2019年7月17日

カラフルなブロック… だけじゃない。創造力を育む、ロボット・プログラミング学習キット『KOOV®』の奥深さに迫った

子どもたちに創造性と「やりぬく力」を。そんなコンセプトで展開されている、ロボット・プログラミング学習キット『KOOV(クーブ)』。いま、家庭のみならず教育現場でも導入が進んでいます。EdTech業界で注目を集める『KOOV』を取材しました。


2020年と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?
日本中が待ち遠しくする東京オリンピック・パラリンピック開催も控えていますが、教育界に目を向けると、大学入試制度の刷新、英語、プログラミング学習の必修化など、大きな改革が待っています。2020年を見据え、学校をはじめ塾や習い事で学びを進めているお子さんも多いのではないでしょうか。

とはいえ、英語はもとより、プログラミング教育では、実際どんなことを学ぶのでしょう? 子どもたちの反応は? 効果は? そんな疑問を解消すべく、ロボット・プログラミング学習キット『KOOV(クーブ)®』を手がける、株式会社ソニー・グローバルエデュケーションのもとを訪ねました。実は、ソニーと教育には深い関係があるのだとか。

株式会社ソニー・グローバルエデュケーション
未来教育事業部 マーケティングスペシャリスト
東郷 愛美(とうごう・まなみ)さん

慶応義塾大学卒業。ソニー株式会社に入社し、カメラ事業部にて一眼レフカメラ「アルファ」の海外マーケティング担当を行う。シンガポール・韓国でマーケティングの経験を積み、2017年よりソニー・グローバルエデュケーションにてKOOVのプロモーション活動全般に従事している。

学習指導要領に採用されている「プログラミング的思考」の生みの親はソニーだった!

今日は、KOOVをとおし、プログラミング学習の最前線の動きを伺いつつ、御社の事業、目指す先についてもひも解いていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。早速ですが、ソニーと教育は密接な関係があるそうですね。
ええ、ソニーは創業以来、教育、なかでも『科学教育』をDNAとして大切にしており、関連する財団の設立、研究会の発足、プログラムの提供など多岐にわたる活動を続けています。

2020年の教育改革に関しても「プログラミング的思考が小学校教育から必要」と文部科学省に提言したのは、当時プログラミング教育に関する有識者会議のメンバーであった当社代表の礒津政明なんです。

なんと! 日本の小学校におけるプログラミング教育とはどうあるべきか?を提案されたのは礒津社長だったんですね!文科省の有識者会議のメンバーであったことも興味深いですね。では、KOOVはどのようにして誕生したのでしょうか?
ソニー・グローバルエデュケーションでは早くから世界中の人と算数の思考力を競う「世界算数」というオンラインコンテストや、インタラクティブに楽しめる学習教材の展開など、思考力を重視したサービス展開を行ってきました。

実はパズル性やエンターテイメント性がある世界算数の問題が、プログラミング的思考と密接に関係していることに気づき開発がスタートしたという経緯があります。
KOOVは、小売店やECサイトで購入できるとのことですが、教育現場でも使われているんですよね。
一般消費者向けに発売後、学校や塾から「現場で使いたい」という要望を受け、2018年4月、教育機関向けに『KOOV® for Enterprise』をローンチしています

いわゆる“先取り教育”として塾などが取り入れるケースも増えていますし、研究校に指定されているような公教育の現場、私学からの問い合わせもあり、2020年を前に保護者をはじめ、教育業界の関心は年々高まっていると感じます。学校や習いごとでKOOVに触れたお子さんが、家でもやってみたいと市販品を購入する流れもあり、裾野は広がっている印象があります。

ロボット・プログラミング学習キット「KOOV」を体験してみた

では、さっそくKOOVを見せていただけますか。
はい。今日は、いくつか完成形もご用意しました。
ずいぶんとカラフルなブロックですね。四角いパーツがたくさん……のなかに、三角形も。半透明の見た目が涼しげですね。

そうですね。ブロックというと男の子が好んで遊ぶようなイメージが強いのですが、性別年齢問わず、たくさんのお子さんに興味を持ってもらえるようにビジュアルにもこだわっています。ブロックは、7色7種類あります。よく見ると凹凸もさまざまで、なかなか複雑な形をしているんですが、そのぶん組み合わせは無限です。

これらをうまく組み合わせながら形を作っていきます。光センサー、LED、赤外線フォトリフレクタといった電子パーツを組み合わせ、プログラミングをすることでロボットに動きを出します。
なるほど! ブロックもカラフルで半透明になっているから、組み合わせ次第でいろいろと工夫ができそうですね。
例えば青色のブロックに光を透過させるように赤いLEDライトを組み合わせると、紫にも近いような不思議な色合いを演出することができます。このように、KOOVの半透明のブロックは、より表現や発想、創作意欲の幅が広がると言えます。

組み立て図も、もはや平面じゃないんですね。
独自開発のアプリで画面に表示された3Dモデルを指でなぞれば、360度から全方位の確認ができますし、画面の拡大縮小機能もあるので正しく組み立てられているか、随時チェックできます。初めてのお子さんでも感覚をつかめばどんどん進められるように、インターフェースにはとことんこだわりました。

組み立てが終わったら、次はロボットを動かすためのプログラミングですか?
そうです。次の画面でプログラミングをしていきます。
プログラミングというと、テキストコードを英語で打ち込むイメージがありますが、KOOVはビジュアルプログラミングを採用しています。「LED――をオン」「〇びょうまつ」「もし〇なら~」「ずっと」などの指示を日本語でそのまま書くことができるので、直感的な操作のもと、プログラミングの基礎を易しく学ぶことができます。

プログラミングが完了したら、ロボットの脳みそであるKOOVコアに、書いたプログラムを転送します。 せっかくなので、一緒に動かしてみましょう!

例えばここにあるペンギンのロボットですが、どういう動きをすると思いますか?
ペンギンなので、身体を左右に揺らしながらバタバタ歩く……とか?
じゃあ、やってみましょう。
胸の位置にある赤外線センサーに指を当ててみてください。

お、足踏みしていますね。
このペンギンには、「嬉しいとき」「悲しいとき」という二つの反応を設定しています。赤外線センサーに指をかざせば、それぞれの動きがランダムで出現するようにプログラミングを組んでいるんです。

続いて、こちらのワニで試してみましょうか。

あ、ここにまた赤外線センサーがありますね。手をかざしてもいいですか?

いま、緑色に光りましたよね。これはセーフです。
え? アウトもあるんですか?
さっきのペンギン同様、ワニにもランダム関数を組んでいるんです。動作は3パターンあって、セーフ、アウト、フェイントもあります。赤が出ると完全に噛まれてしまいます。
わ、赤が出た! ジングルにも「残念~」っていう感じが出ていますね(笑)。
この作例は子どもたちの人気も高く、完成品でいつも盛り上がっているんですよ。こちらは弊社が用意しているロボットレシピでプログラムはお手本で用意している作例になります。プログラムは好きに変更できるので、例えばワニが口を開いて噛む時の角度を変えてみる、赤が出た時ブザーから出る音を変えてみるなどして気軽にプログラムをいじりながら学習することができます。

ただ、最初から全て1人でプログラミングをすることは容易ではないので、まずはロボットレシピや学習コースで基礎を学び、そのうえで自分のオリジナルのロボット制作に挑戦して頂くことをおすすめしています。
自分で組み立て、プログラミングしたロボットが動くなんて感動モノですね。誰かに見てもらいたくもなりそうですね。
そうなんです! なので、KOOVではユーザー限定のオンラインコミュニティを用意しています。自分で制作したロボットの作品を動画や写真に撮ってコミュニティにアップロードすると、例えばアップロードした作品に「いいね」をつけたり、コメントをすることもできます。自分の作品を自分だけで楽しむのではなく、誰かと共有できるところは、KOOVならでは。当社も、開発にあたりこだわった部分です。

家族のみならず、自分と同じ年代のユーザーからフィードバックをもらえることは、モチベーションにも次の成長にもつながるんでしょうね。
ちなみに、コミュニティでは誰かが作った作品を真似て製作し、そこから自分ならではの作品へと発展させていく。そういうつながりがよく見られます。

エンジニアの世界にも、自分が作ったコードをオープンソース化し、他の人の手を介すことで、より良いものをつくる流れが当たり前になりつつあります。そういう世界観を子どものころから体感できるのは非常に良いことだな、と。人の良いところを真似て、自分のものにしていくスキルの習得は、当社も意図するところなので、成果が表れていると感じています。

生徒同士が自然と教え合う環境が、授業の中で生まれる

KOOVを家庭単位で取り組むぶんには、その世界にどっぷり浸れる楽しみがありそうですが、その一方で、教育の現場となると、生徒さんはもとより教える側の先生は大変そうですよね。決まった時間のなかで進捗と成果が求められるわけですから。
そうですね。プログラミング経験のある教員の方は非常に少ないですし 、特に学校に関しては先生1人で生徒30人~40人にプログラミングの授業を実施することはとても大変なことだと思います。ですから、KOOVでは先生方のサポートには、とても力を入れています。生徒一人ひとりの学習履歴を一元管理するのはもちろんのこと、先生方からの意見をスピーディーに開発に反映させ、より良いサービスにしていく姿勢は常に大事にしています。

KOOVを使った実際の授業を見ていると、飲み込みの早い生徒が他のお友達に教えるという光景が見受けられます。クラスに数人は、プログラミングやブロックの組み立てが得意な子がいるんですよ。生徒たちが自主的に学び、先生はファシリテーションに徹するということもできるんです。
生徒同士が自然と教え合う環境が生まれるのはとても良いことですね。
こうした現場を見ていると、KOOVでプログラミングを学ぶと子どもたちそれぞれの個性が活かされ、これまでの学校生活では気づけなかった能力が顕在化し、その子の自信につながっていると思います。

KOOVでの学びは、何につながる? 誕生の背景を聞く

続いて、サービスが生まれた背景について伺いたいのですが、プログラミング学習教材を作るにあたり、“ロボット製作”という発想はもとからあったアイデアなのでしょうか?
ええ。ブロックにする、というのはコンセプト段階からありました。ここには、自分が作ったものがどう動くのかを物理的に体感することは大事、という考えがあります。 自分で組み立てたロボットが思い通りに動かない時に子どもたちはどう考え、解決していくのか?パソコンの画面上だけで動くもので考えるのは実感がともなわないし、妥協しても影響はないと考える部分が出てくるかもしれません。

ただ、これから大人になるにつれ、それが許されない世界が広がっていきます。だからこそ、いまのうちから目の前で起きる問題を解決できる能力を磨いてほしい。ただのブロックに見えますが、やはり自分の手で組み立てた“存在”としてあることは、非常に大きいと思っています。

リアルがあるというのは、確かに実感値が高いですよね。失敗も成功も感じやすい環境は、成長するうえで大切な要素なんですね。
KOOVが、もう一つ大事にしているのが「一人ひとりの個性を最大限に発揮する」ことです。決められたものを決められた手順で作っていく教材は多くありますが、KOOVはそこを飛び越え、自分で考え創造したものを自分の手を動かして作っていきます。

ただ、最初からペンギンやワニのような作品を自ら考え、作ることはできないと思います。失敗を繰り返しながら自然と試行錯誤を身につける、失敗を繰り返すことでより良いものを作ろうとする。そんな意欲と創造力を身につけて欲しい思いがあります。
KOOVを楽しんでいる子どもたちのいく先は、どうなると思いますか?
日本の人口がどんどん減るなか、国際的な競争力を上げていくには人材の質を高めていく必要があると言われていますが、KOOVで学んだ経験を将来にどう活かしてほしいとお考えなのか。御社のビジョンと照らし合わせていかがでしょうか。

「プログラミングを学ぶことが、何に役立つのか?」という質問は、保護者や教育関係の方から非常に多く寄せられますが、物事の仕組みを深く理解し、そこから新しいものを生んでいく。その基本的な考えを身につける学習だと思っています。

基本が身に付けば、応用もどんどんできるようになります。いま、KOOVに親しんでいる子どもたちには、将来は、『新しく何かを生み出す』という人間だからこその能力を開花させて欲しいと思っています。

現代の子どもたちが大人になるころには、労働の一定量をAIが担う社会になることでしょう。そうなると、人間は機械には任せられないことをしなければならなくなる、といったときに重要視されるのは創造力ではないか、と考えています

『300年先の未来をつくる』という壮大なビジョンに向かって

ここまでありがとうございました。最後に、「教育」をキーワードに事業を展開していくうえで御社が目指していることをお聞かせください。
当社は、『来たるべき社会の教育インフラを創造する』というミッションのもと、教育格差が顕在化する現代において、どこにいても誰もが勉強できる教育ツールやコンテンツを、日本のみならず世界に向けて展開していくことが一つの目標です。KOOVに関しても、すでに展開しているアメリカや中国のみならず他の国での展開を目指していきたいですね。

まさに世界のソニーですね!
当社が掲げている『300年先の未来をつくる』というビジョンは壮大なゴールではありますが、これは遠い未来のあるべき姿からバックキャストして、今やるべき教育を遂行する姿勢を示しています。今の豊かな社会が形成されているのは、遠い昔からの人類の英知の積み重ねによるものです。

人類の新たな「知」を切り開く、教育のイノベーションにこれからも挑戦していきます。

編集後記

遊びながらの学びを通して、試行錯誤をくり返し、創造的な考え方を育んでいくKOOV。
そこには、ソニー・グローバルエデュケーションの未来と世界を見据えた大きな展望がありました。

カラフルなブロックで、ユニークなロボットの製作を楽しめるKOOVは、お子さんの学習のみならず、大人のプログラミング入門にも最適です。その奥深い世界をあなたもぜひ体験してみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人
香川妙美 山口県生まれ。音楽業界での就業を経て、2005年より自動車関連企業にて広報に従事。2013年、フリーランスに転身。カフェガイドムックの企画・執筆を振り出しに、現在までライターとして活動。学習情報メディア、広告系メディア等で執筆するほか、広報・PRの知見を活かし、各種レポートやプレスリリース、報道基礎資料の作成も手掛ける。IT企業・スタートアップ企業を対象とした、広報アドバイザーとしても活動中。