2018年9月21日

ありそうでなかった!レストランの空席をリアルタイムで案内する 「VACAN」で、これからの外出はもっとスムーズになる

商業誌施設などで、どのレストランやトイレが今空いているかがタイムリーに分かるサービス「VACAN」。東京駅の大丸やマルイなどでも導入され話題になったこのサービスの開発秘話や今後の可能性について、創業者の河野さんに聞きました。


ITを活用した様々なサービスが存在している今日このごろですが、週末に家族で外出をすると「そういえばこれ、ずっと解決されていない!」と声を挙げたくなる課題に気付きます。それが、商業施設などのレストランやトイレの空席問題。実際に現地まで行ってみないと、今入れるのか入れないのか分からないことに、不便を感じた経験はありませんか?

小さな子供を連れたお父さんが、ベビーカーや大きな荷物を持ってフロアを上がったり下がったり。あちこち探し回った挙げ句、結局どこにも空席がなくて別の場所へ移動…なんてことも日常茶飯事です。

今年2018年1月にリリースされた「VACAN(バカン)」は、そんな誰でも経験したことのある不便を解決してくれるサービス。リリースするやいなや「まさにこれが欲しかった!」と話題になり、2018年7月には大丸東京店やマルイなどにも導入されました。

<※大型の商業施設に設置されるVacanとデジタルサイネージ(参考写真)>

「VACAN」の導入により「空席情報がわかって便利になった!」とお客さんが喜んでいるのはもちろん、空席情報を提供される飲食店側からも意外な反響が広がっているのだとか。実際にサービスを開発した創業者の河野社長にお話を伺いました。

株式会社バカン 代表取締役 河野 剛進(かわの・たかのぶ)さん

東京工業大学大学院修士(MOT)。株式会社三菱総合研究所で市場リスク管理やアルゴリズミックトレーディング等の金融領域における研究員として勤めた後、グリー株式会社にて事業戦略・経営管理・新規事業立ち上げ、および米国での財務・会計に従事。エルピクセル株式会社にて経営企画室長を務め、バカンを設立。

社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。Project Management Professional (PMP®)

家族との時間をより良いものに出来るサービスを

今日はよろしくお願いします!
SNSで「VACAN」のサービスを知って、”まさにこれを待ってた!” と感動しました。もともと河野さんが「こういったサービスがあればいいのに‥」と感じたことから、開発がスタートしたのでしょうか?
そうですね。私は小さな子供がいるのですが、家族みんなで商業施設に行ったときに、入れる店を探している間に子供がぐずってしまったりして。結局諦めて帰ってきてしまったこともありました。そういう体験が何度か続くと、お出かけもわざわざ商業施設に行くのも大変だし、近所の公園でいいか…と。
それ!身に覚えがありすぎます!(笑)
小さな子がいるお家では、きっとあるあるですよね。 こういった体験がすごくもったいないなと思って、技術を通じて解決できればと感じていました。家族と過ごすちょっとした時間をより良いものにしたいなと。

「VACAN」を設置している商業施設では、トイレや飲食店の空き状況をデジタルサイネージやスマホなどでリアルタイムに確認ができます。空いている店や施設を探してあちこち歩き回らなくても良いですし、子連れに限らず、すべての人にとって外出が今よりスムーズになるはずです。
”空き状況” というとレストランに限らず、様々な施設に応用できそうですね。授乳室とか。
それは僕の妻も言ってましたね!実際にマルイさんではすでに授乳室の空き状況も情報提供していますよ。あとはJRのみどりの窓口や、ホテルのラウンジやロビー、温泉施設の混雑状況とか…

”思いがけず混んでいた” ということは施設にとってクレームポイントにも繋がりやすいんです。なのでそうした情報も先に教えられる、というのは、予約したあとの体験として僕らが提供できることだと思っています。
確かに!ホテルに泊まっているときにチェックアウトの準備をしてロビーへ行ったらめちゃくちゃ混んでるということ、よくあります。もうちょっと部屋でゆっくりしていればよかったと思ったり…。

ですよね。VACANの提供を始めてから、混雑状況を知りたい場所は日常の中に本当にたくさんあるということを実感しています。

僕らはもともと最初はトイレの空き状況が分かる「Throne(スローン)」というサービスからスタートしたのですが、当時から「生活をよりスムーズにするために、ありとあらゆる空室情報を集めたい」という発想を持っていました。センサーなどを使って空室状況を管理するのに、一番やりやすかったのがトイレだったので、まずはトイレの空き状況から着手したという流れです。

そこから空間を検知するための画像認識やAI(人工知能)のエンジンを搭載していって、ようやくもともとやりたかった飲食店などでも応用できるようになったというところなんです。
食にしてもトイレにしても、いずれも生活と密接に関わるところですよね。 今空いているかどうか?というごく当たり前の情報が、どこにも載っていないと思うと、なんでこれまで誰も解決してくれなかったの!?なんて思っちゃいます…。

ありそうでなかった!技術の壁は安定的な制御ができるかどうか

今これだけ技術も進歩しているなら、こういった混雑状況を知るためのツールは既にあってもおかしくないのでは?と思ってしまったのですが、実際に開発の難しさはどういったところにあったのでしょうか?
やってみてわかったのは「安定的な運用が技術的に大変だった」ということですね。今はハードウェアの開発コストも安くなっていますし、家庭用の3Dプリンタなどもあるのでプロトタイプを作るまでは簡単なんですよ。

それよりも、トイレのドアの開閉を感知するIoTセンサーを設置したあと、きちんと動き続けているか?情報を通信し続けているか?などの監視をする保守体制をつくるのが大変でしたね。品質にムラがないようにすることなど、運用そのものが簡単そうに見えて難しかったです。
なるほど… さらに御社の場合は、既存のIoTセンサーを使うのではなく、自社で開発されたセンサーを使っているんですよね。

そうです。自社製のセンサーにこだわっていたわけではないですが、自分たちが提供したいユーザー体験や保守、価格面などのバランスを考えて自社でつくることになりました。

ただ、中にはトイレにセンサーを入れること自体に抵抗がある方も多かったですね。実はトイレってすでにあらゆる場所にセンサーが入っているのですが、それでもトイレのドアに新たにセンサーを付けるとなると抵抗感を持つ方もいたりして。

なので、そのあたりの価値観を醸成してカルチャーを作っていくというところからスタートでした。
うーん、それはなかなか時間がかかりそう…。 トイレの空き状況って、これまで他のサービスでは分からなかったことなんでしょうか?
例えばトイレに限っては、「有線」で繋いで空き状況を伝えるツールはこれまでもありましたよ。例えば高速道路のパーキングエリアで、トイレの入口に空いている個室がランプで表示されていたり… 見たことありませんか?
あ、それなら見たことあります!
ああいう風に有線で管理してその場で状況を見ることが出来る、というものはこれまでもあったんですが、レストランやカフェも含めてオンラインで管理しながら、サイネージやスマホなどの複数のデバイスでリアルタイムに情報を見ることができるのは国内では「VACAN」が初めてですね。

集めたデータが施設を変える?導入側に期待できるメリット

商業施設を利用するお客さんの立場からすると「便利!」の一言だと思うのですが、一方で導入されているレストランの中には、自分の店に空席があるということが表示されることに抵抗があったり… ということはなかったのでしょうか?
その点も最初は不安でした。
ただ空席状況って、普通にそのお店に行けば分かることであって、別にそこまでネガティブな情報ではないんですよ。店で知るか、サイネージで知るか、ということだけですよね。情報を得るタイミングと方法を自分たちがより最適なものに変えただけだと思っています
そう言われてみれば確かに…。逆に空席情報も早く知ることで、ポジティブな情報になるのかも。
昔は口コミやレビューなどもレストランにとってはネガティブな情報と言われることも多かったんですよ。だけどそれがネットで調べれば分かるのも今は当たり前ですよね。なんとなく固定観念で公表されていませんでしたが、その考えも時代と共に変わっています。

「空席」という情報に関しては自分たちが変えていくと思っているんです。
実際に導入された企業さんからの声はいかがですか?
VACANを使うとリアルタイムで商業施設内の設備の使用状況が分かる、つまり、その施設がどの程度使われているのか?という実数のデータが継続して蓄積されるんです。これを喜んでくださる声があったのが印象的でしたね。

これは意外だったのですが、商業施設を作ったあとにその中のトイレがいつどれくらい使われているのか?っていう情報は、誰も取っていなかったんですよ。新たな店舗やオフィスを作るとなったとき、必要なトイレの個数は昔からある基準データや労基法などに基づいて作られることが多いのですが、ライフスタイルやワークスタイルも変わっている今、そのデータがいつまでも正しいとは言えません。

実態にあった設備を提供する上でも、こうした実数の情報が非常に貴重だということがよく分かりましたね。

機能ではなく「UX」の追求、空席情報は未来でどう役に立つのか

今後、VACANに搭載される予定の機能はありますか?
新たな機能というよりは、いかに「サービス」としての利便性を高めていくか?ということに集中して、改善していきたいと思っています。新たな機能を足せば良くなるというわけではないので、UI/UXや運用面なども含めて、導入した企業側がもっと楽に運用できるようにブラッシュアップしていきたいですね。
もともとBtoCのサービスに携わられてきた河野社長の経験が活きそうです。
はい。これまでずっとウェブ業界で常にBtoCのサービスに関わっていたので、言われたものを作って納品するのではなく、ユーザーの声や反応を見ながら常に改善し続けるような現場にいました。シンプルそうに見えるけど一番大変なところだと思っています。
実際に運用していくと、思いがけないニーズなどに気づくこともありそうですよね。
例えばサイネージの表示ひとつとっても、レストランに空席があることを情報提供するのは良いけど、逆に “「満」とは出したくない” という店舗の方が多かったりするんです。なので、混んでるけどテイクアウトを促してあげたり、待ってでも使いたくなるようなクーポンを出してあげたり…

人気店であれば並ぶのは当然として、それが30分以上の待ち時間なのか10分なのか分かるだけでも、お客さんにとっては嬉しいですよね。

「空席情報」と一口に言っても、そこから広がるサービスや欲しい情報はまだまだ沢山あります。施設にとって、自分たちが持っている資産を有効に活用していく手立ての一つとして、VACANを利用してもらえると嬉しいですね。
空席がわかって便利、というだけでは終わらない次なるステージがこの先に沢山あるのですね!私たちの外出をもっとスムーズにしてくれるVACANのこれからの展開がとての楽しみです。本日は有難うございました!

編集後記

今回河野社長にお話を伺って、私たちが一つの情報からいくつもの小さな選択をしていることに改めて気付きました。そうした小さな行動を捉え、その決断をサポートしてくれるサービスが生まれることは、シンプルながらとても大きな影響を与えてくれるもの。

「空席情報」という一つの切り口で私たちの日常を豊かにしてくれる「VACAN」のサービス。読者の皆さんも、街中で見かけられたらぜひチェックしてみてくださいね。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

関連リンク

株式会社バカン

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この記事を書いた人
田中 伶
田中 伶 アステリア株式会社 広報・IR室。メディアプランナー。 大学在学中に人材育成会社を立ち上げ、その後はスタートアップでPRや法人向けの新規事業立ち上げなどを経験。話題のビジネス書や経営学書の解説をするオンラインサロンを約5年間運営。難しいことをやわらかく、平たく解説するのが得意。