrip Ltd. 創業者/CEO

台湾出身の連続起業家/デジタルマーケター。デジタルマーケティングやEコマースサービスを提供するHiiirテクニカル株式会社を起業した後、2013年に台湾電信キャリア大手のFarEasToneに売却。その後、モバイルEコマースプラットフォームのfriDayショッピングをリリース。新事業としてiDrip Ltd.を2018年末に設立し、台湾の優れたIoT技術に基づいたコーヒーメーカー「iDrip」を開発。技術+カルチャー+デザインをコンセプトに、世界トップクラスのハイテクブランドを目指して活動している。

コーヒーで世界を繋ぐ、iDripでできること

本日は宜しくお願いします!
世界のトップバリスタの淹れ方を完全再現するiDripですが、具体的にどのような仕組みになっているのでしょうか?
iDrip専用のドリップバッグには、バリスタの淹れた味を再現する注水量、注水の回数や速さ、断水のタイミングなどの情報が入ったQRコードが載っています。ドリップバッグを iDrip にセットすると、製品がこのQRコードを自動的に読みとり、各パラメーターに基づいてコーヒーを抽出してくれるんです。

もちろんコーヒー豆もバリスタが特別に配合しているものなので、世界のバリスタチャンピオンが淹れた一杯と同じ香りと味を手軽に楽しむことができます。好きなレシピを選んでドリップバッグをセットするだけなので、誰でも簡単に操作できるのも重要なポイントです。
ドリップバッグの情報を読み取ることでバリスタの手の動きや抽出の条件を再現しているんですね。いまは世界12カ国、23人のバリスタの専用ドリップバッグがあるということで、使うたびに新しい美味しさとの出会いがありそうです。

現在は有名バリスタの方々を僕らが厳選して共同開発していますが、将来的には iDrip 上に、誰でも自由に自分の抽出レシピをアップロードできるようなプラットフォームになれば面白いなと思っています

AppleのApp Storeに自分の開発したアプリを載せて世界中の人に楽しんでもらうのと同じ感覚で、職人さんから一般の方まで、自分のオリジナルレシピを沢山の人に味わってもらえる場になればいいなと。
コーヒーのプラットフォーム! 面白いですね。あの人のレシピが美味しいとユーザー同士で情報交換したり、素人の方でも iDripというプラットフォームを通じて有名バリスタになったり。
たとえ離れた場所にいても、自分の手で抽出したコーヒーを友人に提供することもできるようになるかもしれませんね。今このインタビューのあとに、僕が淹れたコーヒーを遠隔で田中さんにプレゼントできたら面白いと思いませんか?
それはとっても素敵です! iDripが、コーヒーで世界とつながるプラットフォームになっていくんですね。

連続起業家からコーヒーの道へ、苦戦した完成までの3年間

Johnさんご自身は、もともとは連続起業家(シリアルアントレプレナー)でいらっしゃったとか。
そうです。最初に会社を立ち上げたのは大学一年生のときで、IT領域で企業向けにソリューションを提供する会社を経営していました。今の iDrip は自分で立ち上げた5社目の会社になるのですが、ライフスタイルに関連したビジネスはこれが初めてです。
数ある選択肢の中から、なぜコーヒーという分野に注目されたのでしょうか?
きっかけは、今からちょうど6年前にとあるカフェで出会った一杯のブラックコーヒーです。これまで何度コーヒーを飲んでも、酸味が強かったり苦すぎたり、味のバランスが取れていないと感じることが多かったのですが、そのカフェで飲んだコーヒーは今まで味わったことがないぐらいに美味しくて。思わずバリスタの方に「なんでこんなに美味しいのか?」と聞くと、水の量、注ぎ方などの細かい条件や、さまざまな秘訣を教えてくれました。

その複雑な工程を聞いたときに、これはまさにAIやIoTが得意とする領域なのでは? とピンときたんです。人に伝えるのが難しい細やかな条件を正確に再現したり、常に一定の安定した動作をさせたり。テスラが運転技術をテクノロジーで再現したように、コーヒーという分野でもテクノロジーを使えば、誰もがこの一杯の美味しいコーヒーをいつでも確実に飲めるわけですから。
IT領域で活躍されていたからこその発想やアイデアが詰まっているんですね。 ちなみに6年前に一杯のコーヒーを飲んで衝撃を受けたときから、iDripという製品が完成するまでは、どれぐらい時間がかかったのでしょうか?
構想から、実際の製品ができるまでの期間は約3年ですね。人材の確保や資金調達なども含め、さまざまな挑戦や苦難がありました。

iDripのハードウェアであるパーツの構成や構造を考えることから始まり、電気工程、制御するファームウェア、バックエンド、フロントエンド、さらにiDripを操作するiOS/Androidでのアプリ開発。ここまででもかなり複雑でしたが、そこからさらに苦戦したのが、人であるバリスタの方々とのレシピ開発です。彼らがOKを出してくれるまで、何度も何度も試作して…。それらすべての工程を調整するのが本当に大変でしたね。もう一度やれと言われたら絶対にできないなと思います(笑)。
人の手で淹れるからこその微妙な動きを機械で再現するって、きっとものすごい大変なことですよね。バリスタさんも自分の味にはこだわりがあるだろうから妥協もできないですし。
そうですね。開発の過程においては、ハードのパラメーターはすべて正しいはずなのに、どこか味が微妙に違うのはなぜ? ということも多々あります。あまりにも細部までこだわって開発しているので「その違いはそんなに大事?」とチームのメンバーから言われることもありました(笑)。

もちろん非常に細かいレベルで再現しないとバリスタの方からもOKも出ません。そうした調整を経て、ようやく初めてiDripで淹れたコーヒーを飲んだときは、本当に感動しましたよ。
ちなみに素朴な疑問なのですが、バリスタの方にとっては、やはり自分自身のドリップ手法をオープンにすることに抵抗がある方もいるのでしょうか?
正直、AIやITテクノロジーが、バリスタという仕事を奪ってしまうのではないかとバリスタの方に誤解されてしまうこともありました。だけど、実際に話を聞くと、皆さん納得してくださいます。iDripが私たちが彼らの仕事を技術で置き換えるためのものではなく、彼らの美味しいコーヒーを世界中の人々に広げるための最高のツールであるとわかってもらえるからです

世界グランプリを獲得したバリスタの方が淹れるコーヒーを飲むことができる人は限られています。もちろんバリスタの方も一日50杯ほどのコーヒーを淹れるのが限界です。そんな中、iDrip を使えば、世界中、数万人の人たちに彼らのコーヒーを味わってもらうことができるんです。

技術をオープンにすることで得られるメリットのほうが大きいのですね。
そうした考え方だけではなく、iDrip では、バリスタの方と売り上げをシェアしているんです。iDripのドリップバッグの売上はバリスタさんにダイレクトに還元されるビジネスモデルになっています。

ユーザーにとっては、より手軽な価格で本格的なバリスタのコーヒーを楽しむことができる。そしてバリスタの方にとっては、時間や労力をかけずに世界中の人に自分のコーヒーを味わってもらうことができる。すべての人にとってメリットのあるモデルを目指しています。

トゥールビヨンからインスピレーションを受けた、高級感のあるデザイン

最後に、実はかなり気になっていた iDrip のデザインについても伺いたいです。コーヒーを淹れる動きが美しく見ているだけで癒やされますし、洗練されたデザインも目を引きますよね…!

ありがとうございます。どうすれば口で感じる美味しさ以外に、感動や温かさ、素晴らしい体験を提供できるだろう? ということを常々考えていました。テクノロジーでコーヒーを淹れるというとどうしても冷たい印象になってしまうので、デザインにはかなりこだわっています。

インスピレーションを受けたのは、懐中時計や腕時計の内部構造として知られる ”トゥールビヨン” です。機能だけでなくその美しさや高級感を追求すれば、ただのコーヒーメーカーとしてではなく、視覚的にも楽しめるのではと。
そんなモチーフがあったのにも納得です。実際にiDripでコーヒーを淹れる様子をみると、そのアンティークのような動きも素敵でつい魅了されてしまいます。
iDripの現行モデルは10万円(税抜)と、家電としては、決して安いものではありません。製品を購入されるお客さまも、やはりライフスタイルにこだわりがある方が多いので、ただコーヒーを味わうための機械ではなく、そこにあるだけで、コミュニケーションの時間や生活全体がより豊かになっていくものになればと思いますね。

テクノロジーを通じて幸せな体験を。iDripが見据える未来

今年6月末に日本進出された iDrip ですが、今後の展開について教えてください。
現在日本では、蔦屋家電などで販売が始まっています。
新型コロナウイルスの関係で残念ながらオンラインでのローンチイベントとなりましたが、日本人はライフスタイルを重視する方も多いですし、これからもっと注力していきたいですね。日本のカフェやコーヒーショップチェーンなどで iDrip を活用してもらったり、あるいは「iDrip Coffee」として実店舗を構えていくような展開にも期待しています。

どんなに有名なコーヒー店でも味が落ちたり、行く時によって違った印象を受けることがありますが、iDripで淹れるコーヒーはいつ飲んでも安定した味わいが楽しめますから。逆に私たちにとってはチャンスかもしれませんね(笑)。
iDrip Coffee!楽しみです。なかなか自宅に製品を置けない方でも、そうしたお店があれば気軽に美味しいコーヒーを楽しめますね。
そうですね。おっしゃるとおり、iDripという製品を誰もが気軽に購入できるようになるという目標まではまだまだ距離があります。もしかすると別のモデルを発売することになるかもしれませんが、いずれにせよ世界中の人たちが(モデルは違えど)本当に美味しいコーヒーが楽しめる世界にしていきたいですね。

今のテクノロジーは、どうしても効率重視だったり、より生産性高く、より便利に、ということに重きが置かれています。私たち現代人が スマートフォンを手に入れて、確かに便利にはなったけど、逆に仕事が忙しくなっているように感じませんか?

僕の目標は、人々のより良い生活や、暮らしを豊かにするためにAIやIoTの技術を使いつづけることです。その第一弾が iDrip。まずは一杯のコーヒーから、テクノロジーを通じて幸せな体験を届けられたらと思っています。

編集後記

実は私も、今回特別にiDripで淹れたコーヒーをいただいたのですが、その深みのある美味しさや香り、そしてじっくりとコーヒーを淹れる工程なども含め、まさに「至高のコーヒー体験」でした。時間や場所に関わらず、世界のトップバリスタの淹れたコーヒーと同じ味わいが楽しめるiDrip、おうち時間を充実させるアイテムとしてこれから国内でも人気が出そうです。

そして今回創業者であるJohnさんのお話をお伺いして、iDripがただ美味しいコーヒーを飲むための製品ではなく、コーヒーを飲む時間という体験をきっかけに世界を繋げるプラットフォームとして機能する未来を感じました。IT領域で活躍してこられたJohnさんだからこそ目指せる世界に、これからも期待したいと思います。

iDrip、興味のある方はぜひチェックしてみてくださいね! 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人
田中 伶
田中 伶 アステリア株式会社 コミュニケーション本部・メディアプランナー。 教育系のスタートアップでPRや法人向けの新規事業立ち上げを経験。話題のビジネス書や経営学書を初心者向けにやさしく紹介するオンラインサロンを約5年運営するなど、難しいことをやわらかく、平たく解説するのが得意。台湾情報ウェブメディア編集長も務める。