2019年4月11日

農業や漁業などの一次産業における “IoT” を一歩先へ!日本発の無線通信技術「Wi-SUN(ワイサン)」の可能性を聞いてきた

「モノのインターネット化」の流れの中で最も期待される、農業や漁業、工場など、一次/二次産業の現場におけるIoT機器の活用。大規模な開発を要することが原因で進まなかったこの分野に「Wi-SUN」を通じて一石を投じるサービスがあるのをご存知でしょうか。一次産業のインターネット化を実現する現場の裏側についてお話を伺いました。


「IoT」という言葉がメディアなどを賑わせ始めてから数年…。
会社や家庭、商業施設の中で少しずつその技術が活用され始めていますが、一方で、農業や漁業などの一次産業、さらには製造業などの二次産業の現場で、モノのインターネット化を支える日本発の技術があるのをご存知でしょうか。

今回はその技術に着目し、これまで高価でおおがかりだったWi-SUNセンサーネットワーク開発を手軽に活用するためのシステムを提供している 株式会社Sensor&Network 代表取締役の小山社長にお話を伺いました。

株式会社Sensor&Network 代表取締役
小山 健二郎(こやま・けんじろう)さん

2014年より神奈川県横須賀市光の丘の横須賀リサーチパーク(YRP)に於いて、ICT企業の執行役員を務め、Wi-SUNを用いた農業、漁業等の実証実験(国プロ)に幅広く携わった同社にて、Wi-SUNの大きな可能性を知る。その後同社より独立し、2019年1月に同地に於いて当社を設立、代表取締役に就任し、現在に至る。「Wi-SUNセンサーネットワーク開発を、もっと手軽に!」をテーマに事業を展開している。

産業用機器のネットワーク化を支える技術、「Wi-SUN」

今日はよろしくお願いいたします!
まずそもそも、勉強不足で申し訳ないのですが「Wi-SUN」について簡単に教えていただけますか? 名前だけはなんとなく聞いたことがあるのですが…
はい。Wi-SUNというのは「Wireless Smart Utility Network」や「Wireless Smart Ubiquitous Network」という言葉の略なのですが、いわゆるWi-FiとかBluetoothといった無線の通信規格の一種です。様々な機器から読み取った信号や上位システムより発信された制御信号をデータとして送受信する役割を持っています。
なるほど、、。だけど、今世の中で取り沙汰される一般的な「IoT」というのは、Wi-SUN ではなく『LPWA』という無線技術を使っていることが多いですよね。2018年には国内で3000万台ほど普及しているというのをニュースで見ました。

小山様が手がけられている農業や漁業の現場でのIoTにおいて、わざわざ「LPWA」ではなく「Wi-SUN」を使う理由って何なんですか?
わかりやすく説明すると、「Wi-SUN」というのは、主に産業用の機器を無線でネットワーク化するときに欠かせない技術なんです。例えば、工場内の工作機械や制御装置とか、農業や漁業の現場で使われるモニタリング用のカメラやセンサとか、、

ちょっとしたセンサーやデバイスをでつなぐというのであれば、「LPWA」の通信技術で十分なのですが、一次産業・二次産業の現場で使われる産業用のマシーンは、壁を隔てた別建ての機械室や、広さが何ヘクタールもあるような農地などで使われていることも多いんです。こういった場所では通信環境の構築や電源確保が難しい事が想定されますし、また、双方向通信が必要不可欠になる場合があります。

そうしたケースでも比較的に難なく接続できるのが「Wi-SUN」なんですよ。

Wi-SUNのネットワークを通せば、規模の大きな産業用の機械から発せられる信号なども受け渡すことができるんですね。お話だけ聞いていると、もっと当たり前に知られていてもおかしくない技術のような…
そう思いますよね。でも、一般的に知られていないだけで、Wi-SUNの一部の規は私達の身近な電気料金のスマートメーターなどにも使われていたりするんですよ。

既に国際標準化されていますし、海外で行われた調査では “数年内に世界第3位に成長する” などと言われたりもしています。しかもこれ、Made in Japanの技術でもあるんです。
ええ!そうなんですね。国際標準になるような技術を日本が開発していたとは! これがあれば、工場や農業の現場などでも一気にIoT化が進んでいくわけですね!?
理論上はそうですね。ただ、大きな可能性を秘めながらも一般のユーザーにはまだあまり普及していません。

その理由として、やはり大掛かりなシステムを構築するためにはゼロからスクラッチで開発しなければならない場合が多いため、開発費用も開発期間も膨らむといったことがあります。これでは一般のユーザーには敷居が高く、便利だからといって数百万から数千万円をポンッと出せるところはありません。

そこで、大規模な開発をしなくても、産業用マシーンに後付けすることで手軽にWi-SUNのネットワークに繋ぐことができる製品を開発しようと思ったのが、いまの会社を設立した経緯なんです。

御社の「GP-BOARD」という製品は、そうした課題を解決するためのアイテムなのですね。ようやく理解できた、スッキリ〜!(笑)
そういうことです!
センサーや工作機械などの産業用のマシーンが発する信号をキャッチし、それをWi-SUNのネットワークに載せる際に間で橋渡しをするのが当社の製品になります。センサー等の機器からの情報とネットワークの間に位置して、これらを繋げる役割ということで、、、
そこがまさに御社の ”Sensor & Network” という社名の由来にあたるわけですね!

知られざる「M2M」の世界。農業や漁業が「IoT」で変わる!?

御社の製品を活用して、農業や漁業の現場でのIoT化を進めているわけですね。M2M(Machine to Machine)と呼ばれる分野かと思いますが、具体的にどういったシーンでメリットがあるものなんでしょうか?

例えば農場の温湿度センサーや、作物の様子が分かるカメラのモニタリング、漁業の現場では養殖場の水温センサーなどが、その場にいかなくてもリアルタイムで共有できます。また、しきい値を設定しておけば、例えば好ましくない温湿度や水温に変化した際にプッシュ通知でアラートを出してくれます。
現地をすべて回って確認しなくても、タブレット一つで一元管理できるわけですね。リアルタイムで複数の人との共有もできる。これは色々な場面で使えそう。

そうなんです。生産者の観点からしても便利なのですが、実は消費者にとっても嬉しい可能性があって。例えば「道の駅」などの直売所や、魚などが入る生け簀にカメラを設置しておいて、そこに珍しい食材が並べばリアルタイムで購入したり…。
へえ!確かに、珍しい食材の入荷状況をすぐに知りたい飲食店などもありますよね。情報として可視化されていれば便利に使えそう。売れ残りも防げるかも、、?
そうなんです。そして、今お話したような画像などの重たいデータの送受信を可能とする点も、Wi-SUNセンサーネットワークのメリットのひとつと考えています。

これだけの低消費電力で、通信速度もそこそこ速く、アプリケーションの開発方法にもよりますが画像を送ることができるような通信特性は、Wi-SUNのような特定小電力無線の中では珍しいと思います。
そんなメリットがあるんですね。 そして、この「GP-BOARD」を様々な事業者さんに活用していただく上で、アステリア社の「Platio」というモバイルデータ活用サービスも活躍していると聞きました。
そうなんです。私たちが「GP-BOARD」を農業や漁業など様々な事業者さんに活用してもらう上では、例えば、Aという農家さんに使ってもらうためのツール、Bという漁師さんに使ってもらうためのツール、というふうに、それぞれの設計と仕様でアプリを別に作る必要があります。

データを可視化するためにアプリを都度、用途にあわせてゼロから開発するのはとても大変ですが、そうしたことをしなくても、簡単な設定だけでそれを実現するアプリを作成できるのがPlatioを活用している一番の理由です。

こちらは、実際に私の手元で表示される各事業者さんのアプリのリストです。

写真の一部にぼかしを入れています

おお!生産者さんごとに違うインターフェイスのアプリをPlatioで作成して各生産者さんに配布しつつ、御社にて一括管理しているんですね。
そういうことです。
様々なデータを収拾できるBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールはたくさんありますが、拡張性や各事業者ごとにアレンジできるといったことを考えると、Platioに代わる製品はありませんでした。費用がとても安いのも魅力的です。

それに、IDとパスワードさえ共有すればすぐさま使うことができるというのもシンプルですが、すごいことなんですよ(笑)。API情報を公開してもらって、たった8時間ほどの工数で「GP-BOARD」と「Platio」をつなぐことができましたから。
アステリアの製品を自社製品と組み合わせてそんな風にお客さんに展開してくださっている方がい たとは。とても有り難いですし、農業や漁業など、今後も様々な事業者さんでの事例が生まれるのも楽しみです。

現場の「IoT化」を一歩先に進めるキーワードは ”汎用性”

長らく Wi-SUNセンサーネットワーク開発や、工場や農業・漁業などの現場でのIoT化に取り組まれている小山様ですが、この分野をさらに躍進させるために必要なことはなんだと考えられていますか?
「IoT」と一口に言っても、何と何をつなぐのか?ということで様々な取り組み方があります。特に「M2M(Machine to Machine)」の分野では、必ずWi-SUNが主力になってくると思います

IoTというのは工場などでの導入が特に期待されていますが、実際、工場で使う機械というのは高額なものも多く、ローンやリースが残っているという事も少なくありませんし、また、プログラムが組み込まれているなどで、現場の方が使い慣れている機械が多いと思います。そうした現場に「新しいIoT向けの無線通信機能が備わっている機械に買い替えましょう!」なんて提案は非現実的ですよね。

それよりも、使い慣れた現状の機械に後付けのセンサーや無線通信デバイスをつけて無線化していく方がよほど現実的ですし、異なるベンダーの製品をつなげることによる可能性は無限にあります。

いかに「汎用的」であるか。ここが、工場や農業・漁業などの現場での「IoT化」を一歩先に進ませるポイントになると考えています。

異なるベンダーの製品をつなぐ、ゼロからスクラッチで開発するのではなく「つなげるツール」を活用する、というのはアステリア社の製品でもとても大事にしている点です。御社の取り組みとまさにシンクロする部分ですよね。
そうですね。これまでに現場を見てきた中で、私たちが忘れてはいけないのは、お客様は別にセンサーやネットワークが欲しいわけではないということ。欲しいのは、自分たちが貯めてきたデータであり、そのために必要なのはUI(ユーザー・インターフェイス)なんです。

アステリア社のPlatioもそのインターフェイスを作るために必要なピースでしたし、今後もこうしたクラウドサービスなどを活用しながら、様々な業界で通用するWi-SUNの可能性を拡げていきたいですね。

編集後記

※写真はアステリア社 Platio担当の大野さん

以上、今回はアステリアのPlatioを活用されているユーザーさんでもある、株式会社Sensor&Network の小山社長にお話を伺いました。

実際に数々の現場での声を聞きながら、システムを導入されているからこそ分かる一次産業、二次産業でのIoT化にまつわる今。一般的なIoTで使われる「LPWA」と呼ばれる通信規格とは違う、Wi-SUN の特性を活かしたからこその提案や活用の可能性を今後も力を合わせて模索していくことができればと強く感じた取材でした。

また、当社の製品「Platio」の活用についてもこんなユースケースがあったのか!と驚き。簡単な設定だけで手軽にアプリを作成することのできる、モバイルデータ活用サービス・Platioの詳細はこちらからもご覧いただけますので、興味のある方は是非チェックしていただければと思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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この記事を書いた人
田中 伶
田中 伶 アステリア株式会社 広報・IR室。メディアプランナー。 大学在学中に人材育成会社を立ち上げ、その後はスタートアップでPRや法人向けの新規事業立ち上げなどを経験。話題のビジネス書や経営学書の解説をするオンラインサロンを約5年間運営。難しいことをやわらかく、平たく解説するのが得意。