こんにちは!in.LIVE編集部の石川です。
今回、私は秋田県の仙北市に来ております。
仙北市とアステリア株式会社は、企業版ふるさと納税での協業をきっかけに以前から様々な実証実験を行っており、先日はこちらの農家民宿で「ふるさとテレワーク」の実証実験を行い大きな反響を呼びました。
▶ 大自然の中なら生産性もアップ!?
レジャー先や故郷でのテレワークを推進するアステリアの「ふるさとテレワーク」舞台裏
アステリア株式会社と深く関わりのある豊かな自然に囲まれた仙北市には、日本を代表する観光スポットも数多く存在しています。
まるで江戸時代にタイムスリップしたかのような、町並みが続く武家屋敷。古き良き日本を感じられると国内外から人気な町並みです。私が訪れた10月中旬は木々がほんのり黄や赤に色づき、秋の準備を始めていました。
一方のこちらは、天候や時間帯によって様々なブルーに変化する美しい湖。日本百景にも選ばれた景勝地、田沢湖です。
その他、日本を代表する人気の観光スポットが多数存在する仙北市には、年間で約500万人もの観光客が訪れるのだそう。中でも最近は、海外からの観光客が急増。
仙北市に宿泊した海外観光客は昨年だけで2万人を超えており、そのうち1000人以上が素朴な田舎暮らしを体験したいと、現在仙北市で積極的に推進されている「農家民宿」に滞在しているのだそうです。
なぜ、こんなにも多くの海外観光客を魅了しているのか?
仙北市の「農家民宿」の取り組みについて、農林部総合産業研究所 農山村体験デザイン室の坂本さんにお話をお伺いしてきました。
お話をお伺いに訪れたのはこちらの仙北市西木総合開発センター。
右手には田んぼが広がるのどかな立地です。
素朴な農家さんのお家に泊まってほしい。
仙北市グリーン・ツーリズムの特徴とは
坂本 昂嶺(さかもと・たかね)さん
仙北市農山村体験デザイン室 主事
1996年生まれ。平成27年4月に秋田県仙北市役所に入庁し、教育旅行とグリーンツーリズムの担当部署である「農山村体験デザイン室」に配属になる。グリーンツーリズム推進事業を担当し、県内外へのグリーンツーリズムの周知活動や、地域受入団体のサポート等を行っている。近年では外国人旅行も増加しており、平成28年には仙北市内の農林漁家体験を提供する宿泊施設の外国人宿泊者数が1000人を突破する。
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- 本日はどうぞよろしくお願いいたします 。早速ですが、農山村体験デザイン室ではどのようなお仕事をされているのでしょうか?
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- よろしくお願いします!私は主にグリーン・ツーリズム(※)や教育旅行、そしてそれらのPRを行っています。歴史を遡ると「グリーン・ツーリズム」という言葉が生まれる前、昭和40年代から仙北市のグリーン・ツーリズムは始まっているんです。
(※グリーン・ツーリズム:農山漁村地域において自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動)
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- 昭和40年代から! その頃から農業体験を受け入れているというのは全国的にもすごく早い印象です。
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- 仙北市は約12年前に3つの町村が合併し誕生したのですが、そのひとつ、旧田沢湖町の神代地区には「劇団わらび座」という日本を代表する劇団の本拠地があり、多くの修学旅行生の受け入れをしていました。
あるとき、学校側から「農業体験をしてみたい」という要望を聞き、近隣の農家さんに依頼をし日帰りの農業体験をおこなったのが仙北市のグリーン・ツーリズムの始まりなんです。
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- そこから農家さんが自宅を宿泊先として提供できる「農家民宿」を開業し始めたのですね。
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- そうなんです。平成20年に農家民宿の開業へ向けた規制緩和が行なわれ、それを機に、日帰りの農業体験を提供していた農家さんが、次々と農家民宿を開業し、営業を始めたんです。今では仙北市内に33軒の農家民宿を含む、自然体験を提供する宿泊施設があります。
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- そのような背景があったのですね。仙北市ならではの農家民宿の特徴などはあるんでしょうか?
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- 例えば、田沢湖エリアでは、民宿やペンション形態の宿が多く、トレッキングなどの自然体験を提供している民宿が多いのですが、一方で西木エリアではもともと普通の農家さんが開業をしたホームステイタイプの農家民宿が多く、農業体験を提供されているところが多い特徴があります。
茅葺屋根のお家だったり、素朴な一軒家だったり、家の成り立ちが様々であることや、お客様がどのような体験をされたいのか?などニーズに合わせてご案内ができる宿泊施設の種類の豊富さが特徴ではないでしょうか。
農家さんと市が連携、海外観光客に最高のおもてなしを
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- 最近では日本の方のみならず、海外からの観光客も増えてきているとお伺いしましたが、海外観光客も積極的に受け入れをしているのでしょうか?
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- はい、そうなんです。平成29年4月には国際交流専門の部署が立ち上がるほど、最近では海外からの観光客や国際教育旅行が急増しています。中でも、台湾やタイからのお客様が多いですね。あとは青年研修団の受け入れ事業として仙北市の農家民宿に泊まられる方も多くいらっしゃいます。
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- 海外からのお客様を受け入れる際に気をつけている点や工夫されていることなどありますでしょうか?
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- 例えば、市の公共Wi-Fiとして「Senboku City Wi-Fi」を各観光地に設置したり、観光地を周りやすくするために、周遊バスの運行もしています。あとは農家民宿で受け入れをする場合は、「事前説明会」を行うなど、農家さんとの連携も行っています。
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- 事前説明会…?具体的にどのようなことをされているのでしょうか?
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- 海外の方や教育旅行の受け入れ時や、日本のお客様が来られるときも、事前に農家さんを集めて、今回はこんな方が来ますよ!とお客様のアレルギー情報や宗教上などの注意事項をお伝えしているんです。こうした安全面には、特に気を遣っています。
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- へええ!それは農家さんも来られる方も安心ですね!
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- そうなんです。それから海外から教育旅行や研修旅行で来られる方とは「対面式」というものも行っています。これは、添乗員さんや通訳の方がいる中で、農家さんが訪れた方への注意事項などをお伝えする場としています。
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- たしかに、言語の壁がありますよね。みなさんコミュニケーションはどのように取られているのでしょうか?
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- ほとんどの農家さんが英語が全く喋れないのですが、不思議なことに翌日になるとすごく仲良くなっているんですよ!標準語でもなくバリバリの秋田弁なのですが(笑)、帰り際には、ほとんどの方が涙の別れをされていて、農家さんの不思議な魅力を感じますね。
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- それに農家さんは言語の壁を壁とは感じてはいないんです。
壁を作らず、積極的に秋田弁で話しかけますし、外国人だから…と変に構えることもなく、一瞬で打ち解けていますね。農家さんなりのおもてなしの気持ちが伝わっているのではないかと思っています。それに、なんでもない農家さんの日常を体験できるのが実は、リピーターの方も多いんですよ!
あとはアステリア株式会社のHandbook(1,200件以上の導入実績をもつ、シェアNo.1のモバイル向けコンテンツ管理システム)を3軒の農家民宿に設置しています。このタブレッドは、日本語・英語・中国語・韓国語と言語別に観光地案内や写真が表示されるので、観光地の案内がしやすくなったと農家さんからお伺いしていますよ。
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- 海外観光客が安心できるできる工夫をたくさんされているのですね。
ちなみに海外の方はどのように仙北市のことを知るのでしょうか? PRなど工夫されている点があれば教えていただけますか?
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- 例えば、東京で行われている旅行博などに積極的に参加したり、雑誌やweb媒体にもPRすることは心がけて活動しています。
それからタイでは、現地の旅行会社さんと取引をさせていただいておりまして、仙北市の農家民宿を取り入れた旅行商品をタイで販売しています。その他、私たち市の職員も台湾に訪れ、PR活動をしたり、現地を訪れることも意識していますね。最近は海外観光客が地方に行く流れが増えているのですが、中でも仙北市はまだまだ未開の地として、自分しか知らない隠れ名所のように思われて喜ばれる方も多いですね。
仙北市に新しい風、町も人も活気が出て若返り!?
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- 仙北市に観光客が増えることによって、なにか町に変化などはありましたか?
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- 農家さんが「この前うちに〇〇の国の人が来たんだけど、すんげぇおもしれっけ」みたいな会話が日常的になり、新しい風が吹き始めている気がしています。そんな会話を聞いて、わたしも農家民宿やってみようかしら…と農家民宿を始められる方も多いんですよ。
地元にいても海外旅行した気分になれるという嬉しい声もありますし、農家民宿をやられている方はみなさんやりがいを感じていらっしゃるので町に活気が生まれているように思います。それによく農家さん同士で井戸端会議をして、この料理評判良かったよ〜!なんて意見交換もしているんですよ。
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- 農家民宿が増えることで、町に会話も活気も生まれ始め、年配の方も以前より元気になったような気がしています。生き生きとした両親の姿を見た子どもが積極的にお手伝いをしたりなど、若い方にも影響し始めていますね。
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- 素晴らしいですね。仙北市の取り組みが町の活性化へ繋がっているのですね。
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- はい。昨年では農家民宿に泊まられた外国人宿泊者数が1000人を迎え、年々海外からの個人旅行客も増え始めています。過去の実績を含め、仙北市の取り組みを評価していただくことも随分増えました。
実は今日も、農家民宿に香港からのお客様がいらっしゃる予定ですよ!
良ければお話されますか?
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- はい!ぜひ、宜しくお願いいたします!
香港のお客様に突撃取材!仙北市を訪れた理由は?
木々が生い茂る山を通り抜けると、ひっそりと佇む農家民宿『星雪館』がありました。
本日こちらに香港からのお客様が到着されるとのこと。笑顔で迎えてくれたのは『星雪館』で女将をされている明るい笑顔が印象的な門脇富士美さん。
富士美さんは積極的に海外観光客の受け入れをしており、農家民宿の女将だけではなく、ほうれん草農家としての顔も持っています。お手製のごま柚餅子をいただきながら、待っていると4人のお客様がやってきました。なぜ、ここ仙北市を訪れたのかお伺いしてみました。
ー こんにちは!本日はレンタカーでいらしたのですね!
日本は何回目なのでしょうか?(以下日本語に翻訳)
日本は6回目で、さっきまで武家屋敷を見てきました。ここの紅葉を見てみたかったんです。
ー 6回も!武家屋敷を見に仙北市にいらしたのですね!
はい。ずっと、秋田県には来てみたいと思っていたんです。秋の武家屋敷も見てみたかったし、秋田県はお米がおいしくて、お酒が美味しいと聞いていたので。あとは、香港では”秋田犬”がとても人気で、ぜひ会ってみたかったんです(笑)!今、秋田犬が香港では話題なんですよ!
それに、もう東京や京都には行ったことがあるので、紅葉が見られそうな東北に行こうって思って来ました。でも、ちょっと早かったかな。
ー ぜひ、こちらのタブレット(Handbook)を見てください!武家屋敷の紅葉がピークを迎えるとこのような絶景になるんですよ!
やっぱり、他の季節も美しいですね。次は春の桜の時期にも来てみたい!こうやって写真で見られて楽しいですね。ドローンの桜の動画も素敵ですね!また春にここに来たいと思っています。
ー ありがとうございます!ぜひ、ゆっくり日本を楽しんでいってくださいね!
秋田県仙北市の「農家民宿」について聞いてみた!まとめ
今回は、地域や農家さんが一体化し、インバウンドや観光に力を入れている仙北市の取り組みをご紹介しました。
観光客を誘致するために新しく何かを作るのではなく、身近にある景色やなんでもないの会話、郷土料理などの、昔から当たり前のように存在する素朴な日常が、観光客に取って実は忘れられない経験になるのかもしれません。
美の秋田・桃源郷をゆく|秋田のグリーン・ツーリズム総合情報サイト
http://www.akita-gt.org/index.html
編集部では、仙北市で農家民宿を営むお二人にもお話を伺いました。
記事の後編として公開予定ですので、どうぞお楽しみに!最後まで読んでいただき、ありがとうございました。