2021年1月19日

物流のラストワンマイルに変革を! 配送効率化アプリ「TODOCUサポーター」

物流業界にはアナログで非効率な業務が未だに多くあり、それらが日々の配達員の業務を圧迫している状況です。そうした中で、宅配業務の効率化をサポートする配達員向けのアプリ「TODOCUサポーター」が誕生。物流のラストワンマイルの変革を目指す、CEOの高柳さんにお話を伺いました。


「Amazon」や「楽天」などの巨大ECサイトや、誰もが気軽にモノを売り買いできるフリマサービスの台頭により、個人宅への配送が増えました。
特に昨年はコロナ禍によりその利用者も急上昇している状況ですが、一方で問題視されているのが「配達員の人手不足」と「再配達問題」。物流業界にはアナログで非効率な業務が未だに多くあり、それらが日々の配達員の業務を圧迫している状況です。

そうした中で、宅配業務の効率化をサポートする配達員向けのアプリ「TODOCUサポーター」が今から一年ほど前に誕生していました。サービスを手掛ける207株式会社は、2020年2月にサービス開始後、クチコミだけで3000人超の登録者を獲得し、2020年12月には最も優秀なスタートアップ企業を決める「Startup Battle」で見事優勝を果たしました。

社会的な背景も重なり大注目となった207株式会社。物流のラストワンマイルの変革を目指す、CEOの高柳さんにお話を伺いました。

207株式会社CEOの高柳さん

207株式会社 CEO 高柳 慎也さん
1989年生まれ。山口大学を卒業後、福岡のベンチャー企業に入社し訪問営業を経験。4ヶ月で退職後、京都にてインターネット回線の訪問営業を起業。2012年に上京し、設立半年の、ITベンチャーに2人目の社員として入社し、WEBシステムやアプリの受諾開発ディレクションを経験。 2015年に株式会社チャプターエイト創業と同時に参画。システムおよび事業の開発責任者として4つのプロダクト開発を推進。ABCチェックインという民泊チェックインサービスの事業売却を経て退職。2018年に、物流のラストワンマイル領域にフォーカスし、207株式会社を創業。

非効率な業務が山積み! 物流のラストワンマイルの問題点

物流の「ラストワンマイル」、よく聞くワードですが具体的にどの部分を指すのでしょうか?
配送センターから受取人の自宅までの経路のことです。利用者からすると物流は日々便利になっているように感じられるかもしれませんが、ラストワンマイルはまだまだ非効率が存在する領域なんです。不在なのにインターフォンを押していたり、未だに紙の不在票を使っていたり…。配達の時間指定の仕組みも30年間変わっていなくて、利用者が必ず2時間の枠で待たないといけないというのは昔からずっと一緒なんですよね。
1990年代からこれだけライフスタイルが変わっているのに、仕組みはずっと変わっていないんですか!? 実際に私も、20時ぐらいに届けてもらいたいときにイチかバチかで「18~20時」の枠を希望して、結局早めに来ちゃって受け取れないなんてこともありました。
きっと皆さん経験ありますよね。こうした非効率なやり方は、配達員の慢性的な長時間労働にも繋がるのでかなり厳しい状況です。あまり知られていませんが、大手物流会社の配達員は個人事業主の方が多いんですよ。そういう方たちは、配送が完了した数で報酬が決まってくるので、1回の配送で200円。2回目、3回目の再配達でようやく届けることができても、1回あたりの報酬の金額は変わらないんです。
知らなかった…。いつ終わるかわからない仕事を抱えていたら長時間労働になってしまいますよね。
物流業界の構造の問題として「ラストワンマイルの配送の効率化」に積極的に投資をしてこなかったことが現在の問題に繋がっていると私たちは考えています。配送効率が上がることで配達員の方には利益を還元できるようになりますが、物流会社は特に何も変わらない。だから、配送効率化に企業として投資することもなく、何年も問題が放置されたままだったという背景があるんです。

その問題に気づいたのが、前職の宅配収納サービスのサマリーポケットでのユーザーからの改善要望です。ユーザーさんの話を聞くたびに、サービスではなく物流に非があるのではと感じるようになったんです。
たとえばどんな要望があったんですか?
課題と感じたのは「明日届けて欲しい」「早く集荷に来てほしい」などの物流に関する要望。同サービスでは宅配は当時ヤマト運輸さんにお任せしていたので、自分たちのサービスとしては改善できなかったんですよ。これでは日本で様々な新しい宅配サービスが生まれても、結局物流がネックになってしまうなと思いました。

それと同時にいわゆる「再配達問題」もよくメディアで取り上げられるようになりました。こんなにテクノロジーが発達している世の中なのに、なぜ物流だけテクノロジーを活かせないのだろう?と。そう思ったことが現在のサービス「TODOCUサポーター」を立ち上げたきっかけですね。

SMSを活用していつでも受取可能な「TODOCUサポーター」

「TODOCUサポーター」は、実際どのように使うサービスなんでしょうか?
一言でいうと、配送員と受取人とのコミュニケーションができるアプリです。配達員が伝票を写真で撮ってデータ化し、最適な配送ルートをAIで自動生成します。受取人は、SMSに届くメッセージから【在宅・不在・帰宅時間】を答えられるようになっています。

ちなみに、一般的な配送員って、1日何個くらいの荷物を届けていると思いますか?
うーん… 一時間に6個ぐらいと仮定して、50個くらい?
いえいえ、その倍です。1日100個くらい配送しているんです。
100個!? さらにそれぞれの時間指定のことも考えると、時間帯によってはめちゃくちゃ忙しいですね。
そうなんです。それで、配送員の最初の作業に「地図見」というのがあります。
地図見?
Google マップに100個以上の住所を入力するんです。
え!? ちょっと大変すぎませんか!?
毎日毎日、気が遠くなりそうな作業ですよね。でもそれが今の働き方なんですよ。実際にTODOCUサポーターを使いながら説明しますね。

配送員が伝票に書いてある住所と電話番号をカメラで読みこむと、TODOCUサポーター上で自動的にデータ化されます。その後、配送員は利用者の在宅確認を送信します。

すると、、、成瀬さんにSMSが届くので確認してみてください。

あっ、SMSに届きました!記載されているURLをクリックすると、在宅中/不在中/置き配を依頼 の3つの選択肢から選べるようになっていますね。IDやパスワードを入力する必要もなくてかなりシンプルですね。

そうですね。利用者がここで「在宅中」を選択されると、配達員が見ている地図上ではピンが緑色になり、「外出中」を選択されると赤色になります。配達員も「今届けられるかどうか」が地図上でひと目で分かるんです。

さらに利用者の画面で「不在中」と回答すると、帰宅予定時間を入力できるようになっています。今までは、実際に家に配達しに行き、いなければ手書きの不在票を投函して、再配達依頼を待たなければいけなかったことを考えると、これだけでもかなり便利になります。

不在票が届いていたとしても、結局家に帰宅しないと確認できないので、利用者からしても無駄な時間が発生していますよね。あ〜もうあとちょっとで帰るところだったのに! ということもよくあります。

でも配送員は毎日配送をしているわけだし、、地図見作業をしなくても住所を見るだけでだいたいのルートを頭の中で組み立てたりできるのではないですか?
そうですね。大手企業の場合は、担当エリアが決まられているのですが、最近増えている Amazonや楽天などの配送員さんは、担当エリアが決まっておらず、毎日配送ルートも違うんですよ。だから、特に初心者の方は配送ルートの確認が大変なんですよね。

物流業界も人材不足で、配送員がバイトや業務委託になっていくと、結局地図見作業が不可欠になるので、すごく効率が悪いんです。結局は属人的になってしまうんですよね。
なるほど、完全に悪循環になっているんですね…。 ちなみに、「TODOCUサポーター」を実際に使った配送員さんからの反響はどうですか?
配送効率があがったことで収入が12万円も上がった、と言う配送員の方のお声をいただいたことがあります。これには驚きましたね。長時間労働によるメンタルヘルスの改善にも貢献できるるのではないかと手応え感じています。

物流の世界では、与えられた荷物をすべて配達完了できれば仕事は終わりなので、効率的に早く終わらせるに越したことはありません。

TODOCUサポーターが利用されればされるほど、配送効率化データが蓄積されて、在宅情報、在宅予測、配送ルート、駐停車の場所、玄関のインターフォンを押して出てくるまで、などの情報が溜まっていて、このデータを活用すると、ギグワーカーの初心者でも優れた配送効率を担保できるようになるんです。
ギグワーカー:インターネット上のプラットフォームサービスを介して単発の仕事(ギグワーク)を請け負う労働者のこと

自動運転やドローン配送が出てくることを見越して、データとオペレーションを整備

2020年、TODOCUサポーターの仕組みを利用して、スキマ時間に荷物を届けるサービス「スキマ便」というサービスを作りました。UBEReatsなどのフードデリバリー市場では、配送初心者ギグワーカーが働いていることが多いのですが、どうしてもピークの昼と夜の時間帯しか稼げないんですよ。

だから僕らは、軽貨物とフードデリバリーを合わせることでギグワーカーの人が稼げる仕組みを作っています。
フードデリバリーをしている配送員の方が、荷物まで届けてくれるってことですか?

そうなんです。実は今、僕らのオフィスにガレージがあり、ここが配送拠点になっています。朝大量の荷物が届き、「スキマ便」に登録されたギグワーカーの配送員によって夜までに捌けていきます。

「スキマ便」の特徴は配送荷物の共同配送です。皆さんの自宅に1日に何度も別の配送員がくることがあると思いますが、スキマ便は同じ配送先の荷物をまとめて配送することで、データを活用しながらより効率化を実現し、物流業界の人材不足と再配達問題を解決しています。

物流、特に「ラストワンマイル」という領域で、利用者にとっても、配送員の方にとっても効率的な世の中を目指されているんですね。

今後、207株式会社はどのように展開されていくのでしょうか?
今後は高密度な配送拠点が必要になってきます。今年は、自動車の車両を活用した配送拠点を作る予定です。大手自動車メーカーの遊休車両を活用して、配送拠点を増やそうと考えています。防犯カメラとスマートキーをつけると無人でも配送拠点を作ることができますし、駐車スペースがあるだけで配送拠点の確保が可能になるので、大規模な施設を必要としません。

全国1万カ所を目標に、配送効率をあげていきたいと思っています。
遊休車両が配送拠点に! 面白い発想ですね。
物流のラストワンマイルって確実にロボット、ドローン、自動運転ができる未来が出てくると思うんですけど、配送を効率化させるためのデータはこれらにも必要だと思っています。

人がやらなくいい作業をテクノロジーで代替していったとしても、やはり配送拠点は必要です。だからこそデータを溜めて、スキマ便で配送拠点を整備し、テクノロジーで代替していく。将来どんなところにいても瞬時にモノが届くような世界を創ることで、人々が行動しやすい社会を実現することを目標としています。

編集後記

今回は配送効率化アプリ「TODOCUサポーター」を提供する207株式会社CEOの高柳さんにお話を伺いました。便利になっていく世の中の一方で、アナログな業務で現場がひっ迫していることを改めて痛感しました。

ロボットやドローンが配送を行う未来でも使えるサービスを見据えたエコシステムを構築されていることに驚きました。今後の物流業界を変えていく期待の星から目が離せません!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

参考リンク

207株式会社
TODOCUサポーター
CEO高柳さんのnote

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この記事を書いた人
成瀬夏実 フリーランスのWEBライター。2014年に独立し、観光・店舗記事のほか、人物インタビュー、企業の採用サイトの社員インタビューも執筆。個人の活動では、縁側だけに特化したWEBメディア「縁側なび」を運営。