2021年8月3日

世界のテレワークを変える! 空間の概念を取り入れたバーチャルオフィス「oVice」が生む、離れていてもそこにいる安心感

コミュニケーション不足を解消できる新感覚のバーチャル空間「oVice(オヴィス)」。オフィスやイベントスペースとして導入する会社が1000社を超え、今や物理的なオフィスに代わるバーチャルオフィスとして注目されています。サービスの開発から急成長までの裏側について、oViceの創業者であり、CEOのジョン・セーヒョンさんに伺いました。

oviceインタビュー

新型コロナウィルスの影響でテレワークが推奨されて1年以上。会社でのコミュニケーションはどのように変化しましたか? SlackやZOOMが導入されたことでテレワークに順応できた一方で、オフィス内で偶発的に起きていた雑談や相談が減っていると感じる方も多いのではないでしょうか。

そんなコミュニケーション不足を解消できる新感覚のバーチャル空間「oVice(オヴィス)」が2020年8月に誕生。オフィスやイベントスペースとして導入する会社が1000社を超え、今や物理的なオフィスに代わるバーチャルオフィスとして注目されています。サービスの開発から急成長までの裏側について、oViceの創業者であり、CEOのジョン・セーヒョンさんに伺いました。

oVice株式会社 創業者 CEO ジョン・セーヒョン氏

1991年韓国生まれ。高校時代にオーストラリアに留学。韓国に帰国後、貿易仲介事業を起こす。東日本大震災をきっかけに日本の大学に進学し、IT企業のインターンを経て、大学在学中に大阪で起業し、越境関連IT事業を行う。複数のベンチャーキャピタルから資金調達を行い、2017年に、東証一部上場企業に会社を売却。2019年からはAI・ブロックチェーン・RPAなど、先端のIT技術のコンサルティングを行い、2020年において新たな技術を創造するためのNIMARU TECHNOLOGY(現oVice)を設立。コロナによってアフリカで足止めされたことをきっかけにoViceの開発を始める。

テレワークでも ”そこにいる安心感” を生み出したい

まずはじめに「oVice」はどんなサービスでしょうか?
ウェブ上で自分のアバターを自由に動かし、相手のアバターに近づけることで簡単に話しかけられる新感覚のバーチャル空間です。自分のアバターに近いアバターの声は大きく、遠いアバターの声は小さく聞こえ、現実の空間で話しているような感覚を味わうことができます。遠くから聞こえてきた会話に簡単に参加でき、偶発的なコミュニケーションが可能で、新たなアイデアを生み出しやすい環境を整えています。

雑談している風景

今年の4月からアステリアでもoViceを使っていますが、現実空間をオンラインで再現されているその完成度がすごいですよね。そもそもoViceが誕生したきっかけは何だったのでしょうか?
2020年の2月、新型コロナウイルスの影響でチュニジア出張中に突然ロックダウンに巻き込まれ、しばらくリモートワークを余儀なくされました。他の多くの企業と同じように、仲間とコミュニケーションを取るために、さまざまなコミュニケーションツールを使っていましたが、どうしても「みんなと一緒にいる」という感じがしなかったんです。

リアルなオフィスにいれば、座っていたら周りの声が聞こえてきたり、その人が何か仕事でおもしろいことをしていたら声をかけたりしますよね。そういった何気ないやり取りができる空間がが一切なくなったことで、メンバーとのコミュニケーションがうまくいかなくなっていると感じました。

ZOOMやSlackなどの既存のオンラインサービスには ”空間”がないことに気づき、コミュニケーションツールに空間の概念を取り入れようと思って開発したのがこの「oVice」です。
まさに、実際にoVice上にチームのメンバーがいると、いつでも話しかけられる安心感がありますね。ウェブサイト上で現実空間と似たようにすることは技術的に難しい部分はありましたか?
沢山ありましたね。正直、ただ単純に音声と映像を配信するビデオカンファレンスツールであれば簡単なんですが、私たちがやっていることは、リアルで当たり前に起きることをオンラインで再現すること。

例えば、oVice上で人に近づいたときに接続が繋がったり、離れたら切断されたり… あとはこの人たちが喋っているというのがわかるようにアニメーションを出したりするんですが、これを全スペースで表示させると非常に重くなるので、見えている部分だけを処理するとか。

oviceの風景

開発を進めていくうちに、改めて人間の脳はすごいなと思いましたね(笑)。人間の脳は自分が見える範囲しか処理していなくて、何か気配を感じたらそこの処理を始めるようにできているからです。

oViceは既存のビデオカンファレンスツールとは全く違う、新しく、技術も独自のものを組み込んでいるので、特許も申請しているところなんです。
なるほど。人間の脳で自然に処理していることをoViceはテクノロジーで表現しているからこそ、リアルな体験ができているんですね。
そうですね、基本的に私のポリシーは、現実世界で自然に起きていることをoVice上で再現するということです。一般的なビデオカンファレンスツールは、1対多が目的なので、発言しない人をミュートにしたり、一人が話し出すと自動的にノイズキャンセリングされたり、映像に見えなくてもスタンプを送れるようになっていますが、現実世界ではそんなことできないですよね。そうした機能のおかげで便利には使えると思いますが、我々はなるべく実世界に近づけるために、人の声や気配をあえて取り入れようとしています。

会議体としては効率が悪いかもしれないですが、私たちがoViceで実現したい世界というのはこういうものです。なので、機能やサービス開発において何か悩んだら「現実世界ではどうなんだろう?」と考えるようにしています。
とても明確なポリシーがあるのですね。逆に、現実世界とは違うけれど操作性を考えて反映した機能はあるんでしょうか?
ユーザーから「oVice上の会議室の中に入っているときも会議室外の様子が見たい」という要望は多くありました。もともと私の方針では、会議室外の様子は見えなくていいと判断していたのですが、よくよく考えてみるとガラス張りの会議室もあるし… ということで最近導入したんです。
確かにその機能は便利です(笑)。だけど、そうやって一つ一つこだわって設計されているからこそ、ここまで本当のオフィスのようになっているんですね。実際、oVIceができたことによってお客さまからはどういう声をいただいてますか?
たくさんの嬉しい反響をいただいていますが、一つに集約されます。それはテレワークやリモートでの活動におけるコミュニケーション問題が解消されたというものです。これはオフィスに限らず、大学などの教育機関や、エンタメなどを含むイベントもそうです。

テキストツールや動画を繋げておくだけではコミュニケーションの問題は解消されません。現実世界に似たoViceだからこそ起きるコミュニケーションがあるのです。
サービスは日本だけではなくて、海外でも使われていますか? 海外のユーザーの反応はどうでしょうか。
はい。今は、韓国とアメリカ、インドネシア、東南アジア、カンボジアが増えてます。ユーザーの反応は、日本と同じですね。コミュニケーションに課題を感じているのは世界共通でした。

あともう一つ面白いのは、私たちが現実世界のようなバーチャル空間を作り出したことによって、”一緒にいる” という今までなかったオンライン体験ができるんですよね。
”一緒にいる” というオンライン体験?

ジョンさん:そうです。例えば、今皆さんが使っているスペースの中でも、なにも喋らない人たちって一定数いると思います。そういう人たちは使う意味がないということはなく、「ただこの場にいる」「一緒にいる」ことによって心理的な安全性が得られる。バーチャル空間では、他人と喋ることだけが価値ではないということを、ユーザーさんの反響から感じています。

喋らなくても、ただ隣りにいて、いつでも声をかけられる、繋がっているという感覚が、oViceのもう一つの価値だと思っています。

オフラインでは実現できないことができる、バーチャル空間の醍醐味

オフィス用途が多いと思いますが、それ以外の使われ方もあるのでしょうか?
我々は「空間」を作っているので、もちろんオフィス以外でも大学などの教育機関や、イベントなど、空間が使われているところでは、あらゆる形でoViceが活躍します。例えば大学では、授業やグループワークで使ったり、授業後に喋ったり宿題に取り組んだりするラウンジとして提供されています。
確かに、これまで授業以外の場でのやり取りって、なかなかオンラインでは持てなかったですよね。他に、ジョンさんが驚いたoViceの使われ方はありますか?
oViceを使った「参加型の演劇」ですね。
今や演劇もオンライン配信する時代ですが、配信だけではやはり物足りなさも感じます。そうした中で、バーチャル空間を活かすからこそできる参加型の演劇を開催してくださっていたユーザーさんがいました。
参加型の演劇…? 具体的にどんなふうに鑑賞者が参加できるのでしょう。
例えば、oVice上のデッキの中で殺人事件が起こるんです。鑑賞者たちは殺人現場に居合わせることになるので、周辺に何か証拠となるようなモノが落ちていないか探したり、その周辺に近づいたら隠されたメッセージが見れたり。さまざまな仕掛けを用意しておいて、参加者は自ら動いたりしながら犯人を推理していきます。

oViceであれば観劇している人たちとその場でグループを組んで相談することもできるので、これはさすがだなと思いましたね。通常、リアルな演劇会場では静かに観劇しないといけないし、舞台を覗けるわけでもない。まさに、オンラインだからこそできた体験だったなと思いました。

ビルに価値がつくように、oViceも価値のあるバーチャル不動産へ

oViceは利用者によって、空間の大きさも選択できますよね。ワンフロアだけではなく、6階建てのビルを設置することもできます。今はフロアを往来できますが、そのうちビルの外、別のビルにでかけたりすることもできるようになってくるのでしょうか?
そうですね。私たちはoViceを「バーチャル不動産屋」と考えています。将来的には、現実世界と同じような街を作るイメージもあります。

現実世界でも、シリコンバレーのように、世界中のスタートアップが集まる街がありますよね。そういったことがバーチャル空間で再現できれば、その周辺のビルに入居することでフロアごとに多種多様なスタートアップ企業が集まったり、ロビーでは各国の経営者とお喋りできるかもしれない。さらにビルから出ると公園があって、そこではまた時差も場所も越えていつでも入居者たちと雑談ができたり。

オンライン上で世界とつながれば、国の国境をなくすこともできますし、業界の壁をなくすこともできます。いろんな街の作り方があると思います。例えば、不動産さんが自社の提供しているオフィスをoVice上に移して、XX不動産館を作る。このビルに入居すれば良い出会いがあるかもと思うわけです。そうしてだんだんビルの価値が高まり、ビルの売買を申し出る人が出てくるかもしれない。私たちは「oVice」という「場」を提供していますが、その中に入る家具やインテリアはさまざまな会社が作るようになってもいい。
興味深い構想ですね! oViceの今の勢いなら、あっという間に実現してしまいそうです。直近での目標はありますか?
まずは国内でoViceの認知度を上げ、今年中に日本の導入社数1万社を目指したいです。またより多くの海外企業に利用してもらうためにも、世界展開を強化してサービスとして世界一になりたいです。テレワークでも、そうでない環境でも、oViceを使って仕事したりイベントをしたりする文化をスタンダードとして作っていきたいですね。

編集後記

※本取材は oVice 上で行われました

「この件で相談があるんだけど」「ちょっと聞いてよ…」
本記事を執筆した筆者自身、雑談をしながら仕事をしたいタイプで、新型コロナウイルスの蔓延以降は、働くことにも少し寂しさを感じていました。しかしoViceの登場によって「一緒にいることの安心感」をバーチャル空間でも得られ、確認したいことはすぐにoVice上で気軽に口頭で伝えることができる。働いている場所はそれぞれ違えど、かつての働き方と同じようにコミュニケーションが取れるようになったことは嬉しい変化です。

取材を通して、まだまだoViceが目指す世界は大きく、働き方の変革だけではないビジョンを見据えていることを強く感じました。業界や国境を超え、新しい出会いが生まれるバーチャル空間になる姿を想像すると今から楽しみでなりません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

関連リンク

oVice 日本公式サイト
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この記事を書いた人
成瀬夏実 フリーランスのWEBライター。2014年に独立し、観光・店舗記事のほか、人物インタビュー、企業の採用サイトの社員インタビューも執筆。個人の活動では、縁側だけに特化したWEBメディア「縁側なび」を運営。