2021年6月25日

さらなる生産性と精密性を追求。アシックスの製造現場で挑む、スマートファクトリー化の軌跡(前編)

アステリアが開発するエッジ型IoTを実現するミドルウェア「Gravio」を製造現場で導入している、株式会社アシックスのスポーツ工学研究所内のカスタム生産部。さまざまなアスリートのシューズを生産する現場に、Gravio事業部のメンバーが潜入! スマートファクトリー化に挑む、株式会社アシックスの皆さんにお話を伺いました。


アステリアが開発するエッジ型IoTを実現するミドルウェア「Gravio」を製造現場で導入している、株式会社アシックスのスポーツ工学研究所内のカスタム生産部。さまざまなアスリートのシューズを生産する現場に、Gravio事業部のメンバーが潜入!

スマートファクトリー化に挑む、株式会社アシックスの皆さんにお話を伺いました。

株式会社アシックス グローバルフットウェア生産統括部
(写真右)カスタム生産部長 萩原祥仁 さん
(写真左)カスタム生産部 生産第2チーム 酒井大樹 さん

聞き手:アステリア株式会社 グローバルGravio事業部 小幡

国内外のアスリートを支える、アシックススポーツ工学研究所

今日は神戸市西区にある、アシックスさんの「アシックススポーツ工学研究所」にお邪魔しています。スポーツ工学研究所の施設内にあるフットウエア生産統括部のカスタム生産部では、市販されているスポーツシューズではなく、さまざまなアスリート専用のシューズを作っていらっしゃるんですよね。ここはもともと研究所として作られた施設なのでしょうか?
1990年に拠点を構えたときはスポーツシューズの開発部隊も一緒だったのですが、今は開発部隊はポートアイランドにある本社に移っています。私たちカスタム生産部は、使う薬品の関係などもあるのでこの場に残っています。神戸は昔からゴムの町として知られていて、神戸は「履き倒れ」なんて言われるぐらい靴屋が多かったんですよ。
そんな背景があるのですね。現在は何名ぐらいのメンバーがカスタム生産部で働いているのですか?
全体で50名程度で運営しておりまして、一般的なシューズ工場と比較するとかなり小さな規模と言えますね。

さまざまなアスリートのサポート対応をする部隊と連携しながら、足の形の計測データや普段履いているシューズのフィードバックなど、あらゆる情報を吸い上げて、それを内部で検討した上でどう作るかを決定して現場でシューズを制作しています。

ヒアリングから始まって、製造、完成までって、どれくらいの期間なんでしょうか。
基本的に納品までは約1ヶ月から2ヶ月ほどかかりますね。試作したシューズを試してもらって、フィードバックをいただいてから、もう一度制作して…。当然、選手の方々の試合の日程に合わせて動くこともあります。
かなり時間をかけて制作されているんですね。量産品のシューズと比べると、制作の仕方もだいぶ違うのでしょうか?
量産品のシューズと比べると部品が1〜2つ多いこともあるのですが、シューズの仕様自体は大きくは変わりません。基本的には市販品をベースとしていることからも、材料や部品の調達がされている状態から実際のシューズの制作にかかる時間はだいたい7日ほどですね。

ただ、量産品と違って「自動化」が難しい領域ではあります。同じ部品を大量に作るというわけにはいかないので、非常に手間ひまがかかっていますね。

多品種少量生産、ということなんですね。計測データなど精密性が重要視される現場での「スマートファクトリー」化。現場の社員の皆さんの反応も気になるところです。

若いメンバーの発案をきっかけに、6つのシーンでセンサーを活用

アシックスさんには、現在6つのシーンで当社製品のGravio(グラヴィオ)を使っていただいていますが、Gravioを導入するに至った背景について教えていただけますか。
例えば、現場の機器内の「温度管理」。今までは温度計を機械の中に入れて、一日2回、10分かけて測定していました。新入社員の頃からこの作業をしていたのですが、もっと効率的に、かつタイムリーに機器内の温度管理ができないか? と考えていまして。

無線対応のIoTセンサーなら、それが実現できるのではないかと導入を提案しました。
現場のメンバーの発案がきっかけだったのですね! そうした提案から「じゃあやってみよう」と上司の皆さんもすぐに行動に移されたのでしょうか。
そうですね。現場の社員もどんどん世代交代していく中で、いかに次の世代にスピーディーに技術を引き継ぐか、そして生産現場での品質のコントロールをいかにやっていくか、というのは非常に重要なテーマだと感じていました。特に私たちは国内外のアスリートの方に直接シューズをお渡ししているので、納品してから問題が発生してしまうことがあってはなりません。いかに正確に、かつ効率的に、未然の防止をしていくか? というのは常日頃から現場でも強く意識していたことです。

テクノロジーを活用することで、経験が浅い社員でも確実に迅速な判断ができるように改善できるだろうと。酒井君や若いメンバーから今回の提案があり、まずはトライしてみようということになりました。

そこで色々とツールを調べていくうちに、アステリアのGravioを知ってくださったんですね。
はい。アステリア社と面識のあった本社メンバーから、月額500円でソフトウェアとセンサーを同時に検証できるというのを聞いて、まずは現場で本当に使えるのか試してみようということになりました。
比較的トライしやすい金額だったことが、最初の一歩につながったんですね。
そうですね。少量多種生産を行っている私たちの生産ラインにとって、スモールスタートができるというのは有り難かったです。
現場の皆さんの反応はどうだったのでしょうか?
正直なところ、センサーを見た社員たちからは「こんな小さなセンサーで大丈夫?」といった声も確かにありました。しかし、センサーのデータに応じてライトが光って可視化できたり、過去のデータがパソコンで見られたり。例えば在宅勤務をしている社員も、現場の機器の記録がクラウドでリアルタイムに確認できるようになり、ようやくみんなも「あっ、これはすごいな」と実感してきましたね。

現場主導ではじめるDXって、まさにこういうことだなと。実際に進めながらようやく分かってきたところです。
なるほど。現場で実際に「役に立つ」というのを見せていくことで、スマートファクトリー化の重要性も同時に伝えていったわけですね。
カスタム生産部での活用で、こうしたテクノロジーを色々と実験して、良い効果が得られたものは規模の大きな現場に展開するといった可能性もあると思っています。
さらなる効率化と精密性を追求する御社のスマートファクトリー化。ぜひテクノロジーの力でお役に立ちたいところです!
そう言っていただけると大変心強いです。
それでは、実際にセンサーが取り付けられた工房を見に行きましょうか!

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『さらなる生産性と精密性を追求。アシックスの製造現場で挑む、スマートファクトリー化の軌跡』 後編に続く…

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この記事を書いた人
田中 伶 アステリア株式会社 コミュニケーション本部・メディアプランナー。 教育系のスタートアップでPRや法人向けの新規事業立ち上げを経験。話題のビジネス書や経営学書を初心者向けにやさしく紹介するオンラインサロンを約5年運営するなど、難しいことをやわらかく、平たく解説するのが得意。台湾情報ウェブメディア編集長も務める。