2020年7月7日

世界の詐欺と戦え! 台湾人の二人に一人がダウンロードする台湾発の迷惑電話ブロックアプリ「Whoscall」急成長の軌跡

見知らぬ番号からの着信を膨大なデータベースから識別し、迷惑電話をブロックできるアプリ「Whoscall」。すでに全世界で8000万ダウンロードされている同アプリの誕生のきっかけや日本での展開について、創業者のJeffさんに取材しました。


こんにちは! in.LIVE 編集長の田中です。
皆さんは知らない電話番号から着信があったときにどうしますか? 迷惑電話、仕事の大事な連絡、はたまた宅配業者からの電話…? と、携帯を片手に悩んでしまうその瞬間、番号の発信者が誰なのか、すぐに分かれば安心ですよね。

そうしたニーズに答えることで、ユーザーを劇的に伸ばしているのが、台湾発の着信番号識別アプリ「Whoscall(フーズコール)」。詐欺や迷惑行為を含めた膨大な電話番号データベースを保有することで、発信者を瞬時に識別して詐欺電話の警告を出してくれるサービスです。

「振り込め詐欺」などを始めとする詐欺や迷惑行為が横行する日本でも注目されはじめているWhoscall。その誕生秘話やサービス急成長のきっかけについて、Whoscallを提供するGogolook社の創業者でCEOのJeffさんと、日本での展開を担当するJayさんにお話を伺いました。

Jeff Guo(郭建甫)
Gogolook 共同創業者/取締役社長/CEO

郭建甫は台湾清華大学工業工程博士課程卒業、博士号を取得。創業者としてのモチベーションが高く,新興研究開発に熱意を持つ。国際特許 25 項目取得。 スタートアップ企業Gogolookのリーダーとして会社を牽引。創業中Google CEOであるEric Schdimt より称賛を頂く。その後、Naver グループからの出資を得る。国際的なメディア: Forbes,科技傳媒 TechCrunch,The Bridge などの大手メディアで取り上げられる。2019 年には、台湾スタートアップのパイオニアとして、台湾大統領蔡英文が会社訪問。

Jay Zhang(張仕杰)
Whoscall 研究開発/日本でのサービス展開担当

台湾清華大学工業工程修士号を取得。専門分野はユーザエクスペリエンスデザイン及びデジタルドライブ商品の研究開発。「成功する商品とはユーザにより良い経験を体験させること」を信念としている。大学院卒業後、鴻海(Foxconn)グループ Appエンジニア及びユーザーエクスペリエンスについての研究員を担当。その後、新興企業の Gogolookに入社し, Whoscall の研究開発を担当。在職中、 WhoscallをHK、韓国、タイ、ブラジル、マレーシアなどに展開させる。2020年コロナが流行する中、張仕杰率いるWhoscallは全世界1億件を超える詐欺電話を防ぐことに成功。今後、各国専門チームと協力し、ITの力を掛け合わせ、世界中の人々を詐欺や迷惑電話による脅威から守るとしている。

電話番号を瞬時に識別! Whoscallができること

早速ですが、Whoscallができることを教えていただけますか?
大きく分けて3つあります。1つ目は「詐欺着信を識別する」機能、そして2つ目は電話番号をコピペして「番号を検索する」機能、3つ目に特定の番号からの「着信をブロックする」機能です。Whoscallの迷惑電話データベースに分類される番号からの着信時には、こんな風に画面上に警告のアラートマークが表示されます。危険な可能性があるので出ないようにユーザーに知らせてくれるんです。

さらに番号を検索する機能では、発信者が分からない番号を検索すると簡単な情報が出るようになっています。着信をブロックする機能に番号を登録すると、簡単に着信拒否も設定できます。

着信時にひと目で危険な番号だと分かるのが有り難いですね! 日本でも通信会社などが提供する迷惑電話の対策アプリがあると思うのですが、どういった点が違うのでしょうか?
基本的な機能は似ていますが、一番大きな違いはデータベースですね。日本国内のサービスが保有しているデータベースは日本国内の番号のみに対応していることが多いですが、Whoscallは海外の膨大なデータベースを保有しています
確かに、最近は海外から日本人をターゲットにした詐欺グループが摘発されているニュースをよく見かけます…!
そうなんです。日本の詐欺電話は2年前に比べて、海外からかかってきている割合が2倍になっているんですよ
2倍…! 詐欺グループもどんどんグローバル化しているんですね。そう考えると、日本のデータベースだけでブロックするのは少し頼りないように思えますね。
特に新型コロナウイルスの発症を機に、人々の混乱や恐怖心につけこんだ詐欺電話が爆発的に増加しているんですが、そのほとんどはアフリカや東ヨーロッパからの着信です。Whoscallはもともと海外を中心に展開していたサービスで、中国やフィリピン、タイ、ブラジルなど全8ヶ国のユーザーから報告された番号情報も保有しているので、さまざまな国からの迷惑電話を識別して対策することができます。

またこうした詐欺はその傾向にさまざまな特徴があります。私たちは長年かけて集めた詐欺や迷惑電話の特徴をAIに学習させ、ユーザーに対して警告を出すことで、詐欺行為を未然に防いでいます。
驚いたのですが、Whoscallをダウンロードすると、過去の着信履歴にも、Whoscallで識別された発信者情報が出るようになっているんですよね。「迷惑電話だと思って出なかったけど、実は重要な連絡だった」というような状況もたまにあるので、これはかなり有り難いです…!

これまでは台湾や海外を中心に展開していたWhoscallですが、最近は日本での展開も力を入れているんですよね?
はい。私たちは2017年に日本版のアプリをリリースして、この2年間で日本のデータベースを充実させながらユーザーへの調査を行ってきました。日本の詐欺の動向などを含めても、Whoscallが手助けできることは多いのではと思っています。

Whoscall誕生のきっかけと、台湾を代表するIT企業になるまで

全世界の詐欺と戦うWhoscallですが、そもそもなぜこうしたサービスを立ち上げようと思ったのですか? 創業のきっかけを教えてください。
私が大学院を卒業した2008~2009年頃、ちょうど世界金融危機の影響で、そうした混乱を利用した詐欺事件が社会問題になっていました。深刻な就職氷河期でもあったので、それなら自分たちで社会問題を解決できる会社を創業しようと考えて、卒業直後に当時の二人の後輩を誘って現在のgogolook社を立ち上げました。
2012年の創業から、今や、全世界8000万ダウンロード。台湾国内では二人に一人がダウンロードしていると聞きました。サービスが急成長するきっかけはあったのですか?
ターニングポイントは二度あって、まず最初のきっかけは、元Google CEOのエリック・シュミット氏が台湾でスピーチを行ったときに、Whoscallを称賛してくれたことですね。世界全7ヶ国でGoogle社の年間ベストアプリを獲得して、国内でも100万ユーザーを超えました。

さらに創業から2年後、韓国の大手企業であるNAVERから出資を受けたこともサービスの成長に繋がりました。もともと知り合いだった台湾のLINEのCEOに、NAVERの経営陣たちとの情報交換の場をセッティングしてもらったのですが、話をしたあとすぐに「投資したい」という申し出が先方からあったんです。
グローバルで評価されたこともきっかけとなって、台湾国内での注目も高まったんですね。台湾の現在の大統領にあたる蔡英文総統が、gogolook社を訪問するビデオもメディアで拝見しました。

世界で最もブロックしない日本人? 国民性の違いに苦戦したニーズの発掘

お話を聞いていると順風満帆!といった感じなのですが、逆にサービスを展開される中で特に苦労したことはありましたか?
ユーザーのニーズを掴むことですね。現在は全世界で8000万ダウンロードされ、1000万のアクティブユーザーを抱えていますが、国や地域によって電話をするときの文化や習慣が違うので、詐欺の手法も、ユーザーが求める機能も違うんですよ

例えば、ブラジルのユーザーから一番求められるのは「特定の着信をブロック」すること。銀行や通信会社からの請求の催促でかかってくる電話をブロックしたいユーザーのために、ブラジル版ではブロックの条件を細かく設定できるようになっていたりします。
請求の催促電話をブロック!? その発想、確かにあまりなかったです(笑)。
ですよね。逆に日本はブラジルのユーザーとは真逆で、全世界の中で「最もブロック率が低い」ユーザーです。たとえ迷惑電話でも切らないことも多いんですよ。
そうなんですか!(笑) でもなんだか分かる気がする…。相手からどう思われるか気にしてブロックできないことも多いです。ほかに日本のユーザーのために工夫されたポイントはあるのでしょうか?
例えば、日本のユーザーは電車やバスに乗っているときにかかってきた電話に出ないので、どうすればもっと便利に使えるか? といった点は模索しました。日本の電話の使い方は他の国と違うので、ユーザーインタビューにもかなり時間をかけましたね。

詐欺電話を防止するアプリなので、詐欺グループと常に戦っています。彼らの手法もどんどん高度なものになってきているので、もっと技術をアップデートして、新しい詐欺の手法に対応していく必要があります。今は電話での詐欺が多いですが、最近はSMS(ショートメッセージ)を使ったものにシフトしているので、そうした変化にも技術で対応していかなければいけないんです。
SMSの詐欺を防止することは、電話番号の識別よりも難しいのでしょうか?
そうですね。例えば、日本だと宅配業者からの不在のお知らせがSMSで送られて、そのリンクを押すと個人情報が流出してしまうというフィッシングなども発生しています。そうしたSMSをブロックするには、AIでそのメッセージの文面が有害かどうかを識別しなければいけないので、高い技術レベルが必要です。

SMSをブロックできる機能を今年中にリリースする予定で、現在エリアにあわせて微調整しているところです。

「テクノロジーを使って、嘘のない世界をつくる」、Whoscallが目指すこと

今後は日本市場も力を入れていくということですが、日本拠点の立ち上げなどの予定はあるのでしょうか?
現在はコロナの影響で日本へ行けないのですが、日本への渡航ができるようになれば、ぜひ最初のオフィスは福岡に構えたいと考えています。福岡はスタートアップ支援に力を入れていますし、詐欺の撲滅には行政のバックアップが必須なので、政府の協力も得ながらWhoscallを拡げていくことができるのではと考えています。
全世界の詐欺と戦うWhoscallが、日本での詐欺も撲滅してくれることを切に願います…! 最後に、Whoscallのビジョンについて教えていただけますか?
Whoscallを一緒に立ち上げた3人の創業者の考えは同じで「テクノロジーを使って、嘘の情報のない世界をつくる」ということです。今までの活動はすべてこのビジョンの中で行ってきたことです。電話番号の識別からスタートした会社ですが、次はSMS、さらに今後はSNSの詐欺や迷惑行為にも対応していきたいと考えています。

ハードルは高いですが、自分たちならやれると思っています。残念ながら、人が存在する限り詐欺はなくなりません。なので、どんどん高度化する詐欺の手法にも、その流れにあわせて技術を発展させることで、一生かけて解決していきたいというのが僕らのビジョンです
日本の居酒屋に「一生懸命」という文字がよくありますよね、僕たちの会社にも、まさにその文字を掲げたいような気持ちですよ(笑)。
「一生懸命」の看板、福岡オフィスができた時にはぜひプレゼントさせてください(笑)。 貴重なお話を聞かせていただき、有難うございました。

編集後記

最近は台湾のIT大臣が日本でも報道されていたり、コロナウイルスに対する施策が称賛されたりと、日本でも台湾のIT業界での動きが注目されているように感じます。そんな中で、台湾で急成長しているWhoscallの代表に直接お話を伺えたのはとても貴重な機会でした。

現在台湾では、ハッシュタグ #TaiwanCanHelp として、さまざまな台湾企業や政府が世界に貢献できることを考え、コロナ救済のアクションとして活動していることをご存知でしょうか? そうしたムーブメントの中で、Whoscallもコロナ禍で多発しているSMSや電話での詐欺について日本向けにホワイトペーパーを公開するなどの取り組みを行っています。

【ホワイトペーパー】台湾発の着信番号識別アプリ Whoscall が暴く “コロナ詐欺”の実態https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000058563.html

Whoscallのアプリは、iOS版Android版にて、それぞれ無料ダウンロードが可能です。無料会員は「迷惑電話ブロック」と「電話番号検索」の機能が利用でき、有料会員は「番号の識別サービス」を広告表示なしで利用できます。

興味のある方はぜひ一度アプリを使ってみてくださいね。Whoscallが、日本だけではなく世界中の人々を詐欺から守ってくれることをこれからも期待しています。 最後まで読んでいただき、有難うございました!

関連リンク

Whoscall日本公式サイト https://whoscall.com/ja
iOS版ダウンロード https://apple.co/3fJyF0e
Android版ダウンロード https://play.google.com/store/apps/details?id=gogolook.callgogolook2&hl=ja
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この記事を書いた人
田中 伶 アステリア株式会社 コミュニケーション本部・メディアプランナー。 教育系のスタートアップでPRや法人向けの新規事業立ち上げを経験。話題のビジネス書や経営学書を初心者向けにやさしく紹介するオンラインサロンを約5年運営するなど、難しいことをやわらかく、平たく解説するのが得意。台湾情報ウェブメディア編集長も務める。