2021年2月17日

日本発のパブリックブロックチェーンを手掛けるステイクテクノロジーズ CEOに聞いてみた! 僕らが Web3.0 の最前線を目指す理由 【前編】

日本発のパブリックブロックチェーンの開発で話題を集める、ステイクテクノロジーズ CEOの渡辺創太さんを取材。前編では同社が開発する「Plasm Network(プラズムネットワーク)」と、同サービスが接続予定の「Polkadot(ポルカドット)」について解説いただきました。


アステリア株式会社 ブロックチェーンエバンジェリストの奥達男が、国内のさまざまなブロックチェーン関連企業にインタビューをするシリーズです。

今回は、日本発のパブリックブロックチェーン「Plasm Network(プラズムネットワーク)」を開発するステイクテクノロジーズの創業者、渡辺創太さんにお話を伺いました。

ステイクテクノロジーズは、メインサービスとしてパブリックブロックチェーン(※)を開発する企業として業界で話題になっています。また2021年2月にはバイナンスらから総額約2.5億円の資金を調達したことでも大きな話題となりました。グローバルを舞台に事業展開する渡辺さんに、開発中の「Plasm Network」や同サービスで実現を目指す「Web3.0」と呼ばれる世界についてお話を伺いました。

※パブリックブロックチェーンとは
特定の管理者が存在せず、不特定多数向け(trustless)で誰でも参加が可能なブロックチェーンネットワークのこと(一方でエンタープライズブロックチェーンやコンソーシアムブロックチェーンは特定多数向けのブロックチェーン)。世界にたくさん存在しているパブリックブロックチェーンだが、日本でパブリックブロックチェーンを開発する企業は非常に少ない(2021年2月時点)。

Stake Technologies 株式会社 CEO・渡辺 創太(わたなべ・そうた)さん

1995年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。インド、ロシア、中国、アメリカでインターンシップ活動を経験後、2018年シリコンバレーのブロックチェーンスタートアップChronicledに就職。帰国後、東京大学大学院ブロックチェーンイノベーション寄付講座共同研究員(2019-2020)を経て、Stake Technologiesを現CTOと創業。

聞き手・アステリア株式会社 ブロックチェーンエバンジェリスト 奥達男

日本発のパブリックブロックチェーン「Plasm Network」とは?

ステイクテクノロジーズさんといえば、現在ブロックチェーン業界でも非常に注目されていますよね。渡辺さんは内閣府の主導するTrusted Web推進協議会のタスクフォースメンバーとしても活動されていらっしゃいますよね。

どういった経緯で、ステイクテクノロジーズを設立されたのでしょうか?
僕はもともとシリコンバレーのブロックチェーン関連企業で働いていたんですが、4年ほど前に日本に帰国して、東京大学大学院でブロックチェーンの共同研究員を務めていました。会社を設立したのもその頃です。
5〜6年前というとまだ日本でもブロックチェーンが話題になり始めたぐらいの頃だと思いますが、そのときにこの分野を選択したのはなぜなんでしょうか?
僕は過去にNPO活動で中国やロシア、インドで働いていたんですが、世界で起きている社会問題に直面することが本当に多くて。自分なりに日本人として、グローバルで活躍したい、本当に困っている人たちに副次的にインパクトを与えられるようになりたいと思っていました。

世の中にインパクトを与えるとしたら政治家かIT起業家か? と考えたんですが、さすがに政治家は時間がかかりすぎるなと(笑)。IT起業家、特に次世代の核を担うAIやブロックチェーンというのが選択肢にあり、どうせやるなら業界をまるごと変革できるような分野で活躍したいと思ってこの分野を選びました。
そしてまさに今、ゲームチェンジャーになっているわけですね。 日本発のパブリックブロックチェーンである Plasm Network(プラズムネットワーク)、業界では非常に話題になっていますが、改めて、仕組みや特徴について教えていただけますか?
僕らが開発しているPlasm Networkは、 異なるブロックチェーンをつなぐことができるブロックチェーン「Polkadot(ポルカドット)」に接続するブロックチェーンです。

特徴としては、Ethereum(イーサリアム)とPolkadotの両者にある程度の互換性があり、さらにブロックチェーンのスケーラビリティの問題を解決するアプリケーションのプラットフォーム(Dappsプラットフォーム)※ を作っています。

Dapps プラットフォームとは
Dappsとは、ブロックチェーンに載せて動くアプリケーションを指す。例えば、Windows(Dappsプラットフォーム)とExcel(Dapps)のような関係。Dappsを載せられるブロックチェーンは限られており、一番有名なDappsが載せられるブロックチェーンとして知られるのはEthereumである。


既存のブロックチェーンの課題であった「インターオペラビリティ(相互運用性)」と、処理性能の低さから危惧されていた「スケーラビリティ問題」を、同時に解決しているのがPlasm Networkなんですね。

ちなみに現在、Plasm Networkには、アメリカや中国・欧州など、世界63拠点のノードが参加者により運営されているとのことですが、どういう方がノードを立てているんでしょうか?
Plasm Networkはパブリックブロックチェーンなので、基本的に誰でも運用が可能ですが、現在はノードを建てる専門の会社が参画したり、また個人で Plasm Network を応援したいというような方が立ててくれているケースもありますね。

現在1万人近くの方が参加してくれていますが、約2ヶ月で65億円(当時のレート)ほどの暗号資産がPlasm Network用のスマートコントラクトに預けられました。日本人が作ったプロジェクトで、そこまでの暗号資産が預けられたスマートコントラクトはおそらく初めてのことではないかなと思います。
日本の経済市場の外で、物凄い金額が短期間で動いているんですね。

異なるブロックチェーンをつなぐ「Polkadot」が注目される理由

ちなみに、Plasm Networkが接続される予定の「Polkadot」は現在時価総額で4位といわれています。こちらも数年前まではここまで注目されていなかったような気もするのですが、なぜここにきて急浮上しているんでしょうか?
やはり ”異なるブロックチェーンをつなぐためのブロックチェーン” というコンセプトが一番大きいですね。今のBitcoinやイーサリアムは基本的に分かれて存在していますが、かつてのインターネットも同じで、それぞれの国や組織のネットワークだけで繋がってもあまり意味がないというか、できることが限られていました。共通のネットワークが世界規模でつながったからこそ、今世の中のインフラになっています。

Polkadotはまさにその「インターオペラビリティ(相互運用性)」を担保する存在になると期待されているんです。

ちなみにPolkadotを作ったのはギャビン・ウッド氏というイーサリアムの 元創業者です。ブロックチェーンとしてすでにかなり有名なイーサリアムですが、ウッド氏がイーサリアムを辞めて次のプロジェクトとして開発したのがPolkadot、というような背景もあり、多くの人が Polkadot に期待していますね。
渡辺さんの会社は開発するパブリックブロックチェーン(レイヤー1)に関連する、レイヤー2ソリューション(※)も開発しているそうですね。

ブロックチェーンにおけるレイヤー1/レイヤー2とは
レイヤー1とは、メインのブロックチェーンを指す。一方で、レイヤー2とは、メインのブロックチェーン(レイヤー1)に手を加えることなく、メインのブロックチェーンが持つ課題を解決するソリューションのこと。有名な例では、ビットコインというレイヤー1に対して、ビットコインの課題である処理速度の遅さを解決するために、ライトニングネットワークというレイヤー2がある。


そうですね。これは、従来のブロックチェーンのもう一つの課題であった「スケーラビリティ問題」を解決するためのものです。複雑なので詳細は割愛しますが、ブロックチェーンの処理能力の低さを解決するためのプラットフォーム(Dapps Platform)を現在開発しています。
ブロックチェーンといえば日本はかなり世界に対して遅れているという印象があったのですが、次世代のブロックチェーンにおける非常に重要なポジションで日本の起業家が活躍しているというのは、非常に嬉しく感じますね。

※ この取材はオンラインにて行われました

取材後半では、渡辺さんから見た日本のブロックチェーンの状況やグローバルで活躍する理由について、詳しくお話を伺いました。

日本発のパブリックブロックチェーンを手掛けるステイクテクノロジーズ CEOに聞いてみた! 僕らが Web3.0 の最前線を目指す理由 【後編】にてご紹介しますので、公開をお待ち下さい!

関連リンク

Stake Technologies
日本発のパブリックブロックチェーンが世界のパブリックブロックチェーンになる日。
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この記事を書いた人
奥 達男 アステリア株式会社 ブロックチェーンエバンジェリスト、コンサルタント。ブロックチェーン技術の啓蒙及び技術適用された事業モデルの創生・推進、コンサルティング、提案、POC、技術の講義、サービス構築や他社主催セミナーへの登壇などを担う。一般社団法人ブロックチェーン推進協会(BCCC)にて、トークンエコノミー部会 部会長、ブロックチェーンエバンジェリストを務める。