ブロックチェーン特集:対談 Vol.03『インターネットのインフラを支える、 さくらインターネットにおけるブロックチェーン、先端技術への取り組み』
【後編】ブロックチェーンなど革新的な技術、未来のイノベーションにつなげるために重要なポイント
田中邦裕氏 × 平野 洋一郎

さくらインターネット株式会社 代表取締役社長 田中邦裕氏 × インフォテリアCEO平野

2016年1月に発表をおこなった、さくらインターネット、テックビューロ、インフォテリアの三社による事業提携より四か月あまり。現在、何を考え、どのようなアクションを試みているのか、さくらインターネット、インフォテリアの代表二名が対談でより掘り下げた内容について3回の記事に分け、明らかにしていきます。ブロックチェーンの事業提携の話にはじまり、IoT、そしてその先まで、話題は多岐に渡りました。第3回目となる今回はさくらインターネットのIoTやAIなど先端技術に対する考えや実際の取り組みなどについてお伝えしていきます。

IoTは「当たり前につながる状態」を生み出すことが普及のポイントとなる

-平野 前回は、事業に対する取り組みや組織の在り方など、さまざまなことについてお話を聞かせて頂きました。最後となる今回はさくらインターネットにおけるIoTやAIなどの先端技術に対する取り組みについてお話を聞いていきたいと思います。

まずはIoTへの取り組みに関して聞いていきたいと思いますが、そもそものIoT参入のきっかけを教えて頂けますか。

-田中氏 IoTについては2014年の夏頃から検討を開始しました。きっかけは元々弊社の創業メンバーでもあり、当時は秋葉原のモノづくり拠点DMM.makeのプロデューサーであった小笠原です。小笠原とはIoTについてよくディスカッションをしました。彼と議論を進めていく中で見えてきた未来図をもとに、トラフィック部分に着目して考察を重ねる中で理想の状態と現実との大きなかい離が見えてきました。現在の通信周辺の環境を踏まえると、どうしてもIoTの通信部分を個人が所有するスマートフォンに依存せざるを得なくなります。しかし、「すべてのモノにインターネットを」という理想の姿を考慮すると、とても個人所有のデバイスの数だけではまかないきれません。すなわち、何かしらのブレイクスルーが求められます。

現時点で存在しないのであれば、私たちで作るしかないのでは、というのがスタート地点です。私たちは生活者に新たな価値を生むIoTがスムーズに世の中に受け入られるよう私たちの事業ドメインの中でサポートをしていきたい、と考えるようになりました。

さくらインターネット 田中氏

昨今、スマホが普及したことも影響してか世間でのデジタルリテラシーが、さも上がったかの如く思われている風潮がありますが、それは若い世代やデジタルに関心を持った人たちだけの話でしかありません。まだまだWifiや自宅のネットワークへの接続設定ですら難しいと考える人がほとんどでしょう。いまから数年で急速にこうした知識が普及していくかというと、なかなか難しいのではないでしょうか。そしてそこがIoT普及の大きなネックとなりかねない、と思っています。人間はいくらその作業完了後に効率化されることが分かっていても、その作業自体が自分の対応範囲を超えてしまっていると、残念ながら諦めてしまうのがほとんどですよね。だからこそ、ユーザーエクスペリエンスという視点に立って誰でも簡単に使える、という仕組みを作ることがIoT普及のためのポイントになると思っています。

そのため、WifiやBLE(Bluetooth Low Energy)といったユーザに設定の手間を求める通信方式ではなく、当初は3G回線を採用するという判断をしました。利用者が特別な設定をせずにそのまま直接つなぐことができる、というのはとてもメリットが大きい。その判断の根拠は2点あり、一つ目は先ほども説明しましたが、ユーザエクスペリエンス上でのメリット。そしてもう一つは東南アジア諸国などの途上国ではそもそも家にネットワークがなくモバイル通信のみ、という状況が当たり前であるということ。また、日本は通信環境が恵まれており、廉価で3G回線を提供できる土壌があったことも背景にあります。

また、3G回線のみとするのではなく、LoRa()のような通信範囲距離が長いうえに消費電力が少ない通信モジュールも登場してきているため、新しい技術動向を見極めながら最適な組み合わせを探っていくことになると思います。

 

世界展開に向けてまずアメリカの「メーカーズ」にアプローチしていく

-田中氏 弊社はこれまでも低いレイヤーでビジネスをしてきていますが、IoTの通信モジュールはゲームやアプリ、コンテンツなどのビジネスと違い、国ごとに仕様が異なるといったことがあまりありません。そのため、日本で開発したものを同じタイミングで海外にも展開する、ということがしやすいですし、そうできるように準備を進めています。

-平野 海外でも同時展開とは非常に興味深いですね。ちなみに、スケジュールは決まっているのですか?

-田中氏 モジュールの試作品はすでに完成しており、5月中には発送を開始します。次に、9月をメドに製品版のモジュールを制作してベータテストを開始、2017年明けぐらいには正式に課金ができる状況に持っていきたいと考えています。プラットフォームの場合、一定の信頼を得ないと量産に向けた採用をしてもらえないので、試用期間も含めてシビアに開発を進めています。海外展開は来期中を目指しており、まず照準を定めているのがアメリカ西海岸の「メーカーズ」と言われる人々です。そこの人たちにきっちりとお墨付きをもらったうえでアジアに展開していきたいと考えています。アメリカで評価を受けるとやはりアジアでも優位性が出るので、現時点ではそうした戦略を立てています。

これまでもこれからも「インターネットのプラットフォーム」を提供していく

弊社CEO平野写真

-平野 あとは進めるのみ、というところでしょうか。今後の取り組みが非常に楽しみですね。また、さくらインターネットはAIやディープラーニング周辺にも今後取り組んでいく、ということですが、詳しく教えて頂けますか。

-田中氏 AIは5年後にはどんな企業でも利用している、いわば一般的なテクノロジーになっていくと考えています。20年前、インターネットやメールを業務で利用するなんてほとんどの人が考えていませんでしたが、いまや当たり前に使われています。このようにAIも次第に「当たり前」になり、各企業がAIに関するデータを蓄積していく、というのが時代の流れではないでしょうか。

AIは「データ」、「テクノロジー」、「インフラ」の3つのレイヤーで構成されますが、私たちはインフラの企業ではあるものの、テクノロジーのレイヤーにも積極的に関与していくべきだと考えています。先日、Preferred NetworksのGPUクラスタの構築を発表したのもそういった考えに基づいたものですし、それ以前からテクノロジーに対する社内での取り組みは着々と進めています。

この分野では研究開発にも大きなインフラを必要とします。実際、Google傘下のディープマインド社などは積極的な動きをしていますが、それもGoogleのインフラがあってこそのものです。そのため、私たちもディープラーニング向けのインフラを作るべく動いています。ディープラーニングに関してサーバの発熱量の問題がよく挙がりますが、当社では北海道の石狩市にデータセンターを所有しており、北海道だと涼しいので電気代が半分で済むんですよね。なので、できればこれらの分野ではデータセンターの中心をアジアではなく、北海道に持っていきたいという構想も描いています。

-平野 電気代が半分で済むというのはエコですね。これまでのお話でブロックチェーンにIoT、そしてAI・ディープラーニングと今後の先端技術をしっかりと抑えて既に動きが進んでいることを改めて知ることができました。ということは今後、クラウドカンパニーという枠を超えていく、ということになるのでしょうか。

-田中氏 私たちはインターネットにおけるプラットフォームを提供することをミッションとしており、それはこれまでもこれからも変わりません。インターネットの価値は「フラット、オープンであること」だと考えています。ブロックチェーン、IoT、そしてAIのいずれにしても「オープンである」というカルチャー的な部分が共通項であり、私たちのコンピューティングリソースがこれらのテクノロジーを下支えするような感じで関わっていければと考えています。

-平野 共通項は「フラット、オープンであること」すなわち、インターネット的である、というのは社名にも「インターネット」が入っているところともしっかりと結びついていますよね。今後のさくらインターネットの取り組みにさらなる期待をしていくのとともに、今後もブロックチェーンの実証実験など、協同的な取り組みも頑張っていきましょう。今回はいろいろとお話をありがとうございました。

 



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