2017年5月15日

教育現場での著作権利用はどこまで許される?許諾が不要になる、改正著作権法を解説【後編】

著作権法が改正されたのをご存知でしょうか。この改正により、授業で著作権の切れていない小説や絵画、音楽を電子送信等で利用する際の許諾手続きが不要になるようです!実際の現場はどう変わっているのか、お話を聞いてきました。


著作権法が改正され、授業で著作権の切れていない小説や絵画、音楽を電子送信等で利用する際の許諾手続きが不要になるようです。実際の現場はどう変わるのでしょうか?
特許商標や著作権に詳しい、JAZY国際特許事務所の弁理士、永沼よう子さんにお聞きしました。


許諾が不要になる?改正著作権法を解説【前編】はこちら!
▶︎https://www.infoteria.com/jp/inlive/education/588/

著作権の管理団体での新たな動きとは?

―前編では学校現場のお話をお伺いしました。
後編では、著作権者側の話についてお伺いしたいと思うのですが、法改正後、著作権者のお金の入り方などは変わってくるんでしょうか?


変わってくると思います。
補償金を一律に徴収し分配するという言う方式になれば、本来自分の作品が全く使われなかった人にも補償金が分配される可能性が出てきますし、個人契約で多額の著作権料徴収できていたという方も、一律の保証金ということになれば、金額が下がってしまうという恐れもありますね。


―失礼な話かもしれないんですが、著作権を管理する団体って、正直JASRAC以外あんまり聞いたことがないような……。音楽以外ではどんな団体が管理しているんですか?


いい質問ですね(笑)。実は、絵画などでは、JASRACほど強大な著作権集中管理団体というものは存在しません。JASRACができたのも音楽の著作権の問題が取りざたされて、「どこかに集中管理させよう」ということで1939年に誕生しました。

ただ、数十年たってからようやく、世の楽曲の90%以上がジャスラックの管理下に収まり、軌道に乗ってきたんですが、かなり時間がかかりました。今日現在、音楽については他にも管理団体が存在しますが、JASRACの市場シェアは未だ圧倒的であると言えます。

今、音楽以外のジャンルでも、JASRACのような集中管理組織を作ろう、という動きはでてきていますね。

デジタルへの著作権、海外も「様子見」段階

―著作権に関する海外の動きは、日本よりも進んでいるのでしょうか? 


そうですね。すでにAIがつくった著作物についても著作権を認めるといった動きがヨーロッパで起こっています。日本ではまだ法整備されていないですが、検討を急ぐ必要がある課題でしょうね。


―それは気になりますね…!海外では、インターネット上の著作物に対する補償金制度を設けている国もあるようですね。うまくいっているのでしょうか。


うーん、どうでしょうか。まだ様子見だと思いますよ。日本も、今回の制度を取り入れて、数年でうまくいくと思えないですね。JASRACも普及するまでには10年近く時間がかかりましたから。

―10年……!!今回も制度の定着には時間がかかりそうですね。


そうですね。著作権者か学校現場か、どちらかはわかりませんが、おそらく何らかの反発は起こるんだと思います。例えば、教育現場から「ネットも無償で使わせてください」という要望が出るかもしれないし、著作権者からは、個別契約でもっと高額な料金を取れているという人からは、「なぜ安い金額で使わせなきゃいけないのか?」という意見が出るということも考えられますよね。

ふたを開けてみないとわからないところも多いのですが、ただ法律の改正には必ずそういった反対意見が伴うもの。特に著作権と言うのはほぼ全員に関わってくる権利なので一筋縄ではいかないんだと思います。

SNS上の写真、著作権は主張できる?

―素朴な疑問なんですが……。例えばSNSなど、個人がインターネット上にあげた写真やテキストを教材に利用する場合はどうでしょうか。そもそもネット上に個人があげたものに対する著作権はどうなるんでしょうか。


もちろんSNSやインターネットに個人があげた作品であっても著作権は主張できますが、考え方はほかのものと一緒で、授業の課程での複製であれば例外規定に当てはまり、使用はOKということになります。

ただ、ここでもう一つ追加しておくと、さらに例外規定というものがあって、授業の課程での複製による使用だったとしても、著作権者の利益を不当に害するような場合はNG、という規定があります。


―著作者の利益を不当に害する場合というのは、具体的にどんなケースになりますか?


分かりやすい例をあげると、算数のドリルってありますよね。授業だという理由で、先生がコピーして生徒に配っていいかというと、法律のある条文だけ見ればそれはOKなんです。

ただし、出版社は生徒にも購入して使ってもらう利益を見込んでいるはずなので、先生の行為は出版社の利益を損なっているといえます。このように、教育の場であっても、著作権者の利益を不当に損なうような場合は認められません。


―あ、前編でもお聞きした「著作者の経済的利益」ですよね!


そのとおりです!この考え方は、インターネット上にアップしているものでも同じこと。仮にネット上にアップされているテキストが有料のサービスで、本来ならば子供1人ひとりが課金しなければ得られない情報だとしたら、これを無断でコピーして授業で配布するのは著作権に抵触する可能性があります。これは、案件ごとに具体的に判断する必要があります。

宇多田ヒカルさんの「著作権放棄」、JASRACに苦言

―ところで、著作物って、著作者にとっても使ってもらった方がより多くの人に知ってもらえる、というメリットがありますよね。
著作権者の中には「もっと使ってほしいから、著作権を放棄する」といった動きはないんでしょうか?


アーティストの宇多田ヒカルさんが、JASRACが音楽教室に対しても著作権料を課すという方針を示したことに対して「著作権料なんて気にせず、楽曲を使ってほしい」とツイッターで発言したのをご存知ですか?

その後、宇多田さんに賛同するアーティストが、「私も著作権を放棄します」と次々と表明した、ということがあったんです。実は、著作権侵害と言うのは申告罪なので、著作権者が訴えなければ罪に問われません。


―知らなかった!ということは、宇多田さんの歌が著作権料を支払わずに使われていたとしても、宇多田さんさえ文句を言わなければ問題にならない…ということですか?


うーん、実は宇多田さんの主張には問題があって……。彼女は著作権をJASRACに預けてしまっている、ということなんです。著作権の管理をJASRACに任せてしまっている以上、JASRACは淡々と法律の解釈をするしかないんです。


―今後、小説や絵画など様々な著作権の管理団体ができるとなると、同じようなトラブルも増えるかもしれないですね。


そうかもしれません。この問題では、音楽教室側がJASRACへの提訴を検討していることがニュースになっていました。実は、これは法律的に非常にグレーな部分があるんです。

そんな中、もし裁判でJASRACが負けたら当然、世論のJASRACに対する批判は高まるでしょうし、もしJASRACが勝てば、「そんなところからも徴収していいんだ」という判例ができたことになります。これは、音楽に限らず、小説でも何でも、細かく著作権料を徴収しようという風潮に流れてしまうという可能性がありますね。

改めて考える、著作権は誰のための制度?

―うーん、それは利用者側にとっては、あまりありがたい話ではないような……。


そうですね。より多くの人に知ってもらう機会を失わせることには問題があるように思いますが、今の法律ではJASRACのような解釈も可能になっています。

こういう問題を考えると、本来著作権というものは何のための権利なのだろうか、という話に行き着くのかと思うんです。著作権者、著作権者の中でももっと使ってもらい認知を広げたい人、利用する人……。様々な人たちが関わる問題ですが、その中で、保護と利用のバランスというものが崩れてしまえば、著作権法の意義が失われてしまいます。


―「著作権法の意義」……ですか?


保護が過剰になってしまうと、われわれは良い作品に出会う機会が減り、文化は発展しなくなります。ただ、利用が過剰になると、本来財産を得るはずだった権利者にお金をが入らず、流通業者だけが潤うことになってしまいます。

あまり売れてないアーティストであれば、世の中に広めてもらうということの方が、財産的に価値を生むと言う考え方もできますけれども、例えば村上春樹さんの今販売されている新刊が、無料で読めるということになれば、明らかに財産を得る権利を侵害されるということになりますよね。

著作権者の保護と利用のバランスをどのようにとっていくかは、常に考えていかなければならない問題ですね。

「改正著作権法」について聞いてきた!まとめ

前編・後編と全2回にわたってご紹介してきた「改正著作権法」、いかがでしたか?
教育の現場に携わる方はもちろん、現場でのICT化をサポートする企業の方にとっても知っておきたいトピック。

自社にとって追い風となるのか?それともリスクとなるのか?しっかり見極めて、現場のニーズに合った提案をしていきたいですよね。

今後もin.LIVEでは、こうした解説記事などもご紹介していきたいと思います。
最後まで読んでいただき有難うございました!



※本記事は、著作権についてわかりやすくお伝えすることを目的としており、例外にまでは言及していない場合があります。個別具体的な案件については、専門家にご相談ください。JAZY国際特許事務所では、無料相談を承っております。
0120-064-660(平日10:00~18:00)

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この記事を書いた人
in.LIVE 編集部
in.LIVE 編集部 インフォテリア株式会社が運営するオウンドメディア「in.LIVE(インライブ)」の編集部です。”人を感じるテクノロジー”をテーマに、最新の技術の裏側を様々な切り口でご紹介します。