2017年12月15日

タブレットを駆使して農家さんが外国人旅行客と交流、秋田県仙北市の農家民宿オーナーにお話を聞いてみた

テクノロジーが便利になる一方で、ロハスな体験として注目されている「農家民宿」。実際に秋田県仙北市で海外観光客の受け入れを行っているオーナーのお二人に、農家民宿オープンの経緯と、お客さまとのタブレットを駆使したコミュニケーションについてお話を伺いました。


こんにちは!in.Live編集部の石川です。
in.Live読者のみなさまは、最近話題の「農家民宿」という言葉をご存知でしょうか?

「農家民宿」とは、農業を営んでいる一般の農家さんの自宅を旅行者に提供するホームステイタイプの宿泊施設のことを言い、最近では素朴な田舎暮らしを体験したい旅行者を中心に、注目を集めています。

そんな中、秋田県仙北市では、農家さんと地域が一体化し、積極的にこの「農家民宿」を誘致しています。今回は前回の記事に続き、仙北市で農家民宿を営んでいるお二人の農家さんにインタビューをさせていただきました。なぜ農家民宿を始められたのか、旅行客向けにどのような工夫をされているのかを、お伺いしてきました。

門脇富士美さん/農家民宿 『星雪館』女将

農家の『星雪館』から歩いて徒歩1分。ここは『星雪館』を営む門脇さんご一家の畑です。

周りを見渡すと黄色に色づき始めた山が連なり、東京のビル街では味わえない、土の匂いや鳥のさえずりが時間の流れをゆったりと感じさせてくれます。

ほうれん草農家でもある門脇さん一家の畑には、出荷しているほうれん草だけではなく、季節のお野菜がたくさん育てられていました。これらのお野菜は農家民宿に泊まられるお客さんに振舞われるのだそう。

畑を満喫したところで、早速『星雪館』へお邪魔してみましょう。

コの字型のテーブルの中心にはストーブ、壁にはお客様からいただいたお手紙が飾られており、とても温かみのあるリビングです。まるで実家に帰ってきたかのような居心地の良さについリラックスしてしまいます。

農家の日常をシェアすることが、誰かの心を動かすきっかけに

本日は宜しくお願いします!
富士美さんは農家民宿を始められてからどのくらい経つのでしょうか?
平成10年の10月10日から始めたので、あっという間に今年で20年目です。当時はまだ「農家民宿」という言葉もない頃でしたね。
20年も!始められたきっかけは何だったのでしょうか?
実は平成8年から学生の日帰り農業体験の受け入れを始めたんです。あるとき、受け入れた学生のお母さんから、「ここでの農業体験をきっかけに子どもがすごく成長しました。ありがとうございます!」と感謝のお言葉をいただいたことがあったんです。

そのときに、私たちが日頃当たり前にしている何気ない作業や時間をシェアすることで、誰かの心が変わるきっかけになることを知ったのがきっかけですね。

それから近所の農家さんが民宿を始めたという話を聞き、半年後にはこの「星雪館」を開業していました。母はずっと農家としてほうれん草を作り続けてきてきたのですが、なにか他のこともやりたいと思っていたタイミングだったんです。
今まで多くの観光客を受け入れてこられたと思うのですが、どのようなお客様が多いのでしょうか?
始めた当初は年配の女性グループが多かったのですが、最近では年齢層が下がり始め、海外からのお客様も多くなりました。こんな山の中にいろんな国の人が来てくれるのは嬉しいですよね。近所の人と「この前、うちにスウェーデン人が来てさ〜」なんて会話ができるのが楽しいです。

この地域には同じように農家民宿をやられている仲間がたくさんいるで、意見交換もできて日々充実していますね。

海外観光客とはアプリを駆使してコミュニケーション

こちらに来られるお客様の反応はどうですか?どのようなお話しされるのでしょうか?
日本の方は「ご飯が美味しい!」と褒めてくださる方が多いですね。海外の方はそこまで詳細なお話はできないのですが、帰った後もFacebookで繋がっていて、連絡を取り合う”友人”もいます。この前は結婚式に誘われた農家民宿オーナーもいたんですよ。
結婚式まで…!帰国後も繋がっているなんて素敵です。 海外の方とのコミュニケーションはどのようにされているのでしょうか?
台湾やタイの方が多くいらっしゃるのですが、片言の英語と片言の中国語を頑張って使ってみたり、あとはジェスチャーで伝えています。最近は、アプリを使うことも多いですね。農家さん同士で、このアプリ使えるよ〜なんて情報もよくシェアしているんです。少し秋田弁のなまりがあっても翻訳してくれるアプリがあるんですよ!(笑)
あとは、タブレットも使用しています。
これはアステリア社のHandbookですが、日本語・英語・中国語・韓国語と4言語で表示されるので、観光案内に助かっています。特に、写真に感動される方が多いですね。ドローンで撮影した角館の桜の映像なんかも人気です。訪れたのは別のシーズンでも、こうしたコンテンツを通して、違う季節の景色も楽しめて嬉しい!と反応される方も多いですよ。

アプリやタブレッドなどを駆使すれば、言語の壁も感じずに海外の方とも仲良くなれると思っています。タブレッドであれば操作も簡単ですし、年配の方でも使用しやすいのではないでしょうか。海外の方に観光地を紹介するにはとても便利なので、情報がもっと増えれば、更に活用できそうですね!

農家さんがアプリもタブレットも駆使されているとは知りませんでした…! 逆に海外の方が来ることで困ってることはありますでしょうか?
詳細な説明ができないことくらいでしょうか。でも、仙北市の農家民宿に泊まるお客さまは日本に慣れている方がほとんどなので、困っていることはそんなにないですね。日本は10回目なんていう台湾の方もいらっしゃいますし、東京や京都などのゴールデンルートを行き尽くした日本通の方がほとんどです。

なので、お風呂やトイレの使い方などを細かく説明する必要もないですし、日本食に慣れている方も多いので、そこまで気にしなくて良いので安心ですよね。あまり深く考えずに楽しむことを心がけて、ひたすら秋田弁で話しかけています!(笑)
素敵!ちなみに富士美さんは今も農業はされているのでしょうか?富士美さんが今後やりたいことはありますか?
はい。お客さんがいない時はハウスに行って作業をしていますよ。それから午前中は加工品を作って、直売所に持って行くのもわたしの仕事です。

今後は、もうちょっと泊まれるお客さんの数を増やしたいと思っています。始めた時は月に3組位のお客さんが来るようなイメージだったのですが、最近はありがたいことに同じ日に問い合わせがきてお断りすることも増えてきたので、泊まりたい!と思ってくださる方に泊まっていただけるようににちょっとお部屋を増やしたいと思っていますね。

田沢湖の景色に惹かれて、45歳で移住を決意

続いてご紹介するのは、 ベランダから田沢湖が見渡せるなんとも贅沢な農家民宿『輝湖』を営む、おっとりとした優しい雰囲気の高橋輝子さん。

農家民宿の隣に併設されているのは、輝子さんが営む「ハーブ香房」。ここでは、輝子さんお手製のハーブティーを飲んだり、小物作り体験、輝子さんが作ったカゴや布小物を購入することができます。

それでは『輝湖』にお邪魔して、輝子さんにお話をお伺いしてみましょう。

本日は宜しくお願いいたします。すごく素敵な内装ですね!囲炉裏にストーブまで…!そして、窓からは田沢湖が見えるんですね。開放感があって気持ちが良いです。
ありがとうございます!私もこの景色が気に入ってここに移住してきたんです。もともとは、ここから60キロ位離れた同じ秋田県出身なんです。18歳の時に千葉に行き、そこで20年近く働いていました。
もとは千葉でお仕事をされていたのですね!
そうなんです、20年ほど雑貨屋さんで働いていたんですよ。ちょうど、駅ビルや船橋のららぽーとができ始め、同時に店舗数もどんどん増え続けていた頃でした。1,2年で店長を任され、仕入れをしたり、やりがいも感じていたんですけどね。
10年くらいがむしゃらに働いていたら、どこか違う生き方をしてもいいかなぁ、と思い始めるようになったんです。
そう思い始めたきっかけは何かあるのでしょうか?
当時、同じ会社に長く勤めている女性を見て、自分がなりたい姿とはちょっと違うかなぁって思ったのがきっかけですね。幼い頃から自然や田畑が身近にある環境で育ってきたので、もう一度田舎に戻っても良いかなと、35歳くらいから思い始めていたんです。

それから仕事をしながらいろんな地方に足を運んで、物件を探し始めました。出身が秋田だったので、秋田の観光地として有名な田沢湖周辺も見ておこうと、ここにやってきたんです。
色々な移住先を検討されている中で、ビビッときたのがこの場所だったのですね。
35歳くらいからいろんなところに足を運んで、45歳でようやく「ここに住みたい!」って思える場所を見つけたんです。当時、主人がまだ東京で仕事をしていたので、一足先にこっちに来てしまったんですけどね(笑)。始めは東京と秋田を行ったり来たり繰り返していました。

10年間ぐらいかけて色々な物件を見ていて、最後に見つけたのがここでした。様々なご縁があって紹介していただいたのですが、何と言ってもここから見える光景が気に入ってしまったんです。

そんな出会いがあったのですね!でも、本当にとっても素晴らしい景色で、お庭も素敵です。
でしょう!(笑) お庭ではにんにくを育てて、黒にんにくを販売をしたり、お客様と一緒に食べれるような季節のお野菜を少し、あとはほとんどハーブですね。昔からハーブが好きだったので、これなら楽しんでできると思ったんです。
それに今は地方に住んでいてもいろんなことが発信できるようになって、昔より若い人も田舎で暮らしやすくなったのではないでしょうか。私はハーブや小物が好きで作っているんだけど、自己流の作り方でも、それをネットで知って来てくれたり、お客さまがここを発信してくれたりしているんです。それにここにいると、わたしがどこかに行かなくてもいろんな人が来てくれて、巡り会えるから幸せだなって思うんです。最近は海外からのお客様もいらっしゃるんですよ。

好きでも大変になると、楽しくなくなっちゃうので、いつもほどほどを心がけています。楽しんで生きていたいですよね。
仙北市には海外からの観光客も増えているとお伺いしました。海外からのお客様とはどのようにコミュニケーションを取っているのですか?
私は英語が全然喋れないけど、意外と言葉は話せなくても通じているような気がしています。不思議ですよね!この前は旅行客の方から、お手紙をもらいましたよ。あとは、近所の方や役所の方も気にしてくださり、先日は役所の方からこのタブレットをお借りしました。

Handbookを使えば写真も綺麗に見せられるし、海外の色々な言語に切り替えられるので、わたしみたいな英語が話せない人には助かりますね。
こちらにも国内外とわず、様々な方が来られると思うのですが、農家民宿をされていてよかったと思うことはありますか?
いろんなバックグラウンドの方がやってくるので、そういう人たちが旅して歩いてきた会話をもらえるのが嬉しいですね。やっぱり一緒に会話できる時間が一番嬉しいです。

農家民宿は、絶対にこうじゃなきゃいけないっていうマニュアルはないんです。それをお客さまもそれをわかって来てくれているので、楽しいのかもしれないですね。パーフェクトにはできないけれど、何気ないこういった会話を楽しんでいただきたいですね。

秋田県仙北市農家民宿に行ってみた!まとめ

以上、いかがでしたでしょうか。
今回は、秋田県仙北市で農家民宿を営む女将のおふたりにお話をお伺いしました。

様々な背景がありましたが、共通していることはおふたりとも”今”を楽しみながら、生きているということ。外国語が話せないことをネックに感じるのではなく、壁を作らずに話しかけたり、アプリやタブレッドなどを使用してみたり、積極的に今を楽しむ姿勢には、とても前向きな気持ちになれます。

のどかな雰囲気と心地よい空気、新鮮なお野菜をいただきながら、優しい笑顔の女将とお話できる「農家民宿」。テクノロジーが便利になる一方で、こんなロハスな体験も注目されています。皆さんもたまには都会の喧騒から離れ、農家民宿で日頃の疲れを癒してみては?

関連リンク

美の秋田・桃源郷をゆく|秋田のグリーン・ツーリズム総合情報サイト http://www.akita-gt.org/index.html

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この記事を書いた人
石川妙子
石川妙子 アステリア株式会社 広報・IR室。in.Live編集部。 大学卒業後、大手銀行にて勤務。その後、自由大学の運営を経て、2015年より世界一周の新婚旅行へ。帰国後は、編集者として活動。インバウンドや農業メディアにも所属。2018年より長野を拠点に移し、東京との二拠点生活中。