2021年3月29日

日本発のパブリックブロックチェーンを手掛けるステイクテクノロジーズ CEOに聞いてみた! 僕らが Web3.0 の最前線を目指す理由 【後編】

日本発のパブリックブロックチェーンを開発するステイクテクノロジーズ CEOの渡辺創太さんにお話を伺いました。後編では、同社がビジョンとして掲げる「Web3.0」の世界、そしてグローバルから見た日本や目指すビジョンについて語っていただきました。


アステリア株式会社 ブロックチェーンエバンジェリストの奥達男が、国内のさまざまなブロックチェーン関連企業にインタビューをするシリーズ。今回は、日本発のパブリックブロックチェーン「Plasm Network(プラズムネットワーク)」を開発するステイクテクノロジーズの創業者、渡辺創太さんのインタビュー(後編)をお届けします。

ステイクテクノロジーズは、メインサービスとしてパブリックブロックチェーンを開発する企業として業界で話題になっています。本記事では、同社がビジョンとして掲げる「Web3.0」の世界、そしてグローバルから見た日本や目指すビジョンについて語っていただきました。

※ 前編記事「日本発のパブリックブロックチェーンを手掛けるステイクテクノロジーズ CEOに聞いてみた! 僕らが Web3.0 の最前線を目指す理由 【前編】」も是非あわせてご覧ください。

Stake Technologies 株式会社 CEO・渡辺 創太(わたなべ・そうた)さん

1995年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。インド、ロシア、中国、アメリカでインターンシップ活動を経験後、2018年シリコンバレーのブロックチェーンスタートアップChronicledに就職。帰国後、東京大学大学院ブロックチェーンイノベーション寄付講座共同研究員(2019-2020)を経て、Stake Technologiesを現CTOと創業。

聞き手・アステリア株式会社 ブロックチェーンエバンジェリスト 奥達男

情報がつながる「Web3.0」の世界とは

御社がビジョンとして掲げられている「Web3.0を実現する」という言葉の意味について、改めて教えていただけますか。Web3.0(ウェブスリー)の定義ってそもそも何なんでしょうか?
順を追って説明すると、ブロックチェーンのことを僕たちはWebとは呼びません。BitcoinはWebではないですよね。僕たちが目指していることが必ずしもブロックチェーンである必要性はないのですが、ブロックチェーンのような分散技術を基盤に用いてプロトコルとユーザーのインターフェースを作ることで今のWebをより信頼できるものにしたいと考えています。この一連のムーブメントはWeb3.0と呼ばれており、既存の読み書きができるWebに「信頼」という新しい性質を付け加えます
ブロックチェーンのような分散技術が入ることで、既存のWebに「信頼」という性質が加わるんですね。
はい。それは、ブロックチェーンのような技術を使うことによってユーザーとコンテンツを仲介者を経由することなく直接リンクできるようになるからです。直接リンクできるようになると何が起こるのか? それは、自分で自分が何にアクセスをしていて、何を支払い、何を受け取っているのかということが検証可能になります。

つまり、既存の不透明なWeb2アプリケーションを信頼せずとも、経済活動ができるようになります。これはプロトコル自身に信頼という性質があるからです。

しかし、既存のアプリケーションはこのような手法をとっていません。プラットフォームに僕らが登録している情報は、集権的かつ独占的に管理されています。さらに近年よく話題になっているFacebookのプライバシー問題ですが、Facebookのメッセンジャー上でやり取りした内容や情報は企業がすべて持っていて、ユーザーに表示させる広告もその内容に応じたものにできてしまうんです。本来「データ」というものは自分が管理して、企業に操られないようにするべきですが、実際はそれが出来ていないんですよ
それがWeb2.0の世界というわけなんですね。
はい。一方で、もしこれがブロックチェーンといった分散型の技術が使われていれば、自分の情報をきちんと自分で管理しながら、自分が何にアクセスしていて、何を支払い、何を受け取っているのかが検証することができるはずなんです。「Web3.0」はこうした概念のことを指します。

僕自身、そうした概念はブロックチェーンと非常に相性が良いのでは? と感じて「Web3.0」を会社のビジョンに掲げました。
「Web3.0」の世界を実現する上で、異なるブロックチェーンが繋がっているということが重要なわけですね。御社が、異なるブロックチェーンをつなぐことができる「Polkadot」に接続するブロックチェーンを開発していることが大きく貢献しそうですね。
そうなんです。BitcoinやEthereum、それぞれ別の場所に情報があり、さらにそれぞれの互換性がなく繋がっていなかったら、サービスごとに情報が分散する。そもそもこれを繋げないと「Web3.0」が始まらないんですよ。
なるほど。それにしても、ちょっと今更な質問なのですが… ブロックチェーンってやはりまだ一部のアーリーアダプターの方たちを中心に盛り上がっている感じがして、一般大衆にまで広く使われる技術にはなっていないですよね。

一般消費者の目線では、まだまだブロックチェーンが身近な技術として感じられないところもあるのですが、それでも渡辺さんが「ブロックチェーンがある世界は大前提」と自信を持って言えるのは一体なぜなんでしょうか?
良い質問ですね(笑)。理由は2つあって、1つ目は、Polkadotによって繋がるのは、パブリックブロックチェーンだけでなく、企業などで使われるコンソーシアムチェーンも繋げられるということ。Ethereumのような世界規模のパブリックブロックチェーンが、日本企業が開発するコンソーシアムチェーンと繋がっていくようなことも見込めるわけです。

そうなると世の中のビジネスの仕組みもまた変わるし、技術的にも面白いことになるのでは、と大きな可能性を感じています。

そしてもう一つは、全くロジカルな話ではないのですが、やはり起業家として、一事業としてブロックチェーンを扱っていくのであれば「もうブロックチェーンは当たり前の技術である」という大前提でビジネスをした方が良いと思っています。

これはかつてのインターネットの黎明期も同じですが、例えば当時のGoogleは「インターネットは世界のすべての人々にとって当たり前の技術になる」という前提で事業を展開していたのではないかと思います。まだインターネットを使っている人なんて少数派だったにも関わらず、です。

そもそもGoogleの広告モデルって、インターネットの利用者が多くないと成り立たないモデルじゃないですか?。”そういう世界が来る” といち早く信じて取り組んでいないと、ああいう事業は作れていないはず。でもだからこそ、その時代がやってきたときに最前線に立てた。
なるほど… 確かにそう言われてみれば納得です。
「ブロックチェーンが当たり前の技術になる時代は必ずくる。その上でどこが重要になるか?」という思考で事業をする人たちが、グローバルには沢山います。そこに対して勝負していかないといけないわけで、「普及するだろうか?」という疑問は立場上考えていません。

”黒船として日本に帰るために、グローバルで戦う”

お話を伺っていて、渡辺さんの主戦場はグローバルであり、日本国内での成長や活躍といった観点ではないのかなと思っています。渡辺さんから見て、やはり日本は遅れてると感じることはあるんでしょうか?
そうですね…。今、日本は ”DXブーム” ですけど、アメリカもヨーロッパも中国でも、DXやデジタル化というのは当たり前で、その上でどうブロックチェーンを使うか? という話をしているのではないかと肌感覚として思います。そういう点では、日本とグローバルではステージが一つ違うなと感じています。

それ自体は仕方がないことですが、近い将来、いよいよ日本がDXを完了させて「さあブロックチェーンだ!」となったときに、きっとグローバルでは当たり前にブロックチェーンが使われていると思うんですよね。そしてユースケースを沢山持っている海外のサービスが日本に定着していく… みたいなことが起きるはずです。これはインターネットのときと同じ状況なのではないかなと勝手に想像しています。当時まだ生まれたばかりだったので笑

我々としては、グローバルの最先端のところで勝ち続けるっていうのは非常に重要だと考えています。その上で、日本でいよいよそのタイミングが来たときに、自分たちが黒船のように日本に帰ってこれたら理想的だなと思ってます。
日本で最前線で戦うために、今グローバルで勝負するという考えなんですね。
そうですね。そういう意味では、日本の市況は気にしていないと言うと語弊があるかも知れません。それよりも、日本が次のステージで勝つために今グローバルで戦う日本人がいなければと強く感じています。
いや〜、かっこよすぎでしょ!(笑)
あはは(笑)。でもこれはシリコンバレーでやっていたときに培ったマインドなんですよ。「アメリカを強くしたいんです!」という起業家にはあんまり出会ったことがなくて、それよりも「世界を変えたい」という気持ちで誰もが挑んでいます。今後もそういうマインドでチャレンジし続けたいですね。

会社を解散して ”DAO” を目指す。ステイクテクノロジーズが描く未来

Polkadotへの接続やWeb3.0の実現など、これから立ち向かう挑戦が沢山ある御社ですが、ビジョンに向けて、今はどんなスケジュール感で動かれているんでしょうか?
2021年2月、僕らのブロックチェーンが、Polkadotのテストネットワークに世界で初めて接続完了したところです。今年中には正式にPolkadotに接続予定なので、2021年末にはどんどんユースケースが出てくるかなと。2021年はいわゆる ”クロスチェーン元年”(※) になってくるのかなと見込んでいます。

※クロスチェーンとは
異なる複数のブロックチェーンが繋がること。インターオペラビリティーとも言う。多くのブロックチェーンは相互に繋がっておらず、各ブロックチェーン内で独自の価値が流通しているが、クロスチェーンは、各ブロックチェーンを繋げて価値をシームレスに流通させることを主な目的としている

2021年2月にはBinance(バイナンス)(※)からの資金調達を発表されていましたよね。Binanceがリード投資家になるということで、業界では大きな話題になっていました。

バイナンスらから総額約2.5億円の資金を調達

※Binanceとは
ユーザー数/月間取引高で世界有数の規模を誇る暗号資産(仮想通貨)取引所

そうですね。資金面だけではなく、サービスにおいても将来的にサポートいただける可能性は高いと思っています

Web3財団(※)やこれまで数年の実績を評価してくれて、直接ピッチさせてもらう機会をいただいて…。その後、一週間ぐらいで投資の返事が来ましたね。Polkadotの中では、我々がバイナンスとして投資一号案件となりました。これを足掛かりに、これからしっかりグローバルで勝負していきたいなと思ってます。

※Web3財団(Web3 Foundation):
EthereumのCo-Founder(共同創設者)であるGavin Wood氏が作った財団。Web3.0の構築を目的とし、PolkadotはWeb3財団が主導するメインプロジェクト


御社は、”会社” という組織の考え方もユニークだなと感じています。会社自体は将来的に解散したいと考えられているのだとか。
そうなんですよ。我々は、パブリックブロックチェーン業界において、会社というものは中央集権的な組織ではなく、DAO(※)であるべきだと感じています。そのために会社自体は解散して、だけど会社として作ったプロダクトは数百億円の価値で動き続ける‥というような、そんな世界を目指したいと思っています。

※DAOとは:
Decentralized Autonomous Organizationの略で、自律分散型組織、非中央集権型組織などと言われる。中央に意思決定者のような存在はなく、自律的に機能する組織を指す。BitcoinはDAOと言われている


そういう会社のあり方って、たぶん世界でもまだ存在したことがないモデルじゃないですか。理解されないことの方が多いですけど(笑)、そうした新しい組織のあり方を体現することは、とても意味のあることだと思っていますね。
お話を聞けば聞くほどに面白く、ますますステイクテクノロジーズさんから目が離せなくなりますね。未来が楽しみになるようなお話を聞かせていただき、有難うございました。

※ 前編記事「日本発のパブリックブロックチェーンを手掛けるステイクテクノロジーズ CEOに聞いてみた! 僕らが Web3.0 の最前線を目指す理由 【前編】」も是非あわせてご覧ください。

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この記事を書いた人
奥 達男
奥 達男 アステリア株式会社 ブロックチェーンエバンジェリスト、コンサルタント。ブロックチェーン技術の啓蒙及び技術適用された事業モデルの創生・推進、コンサルティング、提案、POC、技術の講義、サービス構築や他社主催セミナーへの登壇などを担う。一般社団法人ブロックチェーン推進協会(BCCC)にて、トークンエコノミー部会 部会長、ブロックチェーンエバンジェリストを務める。