2019年4月4日

IoT時代に必要な日常に溶け込むテクノロジーとデザインを体験。SONYの『HIDDEN SENSES AT PARK』に行ってきました!

暮らしに溶け込み人に寄り添う、新たなテクノロジーの在り方を提案したソニー株式会社による展示。ミラノデザインウィーク2018で「ベストプレイフルネス賞」を受賞したIoT作品の一部を実際に体験してきました。


日々の暮らしに違和感なくテクノロジーを取り込むためには、技術の進化だけではなく、日常に溶け込めるデザインの要素も重要になるもの。これからIoT時代へと、暮らしが新たなフェーズへ進化を遂げようとしている中、求められるデザインとは一体どのようなものなのでしょう。

今回は、昨年春に開催された世界最大規模のデザインイベント「ミラノデザインウィーク 2018」に出展されていたソニー株式会社の展示をレポートしながら、IoTにおけるデザインの重要性について紐解いていきたいと思います。

ミラノデザインウィーク2018で「ベストプレイフルネス賞」を受賞した展示

暮らしに溶け込み人に寄り添う、新たなテクノロジーの在り方を提案したこの展示は、ソニー株式会社クリエイティブセンター(ソニーのインハウスデザインチーム)が以前から進めていた “Hidden Senses(隠された感覚)“というコンセプトのもとに作られたもの。

「ソニーの展示には時代の転機を感じた」
「ソニーの技術が暮らしを変えてくれる」
「テクノロジーを詩的で繊細で感情的なものに変えてくれた」

世界から絶賛されたソニーの展示は、見る人の”遊び心”をくすぐる演出が評価され、ミラノデザインウィーク2018において「ベストプレイフルネス賞」を受賞しました。ミラノで出展された作品の一部が銀座ソニーパークにて期間限定で展示されていると聞き、実際に訪問してきました。

※本展示はすでに終了しています

“Hidden Senses(日常のなかに隠された感覚)”の文字がゆらゆらと揺れるカーテンのような正面の入り口。優しい心地よさを感じる入り口には、ここに木が存在するかのような木洩れ陽や柔らかな木陰が映し出されています。

銀座駅の地下コンコースから直結しているGinza Sony Parkは、2018年8月にオープン。
”変わり続ける実験的な公園”をコンセプトとし、年間を通してさまざまな体験型イベントが実施されています。今回の展示では「ミラノデザインウィーク 2018」での演出とは少し異なる公園らしい緑の要素が加わり、銀座の地下とは思えない癒される空間が広がっていました。

隠れた感覚を呼び覚ます、音と振動を使った驚きのテクノロジー

最初に出迎えてくれたのは、リーフレットが置かれたこちらの展示。

リーフレットに手を触れると、どこからともなく手元に蝶の影が舞いおりてきました。ここでは、人の気配を察し、蝶が舞う演出がされているのです。 心和らぐ演出に展示会場へのわくわく感が高まります。一歩会場内へ入ると、インテリアや家具が配置されており、家の中にある日常的な光景が目に入ってきました。こちら緑色の椅子に腰掛けてみると…

シーソーのように動く椅子から、水の流れる音が聞こえてきます。ただ水の音が流れているだけではありません。左右の動きや傾きに合わせて音は変化し、椅子の中に水が入っているような振動と音が伝わってきます。もちろん、この椅子の中に水は入っていません。まるで水が入っているかのような感覚をテクノロジーの技術により再現しているのです。スゴイ…!

続いて、テーブルの上に置かれた水差しとコップ。よくある家庭のワンシーンのようですが、コップに水を注ごうと傾けると…

ここでも、まるで水差しの中に水が入っているような不思議な感覚に。ただ水を注ぐ音が聞こえるだけではありません。傾かせてみたり、回してみたり、手の動きに合わせて水の音や水の動きに合わせた振動や重みが手に伝わり、すべてが違和感なく変幻自在に変化していくのです。先ほどの椅子と同様に「この感覚、知ってる…!」と感覚を通じて記憶が蘇ります。振動や音を表現することで、あたかもそこにないものが存在するかのような感覚を体験することができました。

身体から伝わる振動と自分の動きが連動した違和感のない音。テクノロジーの技術によりこれほどまでも鮮明に感覚が再現されることに驚くとともに、”隠れた感覚を呼び覚ます”という意味を感じ取ることができました。

その隣にあるのは楕円形の揺れるライト。こちらは手を添え、ゆっくりと揺らしてみると…

動作に呼応し、雨音や夕暮れ時の音が映像とともに流れてきました。どこか見覚えのある風景を切り取った窓のようにも見えてきます。明かりを灯すためのライトではなく、映像が柔らかく辺りを照らすライト。特別な演出のための音や映像ではなく、日常に紛れ込み意識することのない音と映像が融合することで、心地よさやノスタルジックな感情の動きを演出しています。

これからの時代に必要とされるデザインは、視覚的なものだけでなく感覚や感情の動きをデザインすることも重要な要素となるのでしょう。

このライトのように、明かりを灯すという従来のライトの概念を一度考え直すことで、本来必要とされているデザインの本質が見えてくるのかもしれません。

モノの新たな可能性を引き出すIoT

続いて、一見なんの変哲もないこの棚。実は意外な仕掛けがありました。この白いフレームを棚の壁面に貼ると…

海辺の映像が映し出されました。まるで窓から外の景色を眺めているような感覚になり、ただの白いフレームがまるで絵画や窓のようにも見えてきます。

またフレームから映像が流れるだけではありません。この棚はフレームを外したり貼ったりするたびに、後ろの壁面の模様と映像が変化するのです。「素材と景色の変わる棚」というと、テクノロジーを使った難しいアイテムのように感じられますが、スイッチはこの白いフレームを貼るだけ。「身近な素材がスイッチになる」ということも、IoTの技術が日常に溶け込むためには重要な要素になりそうです。

それぞれの空間の雰囲気や趣味嗜好に応じて容易に背景を変化できるこれらの棚は、「棚を変える=買い換える」ではない、家具の概念を変える新しい発想のようにも感じられます。窓のない空間であっても、このように外の光景を楽しめる可能性が生まれます。窓から見たい景色を映像として映し出すことができたら、現実世界にいながら、仮想の理想空間を作ることも可能になるのでしょう。

続いて、一見なんの変哲もない、壁紙に2枚の紙が貼ってあるかのような光景。風で揺れているようにも見えます。一体どこにテクノロジーの要素が…? と近づいてみると、

これらはただの壁紙でした。数ミリの厚みのある壁紙がまるで動いているように見えるのは光が動いているためでした。人の動きに合わせて光が動きを変え、まるでここに紙がひらりと舞い上がっているかのような錯覚が生まれています。

この錯覚から、いかに私たちが光と影で見た目を判断しているかということがわかります。影と光は人の意識を引き寄せやすいため、光を動かし影をデザインすることで見え方をデザインすることも可能なのです。

視点を変えることでデザインできるテクノロジーのある暮らし

さらにもう一つ、私が面白いなと思ったのはこの2枚の絵。見比べてみて、違いが分かりますか?

2枚目の写真は、私が一歩前へ前進しています。この壁に展示されている大きな写真は、私が一歩前へ進むとズームされているのです。これらは写真との距離によって、情報の解像度が変化する仕組みになっています。

たしかに、写真をよく見ようとすると、写真を手に取り顔に近づけます。その無意識のうちに行っている行為をテクノロジーで再現しています。

キューブを回転することで、画面の数や位置が変わり、ディスプレイは自由自在に変形していきます。同時に複数の映像を見ることも、照明としての光を演出することも。テレビとしての機能だけではなく、空間に溶け込むようにその場に応じて必要なものを映し出しています。

家具ひとつにしても、自由に変化できるデザインであることによって、家で過ごす時間や暮らし方そのものをデザインできるようになるんですね。

日常にある暮らしはそのままに、常識をくつがえすテクノロジー

この展示会場には、棚上に様々なオブジェが展示されています。

こちらの置物の鳩に触れてみると、羽が影となり羽ばたき、

ろうそくにそっと手を近づけてみると、優しい炎の色が映し出され、

花の蕾は、手の動きで開花した影が現れました。
音、光、影…。これらの変化から、身近なアイテムに触れるというシンプルな行為そのものが、ON/OFFのスイッチになることがわかります。今ある日常の暮らしはそのまま。そこにテクノロジーの技術を加えることで、便利さだけではなく、驚きや喜びが生まれる豊かな暮らしになるのかもしれません。

会場の最後に展示されていたのは、なんでもない普通のテーブル。テーブルの上にある本を手に取ろうとすると…

光が手元にやってきました。ライトを手元に寄せるのではなく、気配を察してライトが寄ってきてくれるのです。

照明は一定の場所を照らすものという当たり前だと思い込んでいる価値観を考えさせられます。本を読むときに明かりが欲しいだろう、とあらかじめ想定したテクノロジーを組み込んだデザイン。必要な場所に必要な光を灯すといった当たり前のようで疑ったことのないちょっとした思考の転換が、今の生活を変えずにより豊かで便利な暮らしに近づけるのでしょう。

編集後記 

今回の展示を通じて、家具や照明といった日常的に使用しているアイテムとテクノロジーが違和感なく融合していることに驚きました。紹介してきた展示はどれも特別な動きはせず、あくまでいつも通りの行為の中にスイッチが隠れていたのが印象に残っています。一歩視点を変えることで、暮らしにテクノロジーが寄り添うことができることを体感することができました。

最後に、今回の展示の想いについて担当のデザイナーさんからコメントをいただきました。

先進的なテクノロジーが生活に溶け込んだとき、住空間は、そして五感に触れるさまざまなものは、どんな未知の体験を生むのだろうかという考察をもとに、「Hidden Senses(隠された感覚)」というテーマを掲げました。

今回の展示は、「当たり前の『日常』に『非日常』の驚きや、人や生活に寄り添う新しいテクノロジーの在り方を提案する」プロトタイプとして体験にフォーカスをしたのです。

これまでと変わらない生活スタイルに新しい体験と驚きを提供した住空間を模したスペースには、多様なインタラクションの要素を融合させ、普段の日常風景を変えることなく「新しい日常」に進化させていく提案をしました。

デザインとテクノロジーがもたらす未来の住環境のビジョンと、生活のシナリオに浸透する“Hidden Senses”を表現した今回の展示。会場で展示されていたアイテムはデザイン開発中のプロトタイプです。来場者からのフィードバックを元に現在、開発を進めています。

以上、いかがでしたか?
こちらの展示はすでに期間が終了してしまいましたが、今回紹介したアイテムが近い将来、あなたの暮らしの中に登場するかもしれません。Ginza Sony Park(銀座ソニーパーク)では今後も様々な体験型の展示が催されています。ぜひ、足を運んでみてください。

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この記事を書いた人
石川妙子
石川妙子 アステリア株式会社 広報・IR室。in.Live編集部。 大学卒業後、大手銀行にて勤務。その後、自由大学の運営を経て、2015年より世界一周の新婚旅行へ。帰国後は、編集者として活動。インバウンドや農業メディアにも所属。2018年より長野を拠点に移し、東京との二拠点生活中。