2024年4月9日
「ビットコインの半減期」という言葉をよく耳にするようになりました。今回の記事では、ビットコインの半減期について、専門的な目線で解説します。ビットコインの半減期がなぜ起きるのか、半減期が及ぼす影響、さらに過去に起きた半減期との違いなどについて、初心者にも分かりやすく紹介していきます。
in.LIVE 読者の皆さんこんにちは! アステリア株式会社で、エバンジェリストとして活動している奥(@blockchaineva)です。ここ最近「ビットコインの半減期」という言葉をよく耳にするようになりました。業界で騒がれているのを見て「一体なにが起きるの?」「半減期によってどんな影響があるの?」と感じている方も多いかもしれません。 今回の記事では、ビットコインの半減期について、専門的な目線で解説します。 ビットコインの半減期がなぜ起きるのか、半減期が及ぼす影響、さらに過去に起きた半減期との違いなどについて、初心者にも分かりやすく紹介していきます。
奥 達男(おく・たつお)
アステリア株式会社ブロックチェーンエバンジェリスト・コンサルタント
ブロックチェーン技術の啓蒙及び技術適用された事業モデルの創生・推進、コンサルティング、提案、POC、技術の講義、サービス構築や他社主催セミナーへの登壇などを担う。一般社団法人ブロックチェーン推進協会(BCCC)にて、トークンエコノミー部会 部会長、ブロックチェーンエバンジェリストを務める。
「ビットコインの半減期」について説明する前に、まずはビットコインの裏側で動いている、ブロックチェーンと呼ばれている技術について簡単におさらいしましょう。 ブロックチェーンはその名の通り、ブロックのようなものがチェーンで繋がれているようなデータ構成になっています。
※画像はイメージです
このブロックは、約10分に一つずつ作られているのですが、2009年1月から動いているビットコインのブロック数は、2024年3月時点で大体83万を超えています。 この ”ブロックを作る” 作業のことを「マイニング」と呼びます。またマイニングを行う人のことを「マイナー」と呼んでいます。マイニングをするためにはコンピューター上である計算を行うのですが、この計算を誰よりも早く終えることが、ブロックを作り終えることにつながります。 この計算の難易度は「採掘難易度(ディフィカルティー)」と呼ばれており、マイナーたちの計算が早く終わる傾向が続くと「ディフィカルティーを上げる」、逆に、計算に時間がかかる傾向が続くと「ディフィカルティーを下げる」、という難易度調整が行われる仕組みになっています。
少し補足すると、基本的に「10分」という時間を基準にディフィカルティーが調整されているのですが、ブロックによっては7-8分で生成できたり、12-13分かかることもあります。生成時間が10分になるように、2,016ブロックごとにディフィカルティーが変わるようになっているのです。そして、マイニングをして、誰よりも早くブロックを作ることができた人に報酬が与えられます。2024年4月時点での報酬額は「6.25ビットコイン」です。同時点でのビットコインの価格は1ビットコイン=約1,000万円なので、約6,250万円の報酬がもらえることになります。かなり夢がある話ですよね。 ブロックチェーンの仕組みについてもっと詳しく知りたい!という方は、YouTubeで ”超初心者” 向けに説明しているこちらの動画をご覧ください。
さて、現時点での報酬額は6.25ビットコインとなっていますが、2009年1月にビットコインが稼働した当初、マイナーに与えられる報酬額は50ビットコインでした。 ここでようやく ”半減期” というキーワードが出てきます。 これは、ビットコインを生成(マイニング)したマイナーに対して与えられる報酬が半減するイベントのことを指していて、約4年に一度発生すると言われています。 なぜ4年に一度かというと、ビットコインの仕組みとして「21万ブロック作られる度にマイナーの報酬額が半分になる」ようにプログラミングされているからです。10分に1つブロックが作られるとすると、21万ブロックを生成するのに要する時間が約4年間なので、半減期は4年に一度、と言われているのです。 ビットコインのブロック数は、本記事の執筆時点で、83万ブロックを超えています。 ということは、これまでに3回の半減期があった計算になります(83万÷21万=3.95… )。 一回目の半減期で、50ビットコインが25ビットコインに半減しました。さらに二回目の半減期では、25ビットコインから12.5ビットコインに半減。三回目の半減期では、12.5ビットコインから6.25ビットコインに。 四回目の半減期となる今回は、6.25ビットコイン→ 3.125ビットコイン となる予定です。
ビットコインは、最終的に発行枚数が2,100万ビットコインとなるようにプログラミングされており、今現在1,900万ビットコイン以上が刷られている状況です。ビットコインの価値を維持する方法は色々とあるはずですが、枚数を限定して需要と供給の調整をするために、この半減期という仕組みを採用したと推測しています(たとえば円やドルのような法定通貨は、中央銀行が需給のバランスをとり、インフレ/デフレをコントロールしています)。 なぜ ”推測” で断言できないかというと、半減期についてはビットコインのホワイトペーパーで説明されていないからです。
そもそもビットコインの始まりは、2008年の10月あたりに暗号学のメーリングリストにサトシナカモト名義で、突如としてビットコインのホワイトペーパーが送られてきたこと。そのホワイトペーパーの内容を元に形となったのが、今のビットコインです。
ホワイトペーパーには半減期についての記載はなく、ビットコインのプログラム上のコメントに「21万ブロックごとに半減される」とだけ触れられているのが現在の状況なのです。
これまで説明してきたとおり、次の半減期でマイナーへの報酬が、約10分ごとに3.125ビットコインになります。さらに次の半減期(2028年前後)には、1.5625ビットコインになります。時を経るごとに、刷られるビットコインが減少していくので、半減期が及ぼす影響として、以下のことが考えられます。
供給されるビットコインの量が減っていくので、ビットコイン自体の希少性が高まることが期待できます。2024年初めに承認された「ビットコインETF」と呼ばれる金融商品や、ビットコイン版のNFTと言われている「Ordinals(オーディナルズ)」というプロジェクト、その他、ビットコインの経済圏が拡大するような仕組みが作られつつあります。 これらが盛り上がることも合わさって、半減期がビットコインの価値の向上につながる可能性も考えられます。
マイナーが報酬として受け取る額が減るので、マイニングへのモチベーションが減り、マイナーが減ることにつながることが想定されています。 そもそもマイニングを行うためには ・多大な計算量を誇るマシン群 ・マシン群を設置するための土地 ・マシン群を冷やすための冷却設備 などが必要なので、企業が事業としてマイニングを行っていることが多いです。今回の半減期で3.125ビットコインに報酬が減りますが、半減期前までは事業収支として成り立っていたところ、半減したことで事業が成り立たなくなる事業者もいると想定されていて、そうした事業者はマイニング事業から撤退することが考えられます。 過去にも「暗号資産の冬の時代」と言われた時期に、マイニング事業の撤退を決めた事業者が多くいました。
個人的には、2024年4月頃に実施される半減期は、今までの半減期とは少し違うと考えています。それは「ビットコインETF」や「ビットコインNFT(Ordinals)を含めたビットコイン経済圏が拡大する動き」が主な理由です。今年初めに承認された「ビットコインETF」という金融商品には、すでに何百億ドルという資金が流入しており、今後も機関投資家などからの投資が期待されます。 またこれまで、ビットコインといえば「暗号資産」という役割がクローズアップされていましたが、それ以外にもさまざまな機能(Ordinalsなど)の市場も拡大しており、ビットコインの経済圏はさらに広がっていくことが予測されています。このタイミングに半減期を迎えることにより、ビットコインという暗号資産を司るブロックチェーンにおけるネットワークの価値が高まる可能性があります。 今後もビットコインがどのような局面を迎えるのか、ますます目が離せません。 ビットコインなどを含めたweb3に関する情報は、アステリアのYoutubeチャンネルやTiktokでもお知らせしていきます。ぜひフォローしてチェックしてみてくださいね。 最後まで読んでいただきありがとうございました。