2019年10月7日

ブロックチェーンの技術が活きるのは防災分野!?『WHY BLOCKCHAIN?』著者の坪井大輔さんに訊く、ブロックチェーンが本当に活かされるビジネス分野とは【後編】

初の刊行本『WHY BLOCKCHEAN なぜブロックチェーンなのか?』(翔泳社)がブロックチェーンの入門書として大ヒット中の坪井大輔さんに、ブロックチェーンが持つ真の価値、可能性をとくと語っていただきました。後編では、実際にブロックチェーン技術の特長が活きる分野について伺います。


これまでin.LIVEでは、基本から応用まで、さまざまな角度からブロックチェーンを掘り下げてきました。今回は、ブロックチェーンを具体的な事業に活用する分野において先駆者的存在として知られる、株式会社INDETAIL 代表取締役CEO 坪井大輔さんに話を伺います。

坪井さんといえば、著書『 WHY BLOCKCHAIN? なぜ、ブロックチェーンなのか? 』(翔泳社)が、テクノロジー業界はもとより、ブロックチェーンを理解する入門書として大ヒット中。お笑いコンビ・オリエンタルラジオの中田敦彦さんが自身のYouTubeチャンネルなどで絶賛していたこともあり、現在多くの人がこの本を手にブロックチェーンについて学んでいます。

前編の記事では、現在の日本のブロックチェーンの普及状況や、ブロックチェーンが目指すコミュニティについてお伺いしてきましたが、後編の記事では、実際にブロックチェーン技術の特長が活きる分野について伺います。

今回お話を伺ったのは…

株式会社 INDETAIL 代表取締役CEO
坪井大輔(つぼい・だいすけ)さん

小樽商科大学大学院アントレプレナーシップ専攻MBA取得。札幌にてスマホアプリ開発のITベンチャー設立。1億円の資本調達、C2Cコマース・システム開発・ソーシャルゲーム運営の3事業への参入とEXITを経て、現在はブロックチェーン事業に集中。シリアルアントレプレナーとして躍進する。啓蒙活動にも積極的で講演実績は年20件以上。著書『WHY BLOCKCHAIN』は、発売2ヶ月で続々重版、1万部突破を達成する。

ブロックチェーンの技術が活きるのは「防災」分野!? その実用可能性を探る

ブロックチェーンがもたらす世界観を理解できたところでお聞きしたいのですが、坪井さんは仮想通貨以外のサービス、または業界での実用について、どんな可能性を感じていますか?
ブロックチェーンには、ノードと呼ばれるスマホなどのデバイスを個別につなげられる特徴があります。これをメッシュ状につなげると、つながった人同士、情報を相互に見ることができるんです。たとえば、多数決を取ったときに、Aさん、Bさんは手を挙げた、Cさんは挙げなかったということをお互いに確認し合ったうえで承認し合える。これが特徴です。つまり、クローズドじゃないから不正しにくいんですね。
情報を相互に見ることができるメリットが活かされる分野に目を向ければ良いわけですね。
そういうことです。そこで僕らがいま力を入れているのが、「防災」分野です。いま災害が起きると被害を受けるのは山間部にある小さな集落です。テレビで避難勧告を出して、役場の人も放送を流します。でも、高齢者が多い。土砂崩れが起きて行方不明者もいる。だけど、逃げたかどうか分からないから土砂を掘ってみる。これがいまのやり方です。

何が言いたいかというと、防災って一方通行なんです。警報を出しても住民から返事がない。ここをブロックチェーンでつないで双方向にしようと試みています。
でも、高齢者の中にはスマホを持っていない人も多いと思いますが、どうすれば繋がるんでしょうか?
オンラインにつながるデバイスなら何でもいいんですよ。たとえば、僕らはテレビを使います。すると、役場は災害時、テレビ画面に『大雨警報が発令されています。非難しますか?』と表示できるようになるんですね。住民は、『はい/いいえ』のどちらかを選んでボタンを押します。すると、役場だけでなく集落に住む全員が、誰がどのボタンを押したのかが分かるので、隣に住むおじいさんが押していなければ、「危ないから一緒に非難しよう」とドアをノックすればいい。役場の人が追いかけて避難させることもできます。これを防災訓練からやっていれば、いざというときに安心です。

これは、トークンも仮想通貨も関係ない。ブロックチェーンの持つ、非中央集権型のテクノロジーという特徴に社会課題を掛け算した活用法です。

今のお話を聞くとなおさらブロックチェーンが活用されたらいいのに、と思うのですが、企業や自治体が導入をためらう理由って、なにかあるのでしょうか?
ブロックチェーンを使うことは、自分たちのこれまでのサービスを否定することにつながるケースが多いんです。今まで中央集権でやっていますからね。「分散型になると、お宅のマッチングサービスを否定することになるけどいい? 仲介料なくなるけどいい?」ってなるので、結局及び腰になる。従来とは違う市場と割り切れるとよいのですが、そこに舵を切れるかどうかは、企業の意思決定に委ねるしかありません。
今あるものを壊してまで、新しいものを取り入れていく決断ができないんですかね。
いえいえ、違います。壊さずに、融合するんです。
インターネットの浸透が小売りを無くす、AIの発達が人を失業させる、のように、テクノロジーはゼロイチで語られることも多いですが、結果としてフィジカルもインターネットも融合しています。僕ら、スーパーや百貨店で買い物するし、ECサイトも利用しますよね。インターネットの普及から20年経ってもこのレベルなんです。だから、変わらないですよ。

今はフィジカルがあって、インターネットがあって、ここに分散型の社会が新しく加わる。この三つを融合させてどうしようって考えれば良い話なのに、融合を否定するから意思決定がうまくいかないんですよね。
発想や捉えかた自体を変えないとダメなんですね……勉強になります。ところで、防災の他にも活用のイメージはお持ちですか?
“バンドル”、“アンバンドル”というキーワードがあります
ブロックチェーンは、バラバラをまとめるか、まとまりをバラバラにするか、の考えが必要条件なのですが、それって何だろうって世の中を見てみると、まずは先ほど話したテレビです。みんなバラバラで持っているけれども、テレビ同士はつながっていません。自動販売機なんかもそうですね。これをブロックチェーンでつなげたら何が生まれるのかを考えてみるのはアリだと思います。

同じようなことをサービスでも展開できます。たとえば、保険商品。
会社も種類もバラバラにたくさんありますが、ブロックチェーンを使えば、各社それぞれと契約しても請求を一本にできます。電力もそう。「今日は風が強いから風力にしよう」「明日の夜は家にいるから、夜間割引の効く火力にしよう」というように、毎日いろいろなものを選択するけれども請求書は一つ。ブロックチェーンは、こういうのに向いています。

実際、僕たちは、北海道内のEVスタンドが普及し易くするプラットフォームを研究しています。これまでガソリンスタンドに集中していたところから、バラバラに変えているんですね。これらのスタンドをブロックチェーンでつなぎ、利用者情報の共有やマーケティングに活用していきます。
バンドル、アンバンドルですか……
そうやって考えると、ブロックチェーンを活用するアイデアって考えやすくなりますね。

SDG’sの視点から技術を活用する。国際課題×ブロックチェーンとは?

最後にお聞きします。
ご著書では、ブロックチェーンの思想を伝えることにフォーカスされていましたが、これを第一ステップとすると次の踏みかたはどうなるのでしょうか?

世界に4割いると言われるオフラインの人を豊かにする取り組みに、SDG’sの視点から挑戦したいと考えています。現在世界全人口のうち、6割がオンライン、4割がオフラインにあると言われています。なので、アメリカのプラットフォーマーであるGAFA(Google,Amazon,Facebook,Apple社)がターゲットとしているのは、世界全人口のうち6割ほど。

一方、残るオフラインの4割がどこにいるのかというと、主にアフリカです。ここの人たちをブロックチェーンによって世界の経済圏に乗せることができれば、非常に画期的な取り組みになると考えています。
とても壮大な話ですが……内容が見えません。分かりやすく教えてください!
アフリカには戸籍が無いゆえに経済的なチャンスが巡ってこない人が多くいます。彼らをブロックチェーン上で管理できれば、銀座口座を開設できるようになるし、マイクロペイメントで融資を受けられるようにもなる。さらには、世界の豊かな人からダイレクトに寄付を受けることもできます。

ビジネス的なアプローチも可能になるんですよ。アフリカの人って身体能力が高い人種なので、スポーツ教育を徹底的に行ったら国際大会の舞台は彼らの独壇場になると思うんです。でも今は発展途上なので、能力を開花するためのスキルが共有されていない状態です。そんな彼らに投資の名目で、教育を授けたり、必要な用具を揃えたりして、スポーツに打ち込める環境を提供するんです。すると、どうなると思います?
いずれ、スター選手が生まれるとか。
そうです。サッカーチームやメジャーリーグと契約を結ぶ有望な選手が生まれてくるかもしれません。彼らの得る莫大な契約金は、支援者にリターンされます。こういうビジネス的なスキームができると、世界中の投資家は彼らと真剣に向き合うようになると思うんです。

そういうSDG’s的な取り組みをブロックチェーンで構築していくことが、僕らの次のテーマだと思います。

ブロックチェーンは、世界中の人を豊かにできる素晴らしい技術なんですね。そして、そんな発想を生み出せる坪井さんの気高い志に感服です。
ブロックチェーンって仲介手数料が発生しないので基本的には儲からない仕組みなんです。でも、SDG’s的な発想とは非常に相性がいい。そういう視点から事業を創造できる人が増えると、世界はもっと良くなるでしょうね。

編集後記

坪井さんのお話は、目から鱗が落ちる内容ばかり。
勉強になったのはもちろんのこと、たくさんの刺激をいただきました。皆さんの中にもブロックチェーンの知られざる可能性に気づいた、という方がいるのではないでしょうか。 新しいテクノロジーが続々と生まれる現代、それらを使うことが目的ではなく、使ったことで変わる世界を想像できることが大切、と改めて気づける機会になりました。

坪井大輔さんのご著書『 WHY BLOCKCHAIN? なぜ、ブロックチェーンなのか? 』(翔泳社)、ぜひ皆さまご覧ください!最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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この記事を書いた人
香川妙美
香川妙美 山口県生まれ。音楽業界での就業を経て、2005年より自動車関連企業にて広報に従事。2013年、フリーランスに転身。カフェガイドムックの企画・執筆を振り出しに、現在までライターとして活動。学習情報メディア、広告系メディア等で執筆するほか、広報・PRの知見を活かし、各種レポートやプレスリリース、報道基礎資料の作成も手掛ける。IT企業・スタートアップ企業を対象とした、広報アドバイザーとしても活動中。