2022年1月31日

ミス・ビットコイン藤本真衣氏に訊く、仮想通貨との出会いとNFTの未来像【後編】

ビットコインを始め、ブロックチェーン業界を常に牽引し続けてきたミス・ビットコインこと藤本真衣氏は、今、NFTのブームをどう見ているのか。インタビュー後編では、NFTの現況とその価値、さらにNFTが持つ未来の可能性ついて伺いました。


ビットコインをはじめ、ブロックチェーン業界を常に牽引し続けてきた”ミス・ビットコイン”こと藤本真衣氏は、最近のNFTのブームをどう見ているのか。

”NFTに参入しないことがリスク” とまで語る藤本氏の視点から見た、テクノロジーが生かされた世界はどのようなものか。後編記事では、NFTが持つ価値や、藤本氏が注目するNFTビジネス、この先の未来の可能性も含めて聞いてみました。

藤本さんが暗号通貨と出会ったきっかけなどについて伺った、インタビュー前編記事はこちらよりご覧いただけます。 https://www.asteria.com/jp/inlive/social/5033/

株式会社グラコネ 代表取締役|藤本 真衣(ふじもと・まい)氏
2011年にビットコインと出会って以来、国内外でビットコイン・ブロックチェーンの普及に邁進。海外の専門家と親交が深く「MissBitcoin」と呼ばれ親しまれている。自身は日本初の暗号通貨による寄付サイト「KIZUNA」やブロックチェーン領域に特化した就職・転職支援会社「withB」ブロックチェーン領域に特化したコンサルティング会社「グラコネ(Gracone)」などを立ち上げる。 NFT領域に関しては、2018年よりNFTに特化した大型イベントを毎年主催している他、Animoca Brands等の、国内外プロジェクトのアドバイザーも多数務める。2020年以降は、事業投資にも力を入れており、NFTを使った人気ゲーム「Axie Infinity」を開発したSky Mavis、Yield Guild GamesAnique等に出資している。

聞き手・アステリア株式会社 ブロックチェーンエバンジェリスト 奥達男

※本インタビューは2021年11月に行われました。掲載している内容は、2021年11月時点での情報をもとに執筆された内容です

NFTとの出会いと国内でのカンファレンスを主催するまで

今はNFTチャリティーにも力を入れられている藤本さんですが、NFTとの出会いはいつ頃だったのでしょうか?
2017年の香港だったと思います。「CryptoKitties」と、CryptoKittiesに投資しているベンチャーキャピタル(Kenetic Capital)がNFTの大きめカンファレンスを開催していたのですが、そこで「ERC-721」と呼ばれる、イーサリアムのNFT向けの標準規格が大注目されたんです。

そのERC-721がきっかけでNFTのことを知りました。当時、NFTはゲームに使えるという印象。ゲーム内の自分のアイテムが本当に自分のものになったり、「レアアイテムは10個しかない」と言われても通常のゲームではそれを証明できないけど、NFTであれば証明できるのがすごいよね、と。

あとはゲームのキャラクターが自分だけのものになるような、言うなれば、NFTはそのキャラクターのDNAのようなものなので、同じような見た目でもユニークなDNAを持っていたり、これまで以上にキャラクターに愛着が湧くよね、と話していましたね。NFTはブロックチェーンのユースケースとしても一般の人に分かりやすいし、これはきっと来る!と確信したんですよ

もともと仮想通貨に詳しい ”ミス・ビットコイン” というイメージが強かった藤本さんですが、今ではNFT関連の話題にも欠かせない人になっているように感じます。
周りからは浮気性っていわれるんですが(笑)、そういうことではなく、仮想通貨に興味を持ち、触れてみようと思う人をどれだけの引っ張ってこられるかは、ものすごく勝負なわけですよ。そういう意味でも、NFTという切り口はとても重要なんです

この香港でのカンファレンスがきっかけになって、2018年からは毎年日本でもNFTカンファレンスを主催するようになりました。一年目は50人ぐらいでオフィスの一角を借りて開催していましたが、毎年どんどん規模が大きくなっていって、世界中から人が集まるようになりました。今では世界でも最大級のNFTカンファレンスに成長しています。

NFTが生んだ、遊んで稼ぐ「Play-to-Earn」の可能性

藤本さんの私見として、NFTがここまで流行って拡大した要因はどこにあると考えられていますか?
新型コロナの感染症拡大の影響はあったと思います。コロナ禍でアーティストの表現する場が減ったこと、リアルなイベントができなくなってアーティストが表現する場がないとなったときに、NFTアートは表現の場としても有効であることがわかり、一躍注目されました。

あとは、技術的な革新でいうと、今までは(権利等を)デジタルのまま送ることは不可能だった。デジタルだとコピペし放題で高い価値が付けられなかったものが、NFTだとどれがオリジナルか?ブロックチェーン技術によって明確に証明できるので、だからこそ価値が付くようになりました。デジタルではできないと思っていた価値や権利の移転ができるようになったのは、まさに革命ですよね。

ブロックチェーンゲームの領域でいうと「Axie Infinity(アクシーインフィニティ)」はやはりすごい存在感です。トランザクションもAxie Infinity独自のサイドチェーンRonin(ローニン)はイーサリアムメインネットの2倍、Polygon(ポリゴン)ブロックチェーンの1.7倍ぐらいになっているんです。(※1)

※編集部注釈1
Axie Infinityは当初Ethereumを使っておりましたが、Ethereumが持つ問題(高手数料、低処理速度)を解決するために、 EthereumのサイドチェーンであるRoninを開発しました。 サイドチェーンとは、メインチェーン(この場合、Ethereum)を改造することなく、メインチェーンが持つ問題の解決や機能拡張を実現する案。PolygonもEthereumのサイドチェーンです


このAxie Infinityのインパクトは大きく、これもコロナ禍が影響しています。コロナ禍で仕事を失ったフィリピンの方々が、生活できない、食べていけないという状況になったときに、Axie Infinityの ”Play-to-Earn(プレイトゥアーン)” という遊びながら稼ぐことができる仕組みで生活を立て直していったんです。

ブロックチェーン以前も、現金化できるオンラインゲームもあったんですが、世界中の資本家と、実際にプレイする人をブロックチェーンで繋いだからこそ実現したシステムでした。

ブロックチェーン業界って金融包摂(経済活動に必要な金融サービスを差別なく、すべての人々が利用できるようにする社会的取り組み)の話をずっとしてきたと思うんですが、まさかブロックチェーンゲームという形が世界を救うとは誰も思っていなかったと思うんですよね。

フィリピンでは、今では銀行口座を持っている人の数よりも、Axie InfinityのRoninウォレットを持っている人の数のほうが多いらしいんですよ。コロナ禍では、そういうようなムーブメントもあって、NFTが広まったと思います。

やはりNFTの盛り上がりを支えた大きな存在として「Axie Infinity」は欠かせないですよね。
ちなみにこのゲームを始めるには、かなり高額な初期費用がかかると聞いたのですが、なぜアンバンクドな(銀行口座を持っていない)方が多いフィリピンでこのゲームが流行ったのでしょうか?
実は「Axie Infinity」は、スカラーシップという奨学金制度が大きな鍵を握っています。このゲームでは、最初に3匹のAxieというNFTモンスターを買う必要があり、そこに初期費用がかかります。これが今、だいたい1匹10万円ぐらいするんですね(価値変動あり)。誰でも簡単に始められるものではないんです。

そこで出てきたのがスカラーシップ制度です。いわゆるNFTの富裕層は、投資目的でAxieを何十体、何百体も持っているので、そういう方たちがフィリピンでAxie Infinityを遊びたいという人に無料でレンタルをするんですね。

フィリピンの人たちは無料でAxie Infinityが遊べるかわりに、ゲーム内でAxieを使って稼いだお金の何割かを貸し出し元にレンタル料として支払うことでその仕組みが成り立っているんです。一種のマイクロファイナンスみたいなもので、そうした仕組みが功を奏して、Axie Infinityが広まったという経緯があります。
スカラーシップは、Axie Infinityが自身で始めた制度なのですか?
そうですね。最初はAxie Infinityが始めましたが、今ではそれ以外にも「Yield Guild Games」のような第三者の組織が、​​スカラーシップ精度をやりやすくする為のサービスを提供しています。
そのビジネスが成立しているんですね。つまり私がAxie Infinityを始めようとしても利用できるんですか?
もちろんできますよ!

NFTの価値はどこにある? 藤本氏が注目するNFTビジネス

とはいえ、まだまだ一般の方がNFTに価値を見いだすのはなかなか難しいと思うのですが、藤本さんが見ているNFTはどういったところに価値があるのでしょうか?
価値の部分でいうと、デジタルがデジタルのまま価値を送れるようになったのは革命的だと思うんですよね

今までデジタルアートを創っていた方って、なかなかお金を稼げなかったんですよ。だから、ブルーレイのような記録メディアにナンバリングをしてデータを渡すようなことをしていたんです。でもそれだとコピーもできるし、唯一無二であることが証明できなかったので、表現の場も限定されていた。だけどNFTが生まれたことでそれができるようになったというだけでも、十分価値のあることですよね。

あとはNFTを持っている人同士のコミュニティで、買った人と創った人の距離がぐっと近づいたことも価値のひとつだと思っています。デジタルアートに関しては、NFTができたことで従来の市場とは別に全く新しい市場ができました。誰もが自由に作品を売買できるオンライン市場が実現できたことは素晴らしいことだなと。

藤本さん自身がお好きなNFTはやはりアート系ですか?
私自身はほとんどゲームはしないので、コレクションするのはアートの方ですね。せきぐちあいみさんのVRのNFTアートは欲しかったけど手が届かず… PerfumeさんのNFTアートは頑張って買いました。
海外ではNBA Top Shotがすごく売れているとか、オークションで誰々のNFTアートが高額取引されたというような話題で盛り上がっていますが、日本ではまだそういう事例が少ない印象ですが、日本もそのような状況になると思いますか?
コンテンツ次第というところもあると思うんですよね。
NFTとして特に高額売買が注目された「NBA Top Shot」は、まさにアメリカ人のファンに刺さったという感じですかね。日本でもああいったサービスは登場すると思いますか?

そうですね。そもそもアメリカではトレーディングカードをおじいちゃんから父親、そして息子にと代々受け継ぐような文化があり、トレーディングカードに1枚数億円という価値がつくような市場が元々あるんですよね。バスケットボールが好き、トレーディングカードが好きといったベースがあって、それを理解した上で「NBA Top Shot」というNFTを提供して成功したという経緯があるので、あれをそのまま日本でやっても成立しないと思います

ちなみに「NBA Top Shot」はFlowブロックチェーンを使っているので、メールアドレスを登録するだけでクレジットカードで購入できるんです。そうやってUXを簡単にしたところも、爆発的に流行った理由です。

これまではNFTを購入するのにMetaMaskを使用しなければならないとか、仮想通貨を手に入れなければならない… といった中で、Flowを使ってクレジットカードでNFTが購入できたことが、トレーディングカードを集める層にピッタリとはまったんでしょうね。そういうことが大事なんだと思います。だから、日本や海外というのはあまり関係なく、そうした部分の設計がちゃんとできていたら可能性はあるんじゃないかなと。

日本は素晴らしいコンテンツがたくさんあると世界からずっと言われ続けています。日本の人口だけをあてにするのではなく、何か日本の企業が海外の日本のアニメファンにもリーチするようなやり方で企画すれば、大化けする可能性はありますよ。ターゲットは絶対に海外に向けるべきですよね

「NFTに参入しないこと」こそが最大のリスク

NFTに興味はあるけどまだビジネス的な参入は躊躇されている方も多いと思いますが、藤本さんが考えるNFTに参入するリスクはありますか? たとえば法律や規制まわりを懸念される方は多いとおもいますが、、、。
規制は慎重にやっていけば大丈夫な話だと思っています。それよりも参入しないことがリスクじゃないですかね

私がビットコインに出会ったときのお話をさせていただきましたが(※インタビュー前編参照)、先日も私が登壇したイベントで「2011年にはビットコインは国の裏付けがないといわれていましたが、今はどうですか?」という質問をしたところです。NFTは法律的に守られていないから無価値だとか、危険だから触れるなみたいなブログが書かれていることもありますが、ビットコインも同じ道をたどったように感じます。

デジタルな所有権についての法律は日本にはまだ明確に定義されていないですが、禁止されていることではないので、せっかく興味があってチャレンジしたいと思っていることを「危険だからやらない」としてまうことこそリスクではありませんか?

インターネットができたばかりの頃は、最初、ネット上でクレジットカードを使うのは危険だとかECサイトで買い物をすることこそ危険だといわれていた時代もありました。そうした危険は時間とともに解決されていくものであって、そのイノベーションに乗り遅れることほど危険じゃないかなと私は思いますね。
なるほど。NFTは多くのメディアに取り上げられたことで、ブロックチェーン関連においては参入企業が非常に多い状況がありますが、それでもまだ一般の方々には理解がそこまで浸透している技術ではないかと思っています。そういった方もさらに理解を進めることで、藤本さんがここで書かれている想いを強く感じることができるでしょうね。

またNFTに関しては、ただそのものの価値というだけではなく、NFTが登場したことによって生まれた価値も多いように感じます。
そうですね。NFTを持っているという人たちのコミュニティというお話も先ほどありましたが、NFTによって親近感が沸いたり、NFTを創ったアーティストを応援したり、そのNFTを保有している人だけが参加できるファンスペースのようなものができてきたたら面白いなと思うんですよね。

NFTには保有していることで会員権のような役割もあります。日本では「ReCone(リーコン)」という、NFT購入者限定のコミュニティサービスがローンチされました。持っているNFTがファンコミュニティに入るための鍵になるというスペースを提供しているのですが、良いタイミングにローンチしたなあと個人的にも注目していました。

NFTマーケットプレイスがたくさんできてきたのも嬉しいですが、NFTを持っている人がもっと楽しめる場所が作れるプロジェクトがこれから増えていくかなと注目しているところですね。

コミュニティは面白そうですね。ありがとうございます。 逆にアートを作る側、NFTを発行するという側の視点ではどうでしょうか?
世界的にも最もポピュラーなNFTマーケットプレイス「OpenSea」のStorefrontは比較的手軽にできるかなと思います。ブログに画像をアップロードするような感覚でデジタルアートをアップロードしてNFTアートを発行できます。簡単といっても仮想通貨やMetaMaskの知識は必要ですけど、、、。

ただ作り手としてNFTアートにしっかりコミットするなら、自分のアートはどこのNFTプラットフォームに向いているか? ということまでしっかり考える必要がありますね。

日本だとNFTプラットフォームは「Foundation」が人気ですが、招待制なので誰かに招待してもらう必要があります。あとは独自のコントラクトでやりたいなら「openzeppelin wizard」も良いかもしれません。

今はYouTubeやブログ、TwitterのスペースなどにもNFTアートに関する情報が毎日あがっているので、そういったものを見たり読んだりするのが分かりやすいかな。すごく勉強になりますよ。

NFTは今後どのように成長を遂げるのか?

最後に、NFTは今後どのように成長していくのか。藤本さんの考えを教えてください。
そうですね、この業界の人はこれまでもずっとメタバースというキーワードを挙げていましたが、最近はFacebookやディズニーがメタバースに触れるようになり、さらに注目度が加速したように感じます。いま所有しているデジタルの資産価値も、今後もっと見直されるようになってくるかと。

たとえば私がGUCCIの服をリアルな世界で持っていたとして、デジタルの空間の中でもNFTのGUCCIをアバターに着せたり、それが世界で10着しかない場合にはその所有権も示せるようになりますよね。

こうした所有はもちろん、メタバースの中では新たな経済圏や産業も生まれてくると思いますし、NFTだからこそ生まれてくる価値があると思います。

メタバースの定義は良い意味でどんどん緩くなっています。VR空間ではなくても、いわゆる仮想空間があればメタバースと言って良いと思いますし、メタバースの拡がりとともにNFTはますます存在感を増すでしょうね。
ビットコインの出会いから注目のNFT、そしてその未来の価値まで、多岐にわたってお話を聞かせてくださり有難うございました。

関連リンク

藤本真衣さん Twitter  https://twitter.com/missbitcoin_mai
株式会社グラコネ https://gracone.co.jp/

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この記事を書いた人
高橋ピョン太 ゲーム開発者から、アスキー(現・アスキードワンゴ)のパソコンゲーム総合雑誌『LOGiN(ログイン)』編集者・ライターに転向。『ログイン』6代目編集長を経て、ネットワークコンテンツ事業を立ち上げ、以来、PC、コンシューマ向けのネットワークコンテンツ開発、運営に携わる。ドワンゴに転職後、モバイル中心のコミュニケーションサービス、Webメデイア事業に従事。現在は、フリーライターとして、ゲーム、VR、IT系分野、近年は暗号資産メディアを中心にブロックチェーン・仮想通貨関連のライターとして執筆活動中。