2020年12月14日

【2020年版】『マンガでわかるブロックチェーンのトリセツ』著者が選ぶ、ブロックチェーン業界ニュース5選

『マンガでわかるブロックチェーンのトリセツ』(小学館)著者の森一弥が、今年一年、ブロックチェーン界隈を賑わせたニュースを抜粋。それぞれの出来事を簡単に振り返り、in.LIVE 読者の皆さんへご紹介します。

ブロックチェーン業界ニュース_2020

こんにちは、アステリア株式会社の森です。2020年は新型コロナウイルスの影響で世界中が大混乱に陥り、あっという間に過ぎ去った印象があります。新しい働き方やニューノーマルな生活スタイルも定着しつつあり、歴史的に見ても大きな変化があった年として今後語られることは間違いないでしょう。

そうした世界の変化の中で、ブロックチェーン界隈でもいくつか大きな変化がありました。というわけで、昨年に続いて、2020年もブロックチェーンに関わる業界を賑わせたニュースや出来事を振り返り、in.LIVE 読者の皆さんへご紹介したいきたいと思います。

▽ 2019年版はこちら
https://www.asteria.com/jp/inlive/social/3526/

著者プロフィール

森 一弥(もり・かずや)

アステリア株式会社 Blockchain Solution R&Dグループ ディレクター。2012年よりアステリア勤務。2017年3月までは主力製品「ASTERIA WARP」のシニアプロダクトマネージャーとしてデータ連携製品の普及に務め、特に新技術との連携に力を入れる。 2017年4月より新設されたブロックチェーン事業推進室にて実証実験やコンサルティングなどを実施。またブロックチェーン推進協会(BCCC)では技術応用部会を立ち上げ、技術者へブロックチェーンアプリケーションの作り方を啓発している。

1.「暗号資産」「STO」資金決済法の改正(2020年5月)

2020年5月1日より改正資金決済法および改正金融商品取引法が施行されました。 この法改正の中で重要なトピックとしては「仮想通貨」から「暗号資産」に名称が変更された点と、セキュリティトークン発行による資金調達(STO)が「有価証券」の扱いになった点です。

「暗号資産」への名称変更は賛否両論あるようで、かつての「仮想通貨」の方が一般的には浸透しているように感じますが、メディアなどではこの2つの名称が併記されていることも多くなってきました。徐々に置き換わっていくのかも知れませんね。

また「STO」の方は、現時点では資金調達方法のひとつという位置づけですが、これまで曖昧だったことがルールのもとに運用されることとなるので、詐欺など悪質なものは大幅に減ることになると期待されています。

in.LIVEでも、詳しく解説しています。興味のある方はぜひチェックしてみてください。

話題の「STO」とは?フィンテックに詳しい落合孝文弁護士が徹底解説。改正金融商品取引法の施行により仮想通貨が「金融商品」に?

https://www.asteria.com/jp/inlive/finance/4015/

2.「Libra」出直し、「Diem」に改名 

昨年のトピックスでもご紹介した、Facebookを中心とした世界有数の企業が発表した仮想通貨「Libra(リブラ)」。 発表時はアメリカを中心に世界各国から(主に批判的な)コメントが発表されていたのを覚えている方も多いでしょう。

当初協会のメンバーとして名前の挙がっていたVISAやMaster Cardなども協会から脱退を発表し、その後、あまり表舞台では情報が出ていませんでした。しかし、2020年12月、名前を「Diem」と変更することを発表。これまでは「Libra」という独立したオリジナルの世界共通コインのプロジェクトでしたが、さらにこれにプラスして世界各国の法定通貨と同価値のステーブルコインを発行するということを発表しました。

詳細な仕組みはともかく、大手企業の協会からの離脱と各国政府からのネガティブな見解から、ややトーンダウンしている印象を受けます。今後の巻き返しがあるのかどうか… 個人的にも注目しています。

参考:
https://www.diem.com/
https://jp.cointelegraph.com/news/libra-rebrands-to-diem-hoping-to-shake-off-associations

3.Ethereum 2.0に向けて第一歩を踏み出す

誰もが使えるブロックチェーンとして、ビットコインに次いで有名な「Ethereum(イーサリアム)」も2020年に大きな変革の一歩を踏み出しています。

これまではブロックチェーンというと運用される際に発生する電気代が非常に高いイメージがあったのですが、この電気代の要因は、ブロックチェーンが運用されているサーバーで行われる「コンセンサスアルゴリズム」と呼ばれるチェック方法に起因するものです。しかし、このコンセンサスアルゴリズムを違う方法に変えたブロックチェーンも色々と出てきているので、ブロックチェーン全般として一概に電気代がかかるものではありません。

Ethereum は、今後、2.0と呼ばれている大きなバージョンアップを計画しています。2.0の計画では、大きな機能追加・変更が発表されており、一気に全ての変更が実施されるわけではなく、複数回にわたる機能追加・変更を経てバージョンアップが完了する予定です。その変更事項のひとつがコンセンサスアルゴリズムです。コンセンサスアルゴリズムの変更はそれ単体でも大きな変更ですので、既存の方法とハイブリッドの形式となり、徐々に新しいアルゴリズムの割合を増やしていきます。最初の変更が今年12月1日に行われました。

さらにEthereumからは、より一般的な企業や組織で使いやすい方向で考えられた概念である「Ethereum Enterprise」も提案されており、こちらを実装したいくつかの製品も出てきていますので、自社での採用を検討されている方は要チェックです!

参考:
https://ethereum.org/ja/
https://www.coindeskjapan.com/90326/

4.中央銀行デジタル通貨(CDBC)の発行

中央銀行デジタル通貨(CDBC)とは、その国の中央銀行が正規に発行したデジタル通貨です。 現時点では、日本銀行がCDBCを発行する予定はないと名言されていますが、いよいよ海外では実際に発行した国も出てきました。それが、バルト三国のひとつ、リトアニアです。

7月9日にCDBCが発行されたリトアニアでは、あくまで「記念コイン」という位置づけで普段使いするようなものではないようですが、仕組みにはブロックチェーンの「NEM(ネム)」が使われているとのこと。今後世界各国で検討が進んでいくことも現実味を帯びてきたように感じます。

参考:
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel201009e.htm/
https://coinpost.jp/?p=164687

5.ビットコイン半減期(5/12)、11〜12月で200万越え

ブロックチェーンといえばビットコインと考える方もいまだに多くいらっしゃることでしょう。今年の11月末から12月初旬にかけて、1ビットコイン=200万円以上となる高騰を見せ、ブロックチェーン業界のみならず、一般の方でも再度「ビットコイン」というキーワードを多く目にする機会があったかも知れません。経済や投資の専門家ではないので、詳しい分析はできませんが、さまざまな社会情勢の変化があった際の資産形成において、暗号資産も無視できない存在になってきたのではないでしょうか。

ビットコインの仕組みでは、約10分に一度のペースで「ブロック」が作られるのですが、同じタイミングで決まった額(2020年12月現在では6.25ビットコイン)が新規発行されています。その新規発行額はだいたい4年に一度、半額になっていて、これを「半減期」と呼んでいます。

新規発行されたビットコインは「ブロック」を作った人(マイナーと呼ばれます)のもとに入ります。設備投資してコストを支払い対価である報酬を得ていることで成り立っている仕組みですが、「半減期」が訪れて新規発行されるビットコイン額が半額になると、マイナーからしてみれば「報酬額が半減する」ということになります。この半減期のタイミングでマイニングから手を引くマイナーがいることも予想されましたが、結果としては大きなトラブルもなく終わったようです。

参考:
https://www.coindeskjapan.com/61691/

番外編:「マンガでわかるブロックチェーンのトリセツ」が小学館から発売(7/1)

マンガでわかるブロックチェーンのトリセツ

最後に、私としての一番大きなニュースが今年ありました。それが、in.LIVE にて連載していた企画『マンガでわかる!? ブロックチェーン』が小学館より書籍化されたこと(2020年7月1日発売)。マンガにも登場していた事例を手掛けた担当者の方々をゲストに招いて、出版記念のオンライントークイベント「ももりの補講」も開催しました。

現在もAmazonなどのオンライン他、全国の書店で好評販売中です。
ブロックチェーンって仕組みも用語もややこしくてサッパリわからん! とお嘆きの方にうってつけの一冊ですので、年末のお休みのお供にいかがでしょうか? ブロックチェーンを基礎から学びたい方はぜひお手にとって見てくださいね!

ブロックチェーンは弱点を克服するような技術革新も進んでいますし、実用化のニュースもだんだんと見かけるようになってきています。来年はさらに多く採用のニュースが出てくるかも知れませんね!

それでは来年も良い一年になりますように。皆さま良いお年をお迎えください!

この記事がよかったら「いいね!」
この記事を書いた人
森 一弥 アステリア株式会社 ノーコード変革推進室 エバンジェリスト。 2012年よりインフォテリア(現アステリア)勤務。2017年3月までは主力製品「ASTERIA WARP」のシニアプロダクトマネージャーとしてデータ連携製品の普及に務め、特に新技術との連携に力を入れる。 ブロックチェーン技術推進の一環として実証実験やコンサルティングなどを実施。ブロックチェーンを活用した株主投票では特許を取得。またブロックチェーン推進協会(BCCC)では技術応用部会を立ち上げ、技術者へブロックチェーンアプリケーションの作り方を啓発している。現在はAIやIoTなど先端技術の調査、普及啓発に努めている。