2024年1月26日

「SNPIT」人気の秘密は? ディレクターに訊く、web3の可能性と実現プロセス

ブロックチェーンゲームながら、シンプルな遊び方で業界の内外から注目を集める「SNPIT(スナップイット)」。ディレクターを務める吉田健一氏に「SNPIT」の人気の秘密や、吉田氏が思うWeb3の実現プロセスなどについてお話しいただきました。

「SNPIT」人気の秘密は? ディレクターに訊くweb3の可能性と実現プロセス

スマホのカメラを使って、カメラNFT(代替不可トークン)を活用したり、撮影した写真を他のユーザーとバトルさせながらトークンを獲得することができる「SNPIT(スナップイット)」。専門知識が必要とされるブロックチェーンゲームながら、シンプルな遊び方で多くのユーザーの心を掴み、2024年1月にはタレントの指原莉乃さんがSNPITに ”参戦” したことがニュースになるなど、業界の内外で話題を集めています。

そんな「SNPIT」でディレクターを務めているのが、GALLUSYS株式会社でCTOも務める吉田健一氏。アステリアが主催するオンラインイベント「2023年のweb3|ブロックチェーンニュース総まとめトーク」では、スペシャルゲストとしてビデオインタビューに登場し、「SNPIT」の人気の秘密や、吉田氏が思うWeb3の実現プロセスなどについてお話しいただきました。

本記事では、イベント内でもご紹介した吉田健一氏のインタビューを、未公開シーンも含めてお届けします。

▽「2023年のweb3|ブロックチェーンニュース総まとめトーク」
イベント動画アーカイブはこちら https://www.youtube.com/watch?v=jmP-ENLUm8c

お話を伺ったのは…

吉田健一氏インタビュー写真

吉田 健一(よしだ・けんいち)氏|株式会社GALLUSYS CTO
2016年からブロックチェーンに興味を持ち、Ethereumを⽤いた企業向けの実証実験などに携わる。2018年からはパブリックチェーン関連のサービスにも関わるようになり、Game-Fi・De-Fi・メディア等のブロックチェーン企業のアドバイザーを務める。現在はGALLUSYSにてピクティア・SNPITなどの開発を行う。

<聞き手・アステリア株式会社 ブロックチェーンエバンジェリスト 奥達男>

注目のブロックチェーンゲーム「SNPIT」、どんなアプリ?

ブロックチェーンゲームとしていま大注目の「SNPIT(スナップイット)」ですが、どんなゲームなのか、改めて教えていただけますか。
カメラのNFTを買って写真を撮るとトークンが稼げるというアプリです。私たちは “Snap to Earn” と呼んでいるんですけど、2022年に登場したスニーカーのNFTを買って歩くとトークンが稼げる「STEPN(ステップン)」に近い感じです。

とはいえ、ただ写真を撮ってトークンが稼げるだけだと、適当に写真を撮る人も出てきますよね。そこで「バトル」という仕組みを通して、自分の撮った写真をバトルに出品しエントリーできるようにしています。エントリーすると、他の誰かの写真とランダムでマッチングしてバトルが始まります。それをまた第3者、別の人が投票するという仕組みです。好きな方の写真に投票してもらい、先に10票取った方が勝ち。トークンを獲得できます。

この仕組みにはもう一つ工夫があって、勝った方に投票した人にもトークンが少し配布されるんです。この仕組みによって、写真を撮る人はいい写真を撮ろうとするようになる。そして写真を選ぶ人も、いい写真を選ぼうとするようになって、自然といい写真が集まってきます。今はまだオープンβ版ではあるんですが、ユーザーさんから非常に反響のある仕組みですね。
面白いですね! ちなみに、SNPIT用のカメラは今どこで手に入るんですか?
カメラはNFT(代替不可トークン)なのですが、実は1万体分、すでに販売は終了しています。なので、カメラNFTが欲しい場合は二次流通マーケットで買っていただく必要があります。私たちが推奨しているのは、NFTマーケットプレイスの「ラリブル」です。

またSNPITのアプリをダウンロードしたときに無料カメラも付与されるようになっているので、無料カメラで遊ぶこともできます。ただ、無料カメラはNFTではないので、ゲーム外に出すことはできません。今後、無料カメラだけの場合はトークンではなくて、純粋にポイントを稼げるようなかたちに作り替えたいと思っています。稼いだポイントはAmazonギフト券など手軽なものに交換できるように考えているところです(※編集部注釈1)。

アプリを使って無料で体験して、面白いと思ってくれた方にはぜひNFTを買っていただいて、よりweb3らしい体験をしてほしいなと思っています

(※編集部注釈1)この機能は、2024年1月現在はリリース済み

なるほど。ちなみに”いい写真”っていうのはどういう定義なんでしょうか?
シンプルに説明すると、まずは解像度が高い写真ですね。
カメラにはそれぞれラック(運)やクオリティなどのパラメータがあり、画質はクオリティに左右されます。レベルが上がるごとに経験値ポイントのようなものがゲットできるのですが、そのポイントを使ってステータスを上げていくと、どんどん解像度が高くきれいな写真が撮れるようになるという仕組みです。

とはいえ、解像度が低くても、面白いシーンやきれいな風景が撮影できれば評価されることもあります。単純に、解像度が高い写真=稼げる写真、というわけでもないんです。

ブロックチェーン業界外からも人気を集める秘密とは

シンプルに見えて、意外と奥が深そうですね。すでに1万体のカメラNFTは完売しているとのことですが、現時点でどれくらいのユーザー数になるんでしょうか。
今はβ版のためユーザー数の制限もあるのですが、ダウンロード数では5000人くらい。デイリーアクティブユーザーは2000人近くいますね。リリース直後は、すでにブロックチェーンゲームで遊んでいる人が「新しいゲームが出たからとりあえず触ってみよう」というのが大半だったと思います。

ここまで人気が爆発した理由はどんなところにあると思いますか? やはり先ほどおっしゃっていた「バトルが面白い」というものでしょうか。
それもあるんですけど、やはりゲームの仕組みが非常にシンプルで分かりやすいところじゃないでしょうか。一般的に販売されているゲームってもっと複雑で、スタートするのもハードルが年々上がっているというか…。SNPITはただ写真を撮るだけ。一度触れればルールが分かるというシンプルさが、体験するハードルを下げて、受け入れられるようになったのかなと考えていますね。
そもそも「ブロックチェーンゲーム」というだけでプレイする人数は限定されますよね。SNPITの場合は、NFTを買わなくてもプレイできるなど、まず遊ぶ人を増やす、という仕掛けの作り方が上手だなと思います。
そうですね。アプリをダウンロードすれば「ウォレットを持っていなくてもプレイできる」というのも、ゲームの始めやすさに繋がっているかもしれません。

また、2023年9月に発表した、秋元康さんのSNPITのストラテジックアドバイザー就任のニュースを受けて、世間の方々に注目を浴びました。ちょうどそのタイミングでGALLUSYS社の親会社(ギグワークス)の株がかなり反応したこともあり、その影響で株の取引をよくされている方もゲームに参入してくれるようになったと感じています。

■世界初!Snap to Earn「SNPIT」のストラテジックアドバイザーに秋元康氏が就任!Web3のマスアダプションを目指す! https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000073966.html

今ではブロックチェーン云々は関係なく、単純にカメラや写真が好きな方たちが参入してくれている手応えもありますし、ユーザー層の年齢も幅広いです。
秋元康さんのストラテティックアドバイザー就任のニュースには本当に驚かされました! これをきっかけにweb3が一般に普及していくのが楽しみですよね。

2024年はどうなる!? SNPITのこれからとweb3の可能性

SNPIT、2024年はどのような取り組みをされていく予定なんでしょうか。
お伝えできる情報はかなり限られているんですが…。いま言えることとしては、やはり将来的に「FT(ファジブルトークン:代替可能トークン)」を連携させていきたいという思いはあるので、FTの発行は計画中です

あとは、今はまだ機能などもシンプルにしていますが、これからはより機能を増やしていくことになるかと思います。例えば「フォトコンテスト機能」みたいなものを企業に協賛してもらって実装しても面白いかもしれないし、個人のインフルエンサーが参加できるような機能も作りたいなと思っていますね。

そういうものができてくると、今後さまざまな場所でSNPITのイベントもやりやすくなるかなと。将来的にどこかの企業や個人とコラボもできるかもしれないですし、そうした可能性を探りたいと思っています。
現在はロードマップとか出てたりとかするんですか?
そうですね。公式サイトには簡易的なロードマップを載せているんですが、細かい詳細までは決めていません。我々のスタイルとしては、ユーザーの声を色々と聞きながら取り入れていきたいところではあるので、ある程度修正をかけつつ、面白い方向に持っていければと考えています。

業界が欲しがる「web3エンジニア」になるためのステップとは?

改めてなのですが、吉田さんは、もともとどんなきっかけでブロックチェーン領域に関わることになったのでしょうか?
2016年頃、当時在籍していた会社の親会社(ガイアックス社)が、ブロックチェーンビジネスに参入することになったんです。当時すでに20年近くエンジニアとして働いていた私の耳にもそんな話が入ってきて、なんだか面白そうだなと。その前からブロックチェーンのことをニュースで知り、気になって情報収集したりしていたので、ぜひ取り組んでみたいと手を挙げたのがきっかけでしたね。
取っ掛かりとして、具体的にどんなことからスタートされたんですか?
まず最初はビットコインのプログラムを読み、改造して、自社コインのようなものを作ったりしましたね。同じ頃にイーサリアムやスマートコントラクトについても勉強し始めたんですが「スマートコントラクトを使って、実証実験をしてみたい」というような相談が他社さんから来るようになって。それで、ビットコインからイーサリアムの方に流れていった感じです。
取っ掛かりとしてビットコインのプログラムをまず読んでみた、ということなんですが、ビットコインのプログラムを読むという行為自体の難易度ってどんな感じなのでしょう?
そうですね。参考になる本を読んで基礎知識はつけた上ではありますけど、当時は「Bitcoin Core」というソフトウェアが主流でC言語で書かれていたので、慣れるまでは少し大変でした。でも次第に動きが理解できて、ここら辺はこういうことやっているんだろうなって想像がつくというか。長年プログラマーをやっていたので、そのあたりは勘が働きましたね。

昼間はメインの仕事をしながら空き時間を使って取り組んでいたので、インターンの子も一人つけてもらって。プログラムを読むところから自社コインを作るまでは、半年ぐらいかかったんじゃないかなと思います。それに伴い、当然ノードだけじゃなくて、マイナープログラムも作って(改造して)、複数のサーバーでノードを立て、マイニングされるところまでを完成させました。

さらっとおっしゃっていますが、なかなか大変なことですよね。
現在は ”web3エンジニア不足” とも言われていますし、これからweb3領域の勉強をしたいと考えるエンジニアの方も多いと思うのですが、アドバイスをするとしたら、何から手を付ければ良いと思いますか?
最近はオンラインで学べるサービスが非常に増えていて、web3系のコンテンツも増えているので、まずはそういったところで学んでみるのが良いかと思います。価格もさまざまですが、最初は安いもので十分だと思います。

ただ実態として、弊社も例外ではなく、やはりエンジニア不足なんです。思い切ってweb2のエンジニアを採用して、web3を叩き込んでゼロから育成をする会社さんもあります。そういう会社にコンタクトを取って働かせてもらうのもアリかもしれませんね。皆さんweb3 のことが大好きなので、教えてくれる人も多いと思います。自分でもちょっと勉強しつつ思い切って飛び込んでみる。今ならではの戦い方だと思います。
企業が求めるweb3エンジニアっていうのは、具体的にどんなことができると良いのでしょうか。スキルのボーダーラインってありますか?
web3エンジニア、ブロックチェーンエンジニアって非常に幅が広いんですね。皆さんチェーン上でアプリケーションを作っているので、場合によってはスマートコントラクトが書けるというのは非常に強いと思います。スマートコントラクトがそんなにちゃんと書けなくても、ある程度仕組みを理解した上で、アプリケーションとつなげられる。そのための知識があるだけでも、相当貴重な人材だと思います。

当然そこができてくると、その先はweb2のアプリケーションと共通する部分になってきます。なので、考え方や動き方をしっかりと理解できている方が価値にはなりますね。実際に組んだことがなくても、仕組みを理解しているだけでも、周りと差はつけられると思いますよ。

web3の実現プロセスは? web2とweb3がゆるやかにつながる世界

せっかくなので、もう少し広い目線で「web3」業界全体の動向についてもお話を聞かせてください。吉田さんが見ているweb3って、今はどんな印象でしょうか。
ブロックチェーンっていうと「非中央集権」とか、場合によっては「反体制」みたいな考え方も、昔は多かったように思うんですが、ここ最近のweb3は、正直「非中央集権」にそこまでこだわらなくても良いのかなと思ってます。どちらかというと、みんなで何か作り上げる、といったコミュニティが絡むようなものや、特定の企業や団体に集中していた富を分散するみたいな動きかなと。

例えば X(旧Twitter)って、そこに投稿している人が何か面白いことを投稿しているから、つい見ちゃいますよね。もちろん仕組みも素晴らしいんですけど、コンテンツ自体はユーザーが作っている。それでもこれまではXを運営する企業にしかお金が入らない仕組みです。

最近は少しずつ変わってきていますが、もっとユーザーに分配される仕組みの方が、より盛り上がる可能性はあるはずです。何かを作り上げた時にちゃんとユーザーに分配されて、みんなでよりコミュニティを活性化していこうみたいな。そんな世界がweb3に近いのかなと今は思っています。

そういうプロセスで、web3も実現されていくのかもしれないですね。
今の課題としては、Web3には一般の方が受け入れにくい仕組みがたくさんある。ウォレットしかり、仮想通貨取引所しかり…。そういったところがまず使いやすくならないと、一般化されていくのは難しいかなと思っていて。

web3とweb2がゆるやかに混ざりあって、例えばweb2的なUXは損なわずに、裏側だけがブロックチェーンの仕組みで動いている、みたいな状況が理想ですね。そうなると恐らく誰もが裏側で動いているブロックチェーンを意識せずに、web3サービスを使うようになって、便利さを感じつつ、当たり前のようにweb3が普及していくんだと思います。
一般の方々にとってもとっつきやすい仕組みが実現できれば、NFTやFTトークンを気軽に扱えるようになり、web3のユースケースも広がっていくのかもしれないですね。時間としてはどれくらいのイメージなんでしょうか。
明言するのは難しいですが、10年ぐらいはかかるんじゃないですかね。
NFT自体は、2021年頃に大流行してメディアで話題になりながらも、翌年には「冬の時代に入った」なんて言われていますよね。私自身、まだまだ冬の時代が続くのかなと感じていますが…。吉田さんは、どんなきっかけがあればまたweb3が注目されるようになると思われますか?
一番簡単なのは、やっぱりビットコイン等の暗号通貨の値上がりですよね。
値上がりをきっかけに人が流れてきたところで、いま盛り上がっているゲーム業界に人が集まりそうです。最近は国内でも大手の会社がブロックチェーンゲームに挑んでいるので、業界では「2024年はブロックチェーンゲーム元年になる」というようなことを言っている人も多いんですよ。

ゲームだと多少難しくても面白ければどんどん人が入ってくるものなので、私たちも2024年はweb2ユーザーをたくさん取り込んでいきたいと考えています。
ゲームをきっかけに一般の方々に広がっていって、普通にみんながブロックチェーンゲームをやっているような世界。あり得るかもしれませんね! 本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!

※本インタビューは2023年11月に実施されたものです

関連リンク

こちらのインタビューは、アステリアが2023年12月に実施したオンラインイベント「2023年のweb3|ブロックチェーンニュース総まとめトーク」にて公開したビデオインタビューが元になっています。

動画でご覧になりたい方は、ぜひYouTubeよりアーカイブ動画をご視聴ください。https://www.youtube.com/watch?v=jmP-ENLUm8c

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この記事を書いた人
奥 達男 アステリア株式会社 ブロックチェーンエバンジェリスト、コンサルタント。ブロックチェーン技術の啓蒙及び技術適用された事業モデルの創生・推進、コンサルティング、提案、POC、技術の講義、サービス構築や他社主催セミナーへの登壇などを担う。一般社団法人ブロックチェーン推進協会(BCCC)にて、トークンエコノミー部会 部会長、ブロックチェーンエバンジェリストを務める。