「そこは、うちではやりません」——Dr.Sum × ASTERIA Warpのプロダクトマネージャーが語る、AI-Readyなデータを誰がどこまで整えるのか

前編では、社内データをAIにつなぐと答えが揺れる理由と、AI-Readyなデータの条件を語りました。同じ質問を3回投げて3回とも違う数字が返った検証を踏まえて、意味の定義・データのばらつき・鮮度という3つの原因を見てきました。後編では、その整備を誰がどこまで担うのかを語ります。

データマネジメント基盤「Dr.Sum」のプロダクトマネージャーである田﨑早瀬氏と、データ連携基盤「ASTERIA Warp」のプロダクトマネージャーである東海林賢史。貯める製品とつなぐ製品の担当者が、それぞれ自社の範囲について語りました。

左:東海林 右:田﨑氏写真左:アステリア株式会社 ASTERIA Warp プロダクトマネージャー 東海林 賢史
右:ウイングアーク1st株式会社 Dr.Sum プロダクトマネージャー 田﨑 早瀬氏

Dr.SumとASTERIA Warpは、それぞれ何をやらないのか

Dr.Sumは非構造化データと収集コネクターの実装はされていません。ASTERIA Warpは分析と特定業務に踏み込みません。得意領域を分け合っているからこそ、エコシステムとして組み合わせる意味があります。

機能追加の判断で、あえてやらないと決めていることはありますか。この対談でアステリアが一番聞きたかった質問です。二人とも、具体的に答えました。

田﨑氏が挙げたのは2つです。

田﨑氏 Dr.Sumは、構造化データを高速で集計するデータベースです。動画などの非構造化データを扱ってほしいという要望をいただくこともありますが、そこまで手を広げてしまうと今の強みがぼやけてしまう。だからこそ、エコシステムという形で、他社と連携して実装しています

何でも入る器にはしない、ということです。もう1つがコネクターでした。

田﨑氏 我々としても注力しているのはやはり集計や活用部分です。収集のためのコネクターとの連携開発は、引き続きASTERIA Warpとの連携を軸に考えていきたいですね

東海林も、守備範囲を保つという答えでした。

東海林 アステリア側としては、特定の業務に踏み込んだ製品開発は意図的にやらないようにしています。データ連携、システム連携は業種業態を問わず発生するニーズです。特定の業種の狭い領域に対応する開発にはあえて踏み込まず、より広いお客様に使っていただける機能や、標準化されたものを作ることを意識しています

東海林はこう補足しました。

東海林 これまで、ASTERIA Warpはデータ連携の範囲でビジネスを展開してきました。その先の、データを分析する部分や、連携先の製品が主軸としている機能までは踏み込まない。意図的にそこへは出ていかないようにしています

この点についても、「Dr.SumとASTERIA Warpは似ている」と、田﨑氏は付け加えます。

田﨑氏 そこも似ています。逆に言うと、多くのお客様が使う機能を重点的に開発しているということです。AIのテクノロジーも、お客様の運用をいかに楽にするか、長く使っていただけるかという観点で強化していると感じました

ウイングアーク1st田﨑氏 写真

前編の冒頭で、田﨑氏は「製品の特徴が非常に似ている」と話していました。貯める製品とつなぐ製品で機能としては別々ですが、それでもDr.SumとASTERIA Warpは似ていると感じる理由は、ここにありました。どちらも自社のやる範囲を決めていて、そこから外れるものには手を出さない。

ASTERIA Warpは、集計できるデータ量や処理速度、集計まわりの使い勝手ではDr.Sumに及びません。逆にDr.Sumは、整備したデータを他のデータベースへ直接書き戻すことができません。お互いに持っていないものをはっきりさせたうえで、この対談は始まっています。

全社のDWHがあれば、現場のデータも集まるのか

現場のデータは現場でしか取れません。全社のDWHに一本化する設計では現場固有のデータが取りこぼされるため、事業部門単位のデータ基盤と全社基盤を二層で持ち、その間をデータ連携基盤が渡す構成が現実解になります。

本社基盤と現場基盤の二層

本社は基幹システムのデータを全社のDWHに集めます。ただし、そこに現場のデータまでは集まりません。そこで事業部門単位でDr.Sumを導入し、貯まったデータのうち必要なものを本社と共有する。ホールディングスが全社のDWHを持ち、子会社側に複数のDr.Sumがあるという構成もあります。

東海林 Dr.Sumから全社のDWHへデータを出すという使い方もあるんですね。この2つは競合する関係なのかなと思っていたのですが、そうではないところもあると

なぜ一本化できないのか。田﨑氏の説明は、現場の心理に踏み込むものでした。

田﨑氏 本社からするとデータを集めたいのですが、現場のデータは現場でしか取得できません。現場ではフォーマットの異なる様々なデータを扱っており、本社側の形式に完全に合わせることは困難です

大きな基盤ほど柔軟性が下がり、現場固有の要望が通りにくくなる。だからこそ現場は、自分たちが使いやすい形でデータを持ちたがります。現場単位のデータ基盤としてDr.Sumが入る案件は最近増えている、と田﨑氏は言います。

田﨑氏 特に製造業など、現場で生まれるデータを元に改善活動を行っている企業では、データ活用のタイミングを非常に重視されています。本社で扱うDWH以上に、現場に根差したデータを柔軟に扱うことへの要望が強いのです

東海林 そうすると役割分担としては、現場の方が使うのはDr.Sumまでで、そのDr.Sumは現場の方が使いやすい構造になっている。そこから上に吸い上げていくところは、本社側が必要に応じてデータを収集していく

アステリア 東海林写真

田﨑氏 その結果、本社側で部門横断の分析ができるようになるわけです

分析で終わらせず、業務に戻す

Dr.Sumは、ファイル出力はできても、他のデータベースへ直接書き戻すことはできません。

一方で、書き戻したいという要望は多い、と田﨑氏は対談の前半で話していました。

田﨑氏 お客様によっては、Dr.Sumに貯めたデータを二次活用という形でシステムへ書き戻したい、という方がいらっしゃいます。SFAやCRMが多いですね。直接連携ができないため、そこはASTERIA Warpを介したリバースETLで、Dr.Sumの鮮度の高いデータを他のシステムでも活用できるようにしています。そこはアステリアさんの得意領域だと思っています

リバースETLは、ASTERIA Warpが担える役割の1つです。ただ、この対談で注目したいのは「書き戻せる」ことではなく、何を書き戻すのかのほうです。

田﨑氏が挙げたのは、小売店の例でした。今月の売上がいくらだったかは、Dr.Sumで見れば分かります。しかし、なぜその数字になったのかまでは分かりません。

田﨑氏 実は競合店が近くにできた、ベテランの方が体調を崩して不在だった。そういう情報は基幹システムに入っていません。しかし、現場の日報データとしては存在しています

数字は基幹システムにあり、理由は現場の手元にある。この2つが別々の場所にあるかぎり、要因は後から人が探しに行くしかありません。田﨑氏が示したのは、データアプリ基盤「MotionBoard」を業務アプリとして使い、現場に理由を入力してもらってDr.Sumへ書き戻し、AIに分析させて経営レポートにする流れです。理由が書かれた日報は、それ自体が分析のための重要なデータです。

田﨑氏 これを分析で終わらせず、いかに業務に組み込むかが重要です

東海林も同じ方向を見ています。

東海林 我々もただ連携するだけでは意味がなくて、その先のデータの蓄積、分析、そしてそこに適切にAIが関与できるようになっていく。そういう仕掛けが必要だと考えています

分析結果を見て終わりにせず、次の行動まで起こす設計が要ります。

AIが分析するようになると、データ分析の仕事はなくなるのか

データ分析の仕事はなくなりません。AIが分析を実行するようになっても、目的の設定、分析手法とデータの選択、全体の設計、そして結果の確認は人間に残ります。

5年後、10年後にデータ分析という仕事は残っているか。そう聞くと、東海林はプログラミングの世界を引き合いに出しました。

東海林 今はバイブコーディングといった形で、専門のエンジニアでなくてもAIでそれっぽいシステムは作れます。ただ、セキュリティ的に大きな穴があったり、同時に利用したときにデータがおかしくなったり、基本的なところが抜けていたりする。個人レベルのツールならまだしも、基幹システムや経営判断に使うデータを扱うシステムとしては、まだまだ使えない。ただ、この差はどんどん縮まっていくと思っていて、5年後、10年後には、分析の実行そのものは人よりAIのほうがうまくなっているかもしれません。それでも、何を分析したいかを決めるのと、その結果に責任を持つのは、変わらず人だと思っています

分析業務そのものはなくならない、というのが東海林の見立てです。何を分析するのかという目的の設定、適切な分析手法やデータを選ぶ判断、分析全体の設計。そして結果への責任。これらはAIの助けを借りながらも、人が担う部分として残ります。

田﨑氏の見立ては、浸透と二極化でした。

田﨑氏 今さら『インターネットが使えますよ』と言う必要がないのと同じで、AIは当たり前に浸透していくと思っています。ただ、今後はさらに二極化するとも思っています。うまく活用する会社はどんどん成長する一方、なんとなくの不安感で積極的な活用をしない企業はその場で足踏みしてしまい、その差は開いていく

最後に、田﨑氏からAI時代に忘れがちなポイントを伺いました。

田﨑氏 AI活用となると、AIのモデルとか性能という話になりがちです。しかし、それをどう活用するのかという目的を、しっかり定めてほしい。そして、目的を達成するためにAI-Readyな状態を整えていただきたい

田﨑氏はそのあと、こう続けました。

田﨑氏 その目的設定も、実は難しいところがあります。そこは、まさに我々やアステリアさんに相談していただけると嬉しいですね。まずは目的から、一緒に決めていきたいです

東海林のメッセージは、現場にも向いていました。

東海林 実際に情報を必要としている現場の人たちが、自分たちの手で創意工夫をして、必要なデータとそれを得るための仕組みを手に入れられる状態を作る必要があると考えています。ノーコードに加えてAIの力を使うことで、現場の人たちがデータを集め、分析するところまでを自らの手でやれる。そういう世界を一緒に作っていけたら

東海林、田﨑氏写真

自社のデータがAI-Readyかどうか、どう確かめるか

AI-Readyかどうかは、4点で確かめられます。誰が何のために見るのかが決まっているか。言葉の定義が社内で1つに決まっているか。どこに何があるか棚卸しされているか。AIが見てよい範囲が決まっているか。

前後編で二人が語った内容を、自社を確かめる問いの形に置き換えると、次の4つになります。

  1. そのデータを、誰が何のために見るのかが決まっているか。 目的が決まっていなければ、どんなメタデータを付けるべきかも決まりません。
  2. 「今年度」「売上」といった言葉が、社内で1つの意味に決まっているか。 社内の定義がそろっていなければ、AIの回答は揺れてしまいます。
  3. AIに読ませたいデータが、どこに何があるか棚卸しされているか。 現場のデータも含めて意味的なつながりまで把握できているか。
  4. AIがアクセスしてよい範囲が決まっているか。 田﨑氏がAI-Readyの3要素の最後に置いた、セキュリティの話です。

4つのうちどれに引っかかるかで、次に手をつけるべき問題が変わります。データ活用についてはウイングアーク1stへ、データ連携についてはアステリアへご相談ください。

この話の続きは、UpdataNOW26で

ウイングアーク1stが主催するカンファレンス「UpdataNOW26」が開催されます。今年のテーマは「AI時代のデータリアリズム」、そして「今こそユーザー主権を」。ASTERIA Warpのブースもございますので、ぜひ、お立ち寄りください。

  • 名古屋会場:2026年10月9日(金)13:00〜 名古屋東急ホテル
  • 東京会場:2026年10月21日(水)10:00〜 ザ・プリンス パークタワー東京
  • オンラインとオフラインのハイブリッド開催、参加費無料(事前登録制)

前編では、AIの答えが揺れる3つの原因と、AI-Readyなデータの条件を扱っています。



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執筆者:ASTERIA Warp チーム

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