2020年11月18日

所有権の管理や土地登記もブロックチェーンで解決! 不動産業界×ブロックチェーンの可能性【海外事例編】

暗号資産から始まり、昨今では医療や教育など、さまざまな分野で活用が期待されるブロックチェーン。今回は「不動産」業界におけるさまざまな海外の事例をもとに、ブロックチェーン活用のポイントやトレンドなどをご紹介します。


in.LIVE 読者の皆さんこんにちは!アステリア株式会社で、ブロックチェーンエバンジェリストとして活動している奥です。以前「スマートロックや所有者管理、家賃の支払いまで!? 不動産業界×ブロックチェーンの可能性」という記事で、日本国内の事例をご紹介してきました。

スマートロックや所有者管理、家賃の支払いまで!? 不動産業界×ブロックチェーンの可能性 https://www.asteria.com/jp/inlive/social/4043/

一方、日本以上にこの分野でのテクノロジーが進んでいる海外では、さまざまなスタートアップ企業が不動産業界におけるブロックチェーン適用にチャレンジしています。本記事ではこうした海外の事例に注目しながら、ブロックチェーンの活用事例やポイント、その効果などを一般の方にも分かりやすく解説します。

奥 達男(おく・たつお)
アステリア株式会社 ブロックチェーンエバンジェリスト・コンサルタント

ブロックチェーン技術の啓蒙及び技術適用された事業モデルの創生・推進、コンサルティング、提案、POC、技術の講義、サービス構築や他社主催セミナーへの登壇などを担う。一般社団法人ブロックチェーン推進協会(BCCC)にて、トークンエコノミー部会 部会長、ブロックチェーンエバンジェリストを務める。

カオスマップでおさらい:海外の不動産×ブロックチェーン事例

海外の不動産業におけるブロックチェーンの活用ケースをカオスマップでおさらいしてみましょう。

出典:https://www.disruptordaily.com/blockchain-market-map-real-estate/

※カオスマップとは、特定の業種に絞って、サービスなどを提供する事業者をカテゴライズした図のこと。このカオスマップは不動産業にブロックチェーンを使ったビジネスを展開するスタートアップに絞っている

このカオスマップにおいて、「不動産×ブロックチェーン」の事業モデルは大きく5つのカテゴリに分けられています。

TOKENIZING PROPERTIES / FRACTIONAL OWNERSHIP
(マップの赤部分)

ブロックチェーンの代表的な活用事例であるビットコインでも、2020年までのおよそ十年近くの間、所有権を問題なく管理できています。特定の管理者による中央集権的な操作や不正な操作(二重払いやコピー)ができない特徴を持つブロックチェーンは「権利」を取り扱うことが得意とも言えます。

「権利」を扱うことの多い不動産業界では、不動産という実物資産をデジタルの権利としてブロックチェーン上で管理することにより、コスト削減や処理の自動化・自律化、さらに権利が小口化することにより流動性を高められるといった効果が期待できます。

このカオスマップの赤色で紹介されている事業者は、不動産資産の権利をブロックチェーン上でトークン化できる投資プラットフォームです。トークンを活用して権利の譲渡をプラットフォーム上で簡単にできるようにしたことで、不動産の流動性を高め、さらに不動産権利を簡単に小口化できるので、投資の敷居を下げることにも繋がっています。

もちろん不動産の収益配当はブロックチェーン上のプログラム(スマートコントラクト)により、自動で行われます。

DIGITIZING CONTRACTS & AGREEMENTS
(マップの青部分)

不動産取引手続きの事務処理は非常に冗長で煩雑です。こうした課題を解決するため、青カテゴリの事業者は、不動産取引の事務処理をブロックチェーンにより、自動化・短縮化(ブロックチェーン上のプログラムであるスマートコントラクトにより、取引の事務処理を実現)しています。

さらに取引の経緯を改ざんされないデータとしてブロックチェーン上に保存することにより、情報の真正性を高めています。

不動産の取引においては相手の信用度が非常に重要ですが、この仕組みでは取引相手の信頼がいらない仕組み(=トラストレスな仕組み)を実現しています。取引きする際の信頼がいらない代わりに、ブロックチェーン上のプログラムであるスマートコントラクトが仲介役(エスクロー)を担っています。

TITLE TRANSPARENCY
(マップの緑部分)

現在の不動産業界では、”情報の非対称性” が課題となっています。つまり、消費者と不動産事業者との間、不動産事業者の間でも、不動産に関する情報量に差があるということです。こうしたことが原因となって、不動産価値の査定に差が生じることもあります。消費者は不動産事業者に比べて圧倒的に情報量が少ないため、価値の査定がしにくい状況なのです。

そうした課題を解決しているのが、マップの緑部分となる事業者たち。不動産の所有履歴やメンテナンス履歴をブロックチェーンに記録し、誰でもその記録を見えるようにして、不動産価値の透明化をしています。不動産を買う、または借りる人のトレーサビリティデータもブロックチェーンに記録され、これまでの賃貸履歴やトラブル履歴を透明化し、保険料金の査定などに役立てようとしています。

TRANSACTION SECURITY & FRAUD PREVENTION
(マップのオレンジ部分)

不動産の取引は、多額な費用がかかるため、詐欺やデフォルト(債務不履行)のリスクがあり、そのリスクを取り除くための検証に時間もかかります。こういったリスクの抑制や、取引における煩雑な手間を軽減するためにブロックチェーンが利用されています。

カオスマップのオレンジ部分の事業者は、取引相手の身元に関する情報や、取引にかかる費用を十分に持っているかなどの情報をブロックチェーンで管理します。また、取引に関連するドキュメントの管理、取引のおける仲介役(エスクロー)、取引処理の自動化にもブロックチェーンを利用し、詐欺やデフォルトの抑制、取引処理の短縮化や取引リスク軽減を狙います。

DECENTRALIZED P2P RENTAL & INVESTMENT
(マップの紫部分)

ブロックチェーンという仕組みは、UberやAirbnbのようなプラットフォームにおいて、仲介役がいないプラットフォームの実現を可能にすると期待されています。

不動産分野においても、賃貸市場における部屋を借りたい人、貸したい人をつなぐプラットフォームや新しい物件へのクラウドファンディングへブロックチェーンの利用が考えられています。 紫カテゴリの事業者は、プラットフォームにおける仲介役をブロックチェーンが担い、取引における手間や人的リソース、取引における手数料の抑制を実現する仕組みを構築しています。

ブロックチェーンの活用が進む、世界の不動産業界

ご紹介してきたように、海外ではさまざまな不動産分野でのブロックチェーン活用が進んでいますが、その中でも特に進んでいる2つの事例をご紹介します。

◆ 土地登記の仕組みにブロックチェーン活用

ジョージア(旧グルジア)では、私有地の登記率が25%と低く、費用も高く、手続きが煩雑でした。そこで、土地登記の仕組みにブロックチェーンを導入し、土地登記システムを刷新。手続き時間の簡素化、費用大幅削減にも成功し、登記率も大幅に増えたという事例があります。

同様の事例が、スウェーデン、米国、英国、スイス、ウクライナ、ドバイなど、多くの国で実証実験が進められています。日本でも、不動産ブロックチェーンの特許を持つ日本企業、ツバイスペース社が土地登記システムにブロックチェーンの活用を進めています。

不動産のブロックチェーン登記(権利記録)、日本国内でも大手司法書士法人が運用開始
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000049.000029068.html

◆ 不動産所有権のトークン化

下記の図はFIBREE財団(FIBREE:Foundation for International Blockchain and Real Estate Expertise)による、ブロックチェーンを使った不動産ソリューションの種類分けしたレポートです。調査対象ソリューションの半分は、資産に基づくセキュリティトークンの発行、不動産投資、いわゆるSTOです。

Fibree-Industry-Report-Digital.pdf より抜粋

セキュリティトークンとは、有価証券のデジタル権利です。これは主にブロックチェーンから発行された有価証券を指しています。「STO(SecurityTokenOffering)」とは、前述のセキュリティトークンを発行し、それを買ってもらうことでお金を集める資金調達の一種です。

不動産という裏付けをもった有価証券(セキュリティトークン)をブロックチェーン上で発行し、集めたお金で不動産を開発・運用し、最終的には利益を配当として、セキュリティトークンの持ち主に自動的に配布する仕組みをブロックチェーンで構築します。

過去の記事でも紹介していますので、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

話題の「STO」とは?フィンテックに詳しい落合孝文弁護士が徹底解説。改正金融商品取引法の施行により仮想通貨が「金融商品」に? https://www.asteria.com/jp/inlive/finance/4015/

STOについては、日本でも数多く実証実験の事例があります。

◆LIFULL、不動産セキュリティトークン発行スキームの実証実験を実施
https://lifull.com/news/17110/

◆LayerXが三井物産、SMBC日興証券、三井住友信託銀行と合同で新会社を設立。ブロックチェーン技術を活用した次世代アセットマネジメント事業で協業
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000036528.html

◆野村ホールディングス合弁会社のBOOSTRYがデジタル証券プラットフォームである「ibet」を公開
https://ibet.jp/

ブロックチェーンが変える「不動産」の未来 まとめ

以上、いかがでしたか?
今回ご紹介した活用方法以外にも、不動産売買プラットフォームにブロックチェーンが活用されている事例もあり、不動産分野とブロックチェーンは非常に相性が良いことが分かります。

個人的な見解ですが、日本の不動産分野におけるブロックチェーン活用で一番進む分野は最後に紹介していた「STO」の分野と想定されます。来年には大企業におけるブロックチェーン適用プラットフォームがローンチするニュースもありました。また、他業種でもブロックチェーンの活用は進められており、普通に暮らしていれば気がつかないさまざまななところでブロックチェーンが使われています。

今後も、様々な業種・業態におけるブロックチェーン事例をご紹介していきます。どうぞお楽しみに!最後まで読んでいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人
奥 達男
奥 達男 アステリア株式会社 ブロックチェーンエバンジェリスト、コンサルタント。ブロックチェーン技術の啓蒙及び技術適用された事業モデルの創生・推進、コンサルティング、提案、POC、技術の講義、サービス構築や他社主催セミナーへの登壇などを担う。一般社団法人ブロックチェーン推進協会(BCCC)にて、トークンエコノミー部会 部会長、ブロックチェーンエバンジェリストを務める。