2017年11月6日

全国から子どもたちが殺到するプログラミングスクール「Life is Tech !」が変える、日本のIT教育の現場

現在中高生から絶大な人気を誇るプログラミングスクールがあるのをご存知でしょうか?2010年に設立されたライフイズテックのITキャンプには、ITを学ぶ子どもたちがヒーローになる仕組みが散りばめられていました。その人気の秘密や、日本のプログラミング教育における課題について創業者の水野雄介さんにお話を伺います。


こんにちは!in.LIVE編集長の田中です。
IT技術の進化とともに、教育の現場にも変革が起きています。その象徴的なできごととも言えるのが、日本の小中学校でのプログラミング教育の必修化。デジタルネイティブ世代とも言える今の子供たちがこれから社会で活躍する上で、プログラミングの知識は欠かせないものになっています。

そんな中、子どもたちの心をつかんで放さないプログラミングスクールがあるのをご存知でしょうか? それが、2010年に設立されたライフイズテック株式会社が運営する、IT・プログラミングキャンプやスクール。学校ではできないことを体験しながら最先端の技術を学ぶことができるということで、いま全国各地から、子供たちが殺到しているんです!

すでにこのノウハウを活かして、シンガポールやオーストラリアなど世界の子どもたちに向けてもプログラムを提供しているライフイズテック。今回はその人気の秘密や、彼らが解決する日本のプログラミング教育における課題について知るべく、創業者の水野雄介さんにお話を伺いました。

水野 雄介(みずの・ゆうすけ)さん
ライフイズテック株式会社 代表取締役CEO

1982年、北海道生まれ。慶應義塾大学理工学部物理情報工学科卒、同大学院修了。大学院在学中に、開成高等学校の物理非常勤講師を2年間務める。その後、株式会社ワイキューブを経て、2010年、 ライフイズテック株式会社を設立。

2014年に、同社がコンピューターサイエンスやICT教育の普及に貢献している組織に与えられる “Google RISE Awards ” に東アジアで初の授賞となるなど世界的な注目を浴びている。「日本のIT界にイチロー並みの人材を送り出す!」を目標に世界を駆け回る日々を送っている。著書に、「ヒーローのように働く7つの法則(角川書店)」。

圧倒的人気の裏にある、参加者視点で設計された学習体験

今日はどうぞ宜しくお願いします!早速ですが、リピーターが90%を超えるイベントもあるって本当にスゴいですよね…!
ありがとうございます。
僕らは今、夏休みなどの長期休暇を利用したITキャンプ、通年通学型で学べるスクール、そしてオンラインでプログラミングが学べるゲームと3つのサービスを展開しているのですが、その中でもこの3日〜5日間にわたって開催されるITキャンプは、数百人の参加者のうち、リピーターが半数を超えるイベントもあります。毎年クリスマスシーズンに行うクリスマスキャンプは、90%以上がリピーターなんです。

遠方から一人で参加する子どもたちも多いのですが、最初は不安でも、終了する頃には「楽しかった!」「また行きたい!」となって、翌年もまたエントリーしてくれるんですよ。
キャンプと聞くと確かに楽しそうですが、それでも目的はプログラミングを学ぶことなわけですよね。純粋に、なんでそんなに人気なんですか?

< ITキャンプの様子 >


僕らは創業時から「どうすればまた学びたくなるのか?」を追求し、プログラムを作ってきました。目指したのはディズニーランドに遊びに行くようなワクワク感。駅に降りた瞬間から聞こえる音楽だったり、どこを切り取っても「楽しい!」と感じる体験だったり。

その裏には様々な仕掛けや工夫があるのですが、ライフイズテックでも、IT教育に「エンターテイメント」という要素を加えて、一人ひとりの可能性を最大限に引き出すプログラムを設計しています。
IT教育にエンターテイメント!確かに、子供たちがそんな楽しそうにしている姿を見たら、自分が親でも子供を応援したくなってしまいそう…
プログラムを設計されるにあたって気をつけていることって、具体的にどんなことがあるんでしょうか?
沢山あるんですが、新しいことを学ぶシーンにおいて、《誰と・どんな空間で・誰から学ぶか?》というのは非常に重要なことなんです。子どもたちの好奇心やワクワクを刺激するために、講師の育成はもちろん、子どもたちが座る椅子の配置やTシャツの色まで、細部にとことんこだわっています。

ライフイズテックのキャンプでは、最初に好きな色のTシャツを選んでもらうのですが、そうしたこと一つでも「この場所は、自分の興味や ”好き” という感情を思いっきり開示していい場所なんだよ」ということを、プログラムの序盤から子どもたちに感じ取ってもらうためのメッセージなんです。
へええ…!確かにいつもの学校とは違う環境だからこそ出せる自分の姿ってありますよね。 カラフルなオフィスやポップな雰囲気が印象的でしたが、そんな細部まで趣向が凝らされているとは…!

<レゴブロックが積み上げられた本社一階の外観>


そうですね。こうしたことはすべて、学びの角度を上げるための工夫なんです。
例えば、こんな先輩みたいになりたいなと思うような人が講師をしていることだったり、憧れの大学という施設を最大限に活用してキャンプをしたり。ライフイズテックでの体験は、ただプログラミングのスキルを身につけるだけではなく「将来はこんな風になりたい!」というようなキャリア教育の一つにもなっています。こうした未来に向けたリアルな体験こそが、学びの基本でもあります。

会社のミッションである「中高生ひとり一人の可能性を最大限に伸ばす」という目標にむけての小さな打ち手の積み重ねが、リピート率にもつながっていますね。

学ぶ人を増やすために必要な「ヒーローができる仕組み」

ちょっとお話を伺っただけでも、ライフイズテックにしかできないノウハウが沢山散りばめられていることが分かります。
具体的に、ITキャンプやスクールに参加した子どもたちはどんな技術を身に着けているんでしょうか?
現在はiPhoneアプリやサイト、ゲームなどを制作するコースが中心ですが、最近ではIoT機器の開発をしたり、3DCG、動画、LINEスタンプの制作をするようなコースも人気です。

例えば、ライフイズテックで学んだ高校1年生の女の子がリリースした「勉強管理」のためのアプリが10万ダウンロードされたり、松戸市のPR動画を作るコンペでは、動画制作を学んでいた高校生の作品が、数あるプロの作品を抑えて優勝したりしました。

<実際に中高生が作成した勉強管理アプリ 「STUGUIN(スタグイン)」>

他にも、ここで学んだことをきっかけに起業した中学生の子がいたり…。
世界的に活躍しているケースも少なくないですよ。
プログラミング学習だけでなく、起業まで!?
子どもたちならではの視点で生まれたサービスの数々は大人が見ても本当に面白いのですが、会社として、生徒の活躍を支援する仕組みがあるんでしょうか?
そうですね。起業となれば資金的な援助もしますし、広報や他の企業との連携という上でも私たちがサポートすることはあります。

僕たちが掲げている「教育を変える」という目標を達成するためには、結局 ”ヒーローができる仕組み” が必要だと考えているんです。スポーツ業界でいう錦織圭選手や浅田真央選手がいるように、”ヒーロー”として目指す姿があるからこそ、親御さんも全力でサポートできるんですよ。

なので現在は、起業をサポートする仕組みやアントレプレナーシップ(起業家精神)を育てるプログラムもそうですが、中高生のためのスマホアプリのコンテストである「アプリ甲子園」や、企業の就職に繋がるドラフト会議も行っています。こうした活動も、ITという業界でのヒーローをつくり、その道を目指す子どもたちが沢山の人から支援される環境をつくるための取り組みのひとつですね。

「教える人をいかに増やすか?」を解決する、先手の打ち手

学習する子どもたちが増えると、その分、教える人材を増やさなければならないという課題もあると思うのですが、ライフイズテックではどうやってその点を解決されているんでしょうか?
ライフイズテックの講師は”メンター”と呼ばれていて、みんな大学生です
僕らは創業時から「Life is Tech ! Leaders」として中高生にITを教える大学生向けのプログラムを用意しています。メンターは、日本マイクロソフトやリクルート、クックパッドなどの提携企業のもとで半年間の研修を行ってもらった人の中から選出しているんです。
研修期間が半年!?
かなり厳しい基準で選ばれた講師たちなんですね。
そうですね。子どもたちが「こんな先輩みたいになりたいな」と思えるような人材をメンターとして育てるために、現在は100時間近くの研修を経て、技術力とコミュニケーション力を養ってもらっています。400名近くのエントリーがありますが、最終的にメンターとして活躍できるのは150名程度ですね。
400人から150人に…!
でも、そもそものエントリー数が多いのも驚きです。 ライフイズテックのメンターという仕事に、非常に強いメリットを感じている人が多いということなのでしょうか?
実際にメンターとして働いている大学生たちに聞いてみると、やっぱり高い基準で選ばれた仲間たちと働けることや、提携企業との繋がりが最終的な就職にも繋がっていること、半年間の研修を通じて、技術力やコミュニケーション力を含めた高いスキルが身につくことがメリットとなっているようです。

今では、ライフイズテックでもともと学んでいた子どもたちが大学生になってメンターとして帰って来てくれることもあるんですよ。
ただでさえ教える人の確保が難しいと言われている今なのに、ライフイズテックだけで講師を育てることも含めたエコシステムが出来ているんですね!創業当時からそうした課題を見据えて、打ち手を考えられていたんでしょうか?
そうですね。でも、そうした課題って、すでに他の業界で発生していたんです。
例えば、すでに小学校で必修化された英語教育の中で起きていた、教える人がいない、授業がつまらない、目的が明確ではないといった問題。そうした課題には最初から目を向け、解決のために必要な手立てを考えていました。
す、すごい…。
課題が起きる前から、必要な打ち手を用意されていたんですね。

「なぜ学ぶのか?」に正しく答える。中学校、高校に無償で教材を提供する理由

2020年にはプログラミング教育が小中学校で必修化されるということが決定していますが、これに向けては御社でも何か取組みはされているんでしょうか?
僕らは以前から「TECH for TEACHERS」といって、学校の情報科の先生向けのプログラムを開催しています。
学校の中でも最新の技術を楽しく学べるように、僕らが設計した動画教材や教科書、学習指導案、スライド資料などもパッケージにして無料で提供しているんですよ。
え!教材提供まで無料なんですか!?先生の味方すぎる…
中学校や高校での情報科の授業が充実するということが、御社にとってもメリットになるということなんでしょうか?
メリットというよりも、もともとは、通常の学校教育の中で最先端のことを学べる仕組みを作らなければ、僕らが実現したいと考えている世界を実現には間に合わない!という危機感から生まれたものなんです。

テクノロジーの進歩はやっぱりとても早いので、先生たちもなかなか自分たちでこの分野の知識をタイムリーに身につけるのって難しいんです。「どう教えたらいいのか?」というのはもちろんですが、「なんでこの学習が必要なのか?」「どういう時代がこれからきて、どんな能力が子どもたちにとって必要なのか?」という学びの最初の一歩を僕らがお手伝いすることで、学習にもより積極的になってもらおうと考えています。

結果的にすごく好評で、一年で500人以上の先生からの登録があり、現在は全国の3,000校以上の教育機関とのネットワークもできました。そうした学校での授業がきっかけで、ライフイズテックのキャンプやスクールに参加する子どもたちも増えているんですよ。
御社での取り組みが、学校の教育現場も変革させているんですね…。
プログラミング教育の本質は「論理的思考力」と捉えられがちですが、実はそれ以上に大事なのは「新しいものをつくる」というクリエイティビティを育むことだと思うんです。そうしたクリエイティビティを育むカリキュラムを日本が国を挙げて推進できるのか?というのは、教育現場での重要な課題だと考えています。

僕らの事業がITを学ぶ子どもたちのための入り口を広げ、クリエイティビティ育成の力になれれば嬉しいですね。
なるほど〜。こうした取り組みも、必修化された先の未来を予測した打ち手の一つなんですね。ただただ勉強になります…。本日は有難うございました!

ライフイズテックの舞台裏、話を聞いてみたらスゴかった!

皆さん、いかがでしたか?
今回初めてライフイズテックの水野社長にお話を伺って、その緻密に計算された教育体験はもちろん、これから起きる未来を予測した打ち手の一つ一つや社長の考えに、頷かずにはいられませんでした。

ライフイズテックが今年の冬休みに開催する予定の「クリスマスキャンプ 2017」には、すでに500人以上の子どもたちからの申し込みがあるのだとか。リピーター率90%の舞台裏、今すぐタイムマシンで中学生時代の自分に戻って、潜り込んでみたいぐらい!

日本の教育をIT業界から変えるライフイズテック。 私たち大人がイメージする「プログラミング教育」の現場は日に日に進化を遂げていて、今この瞬間も、全国各地のプログラムから、IT業界のヒーローが誕生しています。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

関連リンク

・ライフイズテック株式会社 https://lifeistech.co.jp/
・中高生のためのIT・プログラミングキャンプ https://life-is-tech.com/camp/
・ゼロからはじめる中学生・高校生のためのIT&開発スクール https://life-is-tech.com/school/

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この記事を書いた人
田中 伶 アステリア株式会社 コミュニケーション本部・メディアプランナー。 教育系のスタートアップでPRや法人向けの新規事業立ち上げを経験。話題のビジネス書や経営学書を初心者向けにやさしく紹介するオンラインサロンを約5年運営するなど、難しいことをやわらかく、平たく解説するのが得意。台湾情報ウェブメディア編集長も務める。