2020年7月22日

電動マイクロモビリティの未来。シェアリングサービス「LUUP(ループ)」が私たちの移動を変える!

”アフターコロナ”の新しい生活様式としても注目される、自転車やキックボードといった電動マイクロモビリティ。注目の電動マイクロモビリティのシェアリングサービス「LUUP(ループ)」の岡井代表に、LUUPが見据えるモビリティの未来についてお話を伺いました。


アメリカやヨーロッパ、中国など世界の先進都市を見れば、自転車や電動バイク、電動キックボードなどので移動する人は多く、シェアサービスも当たり前のように使われています。しかし、日本では東京の街をこういったモビリティで移動するのは専用道路、駐輪場、法律などの問題で、他国に比べてハードルが高いのが現状です。

”アフターコロナ”の新しい生活様式としても注目される、自転車やキックボードといった電動マイクロモビリティ。そうした電動マイクロモビリティのシェアリングサービスである「LUUP(ループ)」は、電動キックボードを開発し、全国各地での実証実験を繰り返してきました。

そして、2020年5月に小型の電動アシスト自転車のシェアリングサービスをローンチ。なぜ、電動アシスト自転 車のシェアリングサービスをスタートさせたのか。LUUPが見据える「モビリティの未来」について、代表の岡井さんに伺いました。

株式会社Luup代表取締役社長 岡井大輝(おかい・だいき)さん

東京大学農学部を卒業。その後、戦略系コンサルティングファームにて上場企業のPMI、PEファンドのビジネスDDを主に担当。その後、株式会社Luupを創業。代表取締役社長兼CEOを務める。2019年5月には国内の主要電動キックボード事業者を中心に、新たなマイクロモビリティ技術の社会実装促進を目的とする「マイクロモビリティ推進協議会」を設立し、会長に就任。

近距離の移動に革命を起こす、小型電動アシスト自転車の新サービス「LUUP」

今年の5月から、渋谷区・世田谷区・目黒区などの地域限定で50台、小型電動アシスト自転車のシェアリングサービスを提供されていますよね。利用者からの反響はいかがですか?
想定以上の反響をいただいて、ローンチから二日間で2000人以上の方に会員登録をしていただいてます。なので、正直なところサイクルポートも機体の台数もユーザー全員を満足させられるような状況にはなっていないというのが現状ですね。 スピードを上げて増やしていかないと、人々の生活に根付くようなサービスにはならないので、今積極的に拡大に向けて日々取り組んでいます。
近距離の移動手段が変わることで、ワークスタイルや住む場所、移動するときのファッションすら変化しそうです。そもそもなぜマイクロモビリティに関わるサービスを展開しようと思ったのでしょうか?
実は、今のサービスを始める前に、C2Cの介護のマッチングサービスを展開しようとしていました。ただ、個人と個人をマッチングする際に必ず問題になるのが「移動」なんです。

ちょっとした距離の移動にもわざわざ電車やバスを利用しなければならず、時間やコストが発生することによる物理的・心理的負担によって、うまくマッチングが起こりませんでした。そしてこの「移動」を変えることで世の中がもっと良くなるのではと考えるようになりました。

一番身近な移動の選択肢が「電車」というのは、東京に住んでいれば当たり前の日常ですが、他の先進国には自転車や電動キックボードなど様々な選択肢があります。それを目の当たりにすると日本の交通事情は他国に比べてもちょっと異様だなと思うことがあったんです。
電車やバスでの移動が当たり前すぎて、あまり違和感を抱いたことはなかったですが、言われてみるとたしかに年間ものすごい時間を移動に費やしていますね…。現在提供されている電動アシスト自転車のシェアリングサービスはどんな人が使っているのでしょうか?
通勤で使う方が多いですね。家と職場は近いけれど、電車は乗らないといけない。だけど、自転車であれば比較的スムーズにアクセスできるという距離感だと、家とオフィスの間にポートがある方にとってはかなり便利ですよね。
こんな時代なので、満員電車の「三密回避」に使う人も多そうです。LUUPのサービスの中で、既存のシェアサイクルとは違う特徴はあるのでしょうか?
LUUPの特徴は、機体が小型なので自動販売機1台分のスペースがあればポートを設置できることです。これによって高密度にポートを設置できます。あとは、事前に返却するポートを決めてレンタルできるようになっています。限られた狭いスペースを活用した1台限定のポートもあるので、「目的地に着いたけど、返却できるポートがない」という悪い体験を生まないようにしています。なお、予約ポートはライド開始後に変更することも可能です。

海外で起きている電動キックボードブームとLUUPの挑戦

小型電動アシスト自転車の「LUUP」
現在は電動アシスト自転車のシェアリングサービスをしていますが、「電動キックボード」を使った実証実験を国内で数多く行っていますよね。近距離の移動を変える手段としては、さまざまな機体を検討されているのでしょうか?
そうですね。創業数ヶ月ぐらいは機体を絞らず、さまざまな機体を見ていました。ちょうど海外では電動キックボードが世の中に出始めていた時期で、電動マイクロモビリティの中で初めて公道を走れるようになった乗り物として注目されていたんです。同じ電動マイクロモビリティといえば「セグウェイ」もありましたが、基本的にはゴルフ場など私有地の中で使うものになっていましたよね。

セグウェイは価格が高かったことに比べて、電動キックボードはとても安い。バッテリーやIoTの性能も進化しているので、モビリティが電動であることが前提の時代がこれから必ず来ると感じていました。女性でも乗りやすいことや、すぐに足をついて止まることができる等の安全面を考えた上で、まずはキックボードを中心にサービスを考えました。
キックボードにこだわりがあるというより、最適な電動マイクロモビリティを模索する中で電動キックボードが候補に挙がったのですね!
実は日本以外の国では、シェアサイクル業者はほとんど撤退・縮小して、電動キックボードに入れ替わっているんですよ。先進国の都市部では電動キックボードが走っている光景も見られるようになりました。先進国と呼ばれる国の中で電動キックボードが走っていないのは日本だけなんです。
すでにそんなに普及しているとは知らなかったです…!シェアサイクルから電動キックボードに利用者が移行しているのはどういう理由なんですか?
一つのシンプルな理由としては、キックボードの方が楽しいんですよ。ちょっと拍子抜けしてしまいますが、ユーザー数百人ぐらいにアンケートを取ると、単純に体験として楽しいというのが予想以上に多く挙がります。
確かに!(笑)目新しさもありますし、乗ってみたいですね。電動キックボード!
あとは細かい体験の差で言えば、スーツでも汗をかかないとか、女性はスカートでも乗れるとか。ちょっとした体験の差で変わっているようですね。
電動キックボードのシェアリングサービスは、ビジネスとしてのメリットもあるのでしょうか?
コストの面は大きいですね。一般的な電動アシスト自転車は日本だと15万円ぐらいですが、キックボードはより安いです。体積が小さいことから大量に機体を保有できますし、駐車場1台分ぐらいのスペースに30台ぐらい置けます。 ただ、やはり歴史の浅い乗り物だからこそ、安全上の懸念はあります。そこに真摯に向き合うためにも実証実験を繰り返してきました。色々試行錯誤を経て、今現在の形になっています。
LUUPの電動キックボード
ちなみに、電動キックボードの製造も世界中で行われているんですか?
韓国のヒュンダイ、欧米のフォルクスワーゲン、メルセデスベンツ、フェラーリなどの自動車メーカーですらキックボードを作っているんですよ。 日本の自動車メーカーも作るようになれば、安全面でも信頼が増してより良い方向に動くと思うので、まずは僕らが先陣を切る必要があると考えています。将来的には製造は国内メーカーに委託できることが理想です。

一番苦労したのは「安全面の検証」? 電動マイクロモビリティに立ちはだかる課題

LUUPの電動キックボードでの実証実験風景
電動キックボードって、日本では原付とされていて、公道ではヘルメットやウインカーが必要になってしまいますよね。規制の適正化に向けた動きなどさまざまな苦労があると思うんですけど、いま一番大変に感じられてることはなんでしょうか。
やはり、安全性の確認ですね。そもそも、自転車の歴史って30年以上ありますが、キックボードは世界に出始めてまだ2年ぐらい。寿命で壊れたキックボードが世界に何台あるのかも分からない状態なんです。僕らがいらないと思っていたものが、実は「それは絶対に必要!」という可能性もあるので、現在は「安全に走行するための条件」の検証をしているという状態です。
シニア層向けの四輪電動キックボード

シニア層向けの四輪電動キックボード

安全なキックボードを作るというのは簡単なことではないので、実証実験で実際に走らせてみて、「どこが危険でしたか?」と実際に乗った方々に機体のフィードバックももらっています。一年半で、すでに機体を8回アップデートしているんですよ。
8回も!?すごい。そこまで電動キックボードに注力しながらも、シェアサイクルサービスをローンチされた理由は、電動キックボードを普及させるための道筋の1つということでしょうか?
僕らの目的は「電動マイクロモビリティによるインフラを創る」ことですが、電動キックボードという乗り物が最適かどうかはまだ分からないので、電動マイクロモビリティの普及に向けた第一歩として、電動キックボードがあると考えています。なので、自転車、キックボード、まだ見ぬ電動マイクロモビリティの3段階を僕らとしては考えています。

電動マイクロモビリティ「LUUP」が果たすべき役割

近距離の移動に革命を起こすには、シェアサイクルだけでは追いつかないんですね。
たとえば渋谷駅は、毎日約36万人(※)が使っているんですけど、渋谷駅に置ける一般的な自転車の数って1万台にも満たないんです。つまり置くことができる機体をまずは増やさないといけない。ということは、もう少し機体も小さくならないといけないわけです。 ※2019年度JR東日本発表
なるほど。電動キックボードが世界を圧巻している理由がよくよく分かりました。 岡井さんが、マイクロモビリティで実現したい世界を教えてください。
電車・バス・タクシーのような公共交通機関と同じ位置付けで、誰もが毎日便利に使えるマイクロモビリティのシェアリングを広げていきたいです。

例えば、JRは今から約100年前に社会に実装されましたが、鉄道もある意味では街のあり方を大きく変えるので、当時は批判にさらされたこともあったかもしれません。それが今となっては経済活性化のためにも「うちに鉄道の駅をおいて欲しい」と誘致する声ばかりですよね。

あのレールが敷かれる前に、電車が走り出したあとの街を想像できていた人なんかいないんですよ。だからこそ、まずは ”社会に示す” ということを自分がやらなきゃいけないと思います。電動キックボードや、高齢者が乗れるような電動モビリティが当たり前にある日常を僕らのサービスを通じて誰もが想像できるようになれば、その先に目指している世界が実現できるはずです。

編集後記

コロナ禍で生活が激変したように、移動手段が変わるのもそう遠くはないのではないでしょうか。LUUPの提供する電動モビリティキックボードが街に登場することで、今ある当たり前の移動手段が一転する未来が待っているかもしれません。
岡井さんが未来を語るその姿に、期待が膨らみます。最後までお読みいただき、ありがとうございました!


関連リンク

電動マイクロモビリティのシェアリングサービス「LUUP」
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この記事を書いた人
成瀬夏実 フリーランスのWEBライター。2014年に独立し、観光・店舗記事のほか、人物インタビュー、企業の採用サイトの社員インタビューも執筆。個人の活動では、縁側だけに特化したWEBメディア「縁側なび」を運営。