2021年12月6日

NFTはなぜ売れる? 一歩踏み込んで知りたいNFTの最新トレンド

2021年に大きな話題となった「NFT」。基礎の仕組みは分かっても「一体なぜ売れるのか?」と疑問を持つ方はまだ多いのではないでしょうか。NFTが2021年に過去最高売上を記録した理由や今後の可能性について、アステリアのブロックチェーンエバンジェリストが分かりやすく解説します。


in.LIVE 読者の皆さんこんにちは!
アステリア株式会社で、ブロックチェーンエバンジェリストとして活動している奥達男 @blockchaineva です。以前、話題の「NFT」の基礎について解説する記事を書いたところ、大変多くの方に読んでいただき、嬉しい反響をいただきました。

今話題の「NFT」ってなに? 超初心者のための徹底解説!
https://www.asteria.com/jp/inlive/social/4608/

有名オークションでのNFTアートの高額売買や、企業でのNFTの活用なども国内外で続々登場し、注目度の高さはとどまることを知りません。しかし「NFT」の仕組みや基礎について理解できても、なぜここまで話題になるのか? 高額のNFTを購入する意味とは? という疑問を持つ方も少なくないはず。

そこで今回は、NFTが過去最高売上を記録した理由や、人気のNFTトレンド、さらに今後の可能性についてやさしく解説します。

解説:奥 達男(おく・たつお)
アステリア株式会社ブロックチェーンエバンジェリスト・コンサルタントbr> ブロックチェーン技術の啓蒙及び技術適用された事業モデルの創生・推進、コンサルティング、提案、POC、技術の講義、サービス構築や他社主催セミナーへの登壇などを担う。一般社団法人ブロックチェーン推進協会(BCCC)にて、トークンエコノミー部会 部会長、ブロックチェーンエバンジェリストを務める。

そもそも「NFT」とは何なのか?

以前の記事でも解説していたとおり、NFTとはブロックチェーンから発行されるトークンの一種です。「Non Fungible Token」の略で、直訳すると非代替性トークンと言われます(Non=非、Funglble=代替性、Token=トークン)。

”トークン” を直訳すると「印や記号、象徴」といった意味を持つので、例えばデジタルアートのNFTとなると、トークンの意味するところは「証明書」が一番近いと考えられます。



NFTが非代替性トークンと言われている理由は、ブロックチェーンという技術によって、替えが効かない、世界にひとつしかないトークンを実現できているということ。これこそが、NFTの一番大きな特性であり、同じNFTはこの世に2つとありません。そして、改ざんができないという特性を持つブロックチェーンから発行されるトークンであるため、NFTのコピーや改ざんはほぼ不可能、唯一無二であるという状態を保持し続けることができます。



ビットコインなどの暗号資産もブロックチェーンから発行されているトークンですが、NFTとは大きな違いが2つあります。
一つ目は、NFTはこの世に1つしかないが、暗号資産はたくさんあるということ。ビットコインは2,100万枚まで発行されるよう決められています。
二つ目は、NFTは分割できないが、暗号資産は分割できるということ。NFTはこの世に1つしかなく分割することもできませんが、ビットコインの場合は1ビットコインを0.5ずつに分けることができます。


NFTの歴史に見る、過去最高の売上を記録した理由

NFTの基本を理解できたところで気になるのは、なぜ近年NFTがこれほどまでに話題になり、そして過去最高の売上を記録しているのか? これを理解するには、NFTの歴史を振り返ってみるのが良さそうです。



NFTは2017年末あたりにNFTを活用したゲーム「CryptoKitties(クリプトキティーズ)」のおかげで小さなピークを迎えます。このゲームは子猫がNFTとなっていて、そのNFTをトレーディングカードのようにやりとりできるゲーム。ある一匹の子猫のNFTが約1,500万円(当時のレート)で売買されたことは大きな話題となりましたが、まだまだ暗号資産界隈で話題になったぐらいで、現在のように大手メディアが大々的に報道するほどではありませんでした。

その後、2018年初めには、ゲーム内のアイテムをNFT化し、ゲーム外にあるNFTマーケットプレイスで売買できるという今までにないかたちの取り引きが登場しました。その中でも「MyCryptoHeroes(マイクリプトヒーローズ)」というゲームは、「OpenSea(オープンシー)」と呼ばれる海外のNFTマーケットプレイスで、当時、取引高1位を記録しました。

そして、2020年の秋あたりには、先ほどの「CryptoKitties」を作った DapperLabs社 が「NBATopShot」という米プロバスケットの名場面をNFT化して、トレーディングカードのようにやり取りできるゲームをリリースし、大ヒット。

その翌年の2021年には、Beeple のデジタルアート高額落札を皮切りに、高額売買されるNFTが続出して話題が集中。「Crypto Punks」「Art Blocks」「Bored Ape Yacht Club」といったアート・コレクティブNFTが高額で取引きされました。国内でも小学校3年生の少年が夏休みの自由研究で始めたというNFTアート「Zombie Zoo」が数十万円で落札されるようになり、日本のマスメディアも多く取り上げ始めます。

2021年中盤あたりには「Axie Infinity(アクシーインフィニティ)」を始めとするPlay-To-Earn(※1)も売り上げ的に頭角を表し始めた時期でもあります。

※1 Play-To-Earnとは(※1)
ゲームをしながら(Play)稼ぐことができる(Earn)ゲームの種類をPlay-To-Earnと呼ばれています。稼ぎ方はさまざまですが、例えば、ゲームの中で戦った成果によって得たトークンやNFTを売却して金銭を得ることができるものなどがあります。

そして2021年8月にNFTの売り上げがピークに達します。
NFTのマーケットプレイス「OpenSea」だけで全体の取引量の98%を処理することになったことで人手不足に陥り、緊急の人材募集をしていたことも話題となりました。2021年9月頃には少しブームも落ち着いてきましたが、6月頃から堅調に売り上げを伸ばしてきていた「Axie Infinity」はNFT市場の中でも存在感を示す状況になりました。

こうした歴史を見ながらNFTが盛り上がっている理由を考えると、まず最初に「NBATopShot」が、かつてよりアメリカに根付いていたNBAのトレーディングカード市場に刺さり、同じ時期にBeepleのデジタルアートが約76億円で落札されたことなどを代表とした高額売買が話題に拍車をかけたこと。そしてさらに、コロナという災害によって生まれた生活困窮者の拠り所となった「Axie Infinity」を始めとするPlay-To-Earn。

こうした爆発的なヒットや話題が続き、メディアによって加熱気味に報道されました。
とはいえ、各方面から見てもNFTの売り上げ増加は比較的長く続いており、単なるバブルでないとも言えるでしょう。

2021年12月初旬のデータから見ると、今NFTが最も売れているのはゲームの「Axie Infinity」となります。そこから同じくゲームの「The Sandbox」、コレクティブ(コレクターズアイテムとしてのNFT)の「Bored Ape Yacht Club」や「Crypto Punks」、NFTアートで知られる「Art Blocks」が続きます。

唯一無二の電子データに高額を払う意味とは?

中には「なんでそんな高額を払ってまで、ただの電子データを購入するの?」「どんな人が買っているの?」と思われる方もいるでしょう。 実情を詳しく解説すると、まず高額でNFTを売買している人は暗号資産をたくさん持っている方々が多いと言われています。一般の消費者とは少し感覚が違っているとも言えるかもしれません。そもそも一般の消費者と比較して、NFTの将来性に圧倒的な価値を感じているのです

特に、最近注目されている ”メタバース” といった領域に、NFTは非常に相性が良いとされています。今後メタバースの世界が当たり前になれば、仮想空間、デジタル空間で生活する人も多くなるでしょう。このとき、例えばデジタルアートのNFTを持っている人はメタバース内でそのデジタルアートを持っていることを示すことができます。デジタルアパレルのNFTを持っている人だけが、アバターにNFTのアパレルを着せることができます。

デジタルアートを飾れるバーチャル空間や美術館、持っているNFTをプロフィールに設定できるSNSなど、こうした未来を予感させる仕組みも登場してきています。コピーが当たり前だったデジタル空間において、コピーできない唯一無二の存在であるNFTは画期的な発明なのです。

正直なところ現時点では、NFTの恩恵を受けられる環境(=高価なNFTを所有していることの意味を発揮できる環境)がまだ整備しきれていないように思えます。ただ、近い将来に誰にでもわかりやすくNFTを持っていることの意味がわかるような時代がやってくるのではないか。それが私の考えです。

NFTの活用で急成長が期待される業界は?

NFTを活用することで急成長が期待される企業や業界もあります。よく例に挙げられるのは、キャラクターや音楽、映画などの独自コンテンツと、それに伴う多くのファンを持っている企業です

アメリカの金融大手シティグループが発表したNFTに関するレポートによると、NFTの普及によって稼ぐことができる企業として、ゲームソフト開発企業、フォーミュラ1を統括する企業グループ、ディズニーやプロレス団体などのエンターティメント複合企業などを挙げていました。前述した「NBATopShot」の場合は、まさにNBAトレーディングカードファンの多さや、希少なカードをコレクションしたいという特性をしっかり理解した上でマーケットに展開しているはずです。

多くのファンを有するコンテンツを持っている企業は国内にもたくさんあります。まだ身近な存在とは言い切れないNFTを、特性を活かして、ファンの方々に価値を感じてもらえるような形で提供できると面白い展開が待っているのではないでしょうか。

NFTはなぜ売れる? まとめと今後の可能性

一歩踏み込んで知りたいNFT、いかがでしたでしょうか?

現在、一部のコレクティブNFTでは「会員権」のような役割を持つものもあり、また紙のチケットの代わりに発行しているところもあります。また、物理的なものと結びつけて、証明書のような役割をもつNFTも出てきています。ゲームやデジタルアートから火がついたNFTですが、今後は仮想通貨界隈だけではなく、より一般的なユースケースに広がっていくことが予想されます。さらに、話題の ”メタバース” が一般に浸透することにより、よりNFTの用途が広がり、気づかないところでNFTが使われているという場面も増えていくと考えられます。

今後の可能性を秘めたNFTや、ブロックチェーン発のさまざまな技術については、その業界にいなくともトレンドを追っておく必要がありそうです。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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この記事を書いた人
奥 達男 アステリア株式会社 ブロックチェーンエバンジェリスト、コンサルタント。ブロックチェーン技術の啓蒙及び技術適用された事業モデルの創生・推進、コンサルティング、提案、POC、技術の講義、サービス構築や他社主催セミナーへの登壇などを担う。一般社団法人ブロックチェーン推進協会(BCCC)にて、トークンエコノミー部会 部会長、ブロックチェーンエバンジェリストを務める。