2019年12月5日

アステリアのブロックチェーン推進室長が選ぶ、2019年のブロックチェーン界隈ニュース5選

「ブロックチェーン」という言葉が一般的なメディアでも取り沙汰されるようになった2019年も、いよいよ終わりに差し掛かっています。今年一年、ブロックチェーン界隈を賑わせたニュースや出来事を振り返り、in.LIVE 読者の皆さんへご紹介していきたいと思います。


こんにちは、アステリア株式会社にてブロックチェーン推進室長を務める森です。 「ブロックチェーン」という言葉が一般的なメディアでも取り沙汰されるようになった2019年も、いよいよ終わりに差し掛かっています。

これまで多くの企業のブロックチェーンの導入に関するコンサルティングを行ったり、アステリアの株主総会での議決権投票にブロックチェーンを導入したり、はたまた、一般社団法人ブロックチェーン推進協会(BCCC)にて技術応用部会の部会長として活動してきた私ですが、今回の記事では今年一年、ブロックチェーン界隈を賑わせたニュースや出来事を振り返り、in.LIVE 読者の皆さんへご紹介していきたいと思います。

あくまで個人的な見解と振り返りなので、もっと大きな話もあったのでは? と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、どうぞご容赦ください。

森 一弥(もり・かずや)
アステリア株式会社 ブロックチェーン事業推進室 室長 ストラテジスト。2012年よりアステリア勤務。2017年3月までは主力製品「ASTERIA WARP」のシニアプロダクトマネージャーとしてデータ連携製品の普及に務め、特に新技術との連携に力を入れる。 2017年4月より新設されたブロックチェーン事業推進室にて実証実験やコンサルティングなどを実施。またブロックチェーン推進協会(BCCC)では技術応用部会を立ち上げ、技術者へブロックチェーンアプリケーションの作り方を啓蒙している。

1.Facebookが仮想通貨 「Libra」を発表

facebookの仮想通貨libra 6月18日、Facebookを中心とし、VISAやMaster Cardを含む世界有数の企業、28社(発表時点)が発表した仮想通貨「Libra」。発表時点から日本語を含む復数の言語でホワイトペーパーが公開され、実際に動作を試すことができるテストネットも稼働させるという、他に類をみないプロジェクトとして発表されました。

Facebookは23億とも言われるアクティブユーザーを世界中に抱えその影響力も絶大ながら、過去には個人情報の流出なども起こしており、世界各国から様々な見解が発表されています(発表直後にはアメリカの下院金融委員長から計画中断の要請が出されたことも話題に…)。金融業界に衝撃を与える画期的なプロジェクトにもかかわらず、アメリカだけでなく、フランス、ドイツ、インドなどから ”許可できない” とのコメントが出されるに至りました。

このような動きの中、注目されていたVISAやMaster Card、PayPalなど決済系有力企業は離脱する形で21社で10月14日に協会設立となっています。

Libraが注目されている大きな理由は、Facebookが始めたプロジェクトという他にもあります。まずはこれが一般的な仮想通貨とは違った「ステーブルコイン」であることも注目されている特長のひとつです。ステーブルコインとは、Libraに限らず法定通貨に対して価格変動をできるだけ抑えた形の仮想通貨全般のこと。BitCoinに代表される仮想通貨の多くは、法定通貨に対して価格変動が大きく実際の取引に利用するのは躊躇されてしまう側面がありますが、Libraでは複数の通貨を仮想通貨の裏付けとして保持する「バスケット方式」で対応すると発表されています。

これによって単なる投機対象ではなく、実際に取引で使える仮想通貨としてデザインされています。本当に世界中で使えるようになったら単に海外旅行の際に両替しなくても済むというだけではなく、国をまたいだ多額の海外送金などでも当事者同士が直接取引する事ができたりもします。前者の例だと両替商が、後者だと多くの金融機関が必要なくなります。大きく世界を揺るがせる理由もおわかりいただけるのではないでしょうか。

当メディアでも、ブロックチェーン有識者により開かれたパネルディスカッション「仮想通貨Libraの衝撃」の書き起こし記事を公開していました。

ブロックチェーン有識者が集まるシンポジウム『ブロックチェーン羅針盤』で語られた、Facebookが発行する仮想通貨「Libra」が日本に与える衝撃とは? 

実際に普及するかどうかはわかりませんが、企業体が発行する通貨が世界を揺るがすのも時代の変化が押し寄せています。少なくともソフトウェア技術だけで見ればとしてはもう可能なのです。そのことを世界中に認知させたというだけでLibraは2019年を代表するニュースだったと断言できます。

<関連リンク>

Facebook、独自の仮想通貨Libraの詳細を発表。PayPal、VISA、Mastercard、Uber、eBay、Spotifyなどが参画【仮想通貨Watch】

リブラ協会、21社・団体で設立総会-発足前に7社が参加見送り【Bloomberg】

2.中国「デジタル人民元」の足音

デジタル人民元 10月24日 に行われた習近平国家主席による「ブロックチェーン強国」への提言を受け、中国では一気にブロックチェーン熱が再燃しています。遅かれ早かれ中国が国としてデジタル通貨を発行するであろうことはブロックチェーン界隈にいる人達からすれば何ら不思議に感じることではありません。大々的にリリースされたニュースが出ていれば、Libra以上の話題になっていたかと思います。執筆時点ではまだニュースとして取り上げられていませんが、中国がブロックチェーンに対して敏感で先進的なのは確かなようです。

アリババが運営するアリペイ、テンセントが運営するWeChat Payは日本でも決済可能な店舗が目につくようなキャッシュレス決済です。中国では日本とは比較にならないほどキャッシュレス化が進んでいますし、テンセントは11月8日に香港でブロックチェーンベースの銀行を設立するというニュースも入ってきました。

国家の戦略としてブロックチェーンに着目し、着実に手を打ってきているのは確実でしょう。

<関連リンク>

中国政府に翻弄される仮想通貨相場―習近平演説から1か月【仮想通貨Watch】

中国IT大手テンセント、ブロックチェーンベースの仮想銀行設立へ──香港証券先物委が承認【coindesk JAPAN】

3.「ブロックチェーン」が幻滅期に入る

世界的に有名な調査会社ガートナー。同社が毎年発表している「ハイプカーブ(※)」は見たことある方が多いのではないでしょうか。

※ハイプカーブとは: 特定の技術の成熟度、採用度、社会への適用度を示す図で、黎明期(技術の引き金、Innovation Trigger)・流行期(過剰期待の頂、Peak of Inflated Expectations)・幻滅期(幻滅のくぼ地、Trough of Disillusionment) ・回復期(啓蒙の坂、Slope of Enlightenment)・安定期(生産性の台地、Plateau of Productivity)と5つの段階から構成される。(Wikipediaより一部抜粋)

そうしたテクノロジー普及の段階を示すハイプカーブで、ブロックチェーンが「過度の期待の流行期」を抜けて「幻滅期」に入ったとされました。 その言葉としての印象から、ネガティブなニュースとして受け取る方も多いようですが、過度な期待をされる段階を抜け、普及の第一歩となる時期がこの幻滅期に当たります。例えばクラウドコンピューティングなども、初期の頃は様々なニュースサイトで連日取り挙げられていたものが、企業内でも最近になってやっと普及し始めたのではないでしょうか。

ブロックチェーンも例外ではなく、2015年、2016年ぐらいの段階ではブロックチェーンそのもののスペックを推し量ろうとし、秒間のトランザクション件数を掲載した実証実験が多く出されていました。しばらくすると業務の中でブロックチェーンを使うような実証実験の段階となります。イベントで使われるコインや、トレーサビリティで使うような話が多く聞かれましたが、中には話題に乗りたいだけに見えるものもありました。現在はそのような話は減った印象もあり、今後は実証実験から、実際の業務で使われるブロックチェーンの話題が少しづつ増えていくことが期待されます。

<関連リンク>

ガートナー、「日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2019年」を発表 – デジタル・ビジネスを推進する上で特に注目すべきテクノロジと そのトレンドを明らかに【Gartner プレスリリース】

4.資金決済法と金融商品取引法の改正を閣議決定

法律に「仮想通貨」の定義を初めて行ったことで日本は世界から見ても先進的な動きをしていると注目されていたわけですが、法律内の文言の定義として「仮想通貨」から「暗号資産」への名称変更も今回の法改正案のなかで行われました。ブロックチェーン界隈では相変わらず「仮想通貨」という名称を使っているメディアも多い気もしますが、法律的にはこちらが正式名称です。また今回の法改正で、これまで扱いがグレーだったICOに対する取り扱いや、ウォレットアプリの情報を管理するようなカストディ業者に対する義務などもきちんと定義されるようになりました。

そもそもICOとは、あたらしいビジネスアイデアと技術力を持った企業に先行投資をすることが多いかと思いますが、実現の目処が立たない技術などプロジェクトが破綻したものや、そもそも詐欺に使われたりする事件も多く、いち早く消費者保護をする規制が求められていました。同様にカストディ業者に対する義務も消費者保護の側面で行われた法整備です。

<関連リンク>

日本政府、仮想通貨「暗号資産に呼称変更」や「ICOトークンが金商法対象に」等の改正案を閣議決定【仮想通貨Watch】

5.Coinhive(コインハイブ)事件無罪

Webサイトを読み込んだ閲覧者のパソコンでマイニングをしてもらうことで、広告の代わりとして収入を得られる「Coinhive(コインハイブ)」。これを使用していて逮捕された男性が、横浜地方裁判所から3/27に無罪判決を受けました。マイニング自体がウイルスと同義とされた訴えは(少なくとも一審では)退かれたわけです。世の中的には相変わらずマイニング自体をなにか怪しげな行為として受け止めている方が多いような気もします。理解されづらいですが、マイニングをして収入を得るということは、ノードを運営している人たちへの平等なルールに基づいた正当な報酬なんですよね。

技術そのものには善悪はありません。新しい考え方をなかなか受け入れることは難しいですし、ブロックチェーンという技術自体が難しいと思われがちです。しかしそれでは新しいビジネスも潰されてしまいますし、海外の新興企業に席巻されてしまうでしょう。技術そのものを取り締まるような法解釈が採用されなかったことが大きな意味があると考えます。

<関連リンク>

コインハイブ事件で無罪判決。罪に問われていた男性が胸中をブログで明かす【仮想通貨Watch】

【番外編】「マンガでわかる!?ブロックチェーン」が最終回を迎える

ブロックチェーン界隈ではじわじわ有名になりつつある(?)、ブロックチェーン入門コンテンツ「マンガでわかる!?ブロックチェーン」が最終回を迎えました。当メディアで連載された、全12回にわたってブロックチェーンをわかりやすく解説するマンガは、IT領域に詳しくない一般の人にもブロックチェーンを分かりやすく説明できるコンテンツとして重宝されています。 2020年以降、なにやら続編の構想もありそうですが、今回の記事でご紹介してきた内容やキーワードが難しく感じてしまった方には、ぜひ一度読んでいただけたらと思います。

「マンガでわかる!?ブロックチェーン」第一話はこちらから https://www.asteria.com/jp/inlive/social/2049/

いかがでしたでしょうか? それでは皆さま、良いお年をお迎えください。
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この記事を書いた人
森 一弥
森 一弥 アステリア(旧インフォテリア)株式会社 ブロックチェーン事業推進室 室長 ストラテジスト。2012年よりインフォテリア勤務。2017年3月までは主力製品「ASTERIA WARP」のシニアプロダクトマネージャーとしてデータ連携製品の普及に務め、特に新技術との連携に力を入れる。 2017年4月より新設されたブロックチェーン事業推進室にて実証実験やコンサルティングなどを実施。またブロックチェーン推進協会(BCCC)では技術応用部会を立ち上げ、技術者へブロックチェーンアプリケーションの作り方を啓蒙している。